またまた、久しぶりの更新になります。ですが、ここ最近、個人的に感じていることをいくつか、要点だけまとめて書くような中身になります。
(1)おととい、私の前の職場・兵庫県川西市で、子どもの人権オンブズパーソン制度発足10周年記念のイベントがありました。ご存知の方も多いと思いますが、兵庫県川西市の子どもの人権オンブズパーソンというのは、日本初の地方自治体条例にもとづく公的な子どもの人権救済・擁護機関です。
それで、詳しい話はここでははぶきますが、率直に思ったことがひとつ。それは、「もしも大阪市や大阪府内の各自治体、あるいは大阪府に、こうした公的な子どもの人権救済・擁護機関が設置されていたら、例えばその機関は、各自治体で青少年会館や青少年センター、児童館などが廃止され、子どもの居場所が失われるという事態が生じたとき、どんな見解を表明したのだろうか?」ということ。あるいは、「子どもの側から、大阪府内の各自治体での青少年センターや児童館の廃止等に際して、『私らの居場所をなくさないで』という理由で、こうした公的な子どもの人権救済・擁護機関への申し立てが行われた場合、こうした機関はどういう見解を表明したのだろうか?」ということ。このことです。
子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)31条の「休息・余暇、遊び、文化的・芸術的生活への参加」の権利保障の視点から考えてみても、もしも公的な子どもの人権救済・擁護機関が大阪市や大阪府内の各自治体、あるいは大阪府にあったとしたら、府内・市内の青少年会館・児童館等の廃止に際して、きっと、何か意見表明を行っていたような気がするのですが・・・・。こういう子どもの人権保障という面からの青少年施策に関する議論だとか、あるいは、市民レベル・自治体行政レベルでの取り組みは、大阪府内ではまだまだ、立ち遅れているような気がします。
(2)(1)の話とも関係しますが、いくつかの自治体では、青少年拠点施設を公設民営方式で運営したり、NPOと行政の連携で運営する方法がとられています。こうした取り組みのなかには、子どもの人権論の関係者が最近、注目して検討してきたものも含まれます。また、大阪市内の「ほっとスペース事業」の運営も、行政とNPOの連携による「課題のある青少年の居場所づくり」の取り組みとして、全国的に見ても注目すべき取り組みであることはまちがいありません。
今、大阪府内の各自治体で、財政難や府からの補助金削減、廃止等の状況を前に、青少年会館や青少年センター、児童館などの運営方法の見直しなどが検討されていると思います。そのときに、先日ここで書いた茨木市の話のように、いきなり「設置条例廃止、事業も廃止」という提案をするのではなく、もう少し、こうした公設民営方式やNPOと行政との連携の試みに注目する必要があるのではないでしょうか。
たとえ行政当局が青少年会館等の事業廃止、条例廃止などを行っても、そこに建物が残ります。子どもを含め、そこに暮らす人々の生活が残ります。その人たちの暮らしが、行政施策の廃止や制度の見直しなどによって何らかの形で支障を来たしたとしても、その代替措置がとられたり、あるいは、そこから何か新たなものが立ち上がるような、そんな工夫を行政当局側はするべきではないのでしょうか。こういう他地域で行われている新たな取り組みに関する検討も、今の大阪府内ではまだまだ、弱いような気がします。
(3)さらに、地方自治体の子ども(青少年)施策というときに、学校教育が主要な領域であることは認めるとしても、例えば他にも、乳幼児期の保育だとか、乳幼児期から学童期以後にいたるまでの子育て支援、虐待防止の取り組み、ひとり親家庭への支援など、今まで児童福祉の領域で行われてきた子ども家庭支援の施策も重要です。また、子どもの放課後や夏休みなど長期休暇中の諸活動のように、「休息・余暇、遊び、芸術的・文化的生活への参加」の権利保障という意味で、子どもの社会教育・生涯学習施策や文化施策に関わる部分の取り組みも重要です。そして、非行防止や課題のある子どもへの支援施策、将来の進路形成にかかわる施策も重要ですし、今まで述べてきた諸施策がすべて子どもの生活にかかわる以上、それへの子どもの意見表明や参加・参画の視点からの検討も重要です。
いわば、地方自治体の子ども施策というときには、こうした施策を「子どもの人権保障」という観点から、トータルにコーディネートしていく視点が重要だと私は考えるわけです。しかしながら、今、大阪市や大阪府内の各自治体、大阪府の行政施策を検討するにあたって、こうした視点はどれだけ貫かれているのでしょうか。あるいは、市民レベルの取り組みにおいても、各行政当局の取り組みについて検討する際、「子どもの人権保障」という観点はどれだけ貫かれているのでしょうか。
どうも、あくまでもこれは私の目から見ての話でしかないのですが、一部でがんばってる人たちがどちらにもいるものの、総体的に見れば、「市民レベル、行政レベル、どっちもまだまだ弱い」ような気がしてならないのですが・・・・。だからこそ、財政難を理由に青少年拠点施設などを廃止したり、あるいは、さまざまな子どもや子育て中の家庭への支援施策が打ち切られたりしても、なかなか、「それはおかしいのでは?」という声があがってこないのかな、という気がしています。
この「まだまだ弱い」部分をどう強化し、何かあるときに「それはおかしいのでは?」という声が出せるところにまで高めていくのか。それが、今後の大阪府内及び大阪市内での「人権教育」の課題のように思います。そして、それを学校内・学校外、両方で行っていく必要があると思うのですが・・・・。その自覚ももしも「弱い」としたら、大阪府内及び大阪市内の「人権教育」の営み自体が、今の情勢を前にして、根本的に見直されてしかるべきだと思います。
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