できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

今日、書いておきたかったこと。

2008-06-18 12:55:11 | ニュース

ほんとうはこのブログで今、いっぱいいろんなことを書いて、情報発信すべき時期なのだが、あいかわらず本業に追われていて、たいしたことが書けない。「なんでこんなに大学の仕事が忙しいのか・・・・」とぼやいてもしょうがないのだが、それでも、今、書ける範囲で、思っていることを書いておく。だから今後も、「今日、書いておきたかったこと」という、きわめて漠然としたタイトルでの記事が何度かでてくると思うが、お許しいただきたい。

この前、このブログで、今月はじめに府知事が発表した大阪府の財政再建プログラムについて、あらためて大枠だけでなく、小さな事業がどうなったかがわかるような資料も、府庁ホームページ上にアップすべきだと書いた。昨日確認したところ、その資料もきちんと今、アップされている。もともと当初から予定されていたのかもしれないが、ひとまず、こうした府庁側の地道な情報公開の努力には、敬意を示しておきたい。

また、これでおそらく、たとえば識字教室事業とか、渡日の子どもの学校生活支援関連の事業とか、学校における子どもの権利擁護に関する事業など、一事業あたりの予算額は少ないけど、生活困難な課題などを抱える府民の生活にとって重要な事業の動向が、きっとわかると思う。これらの事業に関連する資料のPDFファイルをダウンロードはしたものの、まだじっくりと読むことができていないのが残念である。

ただ、予想されるのは、大幅な予算減額か事業そのものの廃止、という既定方針どおりのプランが、そこに反映されているであろうこと。この私の予想に間違いがなければ、渡日の子どもとその保護者とか、文字の読み書きに何らかの不自由を抱えている方とか、大阪府下の学校で何か権利侵害にあって困っている子どもやその保護者とか、いろんな意味で「暮らしにくさを抱えている層」に、なおいっそうの「辛抱を」と求めているのが、この財政再建プログラムであるということがよくわかる。その一方で、国からの補助金を受け取るのとひきかえで、義務的にでもやらねばならない府の事業が残り、そのなかに予算のムダが残されているとするならば、なんともまた皮肉なことである。先に国と府との財政上の諸関係に生じた矛盾を整理して、その上でなお予算削減の必要があるのなら、こうした「暮らしにくさを抱えている層」への支援施策にまで手をつけるという、そういう筋道での財政再建策もあったのではないのだろうか。

それにしても、このままだと、「ほしがりません、勝つまでは」の再来というか、住民に対して「ほしがりません、財政再建までは」ということを府庁側が求めていくような流れが、大阪府下にどんどん浸透するのではないだろうか。しかも、その財政再建の見通しは、大阪府のかかえている債務から考えると、おそらく数年どころか、十数年以上かかるかもしれない。そして、その「ほしがりません、財政再建までは」といい続けている間、なおいっそうの「辛抱を」と言われても、その辛抱にもう耐え切れないと思う人々はきっと、増えていくように思う。

なにしろ、月収100万の人にとっての月1万円の負担増と、月収10万の人にとっての月1万の負担増は、意味がちがう。月収100万の人にとってみれば「辛抱の範囲内」であることが、月収10万の人にとっては「耐え難い苦痛」であるという、このあたり前の事実にこだわることが、今、大阪府の財政再建策の持つ意味を考える上で、とても重要なのではないだろうか。

しかし、どうもここ最近、この大阪府の財政再建策とか、府知事の施政方針などをめぐる議論をマスコミレベルで見聞きするたび、このあたり前の事実の話がどこかに飛んでしまい、何か日々の知事の発言や行動、つまりパフォーマンスばかりを追いかけて、「知事の改革姿勢は見事」というレベルの話に集約されてしまうような、そんな状況への違和感を抱くようになってきた。

たとえば、朝から家で授業準備をしながら、ある大阪の民放ラジオ局の番組を聴いていると、府知事が府庁幹部に自衛隊での研修をすすめたとか、府庁幹部がそれに不快感を示しているとか、そのラジオのパーソナリティーが中身ややり方はさておき、今までの取組みを変えたいという意欲が伝わるとか、そんな話ばかりが聞こえて来る。今朝の新聞記事かなにかに、そういう話が出たのだろう。しかし私には、「もっとちがうところをきちんと取材して、この府政改革が生活困難な層に何を及ぼすのか、それをきちんと伝えてほしい」という思いが強い。

そして、「年老いた府庁幹部を若い自衛隊員の訓練のなかに放り込み、根をあげるまで体力的にしぼりあげることに、何の意味があるのか。そんなことより、その府庁幹部が生活困難な層と直接対話し、直接その人たちの暮らしを見聞きして、何が本来の府政にとって必要な課題かを見極める作業のほうが、よっぽど重要。そのほうが、よっぽど府庁幹部にとっては、意識変革になりうるのではないか? そんな府知事の提案をもちあげるマスコミの目線、どこかおかしくないか?」と、この際、言っておきたい。

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