角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

政治家の資質。

2009年08月24日 | 実演日記


今日の草履は、千葉県浦安市からお越しくださったお若い女性のオーダー草履です。
配色選びでよく話題となるのが、「おばさまこそ明るい草履」。逆にお若い女性のほうが「今日の草履」のような配色をお選びになります。私はそれでイイと思いますね。
お待たせしました、明日の便で出発ですっ。

昨日のこと、夕方近くになってひとりの若者がお越しです。試し履きをお勧めすると、『あぁ、でも僕買えませんよぉ』とためらいました。
男女問わず一定の年齢に達した方々は、購買意思とは無関係に試し履きをされます。もちろんそれでイイのですが、確かに「買えない」と自身が分かっている以上、下手に試したりするのは失礼という考え方は分からなくもありませんね。

『見ての通り押し売りするほどの在庫なんかないんだから、ここにしかない草履を旅の思い出に履いてみたらイイでしょ』と言うと、若者は安心したのか笑顔で草履に足を入れました。

『この草履を編む人ってほかにもいるんですか?』と訊かれたので、生業としているのは私ひとりということを伝えると、『うわ~、スゴいですねっ』。若者の知識欲がみるみる膨らんでいくのが分かりました。

千葉県出身で現在神奈川県に暮らす彼は、某有名大学の二年生。夏休みを利用し、「人と会う」「風景と会う」をテーマにしているかのような旅を愉しんでいました。
『(衆院選の)投票日までに戻るつもりなんですぅ』という彼、二十歳になったばかりのはずなのになかなかの心掛けと思います。

そんな彼に、『君は将来就きたい仕事ってあるの?』と訊くと、『僕、市議会議員になりたいんですっ』。なるほど、そういう目標を持っていれば、投票日に合わせて旅を閉めるのも分かりますね。
これまでの公開実演で、若者がはっきり「政治家」を目指していると言ったのは、彼がはじめてです。

贅沢はできないことで試し履きをためらう心、そういう純真さを持ったまま政治に携わってくれればイイなと思いました。実際は加齢と共にそういう心はなくなるもんですけど、「人のために尽くす」を本分とする政治家であれば、是が非でも欲しい資質のひとつでしょう。。

最後に彼が「旅ノート」を私に手渡し、『一言ことばを書いていただけませんか?』。しばし考えた末に草履職人が記した言葉は、“必要とされる場所で生きる その場所はきっとある”。

必ずしも政治でなくとも、彼の将来には“生かされる場所”がきっと待っているでしょう。

コメント
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