角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

家族を裂く放射線。

2011年08月16日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
ときどき思い出したように編む、唐草同士の組み合わせ草履です。茶の唐草も青銅色の唐草も定番にはないため、たくさんは仕入れていませんでした。どちらもほぼ終わりに近づいたので、残り少ない唐草同士を組み合わせてみたわけです。

それが面白いもので、『今編んでる草履が好きだなぁ』とおっしゃる男性がお越しでした。埼玉県からお越しのご夫婦は、ご主人が「今日の草履」をご予約され、奥様は次に編む予定の定番配色①をご予約です。ご夫婦分2足が当日のご予約で当日のお持ち帰りが叶うというのは、案外稀なことなんですね。おふた方とも、とっても喜んでくださいました。

こちらのご主人のお話でちょっと驚いたのは、『私の叔母がここの西宮さんから出てるんですよ』。つまりこちらのご夫婦は、角館西宮家と遠戚に当たるんですね。以前にも二度ほど、西宮家との親戚関係を教えてくれたお客様がおりました。西宮家も十数代続いている名家ですから、ご親戚の数はたいへんなものと推測できます。それこそお盆や正月などは、大勢の人たちが母屋の中で過ごしたでしょうね。

今年のお盆はカミさんの妹家族が帰省できなかったため、比較的静かに過ぎました。なにしろわが家とカミさんの妹家族だけで10人の大所帯になります。それに遠方からの親戚が加わると、20人に近い食事はこれまで幾度となくあったものです。
そんなとき一番嬉しそうな顔をしているのは、ときの「長老」ですね。じっちゃとばっちゃが二年前に他界してからは、そのお役目がカミさんの父母に受け継がれています。

今日の実演席も震災の話題になりました。福島市からお越しのご家族。お父さんにお母さん、そして小学六年を筆頭に幼稚園年長までの子ども四人、合わせて六人の家族旅行です。子どもたちに安心して外遊びをさせる、夏休み期間中の招待事業なんですね。田沢湖高原のホテルに一週間ほど滞在し、今の福島ではできない自然の中の遊びを思いっきり楽しむわけです。

昨日のテレビで知ったのは、福島市や郡山市の小学生が、放射線を逃れて転校しているという実態でした。仕事の関係でお父さんをひとり残し、お母さんと子どもだけが縁戚を頼りに暫時引っ越すというものです。こちらのお母さんにこの話を訊いてみると、『そうなんです。娘の幼稚園ではクラスの半分くらいが引っ越してますよ』。

引越しの話し合いをしている世帯はとても多いらしく、ある知人のお宅はおじいちゃんが若い家族の引越しを勧めていると言います。
『そこのおじいちゃんは、自分はここを離れるわけにはいかないけど、将来がある子どもたちは安心な場所へ行ったほうがいいって言うんですって』。

祖父や祖母が孫を思う気持ちは、古今東西変わるものではないでしょう。そんな祖父が、孫の顔を見られなくなる道をあえて勧める。断腸の思いじゃないですかね。
原発事故の一日も早い収束は、即ち一日も早い家族の再会と一緒です。
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