角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

それぞれの墓参。

2011年08月13日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ26cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
昨日の「今日の草履」とベースが一緒で、組み合わせをエンジのいらかに替えた姉妹品的な配色ですね。昨日は粋に見えた草履が、今日はとてもお洒落に感じます。

お盆の十三日を迎えました。公開実演をお休みした今日は、朝から仏壇の掃除やお墓参りの準備など、いかにも日本のお盆を過ごしています。こうして神仏にかかわっているひとときに、なんとも言えない癒しを感じますね。これも加齢に因るところが大きいのかと思いきや、わが家の次女などは『神社とかお寺って、なんか好き』と小さな頃から言ってました。

昨日仙台市からお越しのご夫婦は、ご年齢を推測するに80歳ほどと思います。共にお元気に見えるのですが、奥様がリューマチを患っていて足裏にもときに不快感があるそうです。『こういう草履を試してみようかなぁ』と独り言のように呟くと、『買ってあげるから選びなさいよっ』とご主人。

すかさず奥様が、『あらっ、お父さんのほうこそ足がむくむって言ってるんだから、お父さんが履けばいいわよっ』。ご主人は『俺はいいんだよ。あなたが履きなさい』の一点張りで平行線です。
すると奥様、『もう少し長生きさせてあげようって言ってるのに…』。この言葉でご主人もようやく承諾、仲良くご夫婦で履いてくださることになりました。

このあとご夫婦とのおしゃべりは、震災が話題となりました。同じ仙台でも津波とは無縁の立地で命拾いしたとは言え、ご夫婦もあの惨状は未だに胸が痛くなるとおっしゃいます。
若くして命を絶たれた人があれだけいたと思うと、ご夫婦で長生きの話をしていられる普通の環境が、とても幸せなことに思えますね。

以前のブログにも触れましたが、今日八月十三日は実父の命日です。30年前の今朝、私の帰省を待たずにこの世を去りました。死に目に会えなかったのを悔やんでもはじまりませんが、叶うものであれば家族というもの、永久の別れにはその枕元に居て欲しいし、居てあげたいと思うのが当たり前でしょう。

東日本大震災から五ヶ月が経ち、亡くなられた方々の新盆です。弔いができた故人はもとより、未だ発見されない五千名に近い家族の心中はいかばかりでしょう。太平洋側10箇所で同時に打ち上げられた花火の映像を観ると、身内に被災者の有無など関係なく胸が熱くなりますよ。

日本人ひとりひとりが、それぞれに想いを寄せる墓参り。自分自身が元気に生きるために、墓参というものがあるような気がします。津波で家族や大切な人を失った方々の思いは、推して分かりきれるものではないでしょう。他人が好き勝手を言わせてもらえば、この新盆が少し前に進むきっかけになってくれればと、切に願います。

角館の草履職人にとって、お盆は今日一日限り。実父や昨秋他界した叔父を供養したら、明日からまたお客様を迎える草履職人として復帰します。
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