今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤系おまかせにもってこいの「今日の草履」は、ベースは御殿まりプリント、組み合わせにはいらかプリントです。綺麗なだけではない、「和」がしっかりと生きていますね。個人的にはかなり好きな配色のひとつです。
大きなリュックを背負ったお若い女性がお越しでした。小麦色に日焼けした顔には未だ幼さが残るのですが、風貌をみるだけなら「ヒッチハイク」でもしてそうな雰囲気です。実演を興味ありげに見ていたので丸太椅子に招くと、『見てていいですかっ?』。やはりあどけなさが印象的です。
『学生さん?』と訊ねると、『はいっ、大学一年です』。あらあら、わが家の双子と同い年じゃありませんか。『ひとり旅してるの?』と訊ねると、『はいっ、ヒッチハイクしながら東北一周してますっ』。
第一印象が間違ってなかったと喜んでいる場合じゃありません。19歳の女の子がひとり旅、しかもヒッチハイクですよ。同い年の娘を持つオヤジとしては、なんとも複雑な心境です。
『お父さんとお母さんは知ってるの?』と訊ねると、『お父さんは単身赴任してますから、旅行のことも知らないと思います。お母さんは東北旅行だけは知ってますけど、ヒッチハイクは教えませんでしたぁ』。
屈託のない笑顔でこれを話されると、草履職人のおっさんは苦笑いするしかありませんでしたよ。
その後30分くらいおしゃべりしたでしょうか。大学の話や震災の話、将来の夢なんか話していると、第一印象がウソのようにしっかりしているのが分かりました。
旅の費用は半年間のアルバイトと言います。30万円を貯めて半分を預金に、残りの15万円を約一ヶ月間の旅で消費するんだそうです。一日予算は4500円、確かに交通費や宿泊代を普通には払えませんねぇ。
ふと思ったのは、お母さんはもしやこの子なら、ヒッチハイクくらいするかも知れないと思っているんじゃないですかね。きっと年齢以上の信頼関係が、母娘間に出来ているんじゃないかと思いました。
お母さんへ履かせてあげたいと言った角館草履は、お母さんの誕生日か母の日にネット通販を利用するそうです。旅の予算ではとても無理ですからね。
わが家の娘と同い年の女の子が、ヒッチハイクでひとり旅。何度も言うようですが、オヤジとして心境は複雑です。でも今日の彼女と出会って、すくなくとも「女だてらに…」の言葉は忘れようと思います。それが心から旅を愉しんでいる彼女に対する、「敬意」というものでしょう。
ときに実演席では、若者から元気を与えられますよ。