角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

理想の老夫婦。

2008年10月16日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズLグループ25cm土踏まず付き〔4500円〕
青基調の可愛い動物キャラクタープリントをベースに、合わせは黄色です。青と黄色の組み合わせはバッチリですし、なんと言ってもキャラクターが可愛いですね。草履に仕上がってもその雰囲気は充分出ていると思います。平生地はこちらです。



愛知県からお越しのご夫婦、共に70歳代とお見受けしました。奥様が草履を気に入ってくださり、私の説明にも真剣に耳を傾けています。ご主人はと言うと、少し離れた位置でケータイメールに夢中で取り組んでいました。
いまどきはお年寄り専用に近いケータイも発売されているようで、実演席でもお年寄りのケータイが鳴り出すなんてことが珍しくありません。

草履が欲しいとなった奥様、ご主人を呼び寄せしきりに“おねだり”となりました。『この22cmの草履があたしにピッタリなんだってっ!』、ご主人はたった一言『あっ、そう』。でも私には分りました、とてもお人柄の優しい感じのご主人がダメとは言わないことをです。

次にご主人の口から出た言葉は、『気に入ったのなら、その草履をいただいて行けばイイヨ』。ここで私が見習いたいと思ったのは、「買って行けばイイ」ではなく、「いただいて行けばイイ」という言葉なんですね。普段どこかのお店に買い物に行って、なかなかこの言葉は使わないと思いました。
「買う」ではなく「いただく」、日本語の持つ奥ゆかしさがなんとも心地よいと思います。

ご夫婦のやりとりはこれで終わりません。奥様は『じゃあ、お父さん買ってっ』、ご主人は『そんなのどっちが払ったってイイじゃないかっ』。返す奥様は、『あたしが払うんじゃダメなのっ』。
奥様の言葉の真意はもちろんご主人も分りきっているんですね、聞けば“初角館”、そこで出逢った草履をご主人にプレゼントして欲しいということでしょう。

ずいぶん昔、台所洗剤のテレビコマーシャルで、老夫婦が手をつないで街をスキップして歩くのがありました。あのときの雰囲気が今日のご夫婦と重なります。歳を重ねた理想の夫婦を見せていただいた思いですね。

さて、わが夫婦の将来はいかがなりますか。想えば結婚記念日は10月5日、今年のその日は二日酔いと悪寒で早々に床へ着いた日です。
翌朝記念日を思い出したのは、17年前の結婚式で式場からもらった大きな「ろうそく」を見てでした。毎年の記念日に火を灯し、一年分ずつを減らして行くんです。カミさんは忘れることなく、ひとり火を灯していたんですね。

お客様から「草履」は褒められても、「夫」としてはひとつも褒められませんなぁ。

コメント (2)
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