角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

忘れ物。

2008年10月25日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズLグループ26cm土踏まず付き〔4500円〕
青基調のダルマさんプリントをベースに、合わせは黄色基調のダルマさんプリントです。ときに作る同柄色違い、こちらは色の組み合わせから若々しさが出ましたね。楽しい配色と思います。

昨日久しぶりの降雨があった角館、今日は日差しも出て過ごしやすい一日でした。秋田市からお越しのご夫婦にも訊かれたのですが、やはり紅葉が今ひとつです。今朝武家屋敷通りを観てから西宮家へ行きました。これから色付くようにはどうも思えませんねぇ、こんな感じで今年の紅葉は終わりじゃないでしょうか。
日の落ちる速さはすでに「晩秋」、鮮やかな紅葉を観ずに冬に向かうとすれば、なんか「忘れた」みたいな感じがします。

秋田市からお越しのご家族、女の子は四歳と言います。私の実演がことのほか気に入ったようで、お父さんたちが『次の蔵へ行ってみよっ』と言っても動こうとしません。こんなとき無理にでも連れて行く親もいますが、時間にゆとりがあるのなら子どもの関心に合わせるのもひとつでしょう。こちらのご家族はお母さんが女の子と共に残ることになりました。

女の子が『これはなぁに?』と指差したのは、材料のイ草。『それはねぇ、いぐさっていうんだよ』と教えると、『いぐさってなぁに?』。四歳の子にイ草の理解は無理でしょう。
『あなたのおうちにたたみはある?』と訊くと、『あるよー、わしつでしょ?』。和室が分るとはちょっと驚きです。

その後もいろんなおしゃべりをしていて、女の子はふと「イ草」を思い出すんですね。『あれっ、これってなんだっけ?』、『もう忘れたの!?これはイ草っ』、『あっ、そうだそうだ』。これと同じ会話がその後三回ほど続き、傍にいるお母さんも苦笑いです。
普段使わない言葉は、子どもといえども忘れますよねぇ。

今日久しぶりにお越しは、美郷町で草履作りに“励んでいた”女性。過去形としたのは女性の言葉、『しばらくやってないんですよぉ、編み方も忘れちゃって…』。
実演ではお年寄りのお客様も多いです。中にはかつてワラ草履作りを日常にしていたおじいちゃんもお出でになり、『昔は毎日のように編んだもんだぁ。んでも、こうやって見でれば案外忘れでるもんだなぁ』。
おそらく編まなくなって数十年でしょうから、それは無理もないでしょう。

先の美郷町の女性に、「体験型草履教室」とその後の「本気型」の件を教えました。『よしっ、今年の冬からまた作りますっ』と笑う女性。何十年と編み続けても忘れてしまうほどですから、練習中の身ならあまり間を空けないほうがイイですね。
「体験型」はすでに草履台をお持ちの方も大歓迎、試行開始の11月1日まで一週間を切りました。

コメント
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