「モッコウバラ」 尼崎・立花界隈 (14-4-30)
長かった連休も終わりましたね。私までも、4日も連休をしてしまいました。世
間がお休みですと、何となく私もお休みのような錯覚を起こしてしまいました。
今日は水曜日なのに何となく月曜日的な感覚なんですよ。なんどとなく「今日
は月曜日?」と自分に問いかけていました。寂しいけれど、是も「老い」なんで
しょうね。
夢幻花(むげんばな) 東野圭吾
東野さんの文章は、構えなくて良いし、優しい文体で、す~と解けこめるし、と
ても読みやすいです。だから人気があるのでしょうか? この本も、申し込んで
から、1年近くも待ちましたよ。
この物語は構想10年だそうです。はじめは「歴史街道」に書く事を薦められ、
「歴史物は書けない」と言っていたのですが、今はない「黄色いアサガオ」が江
戸時代にはあったと言う事で、是を歴史と結び付けようと書き上げたそうです。
「10年かかっても書き上げます」という約束を果したそうです。えらいな~。
「夢幻花=黄色いアサガオ」のお話です。主人公=蒼太=代々警官の家系。
黄色いアサガオの行方を捜し求めている。兄も検事。本人は原子力を研究す
る大学院生。
朝顔に詳しい人との会話:
「黄色い朝顔は禁断の花、という話だ」「禁断…」蒼太と梨乃と顔を見合わせた。
「私がアサガオに興味を持ったのは、父の弟、つまり叔父の影響だ。その人が
いろいろなヘンかアサガオを咲かせるのを見ているうちに自分でもやりたくなっ
た。だが叔父はあるとき私に言ったんだ。どんな花を咲かせてもいいが、黄色
いアサガオだけは追いかけるな、とね。理由を聞くと、あれはムゲンバナだか
ら、といわれたよ」「ムゲンバナ?」「夢幻の花という意味だ。追い求めると身を
滅ぼす、そういわれた」「一言で言うと幻覚作用をもたらす植物の総称だ」「あ…
大麻とか芥子とか?」「それらの、すでに広く知られている植物のことは夢幻花
とはいわない。一般的には主に観賞用だとか。ただの野草や雑草としか知られ
ていない植物で、じつはそういう作用を持っている物の事を言う。とはいえ、江
戸幕府の一部の人間、主に農学者たちだけが使っていた一種の隠語だけどな」
兄要介「もともとアサガオは薬として日本に入ってきたものだから、食すること自
体はヘンではない。だけどその用途は下剤とか利尿剤だ。そんなことが流行る
とはとても思えない。ところがある種のアサガオには、強力な幻覚作用がある
ことがわかった。更に外見的にも大きな特徴があった」「それがもしかして…」
蒼太「そう、黄色い花を咲かせる品種だ。そもそもこの品種が何処から発生した
のか、はっきりとはわかっていない。外来種だったのか、突然変異したものか不
明だ。しかしほかのアサガオとはまるで違う遺伝子を備えていることは明らかだ
った。幻覚作用も其の一つと考えられる。
そこで幕府はこの危険な花が紙上に出回らないように手を打った。黄色いアサ
ガオを見つけたら、すぐ確保し、拡散するのをふせいだんだ。但し、そのことは
世間に知られないようにしなければならない。「ひょっとすると、黄色いアサガ
オが姿をけしたのは、其のせいですか」「ご明察だ」
「黄色いアサガオの栽培は、明治新政府によってひそかに続けられた。それを
知っているのは限られた人間だけだ。やがて黄色いアサガオの意外な利用方
法が提案された。提案したのは内務省の上層部(ひいじいさん)で、彼らは警
察捜査で自白剤として使おうと考えた」「警察…」「… 精神への作用の仕方
に、ばらつきが多すぎた。…それ以後栽培はされることがなくなった」
結局、「黄色いアサガオ」を市民から隠した官僚と育てていた者の先祖が、再
び咲かせた「黄色いアサガオ」によって、めぐり合うという物語と言っていい
のだろうか。