平成15年11月19日
結願の翌日 (2)
国道を歩いているから間違いはないと思いつつも、なかなか標識がないと心細
いものです。やっと警察を見つけて入っていきました。「○○寺の方向はこちら
で間違いはありませんね?」と訊ねると「XXさ~ん、道をおしえてあげて!」と
呼ばれた人が頼りない。壁に貼られた地図から、目的地を探すのに手間取りま
す。「此処ですね」と私の方が先に見つけた。「区域外ですので…、歩くのです
か?たいへんだな~」とにかくお礼を言って歩き始めると、署内で掃除をしてい
たおばさんが追っかけて着ました。「お遍路さん、昨夜ね友達とカラオケしてね、
干し柿を作るのが上手な人が居てもらったのよ。残り物だけど…」と私に袋を
握らせました。中には干し柿、蜜柑、おかき、そしてシップ薬などが入っていまし
た。ありがたくいただきました。
私の視線の遥か前方で、ひょこっと言う感じで、坊さん風の若者が国道に現れ
ました。しばらく目で追っていましたが、いつの間にか又かき消すように消えて
しまいました。
そうなると、自分の歩いている道が間違っているのではないかと心配になって
きます。今考えてみれば、私達は今夜の宿「森本旅館」を目指しているだけで、
逆打ちになる、それぞれのお寺に立ち寄るつもりは無いのです。けれど彼は立
ち寄りつつ歩いているのだろうから、現れたり、消えたりしても不思議ではない
のですが、その時はそのことに考えが及ばず心細く感じました。
主人はもっと遥か先を歩いています。実は5Kほど手前に一軒宿があったので
す、だのに主人が強引に「森本旅館」まで行こうと言ったのです。
行けども行けども着きません。そのうちに喉が渇いてきました。お水が飲みた
いのですが、リュックを下ろさなければ取れません。リュックを下ろすには腰と
胸のベルトを外さなければなりません。前を行く主人の携帯を何度も呼び出し
たのですが出ないのです(後で聞くと何時もは胸ポケットに入れているが、その
日はズボンのポケットにいれていて、その上マナーモードになっていた。マナー
モードになっていてもバイブレーションは効かしてあるのですが、足が始終動い
ているので、ズボンのポケットでは感知しなかったらしい)仕方が無いので力を
振り絞って走るが如くに主人に近づいていきました。
主人は横は見ますが、後ろを振り向かないのです。だから私が、主人が横を
向いた時に、杖を振り振り合図しても気づいてくれないのです。その日は遍路
地図を主人が持っていたので、自分でリュックを下ろして、水を飲んでいると主
人を見失って目的地につけなくなってしまうのです。前日の予定と違っているの
で、行き先が頭に入っていないのです。人が居れば聞けるのですが、四国の人
はほとんどが家に引っ込んでいるのか、めったに人に合わないのです。
だから水が飲みたい時は携帯で「水!」と伝えて止まってもらうより仕方が無い
のです。水飲みたさに主人への怒りを加算させて、それを馬力に半分走ってい
ると、丁度家から出てきたおばあさんに道を訊ねている主人の姿が見えました。
今しかないと私は必死で駆け出しました。道を聞き終えた主人が、やっと後ろ
を振り向きました。私は大声で「みず~!!」と叫びました。水を飲み終えた私
は「何で携帯にでないのよ!何で後ろをふりむかないのよ!!」と機関銃のよ
うに怒りをぶつけました。思いっきり走って、へなへなとその場に倒れそうな私
を怒りが支えていました。
「森本旅館」は第5番札所 地蔵寺の前の古いお宿でした。女将さんが「今日
は高野山からのお坊様が泊まっておられて、お遍路さんとお話がしてみたいと
言っておられたので丁度良かった」といわれました。泊まりはそのお坊様と3度
目だという男性と私達でした。男性とはお話が弾みましたが、お坊様は一言も
話さず、黙々と食べて折られました。話がしたいといって折られたはずなのに
と思ったのですが、お坊様は食事中は話さないのかも知れないと思っていまし
たが、お食事が済んだら、さっさと「お先に」と自分のお部屋に下がられました。
「あれ??お話したいのでは??…」と思いましたが…。
その夜、私は久しぶりにシップのお世話になりました。とにかく疲れました。私
は這うようにして部屋に帰ると、バタンキューと寝てしまいました。一度目覚め
た時に、隣に主人の姿はありませんでした。どこかで声だけがしていました。
私は宿の人とでも喋っているのだろうと思っていましたが、実際はお坊様のお
部屋で議論?をしていたらしいのです。「近頃のお坊さんは金儲けに走りすぎ
る…、坊さんに説教した」とか言っていました。坊様に説教する人が居るなん
て、お坊様もさぞ驚かれたことでしょう。
11月19日 森本旅館 (6泊目)
結願の翌日 (2)
国道を歩いているから間違いはないと思いつつも、なかなか標識がないと心細
いものです。やっと警察を見つけて入っていきました。「○○寺の方向はこちら
で間違いはありませんね?」と訊ねると「XXさ~ん、道をおしえてあげて!」と
呼ばれた人が頼りない。壁に貼られた地図から、目的地を探すのに手間取りま
す。「此処ですね」と私の方が先に見つけた。「区域外ですので…、歩くのです
か?たいへんだな~」とにかくお礼を言って歩き始めると、署内で掃除をしてい
たおばさんが追っかけて着ました。「お遍路さん、昨夜ね友達とカラオケしてね、
干し柿を作るのが上手な人が居てもらったのよ。残り物だけど…」と私に袋を
握らせました。中には干し柿、蜜柑、おかき、そしてシップ薬などが入っていまし
た。ありがたくいただきました。
私の視線の遥か前方で、ひょこっと言う感じで、坊さん風の若者が国道に現れ
ました。しばらく目で追っていましたが、いつの間にか又かき消すように消えて
しまいました。
そうなると、自分の歩いている道が間違っているのではないかと心配になって
きます。今考えてみれば、私達は今夜の宿「森本旅館」を目指しているだけで、
逆打ちになる、それぞれのお寺に立ち寄るつもりは無いのです。けれど彼は立
ち寄りつつ歩いているのだろうから、現れたり、消えたりしても不思議ではない
のですが、その時はそのことに考えが及ばず心細く感じました。
主人はもっと遥か先を歩いています。実は5Kほど手前に一軒宿があったので
す、だのに主人が強引に「森本旅館」まで行こうと言ったのです。
行けども行けども着きません。そのうちに喉が渇いてきました。お水が飲みた
いのですが、リュックを下ろさなければ取れません。リュックを下ろすには腰と
胸のベルトを外さなければなりません。前を行く主人の携帯を何度も呼び出し
たのですが出ないのです(後で聞くと何時もは胸ポケットに入れているが、その
日はズボンのポケットにいれていて、その上マナーモードになっていた。マナー
モードになっていてもバイブレーションは効かしてあるのですが、足が始終動い
ているので、ズボンのポケットでは感知しなかったらしい)仕方が無いので力を
振り絞って走るが如くに主人に近づいていきました。
主人は横は見ますが、後ろを振り向かないのです。だから私が、主人が横を
向いた時に、杖を振り振り合図しても気づいてくれないのです。その日は遍路
地図を主人が持っていたので、自分でリュックを下ろして、水を飲んでいると主
人を見失って目的地につけなくなってしまうのです。前日の予定と違っているの
で、行き先が頭に入っていないのです。人が居れば聞けるのですが、四国の人
はほとんどが家に引っ込んでいるのか、めったに人に合わないのです。
だから水が飲みたい時は携帯で「水!」と伝えて止まってもらうより仕方が無い
のです。水飲みたさに主人への怒りを加算させて、それを馬力に半分走ってい
ると、丁度家から出てきたおばあさんに道を訊ねている主人の姿が見えました。
今しかないと私は必死で駆け出しました。道を聞き終えた主人が、やっと後ろ
を振り向きました。私は大声で「みず~!!」と叫びました。水を飲み終えた私
は「何で携帯にでないのよ!何で後ろをふりむかないのよ!!」と機関銃のよ
うに怒りをぶつけました。思いっきり走って、へなへなとその場に倒れそうな私
を怒りが支えていました。
「森本旅館」は第5番札所 地蔵寺の前の古いお宿でした。女将さんが「今日
は高野山からのお坊様が泊まっておられて、お遍路さんとお話がしてみたいと
言っておられたので丁度良かった」といわれました。泊まりはそのお坊様と3度
目だという男性と私達でした。男性とはお話が弾みましたが、お坊様は一言も
話さず、黙々と食べて折られました。話がしたいといって折られたはずなのに
と思ったのですが、お坊様は食事中は話さないのかも知れないと思っていまし
たが、お食事が済んだら、さっさと「お先に」と自分のお部屋に下がられました。
「あれ??お話したいのでは??…」と思いましたが…。
その夜、私は久しぶりにシップのお世話になりました。とにかく疲れました。私
は這うようにして部屋に帰ると、バタンキューと寝てしまいました。一度目覚め
た時に、隣に主人の姿はありませんでした。どこかで声だけがしていました。
私は宿の人とでも喋っているのだろうと思っていましたが、実際はお坊様のお
部屋で議論?をしていたらしいのです。「近頃のお坊さんは金儲けに走りすぎ
る…、坊さんに説教した」とか言っていました。坊様に説教する人が居るなん
て、お坊様もさぞ驚かれたことでしょう。
11月19日 森本旅館 (6泊目)