緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

アナトリー・ヴェデルニコフ演奏、セザール・フランク作曲「前奏曲、フーガと変奏曲」(ヴェデルニコフ版)を聴く

2024-04-28 21:40:10 | ピアノ
アナトリー・ヴェデルニコフ(1920-1993、旧ソ連)の名前を初めて聞いたのは今から15年くらい前だっただろうか。
その当時はピアノ曲と言えばガブリエル・フォーレの夜想曲や舟歌の聴き比べをさかんにやっていた。
正月休みに実家に帰省した際に、アコースティック・ギター弾きなのに、やたらクラシック音楽を数多く聴いている兄に「ピアニストで聴き応えあるのは誰か」と聞いたら、「ミェチスワフ・ホルショフスキーとアナトリー・ヴェデルニコフだ」という答えが返ってきた。

聞いたことも無い意外な名前だった。
正月休みを終え、早速、ミェチスワフ・ホルショフスキーとアナトリー・ヴェデルニコフの中古CDを買って聴いてみた。

アナトリー・ヴェデルニコフはピアノファンであれば多くの方が知っていると思うが、生まれは中国で、1936年にロシア(ソ連)に移住。モスクワ音楽院に入学し、ゲンリフ・ネイガウスに師事。直後、家族を粛清の波が襲い、父親は銃殺刑、母親は強制収容所送りとなってしまう。師であるネイガウスの計らいで何とか逮捕を免れるたが、自身の信念に忠実に行動したため体制に迎合せず当局に睨まれ、海外での演奏活動が制限された悲運のピアニストとされている(ウィキペディアより)。

抑制された表現の奥に、非常に高度な理論的裏付けと秘められた情熱を感じさせる。
今回記事に取り上げた、セザール・フランク作曲「前奏曲、フーガと変奏曲」を聴けば、そのことがおのずと分かるのではないか。
はっきり言って凄い演奏。音の芯が現代のピアニストと全く違う。この音に彼の不動の信念を感じる。

この「前奏曲、フーガと変奏曲」は元々、オルガン曲として作曲された。
私はこの曲のオリジナルのオルガン演奏を20年くらい前にマリー=クレール・アランの演奏で聴いたが、その時はあまり強い印象を持たなかった。
しかし、後でラザール・レヴィのピアノ演奏を聴いて初めてこの曲の素晴らしさを知った。

作曲者自身もこの曲をピアノに編曲したが、正直、ピアノの方がこの曲の真価を感じられるのではないかと思う。
この曲もフランク特有の循環形式による主題の再現がなされている。
フランクは生涯にわたって教会オルガニストを務めたと言われている。
そしてJ.S.バッハを研究した言われるとおり、その宗教的、禁欲的な作風に対位法の手法が効果的に用いられているのが分かる。

フランクをよく知る人は彼のことを「これ以上ないほど謙遜し、気取りなく、尊敬の情に溢れ、勤勉であった」、「彼は芸術の気品に対する、役割の高貴さに対する、そして音に対して語る際の熱い真摯さに対する絶え間ない配慮(を見せた)。(中略)歓喜と陰鬱、荘厳と神秘、力強さと天衣無縫さ。サント・クロチルド聖堂でのフランクはこれら全てを兼ね備えていた。」と評価していたという(ウィキペディアより)。

全くの推測であるが、フランクという人物は、その人生体験の過程で、あらゆるものの価値を偏ることなく認め、受け入れられるようになるまで精神性を高めた人なのではないかと思うのである。


Anatoly Vedernikov plays Franck "Prelude, Fugue & Variation"
コメント    この記事についてブログを書く
« 音詰まり治った | トップ | YAMAHAのSYNCROOM(シンクル... »

コメントを投稿

ピアノ」カテゴリの最新記事