緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

2013弦楽器フェアに行く

2013-11-03 20:06:42 | ギター
こんにちは。
三連休も半分を過ぎました。
この11月初めの三連休には毎年、弦楽器フェアというイベントが東京北の丸公園内の科学技術館で開かれるのですが、日本国内の弦楽器(ヴァイオリンやチェロを始め、ギター・マンドリン、リュートなど)製作家の楽器が展示され、入場料千円で自由に試奏できるというものです。
私は最終日の今日行きました。前日は割引などで格安のカプセルホテル(1泊600円)に宿泊しました。旅行でなければカプセルホテルがいいですね。ただ耳栓がなければ一睡もできないでしょう。他の人のいびきや、寝相が悪いのか壁を打つドシンという音が朝まで響き渡るので注意が必要です。
今日は開場時間の10時ちょっと過ぎに到着したが、まだ混んでないので今回は殆どの製作家のギターを一通り弾くことができました。







今日は他にも予定があったのでゆっくり試奏する時間がなかったのですが、印象に残った楽器をいくつか紹介することします。
まず一番印象に残ったのは大西潤氏の楽器です。
昨年は出品されていませんでしたが、2年前に初めて出品されているのを弾いてみて、かなり良い感触を得ていました。加納木魂氏に師事したとのことで、派手さはないが高音の透明さに魅力のある楽器です。
前回弾いた時もそうであったが、高音だけが強調されるのではなく、低音、特に6弦の響きはなかなかのものだと思った。ハイポジションの中音域も音の分離が良くされており、試奏した大聖堂第一楽章の中音域が明確に聴こえたのが印象に残る。
ただ13フレット以降の高音の鳴りが今一つなのと、ポジションにより音量に若干差があるのが課題だと思いました。
次に印象に残ったのは井内耕二氏の楽器です。
井内氏のギターを初めて知ったのは、スペインギター音楽コンクールで10年くらい前でしょうか、ある四国の若い方の弾くギターが、この方のコンサート・プログラムで井内氏のものであることが分かった時です。
その後、今は無くなりましが恵比寿のギターショップ・シャコンヌで井内氏の2006年製の楽器を試奏させてもらったことがあります。
この時の印象は、低音、特に6弦がドスンという音で延びが無かったのと、高音が弱かったので先のスペインギター音楽コンクールで聴いたときとのギャップを感じました。
しかし今日弾いた印象では、低音の重厚さはそのままで音に延びが加わり、高音は未だ鳴りにくい面があるものの芯のあるいい音だと思いました。ただ9フレット以降の高音の鳴りが弱く、響きが足りない印象を持ちました。
井内氏は元々アマチュア製作家だったのを数年前にプロに転向したそうですが、年齢からするとかなりの製作暦があるのではないかと思います。
他にもいい楽器だと感じたものもありましたがこの辺でとどめておきます。
今回も製作家が試奏する方のそばで聴いている光景は少なかったと思います。
今回新人製作家と思われる方が何人か出品されておりましたが、何故もっとユーザーの音を聴かないのかと思う。企業でいえば駆け出しの新入社員。こういう場はユーザーの生の声を聞ける最大の機会でもあり、もったいないですね。
ある若い新人製作家の楽器を試奏した後で、この音をもっと出せるようにできれば更によくなりますとか、この弦高では難しい曲は弾けないとか、意見を言おうと思ったら側にいないんですね。私はメーカーに勤めていますが、企業の製品展示会では必ず開発設計担当者が常に待機してお客に熱心に説明するものです。またユーザーの意見にもじっくりと耳を傾けます。ギターの展示会もこうあって欲しいと感じた。製作家はもっと自分の製作物の使われ方やユーザーの客観的評価を知ることにもっと貪欲になってもいいのではないか。
お昼になるとギタリストの鈴木大介氏の展示楽器のミニコンサートが行われました。
今日は8人の製作家の楽器をホールで聴けたが、楽器毎に曲が異なるので各楽器の良さ悪さの判別がしにくかったです。
私はこの弦楽器フェアに1990年頃から行っていますが、昔は同じ曲で弾き比べをしていましたね。鎌田善昭氏がドメニコーニのコユンババを楽器毎に演奏していたのが思い出されます。
また杉材のギターが随分と増えました。半分近くだったと思います。
7,8年前までは日本の製作家で表面板で杉材を使用する方は殆どいなかったですね。ユーザーも松を好むかたが殆どでした。
杉材の楽器は新品でもすぐに鳴りが良いですから、試奏した後の印象度は高いですね。音量もあり気分よく鳴ってくれるので、この楽器はいい楽器だと感じがちです。
しかし注意しなければならないのは、杉の楽器は音質に魅力が出ていないとすぐに飽きてしまうことです。ラミレスのように高音が甘いだけでなく色彩感があるとか、低音が鋼を打ったようにゴーンと響き渡るとか。
松材の楽器は新作時は音が硬く、ミニコンサートではその真価は殆ど分からないですね。実際今日のミニコンサートでは杉材の楽器の方が響きが良く、一番後ろに座っていた私の席でも十分な音量がありましたが、松材の楽器の殆どが音が硬くて十分に楽器が鳴りきっていなかったのは仕方ないことか。
また今回感じたのは、同じ製作家の楽器でも出品した年によりかなり出来不出来があるということです。素材の力を重視する工法を採用する楽器がこのような傾向を示すのではないだろうか。ここに楽器選びの難しさを改めて感じた。
帰りは某大手ショップのブースに立ち寄り、ものすごい値のついていたグレッグ・スモールマンとホセ・ラミレスⅢ世のMT(マリアーノ・テサーノス)マーク入りの楽器を弾かせてもらいました。
スモールマンの響きは伝統的なギターの響きとは全く次元が違いますね。倍音がやたら多くてファンファンという音。人工的な響き。音量は確かに凄いが、音質は魅力がないですね。ジョン・ウィリアムスの音が駄目になった理由がこの楽器を実際に弾いてみて更に分かったように思う。重量は重いが表面板の下半分のものすごく板厚が薄いから取り扱いにも気を使いますね。
その後神保町の古書祭りに立ち寄りました。偶然、若いときに欲しくて買えなかった、最近も読みたいとアマゾンやヤフオクで探していたポーの全集を見つけました(ギターではコシュキンのアッシャー・ワルツの曲の元になったアッシャー家の崩壊などの作品がある)。



今から25年くらい前のサラリーマンになって間もない頃に、神保町の東京堂書店でこの全集を見つけましたが、20代の安月給では値段が高くて(確か1冊1万円近かったと思う)手が出ず、何度か棚から出しては戻してを繰り返した本でした。この本屋に来るたびにこの本を手に取りましたがついにあきらめました。その後何年の経ち、数年前にもしかして未だ売っているかもと思って行ってみたけどなかったです。絶版となったようですね。
今回全3冊で3千円で出されていたのを目にして、すぐに買ってしまいました。
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8 コメント

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Unknown (ごまねこ)
2013-11-04 09:13:46
緑陽さん   わたしも行きました、2日に、逆コース。
行きがけにすぐにニコライ堂のバザーに引っかかって、
ボルシチで腹ごしらえ。美味しかったですよ。
本屋は混んでましたねー晶文堂とか山渓なんか、ワゴンにもちかよれませんでしたよ。
コンサートに遅れじと、買わずに済みました。
川畑さんのバイオリンに感動して、計3ステージも聴いてしまいました。
制作楽器の弾き比べは面白いですね。昨日テレビでやっていた、ストラディバリの音の解析実験もちょうどぴったりの番組で、よかったです。
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こんばんは (緑陽)
2013-11-04 21:37:47
ごまねこさん、こんばんは。
古書まつりのバザーで私もつい食べてしまいました。
スリランカだったか、あっちの方の国の酢が効いたスープ麺でしたが、おいしかったですね。ついでにタンドリーチキンも食べてしまいました。
確かに本屋は混んでいました。一通り見終わったらどっと疲れましたね。
弦楽器フェアのバイオリン・ミニコンサート、今まで一度も聴いたことがないのですが、来年からぜひ聴いてみたい。今年はごまねこさんがいつか紹介して下さったT.A.ヴィタリのシャコンヌも演奏されたようですね。
バイオリンやチェロの展示会の様子などを見ていると、ギターは半分はポピュラー系なんだと感じますね。今回のフェアを見て、クラシック・ギター音楽がバイオリンと同じレベルまで認識されるのはまだまだ程遠いと感じました。
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Unknown (ごまねこ)
2013-11-08 19:13:51
緑陽さん   
ちょっと話は戻りますが、以前、右手の角度の話、ためになったのですが、トレモロの時も基本的には同じく’垂れた’形がいいのでしょうか。いかに脱力するか、が大事だと思っているのですが・・・緑陽サンの見解、おねがいします。
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こんばんは (緑陽)
2013-11-09 00:55:08
ごまねこさん、こんばんは。
いつもコメントありがとうございます。
トレモロで弾く際の右手の角度ですが、自然に垂れた形がベストです。力を抜いて重力に従うと右指の角度は弦に対しほぼ垂直になります。
トレモロだけでなく、他の全てのタッチも同じです。
弦に対して斜め45度の角度にすると、その角度を維持するために右手に力が入ります。この角度でトレモロをしようとすると、右手の人差し指が弦まで届きにくくなるため、人差し指だけがピンと伸びた状態になり、とても不自然なタッチとなります。
この45度の角度でトレモロをやると確実に指を痛めると思います。
力を抜いて垂れた状態でゆっくりと、p→a→m→iの順に、各指の音の長さを等間隔で弾くことを意識して練習すると飛躍的に上達することは間違いないと思っています。p→a→m→iを「等間隔」で最初はゆっくり、少しずつ速度を上げていくと良いと思います。各指の4つの音の長さを「等間隔」にすることがポイントです。
参考になれば嬉しいですね。
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Unknown (ごまねこ)
2013-11-09 23:42:27
早速にありがとうございます、トレモロが安定しなくて、ああでもない、こうでもないとまさに試行錯誤。じぶんで探ってゆくのも勉強なのですがね。

さて今日は新宿・オペラシティギャラリーで、五線譜に描いた夢という展示をみてきました。日本での西洋音楽の黎明期を伝えているのですが、象徴的な楽曲をヘッドフォンで聞けるのですが、なかでも国産ピアニスト第一号の、久野ひさの月光を聴けたのが、一番の収穫でした。

久野ひさについては中村紘子さんの著書に詳しいのですが、こんなだったんだーと感無量でした。

それと、入場者には解説つきのミニコンサートもあり、
楽しかったですよ。HPみてね。

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こんばんは (緑陽)
2013-11-10 01:10:51
ごまねこさん、こんばんは。
つい夜更かしをしてしまっています。
ごまねこさんの音楽に対する探究心はすごいと思います。
コメントにありました久野ひさについては、留学先で勉強に行きづまったのか自ら命を絶った悲劇のピアニストですよね。以前実家近くの図書館で読んだ本で彼女のことを知りましたが、月光の録音は未だ聴いていません。CDはあるが確か値段の高い全集ものの中に入っていたような気がします。
ごまねこさんが行かれたオペラシティギャラリーでの展示会、まだやっているとしたら是非行きたいと思います。
また何か情報がありましたらお聞かせ下さい。
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Unknown (ごまねこ)
2013-11-11 23:27:18
もしも古楽曲・リュートとかマンドリン系に興味ありましたら、オペラシティ内の近江楽堂のイベント、見てごらんなさい、若手奏者の発表の場であったり、新しい試みの曲もあって、そちらの情報も詳しくなります。
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こんばんは (緑陽)
2013-11-12 23:04:17
ごまねこさん、こんばんは。
近江楽堂ですが、かなり前にギター製作家の故・野辺正二さんの楽器を使用したコンサートが開かれるという話を聞き、行ってみたら、あれ?ホールに誰もいない、よく確認したら開催日を勘違いしていたなんてことがありましたね。
私はマンドリン音楽(といってもオーケストラ曲が主ですが)にも興味があるので、アンテナを張っておこうと思います。
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