昨日(4日)、東京三鷹の武蔵野市民文化会館大ホールで社会人マンドリンクラブの定期演奏会があった。
終演後、打ち上げに参加し、帰宅したのは夜中の12時を回っていた。
次の日はどうしても外せない仕事があったので、睡眠時間はわずか3時間弱ではあったが、今朝目覚めて通勤電車の車内や会社に到着するまでの意識は、久しく経験していなかったような感覚、全然眠くなく、冴えわたったような、電車の窓から吹いてくる風が肌に当たっているだけでも気持ちがすっきりとするような感覚だったので、自分でも「何で?」と思ったくらいだ。
いつもは朝起きてもすぐに睡魔に襲われ、体はだるく、通勤時間はずっと半分寝ているのに(仕事中も睡魔に襲われています)。
こういう感覚って、思い出せるのは小学生のときの夏休みに朝早く起きてラジオ体操に行ったときや、中学時代に朝刊を配り終えたときの朝日が昇り始めた帰り道だったり、学生時代、札幌の某大学とジョイントコンサートの練習のために朝早く起きて、超おんぼろアパートの朝のわずかの時間しか太陽が差し込まないその時間に、窓から見える港の風景見ていた時とか、数えるほどしかない。
今回の演奏会を振り返ってみると、私自身のことで恐縮ではあるが、正直に言わせてもらうと最後の最後まで不安と恐怖との闘いに明け暮れた半年間であった。
今回の曲目の中で、途中でギター2台のみ弾く箇所のある曲があったのだが、セカンドパートを弾くという貴重な機会を与えていただいた。
合奏の中でこのような形態で弾くという体験は初めてであったが期待もあった。しかしいざ合奏練習でこの部分を弾いてみると思いもよらず過度の緊張で意識が飛びそうになったり、手が震えてしまうという状態になってしまうことに直面してしまった。
技術的には難しくなく、独りで練習するときは全然問題なく弾けるのに、大勢の人前で弾くと普段通りに弾けなくなってしまうというものだった。
合奏練習の大半はこの箇所で緊張に襲われなないかどうか、そのことに意識が支配される状態で、忍び寄るような、その場面が近づくにつれて刻々と増大する不安との闘いに消耗する日々が続いた。
しかしある時、この状態って「自分のことしか考えてない」、「自分が失敗せずに恥をかかずに、上手く弾いて、いい思いをしたいと」という気持ちの表れではないかと気づいた。
つまり合奏を演奏するという基本を全く忘れてしまっていたのである。
そこで他のパートの音、譜面に記載されていることに意識を集中させるようにした。
またこの部分の練習回数は相当なものになっていた(数千回というレベル)。
またあがり症の専門家にも相談してアドバイスも求めた。
それでもしぶとくくらいついてくるような不安を拭い去ることができずに本番を迎えた。
しかし最後の2小節だけはどんなことが起きても死守する覚悟で臨んだ。
本番がどういう状態であったかを書くことはよそう。
今そんなことをあれこれこうすればよかったなどと思ってみてもどうしようもないことだ。
全ての演奏が終わったとき、後悔や悔しさの感情が無かったと言えばうそになるが、不思議と安堵感に包まれるような感覚がした。
そして意外なことに、一部が終わって退席する途中に舞台上で「良かったよ」と言ってくれたり、会場のロビーでの反省会で思いもよらず発言する機会を与えて下さったり、私の発言に対し肯定的に受け止めるよう励ましてくれたり、打ち上げでも多くの方から労をねぎらう言葉をいただいた。
これは全く考えてもいなかったことであった(失敗したら逆に冷たい反応をさせるかと思い、打ち上げは申し訳ないけどパスすることも考えていた)。
このことに対してはものすごく感謝している。
数年前まで長い間仕事以外の人間関係を断っていただけに、人に対する見方にかなりのひずみを抱えて生きてきたことを思い知らされる体験でもあった。
人と親しくできる力を回復できるのは、心理療法などではなく、実はこういう人間関係の中でしか実現できないのではないかという気がする。
結局、恐怖症などを何人もの専門家に診てもらっても解決できないというのは、こういう実体験が得られないからなのだろう。
(もっと早くからこういう人間関係を持てたらとも思ったけど、10年前、20年前の自分の状態ではできただろうか。今の状態だから可能なのだという気もしないでもない)
今回の演奏会は、音楽面というよりも心理面でに悩み、考え抜き、試行錯誤をした中で、結果がどうあれ、自分にとっては精神的成長に非常に得難い体験となったことは間違いない。
その意味では、いい演奏会を体験できたという感じ方を少なからず持てている。
そして普段の恐怖のみならず、演奏時の恐怖とどう向き合うか、ということについて今回の体験で得たものを別の機会に記事にしたいと思う。
さてこれからどうするかだ。
9月の終わりに未消化の計画年休3日間と休日をくっつけて、またローカル線の旅に出かけるつもりだ。
山陰地方の昨年乗らなかった路線がいつくかあるので、そこにしようかなと思っている。
来年母校マンドリンクラブの55周年記念演奏会があり参加するので、そっちの方の練習も始めなければならない。
あとは独奏曲、アンダルーサやアルハンブラだけだとマンネリだから、練習しかけのアラビア風奇想曲やヴィラ・ロボスの前奏曲第1番を完成させて寝る前の1曲シリーズのローテーションに加えられるようにしたい。