緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

2018年(第61回)東京国際ギターコンクールを聴く

2018-12-02 23:06:00 | ギター
今日(2日)、東京代々木の白寿ホールで第61回東京国際ギター音楽コンクールが開催された。
このコンクールを聴くようになってから、20年くらいになるが、各年の優勝者がその後クラシック音楽界で頭角を現し、音楽ファンであれば誰もがその存在を知るほどの演奏家になったということは聞いたことがない。

このコンクールの特色は課題曲が邦人作曲家の作品であること。
また自由曲に下記の3つの時代条件が付けられていることだ。
・ルネッサンス、バロック期の作品
・1750年頃より1920年頃の作品
・1920年以降の作品

今年の課題曲は、武満徹作曲の「森のなかで」より、1.ウェインスコット・ポンド〜コーネリア フォスの絵画から、と 3.ミュアー・ウッズ(2.はローズデール)。

北米の3つの森をテーマにした、独立した3つの作品から成り、それぞれジョン・ウィリアムス、荘村清志、ジュリアン・ブリームに献呈され、武満徹の最後の曲だと言われている。
技巧的にはそれほど難しくないが、聴き手を飽きさせない表現力が求められる。

さて今年の本選出場者は全て外国人。
レベルは例年並みだったと思う。
しかし審査結果は意外にも「1位:該当なし」だった。
理由は、例年の実績と比較して、1位に相当するレベルの奏者が今年はいなかったとのこと。
技巧的は今年も例年に劣らずハイレベルだったと思うが、音楽表現力に物足りなさがあったと思われる。

審査結果は以下のとおり(カッコ内は私が付けた順位)。

1.Kristina Varlid(ノルウェー):7位(4位)
2.Armen Doneyan(フランス):6位(2位)
3.Damiano Pisanello(スイス):6位(5位)
4.Ji Hyung Park(韓国):4位(1位)
5.Gian Marco Ciampa(イタリア):2位(6位)
6.Carlotta Dalia(イタリア):3位(3位)

4位の韓国の出場者は、楽器をフルに鳴らしており、非常に強く芯のある音が出ており、今までこのコンクールで聴いた出場者の中では最もダイナミックな音だった。
自由曲のテデスコのソナタ第1楽章出だしでいきなりポジション間違いで弾き直ししたことが大きな減点となったと思われる。
また音楽表現も力みの入った雑な面も散見された。

2位の奏者は技巧的には突出して高いレベルを感じなかったが、音色の変化に乏しく音楽的にも大きなインパクトは感じなかかったが、ミスが殆ど無く、力みの無い堅実でまとまった演奏ではあったと思う。

今回6位と下位に終わったが、フランスの出場者の演奏姿勢と技巧の安定した正確性には学ぶべきものが多かった。
楽器が殆ど揺れず、終始安定した楽器の構え。そのことがあれほどのテクニックを維持させているのだと思う。
選曲もバランスが取れていた。
テクニックはそのまま、音楽表現をもっと研究すれば一流の奏者になれるのではないかと思った。
(今日の音楽表現も他の奏者に比べ不足しているとは感じなかったが。音が単調で地味だと判断されたか?)

今回のコンクールで電子チェーナーを使用しているを初めて見た。
最高位の2位の方と3位の方だったが、国際コンクールでもいよいよ目で見て音合わせする時代に入ったと感じた。
これはちょっと情けなく思うが、2位の方の調弦はとても国際コンクールに出場するようなレベルには見えなかった。

今年もそうであったが、将来巨匠になることを予感させる奏者に出会うことが出来なかった。
白熱した手に汗を握るような競演も感じられなかった。
正直つまらなかったというのが本音。
また本選自由曲にバリオスや、ソルのグランソロのようなアマチュアの人気曲を選出していた方がいたが、このような曲は国際コンクールでは聴きたくないのが正直なところ。
どうせなら、むしろもっと難解な現代音楽を聴かせて欲しい。

コメント