緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

合唱曲「風に寄せて その1」を聴く

2016-04-23 22:52:47 | 合唱
シンプルであるが、いい合唱曲に出会った。
「風に寄せて その1」(作詞:立原道造、作曲:尾形敏幸)である。
平成5年度のNHK全国学校音楽コンクール(Nコン)全国大会での福島県立安積女子高等学校の演奏録音で聴いた。
フランスのエスプリを感じさせるようなピアノの分散和音の前奏で始まるが、主題に入るとそれはまさしく日本の風景の素朴な美しさを唄う音楽が聴こえてきた。
季節は新緑の頃であろうか。
しかし詩と曲がこれほどマッチングした歌は少ない。
さわやかであるが、とても深く心に響いてくる。
和声の使い方や曲の展開が変化に富んでいるからだ。
詩に現れる作者の心情の変化や、繊細な気持ちを良く曲に表していると思う。
とても難しい作業だと思うが、この曲を聴くと、人の気持ちを音楽として作り上げることが、こんなに凄いことなのかと驚く
この曲は、この立原道造の詩を読んで感じた気持ちをそのままに音楽にしたものだと思う。
こういう曲はシンプルであるが、シンプルであるが故になかなか作れるものではない。
「みんな 風のそよぎばかり」と「小川はものをおし流す」の間に流れるフレーズは、昔どこかで聴いたことがある。しかしそれが何であったか思い出せない。

安積女子高等学校の演奏はとても繊細な表現でありながら、強い感情が伝わってくる。
弱い歌声でも聴く者に、強い感情を湧き起こさせる。
ここが素晴らしいのである。
パワーあふれる歌声であれば人を感動させられるというのは間違い。
均一な揃った声で隙のない演奏であれば素晴らしいというのは間違い。
高校生らしい歌声でいい。
演奏者たちに、純粋な本当の気持ちがあるかどうか、なのではないか。
この曲や詩に託された気持ちに真に同化しているかどうか、なのではないか。

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