晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

乙川優三郎 『五年の梅』

2018-05-04 | 日本人作家 あ
時代小説に限らず、この作家さんの作品を読むのにちょうど
よい季節というのがあるような気がしまして、まあ分かり易
い例えでいうなら、ホラー系は夏、じっくり読ませる長編は
秋といったもので、乙川優三郎さんはズバリ「冬」ですね。

この投稿が5月のはじめ、まあ今年は異常気象で4月の時点
で夏日連発とすでに初夏を通り越してしまったようですが、
読むんだったらもう1~2ヵ月ぐらい前ぐらいだったら良か
ったなあなどと今さらなことを書きつくればあやしうものこ
そぐるほしけれ、ですよ。

そんな与太話はさておき、この『五年の梅』は、山本周五郎
賞を受賞したそうです。
山本周五郎も読むのは冬がいいですね。

どこかで雨宿りをしている矢之吉とおふじという男女。しか
し悪態をつきあっています。矢之吉はもともと店の手代で、
おふじは小料理屋の女給。矢之吉はおふじに入れ揚げてしま
い、とうとう店の金を盗んで逃げ・・・という「後瀬の花」。

小間物問屋の女将、おさいは、宴会の帰り、幼なじみの清太
郎に会います。おさいはかつて職人の父と二人暮らしで、清
太郎とは近所付き合いをしていました。ところが父が急死、
おさいは引っ越します。久しぶりに再会した清太郎は「あの
時、私はおさいさんのことが・・・」という「行き道」。

裏店に住む鹿蔵とおつねの夫婦。鹿蔵は一応は職人ですが、
なにかというと「気に入らねえ」といって仕事をせず夫婦は
貧乏。ふたりには政吉という子がいたのですが政吉は父に愛
想を尽かして家出します。それから10年、とうとうおつね
の我慢も限界に達し、鹿蔵を置いて家出を・・・という「小
田原鰹」。

三度目の嫁ぎ先の家に向かう志乃。志乃は藩家老の妾の子で、
養家から「あなたはうちの子ではない」と突き付けられてか
らそれこそ(たらい回し)のように嫁いでは離縁を繰り返し、
そして三件目の婚家は十俵二人扶持という柔術師範の岡本岡
太という男。さて、嫁いだ晩、岡太が夕飯に出したのは茹で
た蟹。武家の娘が食べるようなものではないのですが食べて
みると案外美味しく・・・という「蟹」。

村上助乃丞は、友人の矢野藤九郎を心配しています。という
のも矢野は藩の台所奉行なのですが、藩主のお殿様が食事を
しないことに藩内から「台所方が悪い」と責任を取らされそ
うになって、日夜、献立を考えています。村上は矢野の妹と
恋仲でしたが、ある日、村上は一方的に「妹と別れたい」と
言い出します。すると後日、矢野の耳に、藩の近習役の村上
が殿に「病気でもないのに食べないことで藩にどれだけ迷惑
をかけてるか分かってるのか」と言い放ち、寺に蟄居の処分
を下され・・・という「五年の梅」。

江戸時代は、島原の乱を最後に大きい戦争(小規模の反乱は
あったでしょうが)が200年以上も無かった、世界史的に
も稀な時代でして、まあこれを「平和」と捉えてもいいので
しょうが、徳川将軍家を頂点とした徹底的な封建社会で、当
然ながら一般市民に「自由」などなく、当時の庶民の暮らし
は果たしてハッピーだったのかは分かりません。
とはいえ、どうせ生まれてきたからには笑って死にたいのは
いつの世も同じでしょうから、限界下でも幸せを見出そうと
庶民は努力をしていたのでしょう。
ということを読み終わって考えさせられました。
コメント
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