晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

篠田節子 『ゴサインタン-神の座-』

2014-05-13 | 日本人作家 さ
篠田節子の作品は直木賞受賞作の「女たちのジハード」を読んで面白いなあと
いうことで、その後いくつか読んだんですけど、宗教とかそういう話のやつで、
なんか「重いなあ」と思って、それから読まずにいました。

が、山本周五郎賞の過去の受賞作を調べてたら、この『ゴサインタン』があった
ので、ちょっと気になってはいたのですが、文庫で600ページ超、しかも裏表紙
のあらすじを読むと、またまた「重いなあ」と。

まあでも山本周五郎賞は今まで読んでハズレは無い。ということで読んでみました。

東京近郊で実家の農業を継いでいる結木輝和。家は地元では旧家・名家として
知られています。父は病気で寝たきりになり、母はその介護に、40歳になる
輝和は今まで40回以上お見合いをしてきましたが全部失敗、いよいよ業者に
頼んで外国人とお見合いをすることに。

そこで出会ったのが、ネパール人のカルバナ。母も彼女を気に入ったようで、
いちおうお見合いは成立ということで、家に連れてきます。

「これから彼女を日本人の嫁として育てる」と母は意気込みます。輝和もカルバナ
のことを”淑子”と呼ぶことに。しかしこの名前は輝和の過去に好きだった女の子
の名前。

日本食が口に合わないようで、しかも環境の変化やその他もろもろで心身に異変が
現れ、”淑子”はとうとう入院することに。

やがて、輝和の周囲で奇妙なことが起こりはじめます。

父が死に、そして母も死に、久しぶりに再開した淑子(こっちは輝和の好きだった人)
も交通事故で死に、それだけではなく、日本語がまったく上達しない”淑子”は
ある日突然、流暢な日本語で話したりします。

それから”淑子”は、だんだんと奇妙なことになっていきます。結木家の所有
していた貸家を勝手に人にあげたり、預金を勝手に下ろして人に配ったり。
どうやら、結木家の資産を全部無くしてしまおうとしています。

病気を治したり、お金を無保証無担保で貸したり(実質あげてる)しているので、
神のように崇める人も出てきて、宗教じみてきます。

そしてとうとう実家の土地も売ってしまった輝和は住むところが無くなってしまい、
山小屋で凍えているところを、かつて結木家の貸家に住んでいた女性が助けます。

輝和と、”淑子”を慕う何人かは、狭い家に暮らしはじめ、輝和は林業をはじめ、
間伐材で小屋を建て、養鶏をはじめ、鶏ふんで野菜を作りはじめます。

ところがある日突然”淑子”は消えてしまったのです。
どうやらネパールに帰ったらしく、輝和は妻を探しにネパールへと旅立ち・・・

「ゴサインタン」とはカルバナこと”淑子”の出身地で、「神の住む地」という意味
なのですが、別の言葉では「牛も作物も育たない場所」と呼ばれている辺境の地。

土地に縛られたように身動きが取れなくて、結木家を継いで農業をやっていることに
まったく希望を見出せない輝和。覇気がありません。
「日本の女はダメだ」と決め付け外国人と結婚するも妻に日本人名を勝手につけます。
しかも前に好きだった人の名前を。うーん、最低。

ネパールの格差、貧富、男尊女卑などにも触れていて、考えさせられます。

コメント
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