晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

藤本ひとみ 『聖アントニウスの夜』

2009-01-09 | 日本人作家 は
本を手に取り、表紙の絵を見ると、なにやら妖しげ。
そして、各章の題名が、これまたどれもおだやかではない。

舞台はフランス、18世紀の革命あたりの時代の話。
市民の貴族や僧侶に対する腐敗に堪忍袋の尾が切れる寸前で、
そんな中、ある地方都市で連続幼女殺人事件が発生。

市民は、権力の手飼いである警察には非協力的。
それどころか、明日のパンすらありつける確約の無い毎日では、
他人の不幸や他所の出来事など気にする心の余裕が持てない。

最終的に警察は事件を解決、見事犯人を挙げるのですが、
その犯人の背景は、日々の鬱屈した生活の憤懣がたまたま事件に
結びついたというだけで、一歩間違えば当時の市民は、だれでも
悪事に染まるような状態。

警察は早期犯人検挙のために、悪党を捜査に協力させるのですが、
その悪党も、こういう言葉は好きではないですが「時代のせい」
で悪の道に入ったような年端もいかない少年。

良い小説です。時代考証がしっかりしていて、人物も背景もていねいです。
願わくば、心の余裕のあるときに読むといいものです。
今の日本、いや世界じゅうが、この時代に似たり寄ったりですからね。

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