晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

伊坂幸太郎 『ゴールデンスランバー』

2011-06-16 | 日本人作家 あ
伊坂幸太郎の作品を読むのはこれで2作目、1作目は
「重力ピエロ」で、なんだか全体がよくつかめないまま
読み終わったというか(決してつまらなかったというわ
けではありません)、テーマは重くて陰惨なのに、筆の
タッチがふわっとしていて、物語と読者の“距離”が
近すぎず遠すぎず、といいますか。

で、この『ゴールデンスランバー』ですが、2008年本屋
大賞受賞、山本周五郎賞受賞、「このミステリーがすごい!
2008」国内小説1位と、この年の獲れる賞はあらかた受賞
(直木賞は辞退したと記憶していますが)した、まあスゴイ
作品です。

タイトルはビートルズのアルバム「アビー・ロード」に収録
されている、後半のメドレーの1曲で、その歌詞の内容が
物語にいい具合に味付けされていますね。

仙台出身の金田総理が仙台市内をパレード。そのときに、
1機のラジコンヘリが総理の乗る車に近づいて爆発。総理
が殺害されるという大事件が起こります。

市内は厳戒態勢が敷かれ、警察はすぐに容疑者を割り出し
ます。その容疑者とは青柳雅春という、元運送会社で働いて
いた男で、かつて、仙台市内で某アイドルを暴漢から助けた
ことで一躍ヒーローになったという経歴の男。

何がどうなってどういう経緯で総理大臣を殺そうと思い至った
のかわからないまま、マスコミは青柳雅晴の過去に取材した
VTRをたれ流します。青柳は逃亡中に車を爆破、一般市民を
傷つけ、といった警察の発表。

とうとう、青柳本人から電話があり、早朝に市内の公園に姿を
現すと投降の意思を警察に伝えます・・・

しかし、この話を浮き彫りにしていけばいくほど首を傾げる部分
が多く、総理が殺害された後に、青柳の情報提供者や証言者、また
総理の周りの関係者などが相次いで謎の死を遂げ、また事件当時、
陣頭指揮を執っていた警視庁の幹部はその後山奥に引っ込んだまま、
真相を知るには青柳に聞くのがいいのですが、墓石に語りかける
のみ。

ここから、青柳がどうやってこの事件に“巻き込まれていった”
のか、という話に。
権力、それに追随するマスコミ、それを鵜呑みにする国民が恐ろ
しくもあり愚かでもある。

日々の習慣と信頼、というキーワードが、八方塞がりの青柳を救い
ます。
それにしても、人物描写、情景描写、伏線のはりかた、どれをとって
も素晴らしく、とても読みやすい、のですが、先述したとおり、物語
と読者との距離があり、容易に主人公に感情移入させてくれません。

しかし、これまた先述したとおり、だからといってつまらなかった
ということは全くないのですけれど。

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2 コメント

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トラバ (こに)
2011-06-16 18:16:26
送ろうと思ったのですが記事がありませんでした
ありきたりの感想しか持てなかったので記事にはしなかったみたいです
面白かったです、しかし映画のほうが印象に残ってます
返信する
Unknown (ロビタ)
2011-06-18 11:15:05
こにさん>

コメントありがとうございます!

いろいろ他の感想などを見てみると、映画のほうが
評価が高いですね

僕は観てないのですが、公開前にテレビで宣伝を
やりまくっていたので、主演は堺雅人、ということ
だけは知っていて、読んでいて顔がチラついてきま
した
返信する

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