晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『日本橋本石町やさぐれ長屋』

2022-03-26 | 日本人作家 あ

我が家からちょっと離れたところに毎年春先にふきのとうが採れる空き地があるのですが、2年前でしたか、その空き地に隣接している長らく誰も住んでなかった家に新しい人が引っ越してきて、庭の植え込みや生け垣をキレイサッパリ伐採して大量の枝や幹をふきのとうが生えてくるあたりにドサドサ置いたので収穫ができず、かといって文句言うわけにもいかず、去年は収穫できませんでした。ですが、去年そこの家の人が引っ越したらしく枝や幹が片付けられていて、今年はどうかなと思いながら探したら少ないですが収穫できました。とりあえず天ぷらにしてあっという間に平らげました。もっといっぱいあればふき味噌でも作ろうかと。

春ですね。

さて、この作品は宇江佐真理さんが亡くなる少し前に出版されました。

「東京」の現代では日本銀行がある辺りの日本橋本石町。そこに「弥三郎店」という名の裏長屋があって、語呂合わせで「やさぐれ長屋」と言われてブチギレしたのが弥三郎店に住む大工の鉄五郎。ちなみに鉄五郎はひとり暮らし。つまり独身。

ある日の夕暮れ時、お寺の鐘の音が聞こえてきて、鉄五郎は立ち止まって聞き入っていますと、笑い声が。その笑い声は「旭屋」というたばこ屋の中から聞こえて、店を見るとまだ十七、八の若い娘。おかしいな、旭屋は四十代半ばの夫婦と年寄りの刻み職人だけしかいないはず。「時の鐘がそんなに好きなのか」と言われてカチンときた鉄五郎は「うるせえ」とやり返します。そんなことがあって井筒屋という行きつけの飲み屋に行ってその話をしたら他の客が「あの娘はよしといたほうがいい」というのですが・・・という「時の鐘」。

弥三郎店に住む(おすぎ)は母の(おまさ)とふたり暮らし。おすぎは夜に井筒屋で手伝いをしているのですが、同じ店子の喜助という左官職人がやって来ます。喜助も母親とふたり暮らしなのですが、「お互い大変ですね」とあくまで客と店員としての会話をしただけなのですが、何をどう勘違いしたのか、喜助はおすぎとそのうち一緒になって自分の母親も面倒を見てくれると近所の人に言っているようで・・・という「みそはぎ」。

弥三郎店に住む(おとき)は錺職人の亭主とふたりの子の四人暮らし。ところが最近、亭主が帰って来ません。忙しい時は親方の家に泊まって仕事をすることもあるのですが、それにしてもおかしいと親方の家に行くと「変だねえ、茂吉さん(おときの亭主)は毎日仕事が終わると帰ってるけど」というので、おときは女の勘で(よそに女がいる)と・・・という「青物茹でて、お魚焼いて」。

第一話「時の鐘」のネタバレですが、鉄五郎は旭屋にいた若い娘と結婚します。その後の話。鉄五郎の女房(おやす)は、家にねずみが出ると鉄五郎に相談します。じつはおやすはねずみが大の苦手。日常生活に支障をきたすレベル。石見銀山を買ってきても効果はなく、ノイローゼ気味になっていたとき、弥三郎店に新しい店子がやって来るという話が。若い夫婦で亭主は駕籠舁き。おやすはその若夫婦に相談をしていろいろ協力してくれます。が、他の住人から、あの若夫婦の旦那は元罪人だと聞いて・・・という「嫁が君」。

弥三郎店に住む(おすが)という独り暮らしの婆さんの家に若者が泊まっています。若者は芝居茶屋の主人の息子で、おすがはその茶屋に女中奉公していました。幸助というこの若者は今は魚市場で働いているというのですが、茶屋の跡取りがなぜ家を出て魚市場で働いているのか気になったおやすは芝居茶屋に行って幸助の父親に会って話を聞くのですが・・・という「葺屋町の旦那」。

弥三郎店にショッキングな話が。隣の町医者が弥三郎店の土地を買って診療所を拡大しようとしているという噂話が。ちょうどその時、差配人から話があるので店子全員集まってくれというので話を聞くと長屋がだいぶガタがきているので建て直しをするから二、三カ月の間は他で仮住まいをしてほしいというのですが、「とぼけるな!」と店子たちは色めき立ち・・・という「店立て騒動」。

「髪結い伊三次」シリーズは捕物帳なので中には「やりきれない」話もありますが、今まで読んだその他のたいていはハートウォーミングな話です。江戸時代は現代とは比べ物にならないほど不便で、だからこそ人と人との繋がりを大事にしなければ生きていけなかったのでしょう。現代はそりゃあ便利な世の中になったでしょうが、結局のところ人間そのものは変わってないので「人と人との繋がり」はおろそかにしてはいけませんね、と教えられたような気がします。


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