晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

レイチェル・カーソン 『沈黙の春』

2020-05-06 | 海外作家 カ
こんなご時世ということで、本を読む(読むことが出来る)というのは、時間的にも金銭的にも、そして精神的にもある程度の余裕がないと難しいんだなということが分かりました。

書評ブログで私的な話で恐縮ですが、外出や移動の自粛・休業要請などありますが、一応、業種としては(エッセンシャルワーカー)の部類に入るのでしょう、仕事は減ることもなく、いやむしろ忙しくなっていまして、そんな中にあって読書は貴重な(息抜きタイム)としてありがたい存在ではあります。

そう、息抜きの為に読むはずだったのですが、まあエライ作品に手を出してしまいました・・・

この作品は1962年に発表されたもので、今回読んだのは新装版。旧国名や地名などに(現どこそこ)といったように入っています。

殺虫剤や除草剤、いわゆる農薬(化学薬品)を使って、環境にどのような影響が出たのか、世界中の具体例を挙げて、はたしてわれわれはこのままで良いのか?という警鐘、といったのがこの作品の全体像。
戦後まもなく、シラミやノミの駆除ということでGHQが日本の子どもに頭からDDTをぶっかけている白黒の記録映像がありますが、今にして考えるととても恐ろしいですね。

「害虫」や「害鳥」といったように、人間にとってなにかしら困る存在だからといって、それが地球全体にとっての「害」であるはずはありません。
例えばプレーリードッグ。北アメリカ大陸に生息するげっ歯目で、地面に穴を掘って生活をしています。そこに、ヨーロッパから入植者がやって来て、牛を飼いはじめたり、畑で野菜を作ろうとしますが、牧場のあちこちにあるプレーリードッグの掘った穴に牛が足を突っ込んで骨折するといった(事故)が起き、また畑を荒らしてしまうといった(被害)があって、怒った入植者たちはプレーリードッグを毒薬で殺しました。するとプレーリードッグが食べていた虫が繁殖して牧場の草を食べ、それまでプレーリードッグを捕まえていたキツネやワシなどは他の草食動物を襲いさらに虫が繁殖し、結果、アメリカの西部は不毛地帯になってしまいました。
シカを守ろうとオオカミを駆除したらシカの個体数が増えすぎて逆にシカが自然破壊の害獣になっちゃった、ビーバーがダムを作って家が浸水してしまったので駆除したら大洪水が起きて家の浸水どころじゃなくなっちゃった、なんて話はよくあること。

広大な土地で1種類の植物(麦やコメ、トウモロコシなど)を作ったりすると、それらを食べる虫が大量発生する。
よく考えたら「その通り」なんですよね。

殺虫剤である虫を駆除しようとしても、次か次の次の世代で(殺虫剤で死なない)という虫が出てきます。つまり環境に適応するものが生き残る「適者生存」でありまた「自然淘汰」でもあります。すると人間はさらに強力な殺虫剤を作ります。たしかにその世代の虫には効果的です。しかし、すると虫だけでなく魚や鳥、小動物といった他の生き物にも影響が出ます。そして最終的にはもちろん人間にも。

その昔。アフリカで、現地の部族が飼っている牛がライオンに襲われているのを部族はただ見ているだけだったのを、ヨーロッパ人は部族の長老に「なんでライオンを殺さないんだ」と聞いたそうです。すると長老が「そんなことをしたら他の草を食べる動物が減らなくなってこの周りの草が減ってうちらの飼っている牛が死んでしまうではないか」と答えたそうな。
なにを当たり前なことを、と思うでしょうが、人間は目先の利益や手っ取り早いラクな方法を取ってしまうものです。

読み終わって、結局、人間が地球にとっていちばんの「害獣」だよな、と思ってしまいました。
コメント
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