晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『牡丹酒』

2012-09-16 | 日本人作家 や
この作品は「深川黄表紙掛取り帖」の第2弾で、江戸の深川に住む、定斎(夏バテ
の特効薬)売りの蔵秀、女性絵師の雅乃、文師の辰次郎、飾り行灯師の宗佑、この
4人が、スパイ大作戦というか、”裏稼業”(殺しではありません)をやって、
それが痛快で、なんと当時のスーパースター、紀伊国屋文左衛門とも渡り合って、
最終的に、将軍側用人の柳沢吉保の耳にも入るのです。

今回は、土佐での話からはじまります。山師である蔵秀の父、雄之助は、木材の
買い付けに」土佐へ赴き、そこで、灘の酒に勝るとも劣らない「司牡丹」という
辛口の酒を気に入って、ぜひこれを江戸で売りたいと、江戸に帰った雄之助は、
息子たちに話します。

酒は船で運ぶことになるので、それについて蔵秀たちは紀伊国屋文左衛門に相談。
司牡丹を飲んだ紀文は、これなら売れると気に入って、柳沢吉保にも飲んでもらう
ことになり、吉保も大いに気に入って、「ひとに媚びない、生一本な味」と絶賛。
さらに、酒のアテに出た鰹の塩辛も美味い美味いと気に入って、これはまるで
酒をわきに追いやるほど、すなわち酒を盗む、「酒盗」と命名します。

さっそく、大坂から江戸まで廻船を確保するため、大坂へ向かう4人。しかし、その
4人を追う男が・・・

この男、前作で4人組に酷い目にあわされた、品川の悪商人親子の差金だったのです。
しかし、ケチな商人はたいした金を持たせてくれず、焼津から船で大坂へ向かってしま
った4人を追うことができません。

そんなこんなで、大坂から船で土佐に着いた4人。土佐では、蔵元のために飾り行灯を
作成し、その出来栄えの素晴らしさに土佐の人たちは感嘆。

母と小さい息子のいる宿屋があって、4人はそこに泊まります。息子の金太の父親は
江戸に出たきり消息不明となっているのです。
しかし金太は、年齢的に父親に近い宗佑になついて、ふたりはまるで父子のように仲
良くなります。あとでお別れになるのですがこのエピソードはジーンときますね。

ところで、この「司牡丹」というお酒ですが、土佐藩初代の山内一豊が掛川から土佐に
移ってきたときに一緒に来た酒造で、現在も営業しているということで創業は400年。
坂本龍馬とも縁があるとか。

それまで公儀(江戸幕府)から「土佐いじめ」といわれるほど過酷な任務を命令されてきた
のを、柳沢吉保は司牡丹を飲んで、こんな生一本な酒を作る土佐の人たちは、そんなに悪い
人たちじゃないんじゃない?ということで、土佐藩への締め付けを緩めることに。

今回の話は”裏稼業”というよりは、商社みたいなはたらきですね。


コメント
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