晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

アーサー・ヘイリー 『権力者たち』

2012-09-13 | 海外作家 ア
「この作家の本を読めば”おりこう”になった気がする」といえば、勝手に
挙げさせてもらうと、ジェフリー・アーチャーと、アーサー・ヘイリー。
ジェフリー・アーチャーはエンタテインメント的な作品もありますが、アー
サー・ヘイリーは今まで読んだ作品はどれも経済小説。

で、この『権力者たち』は、政治小説。舞台はカナダとなっています。

カナダ首相、ジェームス・ハウデンは、米ソの冷戦(この作品が発表された
のが1962年)が、いよいよ一触即発か、という状態で、地理的にこの両国に
挟まれていて、もし核戦争が起こったら、死の灰がカナダ国内に降り注いで
しまう・・・と危機感をつのらせます。

そこで、アメリカ大統領から、ある”協定”に関する首脳会談が提案されて、
ハウデンはワシントンへ。
その協定とは「統合法」というもので、ひらたくいうと「有事には国境を無視
して、米軍は自由にカナダに入ってミサイルなど配備できますよ」というもの。

しかし、野党の反対は必至で、さらに与党内でも反対が予想され、カナダ独立
以来デリケートな問題として、カナダ系住民との問題もあって、ハウデンとしては
統合法の成立に信念を持っていますが、一筋縄ではいかなそう。

そこにあらたな問題が。

バンクーバーに「ヴァステルヴィク号」という貨物船が入港します。船長のヨー
ベックは、船に乗っている密航者のカナダに上陸させようとしますが、密航者の
アラン・デュヴァルと名乗る青年は、国籍を持っておらず、世界じゅうを転々と
しているのです。

世界各国で上陸を拒否され、カナダでも法律にのっとって、上陸は許可されません。
しかし、それを地元新聞がニュースとして伝えます。

「この不幸な青年に愛の手を」と全国で話題になりますが、ハウデンはじめ市民権・
移民相ウォレンダーは、法改正などもってほのかという構え。

ハウデンは首相になる前の党首選挙のさい、対立候補のウォレンダーと”密約”を
交わして当選し、それ以来ハウデンはウォレンダーに強く出られません。
しかも、ここ最近ウォレンダーは、マスコミが飛びついてきそうな危ない言動が多く、
ハウデンにとっては厄介。
そこにきてバンクーバーのアラン・デュヴァル問題が・・・

一方、これを政権交代のチャンスとみた野党議員は、この哀れな青年に弁護士をつけよ
うとします。
弁護士になりたてのアラン・メイトランドはさっそく貨物船に乗ってデュヴァルと会い、
上陸の申請を出すことに。
そこに立ちはだかるのは、政府から送り込まれた、移民省西海岸本局局長の堅物、クレイ
マーだったのです・・・

アメリカとの統合法の行方は、バンクーバーの無国籍者はどうなるのか・・・

首相の苦悩や、カナダの内政問題などが濃厚に描かれ、はじめこそ「難しそうだなあ」
とページをめくる手が遅かったのですが、読み進むうちに引き込まれていきました。


コメント
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