晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

A・J・クィネル 『ヴァチカンからの暗殺者』

2012-05-24 | 海外作家 カ
かつてのスパイスリラー、アクションといえば、アメリカやイギリスの
「自由陣営」対共産圏、主にソ連との対決が描かれていたことが多く、
しかしソ連も解体され、東側の共産圏も次々民主化し、フレデリック・
フォーサイスはイギリスの諜報部で、かつては優秀なスパイだった男の
悲哀を描いた中編3部作、なんてのもありました。

この『ヴァチカンからの暗殺者』での「敵」はソ連邦の書記長という
バリバリの「西対東」、この当時のローマ法王はポーランド出身の
ヨハネ・パウロ2世、法王に就任してから暗殺未遂があり、それがソ連
側の仕業ということがわかり、じゃあ相手側の親分である書記長、アン
ドロポフを「消して」しまおう、という話。

話は、ポーランドのSBという秘密保安機関からはじまります。少佐の
ミレクは、SBの事務所へ行って、上司を射殺。
そして、教会へ逃げ込みます。この教会は西側の人間をソ連へ送ったり、
また東側の人間を西側に送ったりしていて、その取締りをしていたのが
他ならぬミレクだったのです。
そしてミレクは神父に会い、ある司祭のところへ行きたい、と告げるの
です。

そのミレクが会いたがっている「ベーコン司祭」ことヴァンバラ司祭は、
ローマ法王が韓国行きのさいに暗殺計画があると知り、大司教、枢機卿
の3人で「ノストラ・トリニタ(われら3人組)」を結成し、法王の命を守る
ため、なんとソ連邦の書記長、アンドロポフを逆に暗殺してしまおう、と
いう計画を立てます。

その「使者」に選ばれたのがミレクで、ミレクはそもそも上司を撃って
ポーランドから逃げたのには、アンドロポフへの個人的な恨みがあるらしく、
ベーコン司祭はミレクに暗殺を依頼。

しかし、はいわかりました、というわけにもいかず、ミレクは北アフリカ、
リビアにあるテロリスト育成キャンプでトレーニングをします。
そして、ベーコン司祭らは、より成功の確率を高めるため、ミレクには
「妻」を同行させようとします。まさか暗殺者が夫婦で行動するとは思わ
ないだろう、というわけで、「妻」役に、敬虔な修道女、アニアを選びます。

ハンサムで女性の扱いには慣れているミレクはアニア美しさに目を奪われま
すが、アニアは偽の法王からの特命状(ある計画によって、一時的に夫婦の
「ふり」をしてほしい、というもの)はあるものの、決して体を許しはしません。

そんなふたりがハンガリー、チェコ、東ドイツ、ポーランド、そしてソ連へ
密入国にようとするのですが、どうやらその情報はKGBに漏れていたのです・・・

はたしてふたりはソ連に入国できて暗殺を遂行できるのか、ミレクのアンドロポフ
に対する恨みとは、ふたりの愛の行方は。

ロマンス、スリル、アクション、どれをとっても素晴らしい傑作です。

 


コメント
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