晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

真保裕一 『連鎖』

2008-12-17 | 日本人作家 さ
この作家の作品は、はじめ「ホワイトアウト」を読んで、
ああ、すごないなあ、スケールは大きいし、ストーリー展開も見事だし
人物も丁寧に描けているし、とても好印象だった、のですが、
「他の作品もぜひ早急に読まなければ」というところまでには私の心を
動かしきらなかったんですね。

「奇蹟の人」という作品も読みました。が、やはり、本棚には、
彼の作品群が居並ぶまでには至らなかった。

そして、この「連鎖」を読んで、今までの考えが一変。

小説家に限らず、表現者の中には、時代の先を読む優れた感性を持っている
人が多い、というか、そういう人が表現者になるものなのですが、「連鎖」
という作品は、いわゆる食品偽装問題がテーマ。
単に、産地偽装という問題だけではなく、闇組織も絡んできての大掛かりな
犯罪行為が追求されてゆくのですが、今日、テレビで見ない日はないという
くらいに賑わしている食に関する不審。もっとも、この作家がこのテーマで
小説を書こうとしていた時代も問題はあったんでしょうがね。

「メリットが無いと不正の考えようがない」

そりゃそうですよね。違反を犯してまで偽装しようとするのなら、それなり
のメリットがないと彼らは動きません。

これに殺人事件や愛憎問題まで絡ませてくると、ストーリーがあっちいったり
こっちいったりして分かりにくくなるものですが、そこらへんは巧みというか
非常にテンポが良い。

ただ、惜しむらくは、悪だくみをしていた側の顔というか心情、人物描写が
もっと欲しかったですね。


コメント (2)
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