ベラ・バルトーク、死の年1945年の作品。
マスカーニが死に、
ヴェーベルンが射殺され、
ヒトラーが自殺し、
ムッソリーニが絞殺され、
そして、日本が無条件降伏した年。
バルトークは、白血病のため、事切れるやうに死する。
作品は終楽章が未完のまま残り、弟子によって補足・完成することになる。
ゲザ・アンダのピアノ、フリッチャイ指揮/ベルリン放送交響楽団の演奏で聴く。
1959年、ベルリンでの録音。
ピアニストである夫人のレパートリーのひとつになれば、と遺産のやうにかかれたこの作品は、なじみ易い楽想に溢れてゐる。
(でも、実際に夫人がこの曲を演奏したのは15年も後だ、といふのか、如何なるわけだらうー)
以前の協奏曲で、鞭のやうに叩かれてゐたピアノは、曲の頭から、まるで遠くで聞こえる鐘のやうに響く。
アメリカ時代のバルトークは…、といふ評価がありますが、小生には難しいことはわかりませんが、この曲のシンプルさと、ものをそぎ落としてしまった後の自然に生まれたふくよかさが感じて、やはり、彼の傑作のひとつだと思はれます。
アンダの演奏は、CDには1番と2番も入ってゐたのですが、この曲に相応しい、少し温かみのある演奏でまとめ上げてゐます。
バックのフリッチャイの指揮がとても切れ味がよく、また彼のCDも聴きたくなりました。