圧倒的な力作、でした!
『甘粕正彦 乱心の曠野』(佐野眞一/新潮社)
500頁近いのですが、一気に読み終へてしまひます。
小生、以前から、ナチスの文化相ゲッペルスと、傀儡国満州の帝王にして満映の理事長だった甘粕正彦に非常に興味があり、折にふれて調べてゐます。
特に甘粕正彦は、ある意味、大杉栄事件の真偽はともかく、日中戦争を呼び込み、満州の地に左翼や右翼やヤクザを配し、しかし、見事に満映を復活させ、戦後の日本の映画の礎をつくり、そして、敗戦とともに青酸カリで自死したといふ、途方もなく得体のしれない人物、です。
その人物を、作者は、80年も昔の記憶を呼び戻すべく、徹底的に足で歩き、その結果、かすかな記憶の中から、甘粕の姿や真実を浮かび上がらせてゆく。
その、まさに徹底した、愚直なまでの手法が素晴しい。
そして非常に興味があったのが、甘粕の本籍地が山形県米沢市であり(ルーツは武将でした)、彼の周りでうごめく人物に山形に関連した人物の多かったことでした。