やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

『1900年』

2013-10-02 | 映画雑感


闇間に、すぐそれとわかる金木犀のかをりが漂ひ、朝は、うろこ雲が紅色に染まってゆく。

すっかり季節が変ってゐました。

そんななか、レンタル店でふと手にした『1900年』といふ映画を、都合5時間以上かけてみました。
(そんなに長い話だとは露しらず、見終はってバタバタと返しにゆきましたー)
大叙情詩ともいふべき、名匠ベルトリッチ監督がイタリアの現代史を描いた傑作でした。

話としてはよくある話ですが、それゆゑ、5時間を越える映画としてはメリハリに弱く、なんとなくラスト(ラスト・シーンではありませんー)の行方も途中で察しがついてしまったのですがー。

けれど、傑作、です。
主人公たちの名演技もさることながら、圧倒的に存在感のあるのは、その他多数の農民役の人たち、です。
節くれだった手や身体、しわだらけの顔、曲がった腰ー。
特に名シーンといふものはないのですが、全編にわたってその存在感を示し続けてゐる。

まさに、イタリア・リアリズムの真骨頂ともいふべき彼らの存在感ー!

日本の映画やTVでいつも不満なのが、その他大勢の人びとの存在感です。
映画に参加してゐます、画面を埋めてゐます、といふものが多く、逆に、妙に、はしゃいでゐたりしてゐる人が浮いてしまってゐたりー、と散々です。

しかしこの映画は、搾取され続ける農民たちの、ときに餓死寸前の姿や、ときに村の外れで音楽に興じる姿を画面に映し出して余りあります。


そして、やはり、イタリアはいいなあー!(また、行けるかしらん?)
そして、デ・ニーロといふ俳優は、存在感、あるなあー!




名作

2013-07-24 | 映画雑感
先日、あまり好きではなかった小説家・山本周五郎についての本を読んでゐましたら、突然、映画『ブレード・ランナー』を絶賛する文章にあたった。

たしか、数十年前にいちど見た覚へがありますが、何か”暗~い”感じのSF映画の印象きり残ってゐませんでした。
小生の悪いクセで、気になると確認しなければ気がすまないので、早速にDVDを借りてきてみました。

なるほど、実は、傑作、でした。
監督が、小生の好きな『エイリアン』のリドリー・スコットなので、むべなるかなー。

未来なんて、輝かしくも明るくもない、といふ、その新宿の歌舞伎町をモデルにしたといふ猥雑な未来都市の姿が、とてもインパクトがあり、一気に見てしまひました。


そしてまた、先日、小生の好きな女優メリル・ストリープ(容姿とかではなく、彼女の役作りがとても好きで、日本の、浅~い女優さんではとても及ばないー)の出演作を調べてゐたら、その頭に『ディア・ハンター』がありました。

!? と思って、『ディア・ハンター』は幾度となく見てゐますが、そのヴェトナム戦争の狂気と壮絶なロシアン・ルーレットのシーンが印象が強くて、でもこれもあらためて見ましたら、なるほど、まだ若いメリル・ストリープがかなりのシーンで出てゐました。

ただ、まだ”上手いなあー!”といふ年齢でもなく、デ・ニーロの強烈なシーンが勝ってゐましたがー。


ともあれ、やはり、”名作”といふものは、時間が経っても褪せることはない、とつくづく実感ー。


Cavatina ~ The Deer Hunter【classic guitar】




好きな、名シーン

2012-02-10 | 映画雑感
アルバン・ベルクの歌劇「ルル」なんてものは、動画にないものかしらん? と思って探してゐたら、幸いかな、結構これがUPされてゐて、前衛的な演出ですが、同じく歌劇「ヴォツェック」もあったりして、思はず4時間近くのDVDに落としました。

探してゐる途中で、ヴィスコンティ関連のところに迷ひ込んで、名作『ベニスに死す』の、そのなかでも小生が一番好きなシーンが短くUPされてゐました。(全編もUPされてゐて、驚いたのですが…)

Mahler inspired scene - Death In Venice / Mort 醇A Venise/ Tod in Venedig / Morte a Venezia


マーラーを模した主人公が、一度ベニスを離れるのですが、不慮の事情でふたたび戻ることになり、ホテルの窓から、海辺を歩く美少年タッジオに陰から”帰ってきたよー”とばかりに手をふるシーンから、マーラーの5番のアダッジォが流れ、暗くやるせない、まるで腐敗の海へ沈んでゆくやうなこの物語りで唯一明るく光りにあふれたやうな、若きマーラーと妻アルマと長女マリアとの幸福なシーンがワンカット入ります。このあと、再び、その長女の死の場面が短くはいるのですが、実際にもかくありなんと思ふやうな、美しいシーン、です。


絶妙、です

2011-02-05 | 映画雑感
 (画像は、CASIOのサイトで処理)

偶然、似たやうなDVDを見ました。

『歩いても歩いても』、と『ドライビング・ミス・デイジー』

『歩いても歩いても』
何も起こらない映画ですが、現代の小津作品のやうな、低く細やかな監督の視点が全篇にわたって余韻を残す。

何にもまして、キャスティングが素晴らしい。

一寸意固地な頑固親父、かすかに不満を見せながらまめまめしく動くその妻、再婚した夫の実家に気をつかふ主人公の妻、血のつながりのない家庭へ帰省した戸惑ひをみせる少年…。
映画やTVに頻繁に顔をだす役者たちですが、集合体として絶妙のコントラストを見せてゐます。
そして、そのコントラストの後ろから、一見平和さうに見へるそれぞれの人たちのかすかなこころの傷が見へてくる。

公式サイトは、こちら、にありました。


『ドライビング・ミス・デイジー』
インド映画の作品を探してゐる時、「生憎ござゐません」との店員さんの返事で、ウロウロとしてゐたら、『ドライビング・ミス・デイジー』を見つけました。

ふた昔ぶりくらゐに見ました。

こちらも、頑固でこころを開かないユダヤ人の老婦人と、彼女の運転手になった黒人の男。
彼らへの、時代々の差別をゆるやかに描きながら、でも、絶妙な二人の会話が素敵です。
映画そのものや会話がゆったりとしてゐるので、訳をみなくてもその会話の面白さを堪能できます。
アメリカの映画が、スピード(だけ?)やCGや3Dになってゆく前の、佳品です。

80歳だったといふ婦人役にも脱帽しますが、改めてモーガン・フリーマンは、この作品や『ショーシャンクの空に』での役どころがはまり役なのを感じます。
確か、大統領役の映画もありましたが、存在感に乏しかった、やうなー。

紹介のページは、こちら、ででもー。

作曲家の映画は…

2011-01-18 | 映画雑感


ふたりの作曲家をテーマにしたDVDを見ました。

『シャネル&ストラヴィンスキー』 と、『クララ・シューマン/愛の協奏曲』
『シャネル&ストラヴィンスキー』の公式ブログは、こちら
『クララ・シューマン/愛の協奏曲』の公式サイトは、こちら

偶然にも、どちらも、面白くない映画でした。
どうして、かう、作曲家をテーマにした映画って、面白くないのだらう?!

マーラーを描いたケン・ラッセルの映画も不愉快なほど面白くなかった。唯一、『アマデウス』だけかしらん。

『シャネル&ストラヴィンスキー』では、映画のやうな事実関係はよくわかりませんが、シャネルの姿は兎も角、ストラヴィンスキーの覇気のない描写にウンザリー。
唯一、冒頭の《春の祭典》の初演の再現シーンを、なるほど!、と思って見てゐました。あの踊りでは、ブーイングが出るのかも知れません。
また、初演指揮者である、小生敬愛のピエール・モントゥーに関してのカットも少し欲しかった、ですなあー。

『クララ・シューマン/愛の協奏曲』は、もっと見るべきものがなく、ブラームスの末裔の方が映画監督なのださうですが、あの素っ頓狂な青年ブラームスの姿はなんでせう?!
貧しいけれど、才能に溢れ、プライドも矜持もひと壱倍強かった若きヨハネスの一端も見ることができなかった。そして、深々とクララを愛し続けてゐたヨハネスの苦悩の欠けらもでてこなかった。
ラスト・シーン、ブラームスのピアノ協奏曲1番を弾くクララの姿を映して、”成る程、これで愛の協奏曲!”と思はず笑ってしまひました。

悲しくなって、ゼルキンの豪快なピアノ協奏曲1番を聴きたくなりました。



『父と暮せば』と…

2010-09-15 | 映画雑感


先日、『父と暮せば』を再び見て(4、5回目かしらん)、やはり、とても素晴らしい映画、です。
そして、また『明日』も再び見ました(これも、3、4回目)。

ともに、黒木監督の戦争三部作の作品です。

映画としては『父と暮せば』が圧倒的に素晴らしく、原作としては『明日』が凌駕してゐる。特に中篇の『明日』は、激しい小説群が多い井上光晴氏の中でも、その視点の低さと、決して来ることのない、戦時中の人びとのささやかな明日への希望を描いて胸を打たれる。

映画では、傘を広げすぎた感があり、以前NHKで放送されたドラマの方が良かった記憶があります。
『父と暮せば』は、宮沢りえの圧倒的な演技に感服するだけです。
まさに、女優の王道を進んでゐます。



『タクシー・ドライバー』-コレクト5-

2010-05-01 | 映画雑感


蔵王の麓の集落では、まだ、水仙が真っ盛り、です。

『タクシー・ドライバー』、を見る。

30年以上前か、映画館で見たときには、暗く、やるせない映画だった印象しかありませんでした。監督の名も、主演の青年の名前も失念してゐました。

けれど、30年? ぶりに見たこの映画、こんな傑作! の映画だったとは!!
青年は、デ・ニーロだったのですね。

1970年代、アメリカの映画は、重いテーマに真っ向から向かった作品が多かった。この映画は、時代的な背景は少ないけれど、徐々にキレテゆくひとりの青年の凄みを、デ・ニーロの天才的な演技と相まって、息つくひまなく見せてゆく。




『実録・連合赤軍』

2010-04-16 | 映画雑感


『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』、を見る。

幾つかある、連合赤軍や浅間山荘事件を描いた映画では、成る程出色の仕上がりです。若松孝二監督のラディカルさが随所にでてゐる。

その時代、小生も週末ごとにデモへ出掛け、数年の後、米軍基地前の戦車輸送阻止の座込みで行動をやめた。放水車に直撃され、機動隊に連行され、”親が泣くぞ”と隊員に云はれながらジュラルミンの盾で小突かれ、安全靴で蹴飛ばされた。ひどく、痛かったー。

友人たちと<資本論を読む会>をつくり、険しい顔をして難本に挑んでゐた。主催したその友人は、後年、バブルで金をつくり、銀座のクラブで金をばらまいてホステスさんにハイヒールにシャンパンを注がせて飲ませてゐた。やがて、彼の会社は破綻したらしい。

新宿の裏町で、悪友とピンク映画をよく観てゐた。当時、日活ロマンポルノは結構入館料が高く、金がない小生等は2本で300円くらゐの、低予算でできたピンク映画を観てゐた。
いまや伝説になりつつあるパート・カラーのピンク映画、です。
色々な客がゐた。酔ひどれたひと、訳ありさうなカップル、いつも和服で買い物籠をもった妙齢な婦人、…。
そのころの、そんな映画の監督から才能あるひとが沢山出てきてゐるといふ。
若松孝二のピンク映画もそれなりに観た記憶があるけれど、内容はまるで覚へてゐない。


詳細な取材のもとに作られた映画なのでせう。リアルな部分も多かった。そして、リンチ集団と化したアジトでの殺戮をみてゐると、突っ走った彼らの、稚拙さだけが見へてしまふ。
ある意味、まう少し時代と向き合ってゐたはずのやうな気もするが、さうでなければ、死んだ人たちはまったくの犬死です、そのあたりの切実さは画面からはでてこない。


『日の名残り』-コレクト10-

2010-04-09 | 映画雑感


最近、小生だけの好みの映画を集めてゐる。

昨夜は、『日の名残り』、を久しぶりに見た。

傑作、といふ映画ではないけれど、その質の高い映像と質の高いドラマに、コレクト入りです。
悲しいかな、間違っても日本ではできない映画、です。

巷間いはれてゐるやうに、アンソニー・ホプキンスの演技が、ほれぼれするほど素晴らしい!

憎らしいほどに常に対人関係に距離をおくその執事の姿を、憎らしいほどに淡々と演じてゐる。”オヤジさん、女性の気持ちもわかってやれよ!”と云ひたくなるほどのクールな姿に、けれど、それゆゑに、後悔の気持ちだけを胸に残して分かれてゆく男と女の姿が、哀しいー。

『ディア・ドクター』

2010-02-22 | 映画雑感


久しぶりに見る、映画らしい映画、でした。

若い女性監督の、新鮮な感覚や視線が素晴らしい。

テーマは、無資格医師といふ重いテーマながら、俳優陣のそれぞれの見事な演技が、時にユーモラスに、時にリアリティをもって、まったく隙間のない画面に作られてゐる。

ただ、最近の映画をみていつも思ふことは、意外に、キャストの幅がないなあ、といふことです。結構、同じやうな顔ぶれのひとが多くて、いまどき、まうすこし違ふ人選で、新鮮な演技を見てみたい、と思ふのは贅沢でせうか。


公式サイトは、こちら