やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

リモース

2005-07-31 | 神丘 晨、の短篇
捜しだせるだらうか?
女は、病室から外を見てゐた。雪の季節が隣りだった。
夕食は、ほとんど残してゐた。

二十年も前に、えにしを無くした男の所在確認を友人に託してゐた。
大したことはないだらう、と思ってゐた胸のしこりは悪性で、転移もしてゐた。
摘出の手術は三日後だった。

朝まで続く夢の中に、男の姿が繰り返し現れた。

自分では、穏やかな生活を送ってゐたつもりだったが、
身体の中に、男との記憶も巣食ってゐた。
医師の言葉は信じてはゐたが、無性に男に会ひたいと思った。
声だけでも聞きたいと思った。
あなたの頼みだから、と友人は云ったが、無為に一週間が過ぎてゐた。

何も東京まで嫁にゆくことはない、と父親に反対され、全てを諦めた。

このまま手術の朝を迎へてしまったら、私はきっと後悔する。
女は、染まってゆく窓を見ながら、二十年前の男の笑顔を想ひ浮かべた。

「犬の宮」「猫の宮」

2005-07-30 | 山形の鳥居、を巡る
高畠町に、一寸変はった神社があります。
二十年ぶりくらゐに立ち寄ってみました。

共に、名の通り、犬と猫を祀った小さな神社です。
それぞれに、動物の供養やたたりを恐れて祀ったいはれがあります。
現在は、ペットブームなので、参拝する方も多いやうです。
鳥居としての特色は特にありませんが、強引にカテゴリーに入れてしまひました。


こちらが、「犬の宮」です。




こちらが、「猫の宮」です。




近くにあった、変な杉、です。「たこ杉」といふさうです。



たばこの花

2005-07-29 | 花や樹や

たばこの花、です。
背丈も超える先に、濃いピンク色の花を咲かせてゐます。

この大きな葉を乾燥させて、たばこの材料にするさうですが、
作業工程を見たことはないので、詳細はわかりません。

小生も喫煙者のひとりですが、最近は本当に、肩身が狭い、といふ状況になってゐます。
(∋_∈)

身体に悪い、近くにゐる人にも迷惑、といふ事実は認めるとしても、
高校生の終はりの頃、密かに、試しに吸ってみるたばこが、
大人への(身体も心も汚れてゆく)儀式のひとつなのだ、
といふ、屁理屈は、通用しないでせうな?!

(#^.^#)

カイルベルト/NHK交響楽団

2005-07-28 | 古きテープから
1965.1.19 東京・東京文化会館
プログラム ブラームス/交響曲第二番 他は不明
指揮:ヨゼフ・カイルベルト/NHK交響楽団

カイルベルト晩年の演奏です。40年も前の演奏です。
彼の劇的な死(ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」を指揮中に、心臓発作で
樹が倒れるごとく亡くなった)の3年前でです。

N響の管が不安定なまま曲は始まりますが、演奏はやがて修正され、
ひと昔前の、渋く、思慮深いブラームスの姿を描いてゆきます。

弦は、これ見よがしな、妙に引き伸ばしたやうな処は無く、粗い美しさです。
第二楽章に、それがよく出てゐます。
この、たほやかなアダージョ・ノン・トロッポが、凛とした愁ひを見せてゐます。

閑話

カイルベルトのモーツァルトが以前から好きでした。
如何にも素っ気無い演奏ですが、バンベルク交響楽団の美しさも中くらゐですが、
泣ける演奏でもありませんが、モーツァルトはこれでよいのだ、これで充分なのだ
と思はせる説得力のある演奏です。
無駄に付け加へたものは、やがて剥離してゆく。それならば、必要な部分だけで
形作ってゆかう、それを地で行なったやうな演奏です。

         

悲しいワルツ

2005-07-27 | 神丘 晨、の短篇
女は、隣りの男の横顔を覗き見た。
眼を閉じて演奏に聞き入ってゐた。女が誘ったコンサートだった。

友人に急用が出来てチケットが浮いてしまった。
音楽が好きかだうか、聞くすべもないまま「コンサートに行きませんか?」
と訊ねた。男は、「ああ、いいですね」と電卓を打ちながら云った。
終業近いオフィスだった。

演奏会のプログラムはすべてシベリウスだった。
街は、雪の季節に向かって冬支度が始まってゐた。

交響曲の演奏が終はり、会場がアンコールを求めてゐた。客席に向かって
指揮者が曲名を云ったが、女には聞き取れなかった。
静かに始まった曲は、うねるやうなワルツになっていった。

ホールを出るとき、「アンコールの曲名、わかりましたか?」と女が聞くと、
男は、「悲しいワルツ、かな」と云った。
女は、抑へてゐたものが溶け始める気がした。あの曲のやうに、すべてを
終へたい、と思ひながら、男のあとを歩き出した。

ドクダミが原

2005-07-26 | 花や樹や

先日通った道沿に、杉の根元を埋め尽くすドクダミの姿がありました。
通過して、ワザワザ数十メートル戻って写真を撮りました。

やはり、ドクダミ、でした。
付近一帯にテープが張られ、立ち入り禁止状態、になってゐました。
その山の持ち主の方がされたのでせう。
といふことは、その方も、そのドクダミの原を大事に守ってゐる、
といふことでせうから、実に好ましい限りです。

半日陰のそこは、ドクダミが、見事にグランドカバーの美しさを
演出しきってをりました。

源平蔦

2005-07-25 | 花や樹や

昨年、お客様から無理を云って蔓を1本頂き、挿し木にしてをきました。
すぐに、根付き、青々とした葉を繁らせたのですが、
あっといふ間に葉を落とし、裸木になってしまってゐました。

その変はりやうに、愕然としてゐたのですが、
何のことはない、死んだフリをされてゐました。

7月に入って白い花を付けはじめ、この花の特徴の、赤い色も付き始めました。
花の咲き始め、白い部分を見て「意外につまらない花だ」と申してゐた我が家の老人は、
鮮やかな紅白になってから、いとも簡単に感想をくつがへし、
来客の人に、「いい花だらう」と、無責任にも!自慢してゐます。

(;´Д`)


眠の樹(ねむのき)

2005-07-24 | 花や樹や

正式な当て字か否か、定かではありませんが、
”合歓木”よりは、好きです。

今、国道沿ひや河川敷に、その花を咲かせてゐます。
薄曇の空の下、忙しい人間様の毎日を
「何をそんなにー」と問ひかけるやうに
尾の短い流れ星のやうな花を咲かせてゐます。

「柳よ泣いてくれ」

2005-07-23 | 書棚のジャズアルバムから
「Willow Weep For Me」
 作詞・作曲/アン・ロネル

レイ・ブライアントの「アローン・アット・モントルー」に入ってゐました。
1972年、モントルー・ジャズフェスティバルに、オスカー・ピーターソンの
代役で出演したライブ盤です。

初めのうちは、このピアニスト誰? みたいな反応で、
粒のそろった音ながら、ややゴスペル風に流れるリズム感で、少し異色な演奏です。

演奏会の模様は、後半から、このピアニストはすごいぞ! と盛り上がってきますが、
マッコイ・タイナーは試行錯誤の中で自分のスタイルを見つけてゐる最中、
チック・コリアやキース・ジャレットは、自分等の新しい世界を開き始めた頃です。
さういふ意味では、やや旧いタイプの演奏であり、音楽なのかもしれません。

停留所

2005-07-22 | やまがた抄




高畠町にあった停留所、です。
バリバリの現役です。

集落の人達が大切に守ってゐるのでせう、状態がとてもよいです。
感動的なことに、内部は三和土(たたき)です。
そして、スケール感がとてもよい、です。無駄な大きさになってゐません。
森の中であれば、それこそ、トトロでも出てきさうな停留所です。