やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

黙阿弥、を読む3

2006-05-18 | 本や言葉


「風船乗評判高楼」(ふうせんのりうはさのたかどの)


明治24年、東京歌舞伎座で初演。
黙阿弥76歳。


どっこい生きてゐた黙阿弥の、江戸ではなく、東京の賑はひを描いた風俗舞踏劇。
尾上菊五郎の求めに応じて作られたといふ短いものですが、楽屋落ちや当時の名所、生活、風俗を盛りだくさんに取り入れて、一篇の夢話のやうで面白い。

特に、気球を見せる場面では、子役を使って遠近法を出したり、と知恵を出しての舞台を創ってゐるあたりは、歌舞伎本来が持つパワーを感じます。






         


既に舞台は、ロウソクや自然光ではなく、また、ガス灯でもなく、電気照明によるものだった、といふ。

黙阿弥自らは、死ぬまでランプさゑ使はなかった、とされてゐますが、
一度の引退後も、役者の求めに応じてこんな芝居を書いた老作家の、
職人としての意気地をみるやうな思ひです。




(新日本古典文学体系/河竹黙阿弥集/岩波書店、より)
(写真も、上記より)