I. 地球規模の人体実験か
新型コロナ感染症の拡大が続いています。冬になって夏に収束しかけた風邪が再び流行るのは当然のことで、春の段階で再び冬に感染者が増加することは予想されていました。ただ感染者数は日本が欧米の1/100であることは第一波の時と変わりません。しかし日本のメディアは欧米と同じ深刻さで「このままでは大変な事になる。」と言い続けています。流石に「2週間後にはロンドンやNYと同じになる」と根拠なく決めつける「ホラ吹き臨床家」は出なくなりましたが、医療崩壊を言い募り、危機感を煽るコメンテイターは健在です。
2020年11月18日米国ファイザー製薬とドイツバイオ医薬ベンチャー、ビオンテックは、開発中の新型コロナウイルス感染症のワクチンについて、発症を防ぐ有効性が95%にのぼったと発表し、米国食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可の申請をすることになりました。
第三相試験は43,661名が参加し、11月13日には41,135名が第二回目の接種を受けて170名のコロナ感染が起こった試験参加者のうち、ワクチン接種群は8名、非接種群(プラセボ)は162名発症したので154/162=0.95で95%発症を防いだと発表したのです。同時期に第三相試験の結果を発表した米国のモデルナ社も、94.5%と同等の有効性を示したことを発表し、注目されました。これらはメッセンジャーRNA(mRNA)を用いたワクチンで、新型コロナウイルスがヒト細胞に感染を起こす棘の部分であるスパイク蛋白の一部を宿主の細胞にRNAを導入することで作らせてそれに対する主に細胞性免疫を誘導することで感染予防をさせるメカニズムです。
新型コロナワクチンの開発は米国で新型コロナ感染症が流行り始めてワクチンの早期開発が叫ばれ、Operation Warp Speedと名付けられて2021年1月までに3億回分のワクチンを開発量産備蓄するという計画で100億ドル1兆円の予算が付きました。4月には125のワクチン候補が対象でしたが、5月には14候補に絞られ、6月には5製品候補まで絞られました。ファイザー、モデルナ、MSD、ヤンセン、アストラゼネカがそれぞれ開発中で、11月になって前記2候補の結果が出されたわけです(ファイザーは独自開発とも言われる)。ワープスピードでワクチンを開発するには、製造が簡単な遺伝子ワクチンが選択肢になりやすいのですが、問題は人類史上遺伝子ワクチンが実用化されたことがない、という事実です。遺伝子技術をがんワクチンや感染症のワクチンに使用する技術は2010年頃からやっと実用化のめどが立ち始めた段階で、動物実験では実績がありますが、大規模に人間に使用したことはありません。遺伝病などで遺伝子欠損がある患者さんにその欠損を補う治療はある程度実用化もされてきています。図はその方面での日本の権威である位高氏の総説から引用したものです。mRNAを感染症のワクチンに用いる実験的開発は既にエイズやジカ熱などで試みられてきて、ほぼ完成に近い所まで来ていたので新型コロナワクチン開発でいきなり始まった訳ではありません。「今後のワクチン開発はがんワクチンを始め遺伝子ワクチンが主流になるであろう」という時代に入りかけていた所で新型コロナのワクチン開発が行われたという状態です。
参考文献(1)位高氏の総説から核酸医薬について説明した概略図
私は前から遺伝子ワクチンなどという訳の分からない物を新型コロナ程度の感染症に全人類規模で半ば強制的に使うことは反対であり、自分なら打たない(少なくとも家族には勧めない)と公言してきました。それは今も変わりません。ただし私は「全てのワクチン反対派」という訳ではありませんし、遺伝子創薬全てに反対している訳でもありません。私の医者人生は遺伝子科学の発達と共に歩んできたと言っても過言ではないと思います。小学生の頃にワトソンとクリックが二重らせんのDNA構造を発見し、大学の生物の入学試験ではまさに「デオキシリボ核酸の構造を書け」という問題が出ました。医者になってからは白血球の種類・分化による免疫学の進歩、癌遺伝子の発見、mRNAなどの機能解析からヒト全ゲノム分析、遺伝子のリン酸化などエピジェネティクスによる機能変化という風に遺伝子工学、免疫学が初歩的な時代から飛躍的に進歩する時代に医者をやってこれたのはとても勉強のしがいがありましたし、幸運であったと思います。学位の副論文もがんと正常細胞のmRNA発現の違いを臨床検体で検証したものでした。最近では、数年前に理論化され実用化された免疫チェックポイント阻害剤を今では毎日の様に多くの患者さんに使って、以前ならば亡くなっていたであろう病態の患者さんが元気に暮らせているのを実感できるのは予想外の副作用に出会い、慌てる事もありますが大変すばらしい事です。だから遺伝子創薬自体否定する気は全くありません。
II. リスクと利益のバランスは取れているか
全ての医学的治療には副作用というリスクが伴います。副作用がないのは偽薬と励ましだけです。がん治療に用いる分子標的剤や免疫製剤は比較的安全とは言えますが飛んでもない副作用が出ることがあります。その副作用は時期、程度、内容について予測可能でない物も多いです。それは我々がまだ遺伝子や免疫の機能について知っているようで知らない事の方が多いからです。エボラ出血熱の様に感染すると高率に死亡する病気であれば、かなりのリスクを冒しても実績のない治療を全人類に試す意義はあるでしょう。しかし感染力は強いけど毒性が高くない新型コロナ感染症に長期的副作用が全く未定の新しいワクチンを拙速に全人類に行う必要が本当にあるでしょうか。私が前から主張している「SARS型の抑え込みが本当に必要か?」という根源的な問いを熟考せずに遺伝子ワクチンを接種することは「倫理的に良いのか」とリベラル、意識高い系を自称する人たち、「集団免疫」を唱えるだけで「年寄や弱者を犠牲にして良いのか?」などと脊髄反射的に唱える人たちは考えているのか、私には疑問です。先日発表されたファイザー製薬のワクチンの有効性と言っても43,000人の被験者のうち170人が発症した新型コロナ感染症について比較したに過ぎません。42,830人はワクチンか偽薬を打って、そこそこの副作用を経験しただけでコロナ感染症については何も影響がなかったとも言えます。幸い重篤な副作用はなかったようですが、今後何等かの長期的副作用が出る可能性は否定できません。4万人に及ぶ被験者たちはそのリスクを冒す必要があったでしょうか。
III. mRNAワクチンで疑問に思う事
文献などで調べても分からない事、また文献で指摘されている毒性についてまとめます。
1) mRNAが導入される細胞は体内のどの細胞か
生きている細胞ならば全ての種類の細胞がmRNAを取り込んで蛋白を作る機能を持っているはずですが、外から皮下注射などで導入されたmRNAは一体どの細胞に主に取り込まれて標的蛋白を作るのか、どの文献にも明記されていません。鼻腔からの気道粘膜への投与であれば標的細胞はウイルスが感染する粘膜細胞だろうと想像できますが、皮下投与であると軟部組織の細胞、或いは血中に吸収されて体中のあらゆる細胞が標的になりえます。標的となった細胞では本人のものではないmRNAの指令で本人と関係がない蛋白を作らされて放出、または細胞表面に抗原として提示します。宿主の免疫細胞はこの放出された異物蛋白や標的細胞の表面に提示された抗原を認識して抗体を作ったり、細胞性免疫を発動したりします。特にコロナウイルスに対しては抗体産生よりもT細胞を介した細胞性免疫が重要と言われているので、後者のシステムが重要と考えられます。この宿主細胞表面に異物として出された物を攻撃対象と認定する過程で、宿主細胞自体を攻撃対象と認定してしまうと、いわゆる自己免疫疾患が誘発されることになります。本来「自分自身の細胞を攻撃対象にする事はない」のが免疫システムですが、世の中に自己免疫疾患が溢れているということはこのような事が割と頻繁に起こりえる事を意味します。
がん細胞というのは本来自分自身の細胞でしたが、「がん」という本来あるべき姿から離れた細胞形態になった事で自分の免疫システムが反応して「がん排除」に向けて活動するのが「がん免疫」であり、広い意味では自己免疫「的」な活動です。だから「がん免疫」が暴走しないようにチェックポイントを設けて「がん免疫」を抑制するシステムが人間には備わっているのですが、そのチェックポイントをわざと外して「がん免疫力を高める」薬がノーベル賞受賞の本庶先生達の開発した「免疫チェックポイント阻害剤」です。この薬剤の最大の副作用は「自己免疫疾患」が誘導されてしまう事です。私もこの薬を患者さんに使っていて突然自己免疫疾患による甲状腺機能低下が起きて驚いたことがあります。他生物のmRNAで無理やり異物蛋白を作らされた細胞が、異物蛋白のみでなく、細胞自体も攻撃対象に認定されてしまう恐れはないのか、現状では誰も保証していません。
2)非生理的な量のmRNAを一度に注入される弊害はないか
細胞内には遺伝情報の基本となるDNAとそれを基に活動する用の遺伝子としてRNAがある事は知られています。RNAには作る蛋白をコードするメッセンジャーRNA以外にも蛋白をコードしない多数のRNAがあって、non-coding RNAと言われてこちらの方が量としては沢山あります。蛋白合成に関わるトランスファーRNAやリボソームRNA、遺伝子発現や細胞内分布を調節する調節RNAと総称されるものがあります。mRNAというのは量としては非常に少なく、「こんな蛋白を作ってね」という指令を届ける伝令に過ぎません。その「伝令が普段の何千万倍という数で一度にやってきたら正しく対応できるだろうか」という素朴な疑問があります。参考にした文献にも単元を設けてmRNAの毒性、mRNAに関連した「炎症反応」の問題という表が掲載されています。要約すると、外からの「異物」に対する「炎症(組織修復反応)」によって、注入されたmRNAは有効に作用しない。自己由来でない遺伝子は細胞内のミトコンドリア(ミトコンドリア自体が細胞内非自己とも言われている)に毒性を及ぼしミオパチー(筋萎縮とか)の原因になる。現状、mRNAは複数回の投与が必要とされ、その度に副作用のリスクが増します。
3)複数回投与のリスク
この複数回投与によるリスクについては既にコロナワクチンについて報告も出ています。Just the Newsによると米国内科学会のDr. S Fryhofer氏によると「とても公園を散歩するような気軽な気持ちでワクチンを受けることはできない。特に2回目の投与後がきつい」と述べ、モデルナ社のワクチン接種のボランティアになった50代の女性は「1回目の投与後は大したことなかったが、2回目は激しい頭痛と疲労感で1日はぐったりとして動けなかった」と感想を述べています。それは新型コロナ感染症にかかったのと同じ位辛い症状であるとCDCも注意喚起を促しています。
以下newsの原文(引用開始)
Side effects from the COVID-19 vaccine won't be a 'walk in the park,' doctors warn
The vaccines in final stages of trial are said to induce symptoms similar to the virus.
Doctors are suggesting that the CDC warn the public that the new coronavirus vaccines, which are expected to be approved by the FDA in the next few weeks, will have unpleasant effects on patients.
Pfizer and Moderna each have acknowledged that their vaccines could induce side effects similar to the virus itself, with possible muscle pains, chills and headache.
In a Monday meeting with Centers for Disease Control and Prevention advisers, doctors said public health officials and drugmakers need to warn people about the rough side effects so they are prepared and not scared away from getting the second dose.
Both vaccines that are in the process of approval by the Federal Drug Administration require two doses, according to Dr. Sandra Fryhofer of the American Medical Association. Fryhofer says she's warned that her patients won't come back for the second dose if the side effects are bad enough.
"We really need to make patients aware that this is not going to be a walk in the park,” Fryhofer said during a virtual meeting with the Advisory Committee on Immunization Practices, an outside group of medical experts that advise the CDC. “They are going to know they had a vaccine. They are probably not going to feel wonderful. But they’ve got to come back for that second dose.”
Participants in the September vaccine trials reported symptoms including a high fever, body aches and daylong exhaustion after receiving the vaccine.
The side effects also raise the question about whether getting the vaccine outweighs the risk of getting the virus.
A 50-year-old participant in the Moderna study said she suffered a bad migraine and loss of energy.
“If this proves to work, people are going to have to toughen up,” she said. “The first dose is no big deal. And then the second dose will definitely put you down for the day for sure. ... You will need to take a day off after the second dose.”
(引用終わり)
4)長期的弊害の検証をせずに世界中の人類に使用して大丈夫か
mRNAは外から投与してもDNAや他のハウスキーピングRNA(細胞を維持するために必要な永続的にあるRNA)には影響を及ぼさないとされていますが、長期経過を検討した実験はなく(そもそも使用され始めて数年ですから)、全人類に使ってしまって「これはまずい」という長期的な影響が出ても取り返しはつきません。「2020年の段階では予想できませんでした。」「コロナが大変だったので使う以外の選択肢はありませんでした。」という言い訳を使うつもりでしょうが、「予想はできています」し、「慌てて使う必要はない」という意見はいくらでもあります。今回の新型コロナウイルスワクチンによる「薬害」は、製薬会社には製造責任を問わない事が既に決定しています。薬害補償は政府(国)が負う事を条件に製薬会社から国民の人数分のワクチン供給を受ける契約ができています。国が責任を負うということは、責任は国民が取る(個々人ではないが自己責任)を既に承諾している事を意味します。こんな拙速を本当に後悔することはないのでしょうか。二酸化炭素が数ppm上がって大騒ぎをするエネルギーがあるなら、将来人類の遺伝子が改変されるリスクが僅かでもあるmRNAワクチンを拙速に使う事に対して声を上げるのが「真のリベラル」ではないでしょうか。
参考文献
(1) mRNA医薬開発の世界的動向 位高啓史ほか PMDRS 50(5) 242-249 2019.
(2) A Comparison of Plasmid DNA and mRNA as Vaccine technologies Liu MA Vaccines, 7,37 2019; doi:10.3390/vaccines7020037