rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

日本と世界の現状分析

2013-03-20 18:42:21 | 政治

日本は歴史が変わりつつある現状において何とか生き残る(1億の国民が先進国としての生活を維持する事)ことができるかどうかを検討してみました。

 

日本の現状と問題点

 

1)自民党政権が多数政権となり、TPPに参加を表明。これは米国の雇用と経済を活性化させるために強要された事ではありますが、後に検討するように米国の体制がTPPが効果を現すまで持つかどうかが微妙なところ。米国が衰退してくれればTPPはアジアを中心とする経済圏確立に中国と対抗する(軍事的でなく政治的に)勢力になりえる。もっともコンプライアンスに象徴される非日本的な弱肉強食の商慣習は断固拒否しなければ国民のためにならないのは明らかですが。

2)国家財政の負債が1000兆円を超えて国債の暴落が明日にも起こると脅して消費増税を決めた割りには国土強靭化計画で国債は次々と増加され、しかも特例公債は特例でなく審議なしで発行可能となってしまった。国家財政の破綻可能性について増税前に危険信号を発していた人達は引き続き危惧を表明すべきだと思う。そしてキプロスのようにある日「預金封鎖」「資産税」の徴収という事態にならないよう国民に財政再建の青写真を示す義務があると思います。私は金融取引税を導入し、アメリカもこれを取り入れないならばTPPには参加しない、くらいの高飛車な要求をしても良い(もともと日本の国民が参加を望んだ訳ではないし、アメリカを含む世界の民衆のために)と思います。

3)アメリカの現在の主流は外れてしまいましたが、ジョセフ・ナイやマイケル・グリーンといったCSIS(米戦略国際問題研究所)からみのジャパンハンドラーの言いなりになって、安倍政権は日本国憲法を改憲して米軍の先兵として戦争ができる態勢を作ろうとしています。米国の主流は「日本を経済の牽引役として米国を儲けさせてくれれば良い」という方向に既に変わっているのですから(その状況も米国が力つきて日本が巻き添えにならずに生き残ることを私は狙っているのですが)、非主流連中はこちらから切り捨てることを現在の米国の主流と画策することが大事と思います。

4)維新の会や石原は既に力を失ったDロックフェラー、ネオコン、非主流のCSISからみの連中ですから、日本の将来にとって何のメリットもない訳で、早い所賞味期限切れとして退場させることです。(石原氏は既にどこかの病院に雲隠れしているようですが)

 

米国の現状と問題点

 

1)昨年米国の新国防政策でも述べましたが、今年のオバマ政権の新人事は脱軍事帝国政策を一層加速させた内容になりました。1月12日のNYtimesにあるように、オバマドクトリンと呼ばれる今回の人事は、軍事力の国内化を進めるチャック・ヘーゲル氏を国防長官にし、無人機攻撃を主導してきた(COINではなく)ジョン・ブレナン氏をCIA長官にしたこと、また自らベトナム戦争に参戦し、無駄な戦争には反対するジョン・ケリー上院議員を国務長官につけた事は、今後の米国の軍事的世界戦略を見る上で重要となります。内戦が続くシリアに対して、反体制派(アルカイダが多い)に武器援助をすると、前CIA長官のDペトレイアス(アフガンでCIONを主導、既にクビ)、脳卒中で倒れたヒラリー・クリントン前国務長官、レオン・パネッタ前国防長官らが決めた事を大統領権限で覆した事も重大事案ですが、さらに今回の戦争縮小人事を決めたのですから、潮目が変わったと見るのが当然でしょう。アフガンでアルカイダと戦争しながらシリア(リビア)でアルカイダに武器を渡すという茶番を止めて、米国の国益を真剣に考えるようになったのは良い事です。

2)経済について考えると「財政の崖」と呼ばれる問題が何故国内で対立したまま解決されず問題になってくるのか、日本人には解りにくい所です。要は「このままいくらでもドルを刷り続けていたらアメリカは駄目になる派」、と「それでも刷り続けないと駄目になる派」の違い、問題先送り派と今解決派の違い、ということでしょうか。昨年12月にFRBはQE1,2に続くQE3をECBのマリオドラギ総裁が「無制限の国債買い取り」を宣言して欧州危機を脱する事に対応して決めました。QE3はQE1,2が上限を決めていたことに反して量的緩和策の目標を失業率の改善に求めたためにECBと同様に上限がなくなったと言われています。リーマンショック以降のQE1,2では債務危機を脱してある程度のインフレを継続させることには成功しましたが、失業率の改善や国民の所得増加にはつながりませんでした。刷り散らかされた巨額のマネーはそのままファンドや財閥の所有する「死に金」となって還流し、先物やエネルギー・資源などの投機に使われて後進国のインフレを招き、貧富の差を広げる役割を果たしたに過ぎなかった訳です。QE3が失業率の改善を目指している限り、量的緩和で失業率は改善しないのですから無制限にまた金が刷り散らかされるという結果になります。それではアメリカが本当に駄目になると言ってストップをかけている勢力がいるということです。

3)今回の人事はCFR(米外交問題評議会)系の人達が中心ということですが、副大統領のバイデン氏をはじめとするCFR系の人達は決して親日派という訳ではなく、むしろ当初のオバマ政権が目指した米中世界二分割(G2)派に近い人達と言われています。尖閣問題で日中がギクシャクして、中国包囲網的な方向にアメリカの外交戦略が変わりかけた時期がありましたが、既にその方針は変わり、米中蜜月に戻ろうとしているのです。そのためには日中で戦争などしてほしくはなく、日本はアメリカに貢ぐ存在であってほしい、というのが現在の本音です。だから中国は外務大臣に元日本大使の王毅氏がなったのです。日本は中国と共に経済を安定させる方が米国の国益にかなうのです。安倍氏は参院選後には憲法改正も視野に入れているようですが、オバマ新体制から「止めとけ」と言われてそれまでになるでしょう。むしろTPPについては早急な対応を迫られるのではないかと思います。

財政の崖の問題から米国では破産をする自治体が増加していると言われます(昨年夏で既に50近く)。この3月にはデトロイトに続きシカゴなども準破綻状態とか。アメリカ社会が維持できず崩壊しつつあるようにも見えます。この社会崩壊と経済再建どちらが早いかという問題になりつつあるように思います。

 

中国の現状と問題点

 

1)習近平氏が国家主席になり、李克強氏が首相に選出された全人代が終わりましたが、中国の政治は常に権力闘争で状況を見て行かねば理解できません。現状は軍をいかに支配下に納めるかに主眼が置かれているように見えます。しかし習近平氏の本音は鄧小平の改革開放路線の継続にあって対日対米融和協調を目指していると言えます(韜光養晦・和平発展)。しかし安保外交政策において「和平発展」と「海洋権益は核心的利益」という両輪を打ち出していて、国家海洋局に海についての権限を集約するといった施策を取りましたが、要は権力の奪取、勝手な事をさせないという事です。14億人もの国民がいると、国家のために自分が犠牲になるなどという目出たい人は出ません。14億の中でいかに生き残るかが全てです。そのためには権力闘争が必須であり、権力を保ためにはメンツが何より大事です。日本的感覚で中国に接してはいけないという事だと思います。

2)既に経済は今までどおりには行かないと中国国民は皆うすうす気がついています。国民の不満を対外強硬策で解消する事は愚策(結局経済がその分さらに落ちるから)であることを首脳達は理解しているのですが、その不満を権力闘争に悪用しようとする勢力をいかに押さえ込むかが現在の習近平首脳部の課題であることは間違いありません。日米はそこに取り入る事が大事と思います。

 

朝鮮半島情勢

 

1)韓国ほど浮き沈みの激しい国はないので、あまり期待も心配もしていませんが、北朝鮮については先週末くらいが開戦して南を併合する絶好の機会(北朝鮮の国家目標は南北統一)と私は思っていました。しかし何も起こらない所を見るとおおかたの予想通りこれから先も朝鮮半島では何も起こらず、北は恫喝外交、南は財閥を中心にした外国頼みの貿易立国として生きて行くことになるのでしょう(習近平氏は「朝鮮半島の平和が中国の国益」と朴大統領に伝えたということは北の開戦を容認しなかったという事でしょう)。南はウオン安が行き詰まりグローバル企業の反映にも陰りが見えてきました。今までのグローバル企業の繁栄に基づくトリクルダウンによる韓国国民の富裕化は結局起こらなかったために朴新大統領としては恒例の李前大統領の逮捕だけでなく、実質的な経済の繁栄と国民への還元に取り組まないといけない状態と思われます。しかし独自の技術に乏しく、単純労働では後塵の中国などから追い上げられており、米韓FTAで農業も打撃を受けている状態とあっては厳しい舵取りと言わざるを得ないと思います。日本も助けてくれそうにありません(今は助けなくて良いと思います)。

 

これらの情勢をふまえて日本はどう振る舞うべきかを考える必要があります。私はTPPについてはできるだけ遅く、国内の経済や給与引き上げは早く、中国を始めとするアジア圏内の貿易活性化は早く、エネルギー問題などの対応も早く、というのが選択肢だろうと思います。

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TPPよりも金融取引税への協力に加入してはどうか

2013-03-12 18:47:35 | 政治

強化された協力に基づく金融取引税: 欧州委員会が詳細を策定

EU News 73/2013

2013/02/14
IP/13/115
ブリュッセル

<日本語仮抄訳>

欧州委員会が本日採択した提案において、金融取引税(Financial Transaction Tax: FTT)の「強化された協力」手続きによる実施に関する詳細が示された。金融取引税を導入する計画の11加盟国からの要請で、同指令案には、2011年9月に欧州委員会が示したFTT原案(IP/11/1085)の範囲と目標が反映されている。すなわちFTT圏との確立したリンクを有するあらゆる取引を課税対象とすること、株式と債権の取引に対し0.1%、デリバティブ商品の取引に対しては0.01%を課税することに変わりはない。

11の加盟国が導入すれば、毎年300から350億ユーロの税収が見込まれる。

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以前 浜 矩子氏の「通貨」はこれからどうなるのか についての書評で、「現在の税制は高度成長時代に作られたものがそのまま使われているから経済成長がのびなくなると税収も減ってしまう。成熟した経済においても安定した税収が得られて所得の再分配がなされるような形、そこに定住している国民からだけでなく、グローバル時代で物と金が自由に行き来している所からも税を徴収できるしくみを国際的に作ってゆくことが大事」という意見を紹介しましたが、「物と金が自由に行き来している所からも税を徴収できるしくみ」に相当するものの一つがこの金融取引税と思われます。もともとこの概念はノーベル経済学賞を受賞した J.トービン・エール大学教授が1972年に提唱したもので国際通貨取引に低率の課税をして投機的取引を規制しようとしたものと言われます。今日のように実体経済で有効に使い切れない有り余った通貨、デリバティブで膨張した実態にそぐわない通貨が投機的に用いられ、その後始末に各国の国民が納めた税金が経済を破綻させないために使われているような状態を改善するには最も有効な課税手段と思われます。

 

良い課税方法のように見えますが、最大の弱点(欠点)は世界全体が同様にこれを行わないと抜け駆けした人が得をする事、居住地原則、発行地原則によって取り漏れがないよう網がかけられているものの(解説)、現実には税の徴収が煩雑になり実効性が乏しい事が上げられます。

元は2011年9月にEU全体を対象に導入が検討されたのですが、英国や北欧の反対で断念され、今回「協力強化」により11カ国での導入が公表されたということです。しかし早速欧州経団連にあたるビジネスユロップから反対の声明が出されており「成長と雇用にとって害になる」とし、メルケル氏と協力するドイツの自由民主党も反対にまわる模様と言う事です。勿論米英の政府は反対しています(米英の庶民層が真の民主主義に基づいて政策を決定していれば賛成になると思われますが)。

 

楽をして金を得る事を知った猿は二度と額に汗して働こうとはしない、という事でしょうか。「社会を構成する人全てがそれぞれの能力に応じて働くことで社会を維持することがより良い世界を築くためには大事」ということは古今東西正しい事として認識されているはずですが、いつの世にも楽をしたい猿がいてしかもそいつが力を持ってしまう物なのでしょう。本来そのストッパーになるはずのものが宗教であり倫理・哲学であるはずなのですが、それらが今力を失っている事がもう一つの現代の弱点なのかも知れません。

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北朝鮮の今回は危ないかも知れない

2013-03-11 17:02:40 | 政治

北朝鮮「最期の決戦の時が来た」=緊張高まる南北(聯合ニュース) - goo ニュース

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北朝鮮は米韓軍事演習、国連での制裁決議に反発して「いよいよ戦争である」という脅しを本格化させています。これを恒例行事と見るか、本気と見るかは衛星その他を使った種々の情報を総合的に判断する他ありませんが、毎回それなりの行動を相手が取っていると結局「これはブラフ」という判断を下すのが人間である以上裏をかかれる可能性も出てくるというものです。それは専門家であっても同じで朝鮮戦争の時にも各種の南進情報が米軍司令部に上がってきていたにも関わらず「ありえない」と無視したために初戦の敗退を招きました。

軍事演習というのはそのまま実戦にいつでも移行できるものであるだけに非常に緊張するのが常識です。満州における関東軍特別演習をソ連への侵攻の準備と考えてゾルゲなどのスパイを使って日本の本気度を必死にソ連が探った事は有名な話です。今回の米韓演習は「韓国軍1万、米軍3000名の合同指揮所演習である」との説明ですが、指揮所演習というのは実戦部隊を動かさずに司令部における図上演習を中心に行われるのが普通ですから、参加人数(韓国1個師団以上、米軍旅団規模)から考えるとかなり大掛かりな指揮所演習と言えます。一説には補給などを中心としたものという説明もありました。しかし少なくとも今回の演習および政治情勢で南から北に攻め込む可能性はまずないと思われます。一方で北は東海岸でやはり軍事演習を行うとしており、NHKの報道では全土で「戦闘動員体制」が敷かれたということです。これが準戦時状態になり、戦時状態になると戦争開始ということになるようです。

北朝鮮の南進の方法はいろいろと軍事的に研究がされていますが、恐らく研究されているような方法では南進しないと思われます(当然ですが)。正規軍同士の正面からのぶつかり合いでは短期間で米韓軍が100%勝ちます。しかし世界最強の米軍が最も不得意とするのはアフガン式の誰が敵で誰が民衆だかわからない戦争です。一部の軍人に率いられた多数の餓えた北朝鮮民衆が雪崩を打って韓国に短期間のうちに流入し、南の政治経済の秩序をすばやく破壊してしまえば、後は一部の情報や政府のインフラを正規軍が占領することで北の目的は達せられるでしょう。韓国の各家庭に銃があることはないでしょうから、軽武装であっても10万、20万の北からの民衆が武装して韓国中に散らばれば対抗することはできません。韓国の政治的中枢を押さえた北朝鮮軍が北朝鮮政府と言わず、「朝鮮民族の統一政府」として声明を出し、中国・ロシアがそれを認めれば誰が敵かわからない状態で米軍は戦争を続ける事はできなくなるのではないでしょうか。1-2週間の短期決戦になるでしょう。

これから韓国にいる日本人は戦争が始まったら直ちに日本大使館に避難できるようその場所、交通手段を確認しておくと良いでしょう。空港は直ぐに閉鎖されるでしょうから。

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最近の医事関連ニュースから改めて医療問題は経済問題だと感ずる

2013-03-07 18:44:28 | 医療

最近の医事関連ニュースから日本の医療問題について考えてみました。やはりいつも現場の当事者である私が感じている通り、日本の医療問題は経済問題だと感じます。以下にいくつかの事例をあげて検討してみます。

救急搬送36回断られ、3時間後に病院へ…死亡

読売新聞  3月6日(水) 配信

 

 埼玉県久喜市の一人暮らしの男性(75)が今年1月、「呼吸が苦しい」と119番したが、25病院から計36回にわたって受け入れを断られているうちに容体が悪化し、約3時間後にたどり着いた病院で死亡したことが市などへの取材で分かった。

 市や久喜地区消防組合消防本部によると、男性は1月6日午後11時25分頃、119番した。駆け付けた救急隊員は県東部や南部、茨城県の病院に受け入れを要請したが、「専門医がおらず処置が難しい」「ベッドが満床」などの理由で断られ続けた。3回にわたって断られた病院も2か所あった。

 当初、男性は意識があり会話ができたが、7日午前0時50分頃に意識がなくなった。救急隊員が心臓マッサージをしながら搬送先を探し、7日午前2時15分頃、いったん断った茨城県内の病院が受け入れたが、死亡が確認された。

 

詳しい病態は解りませんが、何らかの心不全状態が出現し、結果的に不幸な転帰となったことは間違いありません。早く医療機関に受け入れられていれば救命し得たかどうかは解りません。問題は救急車で搬送されながら効果的な医療を受ける機会が得られなかった事にあります。私自身救急病院に勤務しますので病院の事情で救急車を断らざるを得ない事態には良く遭遇します。心停止で運ばれた患者対応中にもう一人重症の患者を受け入れてほしいと言われてもそれは無理です。集中治療室が満床であれば、HCU(High Care Unit)のない病院で重症患者をそれ以上受け入れることはできません。だから受け入れを拒否した病院を倫理面で責める事は事態の解決には一切ならないでしょう。

対応する医療者の問題としては、救急対応を夜中行っても、普通医師は翌日も通常の勤務があります。外来や手術も行わねばなりません。「救急当直をしたら翌日は休み」「救急対応をするだけで一生医師として生活してゆける救急科の設置」を怠ってきたのは厚労省の怠慢と言えます。また90%以上満床でないと病院が赤字になるような診療報酬体系を設定した事も原因の一つです。医療費の増大を診療報酬の引き下げで対応してきたことの「付け」が出てきているのです。救急当直も日常診療も行い、しかもより多くの収益を上げるよう求められる病院勤務医にとって唯一できるサボタージュは勤務医を辞めて開業する事という事態は10年前も今も同じです。結果として救急対応できる医療機関が減ってきているのです。

 

厚労省、医師の勤務環境改善に向け専門組織

m3.com編集部  3月5日(火) 配信

 厚生労働省は4月、医師、看護師、薬剤師など医療従事者の勤務環境を改善するための専門組織「医療勤務環境改善推進室(仮称)」を設置する。3月4日開催の全国医政関係主管課長会議で、医政局総務課長の吉岡てつを氏が明らかにした。医療従事者の勤務環境改善に取り組む医療機関に対して、人材の確保や労働環境の改善にかかわる助言、先進事例の情報提供などを行う組織で、厚労省の医療と労働の組織枠を超えて「省を挙げて取り組みを進めていく」(吉岡氏)としている。

 新たな専門組織は総務課に設置する。総務課の医療安全推進室の職員を中心に、医政局看護課や労働基準局労働条件政策課などの職員が併任する方向で室長や人員数を調整している。室が推進する事業の予算は付けず、厚労省の来年度予算案で要求している基金や補助金を活用して、各都道府県による地域病院の雇用改善につながる施策を支援する。具体的には、失業者雇用を条件に事業内容を企画できる基金「重点分野雇用創造事業」を活用して地域の病院の雇用改善事業を企画したり、「医療提供体制推進事業費補助金」を用いてアドバイザー派遣などの経費や相談窓口経費について定額補助することなどを想定している。

 そのほか、2014年度から全国の医療機関での活用を想定している「雇用改善のマネジメントシステム」の構築も目指す。「雇用改善のマネジメントシステム」は、医療機関の責任者や医療従事者による協議で現状評価と課題の抽出、改善方針の決定を実施するためのシステムで、2013年度には同システムを活用するためのガイドラインを策定する。

 医療分野の勤務環境改善に向けて、厚労省は昨年末、省内にプロジェクトチームを設置し、その報告書を2月8日に公表。医療機関の責任者と医療従事者が自主的に勤務環境改善を促進するシステムを構築するとともに、行政が医療機関の取り組みを支援する方針を示していた。

医師確保のセンター設置の努力義務規定など創設

 全国医政関係主管課長会議では、「医療法等の一部を改正する法律案(仮称)」の概要も説明された。同改正法案には、医療機関が病床の医療機能を都道府県知事に報告する仕組みの創設、都道府県の医療計画における在宅医療の達成目標や医療連携体制の記載の義務付け、医師確保支援などを行う「地域医療支援センター(仮称)」の設置の努力義務規定創設などが盛り込まれている。【島田昇】

 

厚労省も勤務医の疲弊が医療問題の原因の一つであることは理解しています。お役所仕事的な対応ではありますが、問題意識を持って対応しようとしている事は事実ですし、評価すべきとは思います。問題は現実に反映されるかどうかです。それはやはり経済問題が行く手を阻むからです。

 

医学部新設 「東北に特例で」 自民議連が決議

毎日新聞社  2月28日(木) 配信

 

医学部新設:「東北に特例で」 自民議連が決議

 国内で30年以上も新設されていない大学の医学部について、自民党の「東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟」(大島理森会長)は27日、政府に新設を求める決議を採択した。

 来月中にも同党の文部科学、厚生労働の両部会に諮り、党方針への格上げを目指すという。

 決議では、新設を認めていない文科省告示について、東日本大震災で被災した東北では特例として1校新設できるよう改正を求めている。

 文科、厚労省は既存学部の増員で対応する方針で、日本医師会や東北大、福島県立医大、岩手医大は「医師を新設学部の教員に振り替える必要が生じ、医師不足が加速する」と両省に慎重な対応を要望している。【井崎憲】

 

全国の医学部定員を増加させた事で、ここ数年で日本は定員100名の医学部を13校作ったに等しい医師増加政策をしています(馬鹿学生を医者にするな参照)。その上で医学部を東北に一つ作ることにどれだけの意義があるのかは推して知るべし、金がかかって利権が生まれるだけの話です。国民は騙されないようにするべきです。福島県立医大の卒業生の多くが地元福島を離れています。大学病院の医師もかなりの数辞職していると聞きます。新しい大学を作っても同じです。どうしたら今働いてくれている医師達が地元に残ってくれるのかを考えるのが真の解決策です。

 

[医療保険] 26年度改定では、医療費全体のマイナス改定を目指す  健保連

厚生政策情報センター  3月4日(月) 配信

 

平成25年度 健康保険組合連合会 事業計画【概要】(2/15)《健康保険組合連合会》

 健康保険組合連合会は2月15日に、平成25年度の事業計画を発表した。

 経済環境が確実な好転状況にない中で、高齢化の進展等による医療費増加が続いている。こうした状況を受け、主に大企業の従業員が加入する健康保険組合の 財政状況も逼迫が長期化している。たとえば、平成20~24年度の5年間の累積赤字は健保組合全体で2兆1000億円を超えており、保険料率を引上げる組合は増加の一途をたどっている。

 こうした厳しい財政状況を打開するために、健保連は25年度事業運営の基本方針として、次の6本の柱を打立てている。

(1)高齢者医療制度に対する公費投入拡大の早期実現

(2)国庫補助削減を目的とした負担転嫁策(たとえば、高齢者支援金への総報酬割導入)に断固反対

(3)医療費適正化の推進と組合方式の維持・発展

(4)健保組合に対する適切かつ十分な財政支援措置の実施

(5)社会保障と税の一体改革に対する的確な対応

(6)保険者機能強化のための支援と連帯感の強化

 この基本方針に則って、最重点事業項目として掲げるのは、(5)の「一体改革への対応」と(6)の「保険者機能強化」の2点。

 (5)の一体改革への対応としては、関係団体への要請を続けていくことや、26年度診療報酬改定で消費税対応のプラス改定が行われることから、「薬価引下げ分を国民に還元し、診療報酬本体は賃金・物価の動向に合わせて改定するとの基本的考え方にたって、医療費全体でのマイナス改定を目指す」ことを強調している。(以下略)

 

医療費を払う健保組合としては、財政逼迫のおり、背に腹は替えられない。組合は「次の診療報酬を下げる」という基本方針を出しています。その分国家予算が増やせるかといって国の財政も状態は同じ。社会保障費を増やす事は増税以外ないのですが、アベノミクスの国土強靭化計画に増税分が使われる事は国民の選択ですから仕方ありません。前ブログで指摘したようにTPP参入に関係なく「混合診療導入による保健医療の制限」をかけてゆく以外選択肢がない状態なのです。

 

メタボ市販薬に物言い…病気発見遅れると医師会

読売新聞  3月6日(水) 配信

 

 メタボ対策の薬もドラッグストアで買えるように--。そんな厚生労働省の方針が揺れている。

 医療用医薬品から切り替えた「スイッチ薬」を活用し、メタボ予備軍を救い、医療費も抑制するという一石二鳥の作戦だったが、昨年末に承認された第1号は、医師会の反発で医師の診察なしには買えない異例の取り扱いに。今後の承認についてのルール作りも進んでおらず、生活習慣病薬の取り扱いは宙に浮いた形となっている。

 同省が昨年末、生活習慣病薬で初めてスイッチ薬として承認したのは、持田製薬の「エパデール」で、4月中旬から発売予定。イワシに含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)を精製した薬で、高脂血症や動脈硬化に効果があり、医療用医薬品としては昨年3月までの1年間で381億円を売り上げた。

 スイッチ薬は、花粉症や頭痛・生理痛など比較的軽い病気に対応する薬が多かったが、厚労省の専門家検討会は2002年、生活習慣病薬にも拡大する方針を決定。よく効く薬を手軽に使えるようになれば、予備軍も含め国内に1400万人いるとされるメタボの人の健康管理に役立ち、医療費の抑制にもつながると考えたからだ。

 ところが、承認は難航した。エパデールの場合、10年、11年の同省薬事・食品衛生審議会(薬食審)で議論されたが、承認は見送られてきた。日本医師会などが「薬を飲んでいる安心感から病院に行かなくなり、病気の発見が遅れる」と反対したためだ。

 今回、初めて認められたものの、異例の「条件」が付いた。通常のスイッチ薬は医師の診察なしで購入できるが、エパデールを買う際は、「医療機関を受診した方に限られます」と記されたチェックシートに、「診察で通院治療は不要と告げられた」「診断を受けた病院名」「診断日」などを記入させるというものだ。

 

これは「予防医療を保険診療から切り離そうとする厚労省の試みが頓挫した」と言い換える事ができるニュースです。開業医達をいかに急性期疾患の現場に戻すか、病院で行っている医療を肩代わりしてもらうか(在宅医療等)という問題に行き着くのです。都市部では開業医は既に飽和状態にあります(医師不足ではない)。開業するよりも救急医療に携わっていた方が良い、という状態になれば1番目のニュースに示されたような事態はなくなります。

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書評「ロシアから見た北方領土」

2013-03-04 19:26:54 | 書評

書評「ロシアから見た北方領土」岡田和裕 著 光人社NF文庫2012年刊

 

著者は新聞記者から作家になった岡田和裕氏1937年中国東北地方生まれ。日本とロシアが安政年間に領土問題、交易に関して初めて接した時(1854年)から1.5世紀に渡る歴史をロシア側からの資料と視点から眺めたもので、勿論日本がもつ各種資料と比べながらできるだけ公平な視点で北方領土問題を考えようという書籍です。とかく「一方的な日本固有の領土の侵略」と「頑迷固陋なロシアの態度」だけに目が行きがちな北方領土問題を多角的にとらえ、特に将来ロシアとの平和条約締結、共同開発には欠かせない国境線の確定(これが領土問題そのものですが)交渉を行う上では有用な資料となりえると思いました。

 

構成は江戸時代における日本・ロシアの北方探検、開発の歴史に遡り、開国後の交易交渉、樺太千島交換条約における確執、その後のロシア、ソ連との戦争状態と満州、北方地域の所有の移行経緯、第二次大戦とそれ以降のやり取り、現代における日露交渉という内容でまとめられています。特筆すべきは帝政ロシア時代の探検に基づく千島列島の開発や松島藩とのやり取りなどがロシアの資料を十分に利用して書かれている事です。

 

ロシアから日本を見ると、「日中は近代で2回(日清戦争、日華事変)しか戦争をしていないのに、ロシアとは4回(日露戦争、シベリア出兵、ノモンハン事変、第二次大戦)もしている。日本は侵略好きな油断ならない国家だ」という事になるようです。こちらの認識では「油断ならない熊はロシアだろう」と思ってしまうのですが、実際日本固有の領土をロシアが侵略したのは第二次大戦末期に北方領土を奪った事と不当なシベリア抑留をした事くらいで(それでも十分悪い奴と思いますが)、ロシアにしてみるとシベリア出兵やノモンハンもかなりな痛手であった事が資料から解ります。

 

江戸期における開発では日本が1635年には択捉島に到着していた一方で、帝政ロシアが1697年にカムチャッカ半島に到着ですから日本に一日の長があり、樺太に至っては1422年の室町時代から多賀城の碑に記述があるというので、何らかの行き来があったものと思われます。しかし日本もロシアも元々現地に居住していたアイヌ・クリールといった人達に混ざって動物や魚を捕ったのが始まりであって、いつ記載があるからその土地が記載した国のものというものではないと思います(アイヌ原住民の物というのが一番正しい)。でないと太古に記載があるという理由で、日本は中国の所有物になってしまいます。

 

「千島や樺太は諦めるとして、北方4島は日本固有の領土だろう、ソ連(ロシア)が終戦のどさくさに奪って居座っているのはけしからん」という日本の主張は国際法を含む各種法的には正しく、正面切って公正な場で判断を仰げば日本に利があることは間違いありません。しかしソ連にしてみると第二次大戦後、北海道の領有は諦めたのだから小さい島位でガタガタ言うな(主にアメリカに向かっての主張)というのが本音のようです。日本は独立国といっても至る所に米軍基地があり、第三者的に見てアメリカの属国であり、国際問題において大戦後米国に反旗を掲げた事が一度もないのですから、日本を一人前の国家として扱えない、領土問題を話し合うにもまず米国の意向を確かめてからでないとできないのであれば、日本と話し合うより米国と話せば済む(米国は勿論取り合わないですが)という考えも納得できるものです。

 

4島を返してほしければ沖縄を含む日本全国から米軍を追い出せ、という非公式声明も彼らの本音と言えるでしょう。ソ連が崩壊して、ウクライナやバルト諸国などソ連時代に比べて領土がかなり減った現在のロシアにとって僅かな島であっても領土を日本に割譲するというのは選挙制度で指導者が選ばれる体制である現体制ではなかなか難しい問題であることは間違いないでしょう。6章7章ではエリツイン、プーチン時代における日露交渉の経緯が書かれているのですが、エリツインが提案したとされる5段階案(20年くらいかけて、開発、経済交流を優先させてから4島の管理方法を決める)などは建設的対応としてもっと積極的に考慮してもよいのではと思いました。プーチンは2島(歯舞色丹)プラス北方海域を一つの提案としているのでは、という推測がされていますが、最終決定は先延ばしにして交流を優先するという方法は現代社会においては唯一の建設的対応のように私は思います(尖閣のようにそれを壊すことも容易と言えますが)。

 

本書の巻末には1945年4月の「日ソ中立条約破棄に関するソ連の覚書」戦後の日本の領域を示した「連合国最高司令官訓令677号」など歴史的に参考になる有益な資料がまとめられており、領土問題を考える際の資料集としても参考になると思いました。

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TPP後の医療はこうなるだろう

2013-03-01 19:49:37 | 医療

2013年2月22日の安倍オバマ首脳会談における日米共同声明の第三パラグラフにおいて「自動車部門や保険部門」と具体的分野を挙げて、「TPPの高い水準を満たすことについて作業を完了すること」という明示がなされたことから、その具体的な内容としては日本の医療において今後混合診療を促進させて、その自費部分にかかる医療保険を米国の保険会社に関与させてゆく方向になると推測されます。

 

日本では国民皆保険制度の崩壊を危惧する論調がありますが、私はいくらアメリカでも完全に日本の社会制度を頭ごなしに変更させる事まではしないと思います。そのような事で反感を買うよりは「お金が儲かれば良い」という方向に行く事の方が合理的です。アメリカにもメディケアやメディケイドなどの公的保険があり、試行錯誤ながら機能しているのですから、そういった各国独自の制度を強制的に変えるような事はしないはずです(間接的に米国が儲かるように変えざるを得ないような事はするでしょうが)。

 

日本の医療保険制度はもう現実的には費用面で維持できない状況になりつつある事は厚労省の官僚ならずとも各医療者や保険を担当している人達(保険者)は理解しています。高齢者の介護費用を切り離したり、金のかかる終末期医療を在宅にシフトしたりする方策も費用軽減には限度があります(逆に増加しつつある)。また、医療技術の進歩は薬剤や医療機材のコスト上昇に跳ね返り、急性期疾患の発生を予防するはずの予防医療がまた総薬剤コストの上昇を招くといった悪循環に陥っていることも否めません。

 

かといって日本人の長寿と健康を支えてきた優れた健康保険制度を維持する事は日本国民全て反対する人はいないと思います。結果として、制度を維持しつつ費用増加を抑える方策は1)総コストが上がる分、保険点数を下げて帳尻を合わせる、2)保険適応とする医療に制限を設ける、の二つしかありません。混合診療を認めない方針から今までは1)の方策を取り続けていたのですが、病院の9割以上が赤字となり、厳しい医療やきつい介護を行う人材がいなくなって医療そのものが崩壊の危機に見舞われる状況になってすでに限界が示されています。だから必然的に次は2)の方策を取らざるを得ない状況になっていると言えます。これは今回のTPP問題の有無に関わらずなってきた状況であり、あながち米国の責任とはいえない問題です。

 

ではどのような形で混合診療が入ってくるかを考えてみます。

1)      急性期疾患の場合

・同じ病態で複数の治療方法がある場合、最も安価なものを保険診療で保証して、高度先進医療などに相当する差額分を自費とする(今でもその形はあるがそれをもっと拡大する)。

 

2)      慢性疾患・予防医療の場合

・同系統の薬剤は、後発品などの最も安価なものを保険診療で保証して、新薬や効果の改善が計られた薬品の差額は自費とする。

・複数の予防医療を受ける場合は、優先順位を付けて優先度の低いものは自費とする。

 

この場合、保険診療の範囲で医療を受けても自費分を加えても結果が同じでは、誰も自費分をまかなう任意医療保険には入らないでしょうから、任意保険に入ってその分をある程度プラスしたほうが医学的にも「少し」良い結果が得られる、設定になると予想されます。この「少し」のさじ加減が大事で、あからさまに差が出てしまうと「金持ち優先の医療」とか「貧乏人は死ねと言うのか」といった批判が出てしまいます。各人は車の保険と同様に、決められた強制保険と補償内容が異なる任意保険(自費分3割補償、5割補償とか。がんは全額とか)を懐具合を気にしながら入るようになるでしょう。任意保険は収益が上がらないといけないのですから、何れにしても国民の医療費負担は増える方向になります。

 

医療者側は患者さんの保険の内容を見ながら、治療の選択枝を提示することになりますし、急性期疾患を扱う病院は任意性の高い治療法ができる病院かどうか、医師は高度な治療ができるかどうかで任意保険からの収益が異なることになるので米国的に病院の差別化、能力に応じた医師給与の差が出てくることになるでしょう。

 

このような改革は普通の医療改革として行うことは抵抗が強くてまず不可能です。TPP参入の結果外圧としてやらざるを得ないので、という状況になれば2−3年以内にも始まると思われます。

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