rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

混乱する新型コロナパンデミックのゆくえ

2021-03-27 00:56:25 | 医療

新型コロナ感染症による緊急事態宣言は終了しましたが、新規感染者数は「下げ止まり」であるとか、「緩やかに増加傾向」などとされ、早くも第4波に備えよとせっかちに煽り立てるメディアも出てきました。世界の動向も北半球の冬場のピークは明らかに過ぎましたが、欧州の一部やブラジルなどの南半球は増加傾向を示しています。

いつも引用しているworld meterの図にもその傾向が見て取れますが、変異種がどうであれ回復率や死亡率は変動しておらず、新型コロナ感染症の肝の部分に変化はないと考えます。

世界における感染者、回復者の数の推移 一度低下してやや増加      ウイルスの悪性度は変異種だろうと変化なし

国別の100万人あたりの感染者はワクチン投与が進むイスラエルでは確かに抑えられつつあるようだが一部欧州や南米は増加傾向

 

〇  パンデミックは終息するか

 

2009年の豚インフルエンザパンデミックは翌年の8月にはWHOが終息宣言を出しましたが、決してそれ以降H1N1感染症が0になった訳ではなく、前にも示した様に毎年季節性インフルエンザの一部として流行を繰り返しています。したがって新型コロナ感染症もパンデミック終息のためには感染者が0になる必要はなく、人々が集団免疫(herd immunity)に達したと考えられれば終息として問題ありません。この基本を勘違い、または全く分かっていない人たちが沢山いるようです。2020年のパンデミック初期に集団免疫を獲得することで「感染力は強いが毒性が弱い」この「流行り病」を乗り切ることは何故か「非人道的」と非難されました。人類史上、エボラやペストの様な死亡率の高い「流行り病」は「隔離による抑え込み」で対応するしかありませんでしたが、所謂「流感」に相当する物は多くの者が罹る事で免疫を獲得する「集団免疫」によって乗り切ってきました。だから今回の新型コロナ感染症も私が3月の段階で断言した様に「集団免疫による感染症の克服」が唯一の正しい選択だったのです。しかし誤った「隔離による抑え込み」政策が議論もされずに選択され、感染症による被害と比べ物にならないほど大きなダメージが「経済と人々の生活」にもたらされました。これは仕方がない事ではなく、明らかな選択の誤りですが、もう誰も責任を取る事はないでしょう。

 

そして最近になって「ワクチンによる集団免疫の獲得」という、結局「集団免疫による克服」作戦にこっそり目標がすり替えられ、「だから全ての人はワクチンを接種せよ」というワクチン推進論の根拠にもされてしまいました。

 

〇  誤った液性免疫主導の免疫論

 

ワクチンの有効性や集団免疫の達成度合いを論ずる際に話題になるのは「ウイルスに対する抗体の量」ですが、基本的に誤りではないものの、免疫にはB細胞が作る抗体を中心にした液性免疫とT細胞やNK細胞を主体とする細胞性免疫の二本立てで論じなければ片手落ちです。免疫には自然免疫、獲得免疫があり(それも解らない人は以前簡単に説明した項を見てください)、感染や腫瘍に対する初期の免疫機構は昆虫にもある自然免疫で対応しますが、全力で対処するには細胞性免疫と液性免疫が共同でその異物に特化した獲得免疫の機構を動員して対応します。現在感染症に罹っていれば「治癒」のためには抗体の量が問題になりますが。感染予防や細菌に対する抵抗力を論ずる場合は、抗体の量だけでなく異物に対応する能力を免疫機構が既に持っているか、メモリーT細胞の有無が問題になります。つまり抗体はなくても、T細胞がその細菌やウイルスが侵入してきた時に対応する能力があれば、感染を成立させずに排除できるから「免疫がある」と言えるのです。ただ抗体量の測定と異なり、T細胞の検査は煩雑で集団での検査が困難であるため、論文化にもなりにくい欠点はあります。しかし抗体の有無だけで免疫を論ずるのは誤りなのです。

 

〇  日本やアジアで新型コロナ感染症の感染や死亡が少ないファクターXは何だったか?

一時欧米に比べて日本やアジアで新型コロナ感染が少なく、死亡者も少ない何等かの因子が話題になりましたが、2020年4月の段階で私はT細胞の機能であろうと予測しました。最近各種の論文で、従来からある感冒性コロナウイルスに対する獲得免疫によるT細胞が新型コロナのウイルス感染予防にも役立っている事を証明する論文が出される様になりました。それらの発表を受けて世界は既に集団免疫獲得の段階に達しているのではないか、つまりパンデミック収束に近づいているのではないかという論考も出てきています。以下にBritish Medical Journalのassociate editorであるPeter Doshi博士の論説の要約を載せます。

やや長くなり、意訳になりますが、私がブログで記している内容が根拠のある事であると解ると思います。BMJは英国における権威ある雑誌でくだらない日本のメディアの何十倍も信用できる内容です。よろしければ読んで見て下さい。

(以下引用要約)

BMJ 2020;370:m3563 http://dx.doi.org/10.1136/bmj.m3563 Published: 17 September 2020

 

コロナウイルス:Covid-19 既に多くの人に既得免疫があるのではないか?

SARS-CoV-2は人類が初めて遭遇するウイルスであると信じられているが、それは本当だろうか?Peter Doshiが最近のウイルスへの免疫反応の研究論文から明らかにする

 

COVID19のパンデミックで多くの方が亡くなったニューヨークなどの地域でも人口の20%ほどしかSARS-C0V-2の抗体を持っていません。それ以外の一般人口の中では抗体保有率は一桁代と報告されています。世界中で公衆衛生上この感染症にどう対応するかを検討するにあたって、ウイルスがパンデミックの前に既存の免疫を持たないヒト集団に入った、つまり「全く新しいウイルス」と仮定してWHOの緊急事態の責任者であるマイク・ライアンは考えました。そしてウイルスが「燃えつきて収束するには時間がかかるだろう」と結論づけました。しかし、ウイルスに感染していない人々のSARS-CoV-2へのT細胞の反応を研究した論文の多くは、パンデミックウイルスが人類にとって全く対応できない新種のウイルスであるのかという問いに疑問を呈しています。

 

〇 新型コロナウイルスはそれほど斬新なウイルスではない?

 

世界各地からの6本以上の論文による報告で、ウイルスへの暴露がなかった人達の「20-50%のT細胞」がSARS-C0V-2に免疫的に反応する事が証明されています。しかしこれらの研究は対象にした症例数がまだ少なく、SARS-C0V-2に対する免疫学的反応の正確な推定値を提供するには至っていません。しかし雑誌CellやNatureに発表されたこれら内容は無視できない貴重な証拠であり、これらの事実はウイルスの成り立ちを知る上でも大事な知識となります。

 

〇 豚インフルエンザで見られた例

 

世界保健機関(WHO)がH1N1「豚インフルエンザ」ウイルスを世界的なパンデミックと宣言してから数ヶ月後の2009年後半、アレッサンドロ・セッテは、この豚インフルは特段人類にとって新しいウイルスではないのではないか、という研究をしていました。

彼らの答えは、成人集団における既存の免疫学的応答、特にT細胞は、「疾患の重症度を鈍くする」ことが解りました。つまり既存の反応性T細胞を持つ人々は、H1N1が重症化しにくいという臨床的特徴を持っていたのです。さらに、米国疾病管理予防センター(CDC)が2009年の流行の間に行った研究では、60歳以上の人々の33%が2009年のH1N1ウイルスに対して交差反応性の抗体を持っていたと報告され、CDCは新しいH1N1株に対する「ある程度の既存の免疫」が存在すると結論付けたのです。

このデータは、2009年以前のWHOとCDCの見解を「パンデミックウイルスに対する免疫を持たない」という仮定から、「パンデミックウイルスに対する集団の脆弱性は、ウイルスに対する既存の免疫のレベルの有無に関連している」と認めたものに変えました。

しかし、2020年には、その教訓は忘れられていたようです。

 

〇 新型コロナウイルスは既存の風邪ウイルスの一種か?

 

新型コロナウイルスに暴露していない人が持つ「免疫反応の起源は、構造的に密接に関連しているいわゆる一般的な風邪コロナウイルスである」と、この仮説を確認した論文の上級著者ダニエラ・ワイスコフは述べています。これとは別に、シンガポールの研究者は、一般的な風邪のコロナウイルスの役割について同様の結論に達しましたが、T細胞の反応性の一部は、動物由来のコロナウイルスであっても、他の未知のコロナウイルスから来る可能性があることを指摘しました。要はSARS-C0V-2のパンデミックへの対応はこれらの免疫反応を考慮して、基本的な仮定のいくつかを再検討する必要性があるのです。

 

〇 集団免疫を過小評価していないだろうか?

 

抗体保有率を測定する血清調査は、SARS-C0V-2に感染した集団の割合を評価するには好ましい方法ですが、集団免疫閾値(どこで集団免疫に達したか)の検討には向いていないかも知れません。というのは、最も大きな被害を受けた地域であっても、少数の人々しかSARS-CoV-2に対する抗体を持っていないと言う事実は、ほとんどの疫学者が「パンデミックは終わっていない」と結論する結果になってしまっているからです。調査対象者の5分の1以上が抗体を持っていたニューヨーク市では、保健局は「現状は集団免疫のレベルに達しておらず、監視、検査、接触追跡が依然として不可欠な公衆衛生戦略である」と結論付けました。「その数が何であれ、私たちは集団免疫達成に近い状態はどこにもありません」と、WHOのライアンは7月下旬に言及しました。

 

〇 集団免疫の閾値について

 

理論的には、伝染病の発生は特定の経過に従います。 免疫力を欠く集団では、新しい感染症が急速に成長します。ある時点で 、この成長のピークが発生し、発生率が 低下し始めます。

1970年代には、この変曲点を集団免疫閾値(HIT)と定義し、その大きさを推定するための簡単な式を提供しました:HIT=1-1/R0(R0は病気の基本的な再生産数、または感染性の影響を受けやすい個人によって生成された二次症例の平均数)。この単純な計算は、多くの予防接種キャンペーンを導き、予防接種の目標レベルを定義するために使用されました。

この式は、特定の集団において免疫が均等に分配され、メンバーがランダムに混合するという2つの仮定に基づいています。しかし現実には人びとはランダムに混合することはないことが解り、本当は人々の接触には濃淡があり、集団免疫はもっと早期に達成されることが解ったのです。

ほとんどの専門家はSARS-CoV-2(一般的に2〜3の間であると推定される)のR0を取り、集団免疫に達する前に少なくとも50%の人々が免疫を持つ必要があると結論付けましたが、Gomesたちは10%から20%が本来の閾値だろうと推測しています。

ドイツのミュンスター大学のウルリッヒ・ケイル名誉教授(疫学)は、無作為に分布する免疫の概念は、集団の健康格差の大きなちがいを無視する「非常に乱暴な仮定」であり、「また、社会状況がウイルスの因子よりも感染拡大因子に重要であるかもしれないことを完全に無視している」と言います。

オックスフォード大学のスネトラ・グプタ率いる別のグループは、人々には既存の免疫があることを考慮して、集団免疫閾値は下げて良いと結論しています。人類に既存の免疫を持つ人々が存在する場合、T細胞が反応する可能性があるため、R0が2.5であると仮定する集団免疫閾値は、人々の間で持つ既存の免疫の量と分布に応じて、感染する人口の60%という値を10%まで減少させることができる、とグプタのグループは計算しました。

メモリーT細胞は、「将来の感染に対する臨床的重症度および感受性に影響を与える能力」で知られており、また「20〜50%の人々がSARS-CoV-2に対して既存の免疫的反応性を持っている」事を論文化したT細胞についての研究は、抗体を持つかどうかが免疫反応の全てではないことを示唆しています。

「私たちが血清検査などの測定を行って、ウイルスに感染した人の数だと結論づけたのは、感染の真の姿を検討する上で無頓着でした」と、カロリンスカ研究所の免疫学者マーカス・バガートはBMJに語りました。「免疫反応はより多彩であり、抗体価を調べるだけの研究は、免疫反応を過小評価する結果につながります。生理学的応答は、一般的に想像する免疫的な反応よりも少ないかもしれません。つまり暴露は必ずしも感染につながるとは限りませんし、感染は必ずしも病気につながるとは限りません、そして病気は必ずしも検出可能な抗体を産生しません。そして、体内では、様々な免疫系コンポーネントの役割は複雑であり、相互に関連しています。B細胞は抗体を産生するが、B細胞はT細胞によって調節され、T細胞と抗体は共に体内のウイルスに反応する一方、T細胞は感染した細胞に対して反応し、抗体は細胞が感染するのを防ぐのに役立つのです。」

 

〇 カーブの予期しない変動

 

バガート博士の母国スウエーデンは集団免疫論争の最前線にあり、スウェーデンのウイルスに対する甘い戦略は多くの議論をもたらしました。バガードは2020年8月にこう述べました。「現在、感染者の数は大幅に減っています。200万人の都市で約50人がCOVID-19で入院しています。流行のピーク時には何千もの症例がありました。ソシアルディスタンシングがスウエーデンにおいて常に不十分だったことを考えると、何かが他に起こったに違いない。」

この「何か」を理解することは、既存の疾患への抵抗性と新しい疾患への交叉耐性の変数を組み込んだ集団免疫閾値を計算する方法を開発したオックスフォード大学の疫学者、スネトラ・グプタにとって中心的な問題となりました。 彼女のグループは、集団免疫閾値は「集団の一部がウイルスを伝染させることができない場合、大幅に減少する可能性がある」と主張しています。

「従来の考え方では、流行曲線の上昇に従ってロックダウンが必要になる」ということですと、グプタは説明しました。「だから、いったんロックダウンを解除すると、そのカーブは上昇し続ける」はずです。しかし、それはニューヨーク、ロンドン、ストックホルムのような場所では起こっていません。問題は、なぜ「ロンドンで病気がそれほど広がっておらず、血清学検査が示すようにウイルス感染を経験したのは全体の15%に過ぎないのか」ということです。「そのような状況下で、ロックダウンを解除すると、他の多くの設定で予想されているように、感染症例数の即時かつ相応の増加が見られるはずです」と、グプタはBMJに語りました。それは単純な事実です。問題は、他に考えられる理由が多いという事です、と彼女は言います。一つは、ソシアルディスタンスが行き届いて、人々が広がりを抑えているということです。もう一つの可能性は、多くの人々がT細胞応答または何か他の免疫があるということです。「それが何であれ、感染に対して脆弱でない人々が人口のかなりの割合であるならば、SARS-CoV-2がさほど広がっていない状況についての説明が付くのです。」とグプタは付け加えました。バガートのスウェーデンでの研究は、この立場を支持しているようです。covid-19が確認された患者の親しい家族を調査すると、血清陰性または無症候性である人にT細胞応答を発見しました。(他の研究も同様の結果を報告している。)

「非常に多くの人々は感染したにも関わらず、抗体を作成しませんでした」とバガートは結論付けています。

 

〇 より深い議論

 

T細胞免疫についての研究は、ニュースを支配しているように見える抗体の研究とは対照的に、メディアの注目は集めていません(バガートの推測は、抗体研究の方がT細胞よりも研究が容易で、速く、より安価であるため)。最近の2つの研究では、SARS-CoV-2に対する自然に獲得した抗体がわずか2〜3ヶ月後に衰え始め、繰り返し感染する可能性があるとの憶測が煽られていると報告されています。

しかし、T細胞免疫の研究は、実質的に異なる、より楽観的な解釈を可能にします。シンガポールの研究では、例えば、SARS-CoV-1に対する 反応性T細胞が感染の17年後にもその患者で発見されています。「我々の知見はまた、関連したウイルスに感染した後に生成された長期的なメモリーT細胞が、SARS-CoV-2による感染に対して保護的または改変することができる可能性を高めている」と研究者は報告しています。

T細胞研究はまた、子供たちが驚くほどパンデミックから除かれた理由、なぜそれが人々に異なって影響を与えるのか、そして子供と若い成人の無症候性感染症の割合が高いなど、covid-19ウイルスの他の謎に光を当てるのに役立つかもしれません。

私が話した免疫学者は、T細胞がニューヨーク、ロンドン、ストックホルムのような場所が感染症の波を経験し、その後の再流行を経験していない理由を説明する重要な要因となり得ることに同意しました。これは、血清学だけで測定できるものではなく、既存の免疫応答と新たに形成された免疫応答の組み合わせの結果である免疫の保護のしくみが、現在集団に存在し、新しい感染症の流行を防ぐことができるからであると説明されます。

しかし、彼らはこれが憶測であると注意喚起もしています。正式には、既存のT細胞反応性の臨床への影響は依然として未解決の問題です。「人々はまだエビデンスがないと言いますが、彼らの主張は正しいです」とバガートは言います。彼の研究の過去に集められた献血者標本はすべて匿名化され、時間系列的なフォローアップを妨げていると付け加えました。

T細胞応答は有害である可能性があり、疾患の重篤化につながるという考えがあります。「私はその可能性があるとは思わない」と、セッテは完全否定ではないことを強調しながら言いました。「これは誤りである可能性もあります。交叉免疫の能力が小さすぎるか、ウイルスには弱い影響しかないかもしれません。もう一つの結論は、交叉免疫が違う結果を生み出し、より良い反応を生み出すことです。ヴァイスコプフ博士は次のように付け加えました。「今、私はあらゆる可能性があると思います。私たちは知らないだけです。私たちが楽観的な理由は、(T細胞応答が)実際にあなたを助ける事を他のウイルスの例に見てきたからです。その一例が豚インフルエンザで、既存の反応性T細胞を持つ人々が臨床的に軽症化された事が研究で示されているのです。」

ヴァイスコプフとセッテ博士は、SARS-CoV-2への暴露前に登録された人々の集団に継続的に適切に計画された前向きの研究を行う事で、説得力のあるエビデンスが得られ、既存のT細胞応答の有無にかかわらずそれらの臨床過程を比較することができるだろうと主張している。

既存のSARS-CoV-2 T細胞反応性の保護値を理解することは「ワクチンの状況と同じです」と、シンガポールのデュークNUS医学部の感染症教授アントニオ・ベルトレッティは述べています。「ワクチン接種を通じて、抗体とT細胞産生を刺激することを目指し、このような免疫の誘導が保護されることを願っています。しかし、実際に効果を発揮するには、第III相臨床試験が必要です。」ドイツの研究者は、彼らのT細胞所見は、既存の反応性を臨床結果にマッピングする「世界的な前向きな研究を開始する決定的な根拠」を表していると主張し、同じ結論に達しました。他のグループも同じことを求めています。「パンデミックの開始時に、重要な全体図は、誰が感染し、何人が保護されたかを理解するために抗体データだけを調べる事から脱却する思考が必要だったということです」と、インペリアル・カレッジ・ロンドンの2人の免疫学者は7月中旬の雑誌サイエンスの免疫学の解説で書いています。「この新型コロナ感染症という困難な感染についてより多くのことを学んだので、T細胞データも本当に必要だと認める時が来たのです」

理論的には、covid-19ワクチン試験のプラセボアームは、既存のT細胞反応性を持たない人々とSARS-CoV-2の臨床結果を比較することによって、このような研究を行う簡単な方法を提供することができると推測されます。しかし、2つの大規模なプラセボ対照第III相試験で研究されているすべての一次および二次的な結果尺度のBMJによるレビューは、そのような分析が行われていないことを示しています。

既存の免疫は、将来のワクチンよりも新しいウイルス感染から身体を守ることができるでしょうか? 「T細胞の集団的データを解析する」という研究をしなければ、私たちはその答えを知り得ないでしょう。

 

(引用終わり)

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新型コロナワクチンについての諸々

2021-03-25 14:07:26 | 医療

日本では医療従事者に対して、ファイザー社製mRNAを用いた新型コロナワクチン(コミナティ)の投与が開始され、既に30万人以上に1回以上投与されています。幸い生死に係わるアナフィラキシー反応は報告されておらず、急性期反応に関しては「安全そうだ」という結論です。私も3月中旬に1回目の投与を受け、他の人にも数十人投与しました。私の病院においては、周辺医療圏の医療従事者を含む数百名に投与しましたが、1回投与目においては重篤な副反応は見られませんでした。自分個人について、通販製品の使用感想のような報告になりますが、投与直後はややぼうっとした感じでふらふら感があり、椅子に座っていましたが、30分くらいで普通に歩けるようになって業務に戻りました。1-2日投与された左肩に痛みはありましたが、腕が上がらない程の腫脹はなく現在に至っています。私個人としては、以前からブログで解説しているように2回目の投与は必要性のエビデンスがなく、副作用が強くなり、永続的な障害につながるリスクが高いので受けません。まわりの医療従事者間でもワクチンに対しては「仕方なく受ける」「明確な意思を持って受けない」「積極的に受ける」に分かれており、それぞれ自己判断で決めれば良いと思います。成人していますが、自分の子供達には「まだ受けないほうが良い」と話しています。

 

以下に世界で報道された種々のワクチンの最近の話題についてまとめます。

 

1) Sinovac(中国)製不活化ワクチン

多くの論文でヒトに対する第1相試験が2019年4月に開始されたことが明らかになっています(参考1)。また全人代を前に先日Sinovacの幹部達が2019年3月に社内で先行投与を受け、現在も高い抗体価を維持していると「自慢」する報道がありました。

Covid-19は全ゲノムの配列が明らかになったのは2019年1月中旬です。不活化ワクチンを工業製品として製品化するには、確実なウイルスの同定、分離培養、適切な不活化、効果の確認(適切に不活化されているかを含む)、vero細胞(アカゲザルの株化した腎上皮細胞)など(インフルワクチンは鶏卵を用いるが、ウイルス全体を培養するコロナはveroを用いたと書いてある)を用いたウイルスの工業的純粋大量培養と不活化した製品化、という過程を経る必要があり、これを2ヶ月で行なうことは「不可能」です。論文では「ワクチンに使用したウイルスは武漢の患者から得た」と記載されていますが、時間経過として物理的に不可能であり、ウイルスは2019年秋の段階で分離同定されていた、つまり「武漢のウイルス研究施設で既に分離培養されたウイルスがあった」と考えざるを得ないのです。この素人でもわかる明確な事実をメディアが取り上げないのは何故なのか不思議です。

この武漢ウイルス研究施設で同定された「原種Covid-19」は、パンデミック以降の段階で既に800以上の変異種に変化しています。Sinovac製不活化ワクチンの効きが悪いという評判があり、ADE(抗体依存性免疫増強)による感染の悪化さえ危惧されている原因はこの「原種を不活化」したという点にありそうです。日本で毎年投与される季節性インフルエンザ不活化ワクチンがA、Bの大きなくくりが一緒でもHやNといった変異型が違うと効果がなく、毎年投与が必要になることからも理解できると思います。

 

2) アストラゼネカ製DNAワクチン

チンパンジーのアデノウイルスをベクターにしてその中にコロナウイルスのスパイク蛋白の遺伝子を組み込んでヒトに感染させ、スパイク蛋白の抗体を作らせるという仕組みですが、ウイルスは増殖しないものの感染細胞は蛋白を作り続ける事になるので作られたスパイク蛋白が血栓症の原因になる可能性が否定できないという点で一時欧州の国々で使用中止になりました。コロナウイルスのスパイク蛋白が血管内皮にあるアンジオテンシン変換酵素(ACE)に接着してそこから血栓形成が惹起される事は多くの論文(参考3)で証明されています。EMA欧州医薬品庁は「ワクチンのメリットはリスクを上回る」という特に広範なエビデンスを示さない「決意」ともとれる異例のメッセージを公布して、ワクチン投与を再開させましたが、勿論誰も責任はとりません。

 

3) ファイザー製mRNAワクチン

コミナティワクチンについては、前回のブログなどでもその危険性や不可解な部分について説明してきました。新型コロナワクチンとしての効果はあるだろう、と思っています。不活化ワクチン(正しく作られたものであれば)の方が安全性は高いと思いますが、DNAワクチンの様にずっと抗原が作られ続けるリスクや、1度しか投与できない(ベクターに対する抗体もできるから)という物よりは安全かもしれないとは思っています。しかし

  • 細胞外に大量の非生理的なmRNAが存在する状態は、「全生物の進化」の過程において一度も経験したことがない事象である、という事実。
  • 細胞内で通常数時間以内に分解され、消滅するmRNAが「2週間以上存在し続けて蛋白を作り続ける」などという異常に生物細胞は「正常状態」を保ち続けられるのか、について一切の検証がなされていないことには大きな懸念があります。

 

現在自分の体内で上記の事が起こっており、自分の身体を使ってどのような異常が起こるかを検証中でもあります。

 

参考1 Zhang Y et al. Safety, tolerability, and immunogenicity of an inactivated SARS-CoV-2 vaccine in healthy adults aged 18–59 years: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 1/2 clinical trial Lancet infect disease 2021,21, 181-192

https://doi.org/10.1016/ S1473-3099(20)30843-4

 

参考2 Xia S et al Effect of an inactivated vaccine against SARS CoV2 on safety and immunology outcomes. JAMA 2020 324 (19) 1-10 doi: 10.1001/jama.2020.15543: 10.1001/jama.2020.15543

 

参考3 Rodoriguez C et al. Pulmonary endothelial dysfunction and thorombotic complication in COVID-19 Patients. AJRCMB 2020 12 10.1165/rcmb.2020-0359PS

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街を唄った洋楽とラップ

2021-03-24 18:18:38 | 音楽

今回のブログは思いつきで音楽を語っているので、まったく専門外、勘違いや思い込みが多い内容ですが、まあ個人の経験と感想ということで受け流して頂ければと思います。

 

街の生活を唄った洋楽は昔からありますが、街そのもののご当地ソングというよりはそこに生きる人の気持ちとか、特に都市部での既成社会への若者のプロテストが賞賛されてヒットにつながるといった傾向は洋の東西を問わずあると思います。特に不満や葛藤を強く訴えかける内容が現在の「ラップ」や「ヒップホップミュージック」につながっていったのだろうと感ずるものがあります。

 

Stevie Wonder  “Living for the city”  スティービーワンダー「汚れた街」1973

中学・高校の頃に耳にして「何だこれは?」という感覚を覚えたのはまだあまり日本で知られていなかったスティービーワンダーの「汚れた街」という曲で、1973年のビルボードR&B1位を取ったヒット曲です。何を唄っているか良く分からなかったものの、単調なリズムに乗せて訥々と訴えかけてからサビで「何とか街で生きているぜ」みたいな曲だったので今までにない新鮮さがありました。日本でも「謡」とか西洋の宗教的なチャントといった言葉で訴える様な歌い方がありますが、日常的な生活の不満やプロテストをメロディよりもリズムを主体にのせて唄うやり方が洋楽の分野に現れたのは衝撃だったと思います。

 

Crusaders  “Street life”  クルセイダーズ 「ストリート・ライフ」1979

ジャズを聴くようになったのは大学に入った1980年頃からですが、カリフォルニアの街の特に黒人たちの生活を唄ったストリートライフはラップではありませんが、当時全く若手だった黒人シンガーRandy Craufordをフィーチャーして長尺の曲構成で、ストリートで生活する黒人たちの様子を歌い上げた点が新鮮でした。Wilton Felderの突き抜けるようなサックスがラップではないものの「ナラティブ」にイメージを伝えます。1993年頃に1年間ニューヨークで単身留学生活を送りましたが、寮で良く聞いていたラジオで週1度はこの曲がかかっており、「NYのイメージにも合っているのだろう、スタンダードと言われる曲はこうして作られるのだろう」と思いました。日本人にはピンときませんが、「十字軍」という名前の黒人グループの画期的といえる楽曲は、キリスト教社会の米国ではそれなりに強い衝撃で迎えられたのではないかと思います。

 

Pet Shop Boys “West end girls”  ペットショップボーイズ ウエスト・エンド・ガールズ1985

ブリティッシュロックのラップの走りかな、と思うのがこれです。唄っている内容はどうにも憂鬱で自殺願望的なのに「なんともファッショナブル!」と思わせるサウンドでPVもロンドンの街並みが懐かしい感じです。今でも大人気で2012年のロンドン五輪の閉会式でも演奏され、2019年ウエストエンドのハイドパークでのライブでは会場全体で大合唱であり、「割と暗い歌詞なのに、どんだけ英国人はこの曲好きなんだ!」と思わせます。確かに英国らしい重厚で、格調を感ずる所もあって私も今聴いても新鮮さを感じます。

 

Jay Z featuring Alicia Keys “Empire State of Mind”  ジェイZ  エンパイア・ステイト・オブ・マインド 2009

これはもうラップ、ヒップホップの完成形とも言えると思います。2009年の全米1位のヒット曲ですが、雰囲気は1993年頃に私が単身赴任でNYの街を歩き回っていた頃の感じそのもので懐かしい感じがします。スティービーワンダーの汚れた街ではNYに着いた途端に麻薬の冤罪で逮捕されて散々だ、という内容が唄われますが、このJay Zの曲はそこまで否定的ではなく、「うまく行かない事も多いけど、夢や希望がある」内容です。それもそのはずで、作詞はJay Zと同じアパートに昔住んでいた人がロンドンでホームシックになり、NYを懐かしみながら書き上げた物だそうで、一度却下されたものがたまたまプロデューサー目に留まって大ヒットにつながった曲だそうです。Alicia Keysのグラマラスなサビの歌声もまたいい感じだと思います。

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新型コロナ変異種は脅威か?

2021-03-16 19:09:43 | 医療

新型コロナ感染症の感染者数が春の訪れとともに世界的に減少しています。延長した非常事態宣言も終了の方向になりつつありますが、新型コロナウイルスの変異種による感染が広がりつつあり、その変異種の毒性が強いという「触れ込み」で新たな恐怖を煽る行為がメディアによって続けられています。論文名やジャーナル(専門誌)も紹介して死亡率が高いといったアジテーションが行われています。また旧来型よりも若年者の感染が増加している事も変異種の脅威を強調する原因として使われています。私も基になった論文を読んでみて、メディアで紹介されている事は「事実」であると確認しました。但し、事実記載のどこを紹介するかによって「脅威が事実」かどうかは変わります。以下に医学論文を「脅威に見せるマジック」について科学者の目で種明かしします。

 

〇 死亡率は1.64倍だが、生存率が99.7%から99.6%になっただけ。

 

変異種と元の種の死亡率を比較したBritish medical journalの論文(参考1)では要旨(abstract)の結果に示した様に「95%の信頼区間をもって感染者の死亡率が1.64倍増加した」(図の黄線)とあります。しかしそれは倍率の比較であって、死亡者の実数はそれぞれ5.5万人の患者のうち、死者141人と227人の比較であって、生存率は99.7%であったものが99.6%になっただけだということも論文で示されています(下図)。100人の患者のうち、0.3人が死亡していたのが0.4人になったのが天下の一大事でしょうか?しかも後に示すように、この増加も「統計的なマジック」である可能性があるのです。

BMJの論文研究のデザインがMatched cohort studyと明記されている事も注目  結果に旧型生存率(99.7%左コラム)と変異種生存率(99.6%右コラム)を示す

 

〇 変異種は感染力と若年層への感染は増加したが、死亡率や毒性は変わらない。

 

やはり変異種と元の種の感染性と毒性を比較したCellの論文(参考2)では、要旨に「変異種の感染例には死亡率と臨床的な重症度の増加は認めないが、感染力と若年層への感染増加を認めた」(図の黄線)と明記されています。BMJもCellも世界的に一流の雑誌ですが、何故片方は死亡率が増加し、片方は死亡率や毒性は変わらないという結論になるのでしょう?それは統計を取るための母集団の調整にあります。やや面倒くさい内容になりますが、興味のある方は読んでみてください。本来科学論文を正しく解釈するのは面倒くさいものですし、それができない人、嫌な人は元々専門的な科学・医学を語る資格がないのです。

論文要旨に死亡率と重症度は変わらないと明記されている

 

〇 Cellの論文は実数の比較で論じている。

 

Cell論文の図3として示されているものを示します。図Eは診断後28日以内に死亡する率の変化をグレーの旧型とオレンジの変異型に分けて示したもので、どちらも変わらない事が図上で解ります。一方で図Fに示す様にオレンジの変異種に感染する年齢層が60代以下に多いことが解ります。図Gではゲノムコピーが614Gの変異種で(ゲノム量を測れるリアルタイムPCR上)多く見つかった事が示され、変異種の感染力の高さが示唆されています。これらの結果から「感染力(ウイルス増殖)と若年者への感染は増加したが、死亡率や毒性は変わらない」という結論が導かれたのです。

感染確認から4週以内の死亡率(オレンジが変異種)    感染者の平均年齢の推移(オレンジが変異種)    感染確認時のウイルス量の比較(これはグレーが変異種)

 

〇 BMJの論文はmatched cohort studyと断っている。

 

一方で死亡率を比較したBMJの論文は比較した集団の条件を厳密に一致させた上で死亡率を比較した論文です、と見出しの部分にわざわざ記載しています。これは「医学論文において、ある治療法や薬物の効果、死亡率を比較する時は比較する集団の条件を一致させる必要がある」という大原則に従っている事を示しています。一方が元気な若い人ばかり、もう一方が80歳以上の高齢者で死亡率を比較すれば同じ100人の比較でも高齢者の死亡率が高いのは当然です。だから年齢、性別、人種、医療サービスのレベルなどを一致した上で旧来型と新種の死亡率を比較したのがこのBMJ論文です。しかし全体の母集団から同じ条件の集団を選別してゆく過程で実は「現実」からの乖離が起こってしまうリスクがどうしてもあるのです。図は191万人の患者から条件を合わせるために旧来型54,906名、変異種54,906名に数を絞ってゆく過程を示したもので、母集団のわずか5.7%の集団について検討して、死亡率を比較した事を示しています。もう一方の図に示す用に、年齢、性別、民族は両群間でほぼ一致していることが解るので、比較試験としては適切であると言えます。

母集団から比較する集団を絞り込んでゆく過程     絞り込んだ結果、各集団の条件が年齢、性別、人種間で合っている事を示す

 

〇 matched cohort studyで死亡率に差がでる仕組み

 

この集団を調整する過程で死亡率に差が出る仕組みを非常に単純化した図で説明します。10人中3人が死亡する死亡率30%のウイルスで変異種Aは50歳以下が3名、Bは若年層にやや多い6名が感染したとします。生死は0か1で0.5人死亡はありえないので、本当はx100倍の人数で計算するべきかもしれませんが、単純化のため敢えて10人で計算します。51歳以上の高齢者の死亡率は共に半分位で42%、50%です。死亡率のマジックは、病気で死亡したとは限らない事です。世界中のコロナ死亡の多くは元々ある合併症の悪化であったり、老衰であったり、中には交通事故でなくなった人も感染陽性であればコロナ死亡になっている事は良く知られています。これは医学統計では常識であって、overall survival(総生存率)はdisease specific survival(疾患特異的生存率)よりも常に低いのが当たり前なのです。上記の参考論文では、いずれもコロナ感染による死亡を「感染判明後4週目までに亡くなった人の数」で定義していますが、これでは頑張って治療したけど6週間目に死亡した人は「生存者」に、元々心不全で死にそうだった人がたまたま感染陽性と診断されて2週間目に亡くなっても「コロナで死亡」にカウントされて統計化されてしまいます。これは感染判明後4週間までに亡くなった人を「コロナ感染症が悪化して死亡」とカウントするのが実際の感染症による「疾患特異的死亡」の実数に近い、という論文化された中国武漢での研究結果を踏まえたものだと論文内に説明されています。一般的には世界の「新型コロナ感染症の統計」で感染者の死亡は2-4%とされていますが(日本は2%前後)、発症して重体になり死亡する「疾患特異的」な死亡は全死者の6-7%とCDCも発表していますので、論文で示されている生存率99.7%程度というのは感染判明者の疾患特異的な生存率の近似値として正しいだろうという事になるのです。

ここで、集団を合わせる事で死亡率が変わる説明になります。変異Aと変異Bの死亡率を比較するためにmatched cohort studyをするため、50歳以下と51歳以上の人数を合わせます。Aの50歳以下は3名なのでBも3名にするほかなく、51歳以上のBは4名なのでAも4名で合わせるほかありません。ではそれぞれの人数に調整した後、死亡率を比較すると、Aは24%、Bは35.8%と変異Bの死亡率が上がってしまいます。これはかなり解りやすく単純化したものなので極端な例と言えますが、母集団における死亡者数は変わらないのに集団の調整をした段階で死亡率だけが変わってしまった事が解ると思います。

 

比較をするには集団の条件を合わせる必要があるので、変異Bの死亡率はAより高いという結果は嘘ではありません。しかし、全体の死亡者数が同じである、というのも真実なのです。これが統計やサイエンスの限界であると言えるでしょう。要は論文をどう読み解いて、それを実際の政策や治療に生かすかという「ヒト」の意図や能力が問題なのだと理解いただけたでしょうか。

 

参考1 Challen R et al. Risk of mortality in patients infected with SARS-C0V-2 variant of concern 202012/1: matched cohort study. BMJ 2021 372n579

 http://dx.doi.org/10.1136/bmj.n579

 

参考2 Volz E et al. Evaluating the effects of SARS-C0V-2 spike mutation D614G on transmissibility and pathogenicity. Cell 184, 654-75 2021 (Jan 7)

https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.11.020

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Covid-19ワクチンに対する疑問に答える

2021-03-10 18:16:14 | 医療

前回の医療系の話題である「コロナワクチンの接種は打つとしても1回でよいだろう」でも言及しましたが、コロナワクチンについて説明するべき内容について具体的に指摘しました。今回in deepさんのブログでドイツにおいてCovid-19感染症への対応に批判的な科学者達の団体が企画したワクチンについての専門家(ヴァネッサSクリューガー博士、ほか)を招いた公聴会が紹介されていて、ファイザー/BioNTech製のワクチン(コミナティ)について同社がリリースした資料に基づく説明がなされていて疑問を解く参考になったので紹介します。尚、コミナティについての厚労省の説明はここで示されています。

 

以下にrakitarouが提示した疑問に対する、聴聞会などで示された答えに相当する部分と、その答えについての感想を示します。

 

〇  mRNAとして体内に注入される遺伝子配列(AUGCかATGCからなる)の明示

 

トジナメラン(ヒトの細胞膜に結合する働きを持つスパイクタンパク質の全長体をコードするmRNA)  厚労省による説明ではスパイク蛋白の全長が含まれるとされます。但し、聴聞会で明らかにされたように、製品であるコミナティにこの有効成分がどれだけ確実に含まれるか、夾雑物(増殖用大腸菌のDNAやmRNAの断片)がどの程度あるかは明らかではありません。製品の品質を調べる「標準製品」が現在作られていない由です。

 

〇  投与されたmRNAに反応する宿主側の細胞の特定

 

主たる細胞は注入部位の筋細胞ですが、注入後15分で20%は肝臓内でも特定され、脾臓や生殖器細胞でも血流で運ばれた事が発光酵素ルシフェラーゼmRNAを用いた実験(使用量はワクチンで用いられる30マイクログラムの15分の1である2マイクログラムで実験)で証明されている。つまり体内いずれの細胞にも作用し得ると言える。

 

〇  反応して作られるタンパク質の機能と構造

 

mRNAの設計上はスパイク蛋白の全長が作られる事が企図されているが、断片化されている場合は異なる3次構造を持つ蛋白が作られることになり、それに反応する抗体も本来のスパイク蛋白とは異なる物が作られ得る。タンパク質は4次構造まであることは高校以降の生物学で習うと思う。聴聞会ではこの誤った蛋白が宿主免疫に悪影響を及ぼす可能性は少ないと分析している。

 

〇  蛋白を異物として認識する宿主の免疫細胞の特定(メモリーT細胞までの道のり)

 

クリューガー博士が公聴会で説明しており以下になります。抗原提示細胞(APC マクロファージ、樹状細胞、B細胞)がmRNAに反応して異常蛋白を作った細胞が発する何等かのサイトカインを認識してT細胞を連れて異物蛋白を作る細胞の所に行き、反応した細胞が作って放出したスパイク蛋白を捕食したり、蛋白自体を分解して提示している反応細胞に対応することで、APC細胞表面のクラスII MHC分子にスパイク蛋白(や破片)を乗せてヘルパーT細胞に免疫応答するよう指示します。このT細胞がB細胞や他のT細胞に抗体産生や細胞攻撃の指令を出して獲得免疫が形成されます。ただこの機序は単純ではなく、特に本来自己である(筋)細胞が異物を提示することでキラーT細胞からアポトーシスを命じられたり、遺伝子の媒体である陽性荷電したLNP(脂質ナノ粒子)が細胞毒として機能する事も考慮する必要があります。参考の図はコロナ制圧タスクフォースのサイトから引用しました。

参考図はワクチンに対する反応ではなく、一般的なウイルスに対する免疫反応の機序を示す

 

この機序については極めて重要ながら、複雑系で個人差もおこり得る内容であり、将来自己免疫疾患やアレルギーに発展する可能性がある部分です。本来ならばこの機序について安全性の見極めに数年かけるのが常識であって、「とりあえずやっちゃえ!」が今回のワクチン接種であることは知っておくべきだと公聴会でも説明されます。「mRNAワクチンは安全」などと自信満々で話す人は明らかな「嘘つき」あるいは、「科学は無知」のどちらかと断定して良さそうです。

 

〇  宿主が作る中和抗体が多種なのかモノクローナル(1種類)に近いのか

 

スパイク蛋白以外の部位への抗体ではない、と言う点ではポリクローナルながら目標は一つという事。但し、大量に注入される媒体であるLNPに対する抗体も作られる可能性が高い。またLNPが肝機能障害(門脈血管周囲細胞の空胞化という組織障害が動物実験で見られた)を起こす可能性も指摘されている。

 

〇  作られた抗体のウイルスへの効果

 

これについては示されていない。いくつかの論文では作られたIgG抗体の量が測定されている。

 

〇  反応した宿主細胞がいつまで抗原を作り続け、反応した中和抗体がいつまで体内に存続するか

 

数時間で蛋白は作られ始めて、抗原は1-4週間後も作られ続ける、主にmRNAの安定性によるが、スパイク蛋白のmRNA安定性の細胞内評価のデータはない。中和抗体は他の論文では1回投与で90日後にも存在したとされる。

 

〇  注入された遺伝子がレトロトランスポゾン化して宿主DNAに取り込まれる可能性の有無

 

公聴会ではクリューガー博士は明言を避けているが、注入されたRNAが細胞内のどこに落ち着くか(核、ミトコンドリア、細胞質)によるとだけ答えている。但し、筋肉注射されたワクチンは生殖細胞にも移行する事は証明されているし、胎児への影響・移行についての情報は全く皆無と言ってよい。ファイザー自体が世界からの副反応などの情報提供を希望している。

 

 

他にも興味深い情報として、今回のコミナティワクチンは1回30マイクログラムのmRNA注入を基本としているが、臨床試験では10マイクロ、20マイクロ、30マイクログラムがテストされ、免疫的な反応の強さはそれぞれでほぼ同じであったが、副反応は量を増やすほど増加したという結果が出ている。しかし何故か製品化された段階で最も副反応が強い1回30マイクログラム投与と決められた。この理由は明らかにされていないが、試験用はかなり純度の高いmRNAが用いられたが、工場で大量生産されている製品化されたコミナティは純度が40-50%の物もあり、ロットによって一様ではない(そもそも検定されていない)ので効果としての安全策で最大の30マイクロが選択されたという工業製品としての純度の問題が背景にありそうだ。また2回打ちの間隔3週間というのも明確な科学的根拠を基に決められたわけではないと明らかにされた。

また基質の一部として使用されるポリエチレングリコール(PEG)に対するアレルギーの危険性も指摘されています。PEGは化粧品や保湿剤としても汎用されていて、女性が日常的に化粧品として使用しています。世界中のアナフィラキシー例に女性が多い事、日本において先行接種された医療関係者のアナフィラキシー例11例中9例が女性であったことも(日本は全例重篤にならず救命しえている)化粧品などに含まれるPEGに対する抗体が既に存在したために起こったアナフィラキシーである可能性があります。

粗製乱造ではない、通常の医薬品の様な製薬基準を満たした純度の高い製品であれば、量によって増加する副反応が少ない10マイクログラム投与で十分であり、最近の研究からも1回投与で十分な免疫的効果が得られると私は考えている。それでも量にかかわらずアナフィラキシーは起こるので注意が必要と思いますが。

 

欧米の数十分の一の患者しかいないのに、同じ程度のGDP低下という経済損失を招き、慌てて粗製乱造のワクチンを言い値で購入して言われた通りの投与方法で健康な日本人に次々と投与する「なんとあっぱれな国民ではないか!」

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グローバリズム・反グローバリズムから時勢を読む

2021-03-06 09:58:12 | 社会

昨年(2020年)からの世の中は新型コロナ感染症や不正選挙が強行された上でのトランプ政権の終了といった予測不可能な事態が立て続けに起こっており、どのような力学で世の中が動いているのか理解し辛い状態です。やや強引ではありますが、大きな流れをグローバリズム推進派(所謂ディープステートDS側)と反グローバリズム(ナショナリズム、ポピュリズムなどと形容される)派との相克に分けて検討してみようと思います。

 

〇  それぞれの側が持つ武器と目標

 

まずグローバリスト達の武器は国境を越えて。グローバルで共通の対応を余儀なくさせる新型コロナウイルスです。参議院予算委員会で政府新型コロナ分科会の尾身会長は新型コロナが通常の季節性インフル同様の認識になるのは来年以降との見解を示しましたが、ウイルス自体は同じなのに対応が変わるというのはあくまで人間側の都合であるということが奇しくも明らかになったと言えます。

次の武器は、インターネットを通じて瞬時に取引を成立させるデジタル経済の存在です。また若者達を中心にした気候変動に対する危機感の高まりから、脱炭素社会を目指すSDGsの潮流もグローバリズムが目指すグレートリセットの一環に含まれています。これらの情報発信は国連やWHOからほぼ「議論不要の決定事項」として発信され、国ごとの変容は認められません。そして世界中の人が利用する巨大テック企業がグローバリズムの方針に従い、その方針から反れた情報発信を拒否(Ban)することを公然と始めた事から、反グローバリズムの多数のネット民から反感を買っているものの、優勢の指標で示した様に、企業権力としては圧倒的に巨大テック企業側に利があります。

グローバリズムの目指す目標は単一の価値観、文化観であり、徹底した管理社会(ディストピア)の完成です。リベラルの掲げるLGBTの概念や移民受け入れの強要は、一見多様性を推進する思想の様に「錯覚」しますが、そこが狙い目であり、「多様な意見」の存在を認めないファシズムが目標なだけです。「自分で物を考えられない人」ほど表面的な「多様性」という台詞に騙されて勘違いしてしまいます。現状は、どちらが優勢かを判定すると全体としてはグローバリズムが勝っているように思います。

 

〇  各国の情勢をグローバリズムと反グローバリズムから見る

では、各国の情勢をグローバリズムか反グローバリズムかで分けると、図のようになり、必ずしもグローバリズム優勢とは言えない部分もあります。米国は形の上ではバイデン政権になりましたが実体が明らかでなく、前のブログで示したように民心は圧倒的にトランプにあります。欧州は政権としてはEU中心でグローバリズム側が優位ですが、新型コロナ感染症で酷い目に遭った民衆が次第にナショナリズムに目覚めつつあります。

中国を大きく括弧付けにしたのは、習近平、反習近平ともに権力闘争にグローバリズム、反グローバリズム勢力を利用しているのであって、トランプと歩調を合わせていたかに見えた習近平も自由な社会を目指していたわけではなく、共産党的管理社会を強くすることを目指している点ではDS側の目標と一致しています。ロシアのプーチン政権も中国と同様ですが、反プーチン勢力は明らかにグローバリズム側です。

日本の政府は「強い方に付く」のでどちらとも言いがたいですが、メディアは明らかにグローバリズム側で政府がそちらに即した方針を取らないと激しく攻撃します。人気があるのに力を持てない自民の石破氏はDSに従わない派であり、DS側は断固総理にはさせないつもりに見えます。

先月クーデターを起こしたミャンマーはスーチー氏がDS側であるのに対して、軍部は中国とつるんだ反DS側の様です。国連は軍部を徹底的に批判しています。

中東は力関係が入り組んでいて色分けが難しいですが、イスラエルやUAEはうまくグローバリズム側に付いて地位を確保しようとしている様に見えます。バイデンがイラン核合意に安易に戻ると宣言したために、イスラエルとイランは核戦争の危機が高まりました。米軍がシリアにあるイランが支援する武装組織を空爆したことは、強い態度を見せながらも実力行使を避けてきたトランプ政権の努力を無にし、中東情勢を一層複雑で危険なものにしたと考えられます。「米国が戻ってくる(America is back)」と安定が崩れるという見本の様な失敗作です。

五輪は日本や中国が何とか開催に漕ぎ着けたいと四苦八苦していますが、DS側は中止を目論んでいるように見えます。

 

〇  結局民心を得たほうが最後には勝つだろう

現状はグローバリズム、反グローバリズムが入り乱れてどちらが優勢とも言えない状況と思いますが、グローバリズム側は「世界経済を牛耳っている」という圧倒的強みがあります。しかし数の上で一般の人たちが離反すれば暴力装置を持つ側(国軍、ミリシア民兵であっても)が最終的には勝つでしょう。経済はシステムを作り直せば済む話ですし、人間の寿命は無限ではないので、上に立つ人間はいくらでも入れ替わる事ができます。メディアによるプロパガンダが強いか、SNSなどの民衆の声が勝つか、ビッグテックによる思想統制が大きなファクターになると予想します。

コメント (2)
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