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rakitarouのきままな日常

人間の虐待で隻眼になったrakitarouの名を借りて人間界のモヤモヤを語ります。

アメリカのイスラエルからの独立なるか?

2025-06-26 16:29:58 | 社会

2025年6月21日、トランプ政権はイランの主要核施設フォルドゥ、ナタンズ、イスファハーンにB-2爆撃機を用いてGBU-57大型貫通弾(MOP)14発を投下、潜水艦から20発以上のトマホーク巡航ミサイルを発射し、攻撃しました。

6月19日にイスラエルと共にイランとの戦争に参戦するかを2週間以内に決めると宣言してから2日で参戦したのは世界を驚かす内容でした。しかし多くのメディアで言われる様にこの攻撃はスイスのルートを通して事前にイランにも通告されており、イラン側は防空ミサイルなど発射することなく、まるでB-2爆撃機の長距離給油とバンカーバスターの公開演習の様でした。これに呼応して、イランはカタールのアル・ウデイド米軍基地を事前予告後に14発のミサイルで形ばかりの攻撃を行いジャーナリストのペペ・エスコバル氏が「停戦歌舞伎」と表現する見栄えの良い応酬はそれに続くイスラエル・イラン間の停戦につながりました。

華々しく攻撃成功をメディアに発表するトランプ氏

日本のメディア解説を見ると、イスラエルの効果的攻撃に青息吐息のイランがトランプの停戦提案に飛びついたという解析が主流ですが、イスラエルに忖度する必要のないメディアが報ずる実情は逆です。

 

〇 消耗戦に入ったイランにネタニヤフが泣きついた

 

イスラエルが6月13日にイランに対して奇襲攻撃を開始した時、モサドの暗殺部隊とアメリカの情報を駆使したイスラエルの攻撃は多くのイラン政権幹部と核科学者の暗殺、対空部隊の施設破壊につながり非常に有効な奇襲となりました。しかし以前説明した様にイランはイスラエルの防空システムを破る方策を昨年のPromis 1、Promis2作戦で確立しており、今回も当初は旧式のミサイルを乱れ撃ちしてアイアンドームシステムのミサイルを消費させ、数日後からは1日10発程度のミサイルを発射させ、イスラエルの重要拠点の攻撃に的を絞って確実な戦果を狙いつつ消耗戦に移行する作戦に出ました。約3000発のミサイルを持つイランが1000発のミサイルを発射しても、月300発のミサイル製造能力があるイランは1日10発のミサイルを永久に発射し続けることができます。

イランは実際は手持ちのミサイルのうち、300-400発しか発射していない

一方でミサイル1発に2-4発の迎撃ミサイル(1発が複数のデコイを分離するので迎撃率は%以下)が必要なイスラエルの防空システムはトランプが6月19日に2週間以内と発表した期間内に枯渇することが予想されていました。

元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏によると、今回の戦争でイスラエルは唯一の国際空港(ベン・グリオン空港)を攻撃で閉鎖された一方、イランは29ある国際空港のうち3つしか攻撃されていない。イスラエルの商業港湾施設はハイファとアシュドッドの2つでハイファは攻撃で閉鎖され、残る一つは攻撃直前だった。イランはペルシャ湾とオマーン湾に8つの港湾施設を有しているがいずれも攻撃されていない。イスラエルの2つの製油所の一つは攻撃で損害を受け、もう一つの1/2の規模の製油所が残るのみであった。イランの製油所も攻撃を受けたが、一部に留まっているとされます。人口900万、2.2万平方キロで平坦な地形のイスラエルが、人口9000万、国土がイスラエルの75倍の広さで山岳地帯の多いイランに消耗戦で勝てると考える方が間違っていると言えます。このままではイスラエル国民がガザの住民同様飢え死にする運命にあったと言えます。ペペ・エスコバル氏が言うように停戦するよう始めにトランプに泣きついたのはイスラエルの方でした。

 

〇 イランはIAEAから脱退して今度は本格的に核開発に転ずる

今まで通りイスラエルは米国政治を操れるか?

西側メディアでイラン核施設の写真が多数出てくるのはイランがIAEAの査察に協力してきたからです。今回のイスラエルの攻撃でイランの核科学者達が多数暗殺されたのはIAEAが彼らの電話番号や住所などの情報を全てモサドに提供していたからだと言われます。本来国際機関は中立でなければ信用されませんが、現在の国際機関のほぼ全ては所謂西側が情報の全てを掌握できる仕組みになっています。今後は、イランはロシア、中国、隣国のアフガニスタンなどと協力して独自の軍事経済の道を選ぶことになるでしょう。一方でイスラエルはガザ紛争、ヒズボラ、イランとの戦争で、西側一般市民からは「虐殺国家」「暗殺国家」としての地位を確立してしまい、今まで同様に米国内や西側諸国内で外交や企業活動ができないと思われます。イスラエル企業の絡む電子機器はいつ爆発するか分りません。モサドもイスラエル公務員です。国の母体が弱体化して世界の国民から蔑まれた状態で、今までの様に暗殺などの「汚れ仕事」をそれなりの教養を身に着けた人間が「ユダヤ教」と「シオニズム」のモチベ―ショんだけで続けることができるのかも疑問に思います。米国内のイスラエル公共問題委員会(AIPAC)は、イスラエルから直接金銭提供を受けていないという理由で合法的ロビー団体とされてきましたが、金を配られていない一般市民からの評判は極めて悪いものです。米国でAIPACお墨付きというレッテルが今後も議員当選にプラスとなるか大いに疑問です。米国が独自の外交を確立できるか、はイスラエルを切ることができるかが勝負所です。

温暖化とコロナに流されない市民の会では、来る7月6日に品川区スクエア荏原中会議室において、日野市議会議員 池田としえ氏をお迎えして「子宮頸がんワクチンとコロナワクチン被害の実態」「グローバル資本に蹂躙される日本の産業」の2題について2時間たっぷりとご講演いただく勉強会を予定しています。上記のワクチン中止を求める国民連合にも関わっておられます。以下のサイトから申し込みできます。お時間の都合がつく方は直接お話を伺い、質問もできる機会ですので是非ご参加いただければと思います。

 

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コロナワクチン、子宮頸がんワクチン被害の実態

2025-06-21 09:03:30 | 社会

2025年6月6日のブログ2024年の人口動態統計から75歳以上の高齢者超過死亡が増加し続けている実態を報告しました。コロナワクチンの接種と死亡の増加が関係していることは間違いないのですが、「ゆうこく連合+mRNAワクチン中止を求める国民連合」が全国自治体の接種履歴情報請求と死亡統計を丹念に調べて1,800万件を超えるビッグデータ(2025年6月11日改定)から接種と死亡までの日数を図表化した結果が示されました。ロットによる死亡者数の偏り(ロット不均一性)が明らかにされた事自体が大変重要ですが、ワクチン接種と死亡までの日数に一定の法則性が見られて、接種半年をピークに1年後以降はほぼ一定の割合で減少してゆく事が明らかになった事は明らかなワクチン接種との相関関係を示しており、因果関係につながる大きな証拠と思います。

本来厚労省が行うべき統計作業。1943万回接種した人のうち、21万5千人の死亡者のロット別集計と接種後の日数を調べた。

接種後約半年に明らかな死亡者数のピークがある。

温暖化とコロナに流されない市民の会では、来る7月6日に品川区スクエア荏原中会議室において、日野市議会議員 池田としえ氏をお迎えして「子宮頸がんワクチンとコロナワクチン被害の実態」「グローバル資本に蹂躙される日本の産業」の2題について2時間たっぷりとご講演いただく勉強会を予定しています。上記のワクチン中止を求める国民連合にも関わっておられます。以下のサイトから申し込みできます。お時間の都合がつく方は直接お話を伺い、質問もできる機会ですので是非ご参加いただければと思います。

 

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ウクライナとコロナの戦略的失敗に学ぶ

2025-06-01 15:51:10 | 社会

2025年5月27日に北青山にある独立言論フォーラム本部で行った講演の要点を記します。後付けで内容をbrush upした所もあります。

ウクライナコロナの戦略的失敗とは、ウクライナにおいてはグローバリズムとBRICSの代理戦争と化しているウクライナ戦争において、ロシアは戦略が一貫しているのに対して、ウクライナ側はステークホルダーの戦争のゴール、目標がバラバラであり、一貫した戦略を取っていないために負けている事を指摘しました。またコロナにおいては、科学的根拠に基づいたゴール設定、目標が定められておらず、誤った戦略が取られた事を指摘、その背景となったGlobal Public Private Partnershipの存在を説明しました。

 

I.  ウクライナ戦争の戦略的失敗

GOST Frameworkによる戦略の立て方

戦争に限らず、事業、教育、政策など全ての計画的事項において計画立案には「ゴールとなる最終目標」を定め、「ゴール達成のための具体的目標」を決め、「目標達成のための戦略を策定」し、「具体的戦術を練る」という過程が必要です。これをGOST Frameworkと言います。そして実行の段階ではその逆に戦術に従った行動から進めてゆきます。

ロシアの2022年ウクライナ侵攻開始時におけるGOST Frameworkは図の様になり、具体的な戦術として10万人の機械化旅団で東と北から侵攻を開始しました。プーチンがSpecial Military Operationと戦争という表現を避けたのは、侵攻規模の小ささによります。ソ連時代チェコ動乱に対応した軍は1/5の国土のチェコに5倍の50万人の兵員を動員し、瞬く間に全土を平定した規模からも分かります。

ここでウクライナ側が戦争を行う上で問題であったのは、総司令官が不在で、ステークホルダーの求めるゴール、目標設定がバラバラであったこと、そして何よりウクライナ国民がロシアとの戦争を望んでいなかった事が問題点として挙げられます。つまりGOST Frameworkの上二つが定まっていない状態であったのです。

その状態でウクライナ側の開戦時のGOST Frameworkを示すと図の様になり、ゴールと最終目標が定まっていないため、戦略や戦術から「何をもって戦争終結とするか」が見えてこない事が分かります。

事業や計画を進める上では、適宜評価を行って正しく目標到達に向かっているかを再検討する必要があります。一般的にはPDCAサイクルを回して次のより効果的な計画立案につなげますが、軍隊の様なより中央集権的な組織においては米空軍のJohn Boyd大佐が朝鮮戦争の空戦を元に提唱したOODAループによる検討がよりスピーディーな改善計画に結び付くと言われます。

2022年の侵攻開始時から2023年のウクライナによる夏攻勢までの間にロシアが回したOODAループは図の様になります。2月3月のウクライナ軍による西側の高度な武器(ジャベリンなど)や小型ドローンを使ったゲリラ的攻撃はロシア軍に予想以上の損害を与え、従来のロシア軍の戦術では勝利できない事が解りました。3月にはイスラエルやトルコを仲介としたミンスク合意に準ずる和平案がまとまったのですが、ウクライナ、ロシア双方が合意していたにも関わらずNATO側首脳がロシア・プーチン体制崩壊が可能と判断して一方的に合意破棄をゼレンスキーに強要しました。

その結果プーチンは10万人規模のSMOでは対応不可能と考えてキエフなどの占領地域から一時撤退し、戦時経済体制(資本主義的損益を無視して国家として戦争経済体制に移行する)を構築し、部分徴兵制を招集して兵力を増加、要衝の攻略にはワグネルなどの傭兵を利用し、守備要地には強力な防御要塞を半年かけて構築する決定をしました。

一方、ウクライナ側はPDCAサイクルを回して、ロシア軍が撤退した地域を再度占領し、新たに10個機械化旅団を西側各国で半年かけて訓練して2023年の春以降の南部攻勢に使用します。しかしザルジニー将軍は国別バラバラに訓練された部隊を協同的に使用できず(常識的には年単位の共同訓練が必要)、各個的に使用したことで半年かけて構築したロシアの3重防衛線を一部しか破れず敗退します。その結果はHIMARS、ATACMS、無人機など長距離武器によるロシア本土攻撃、24年の賭けともいえるクルスク攻略に進んでゆきます。

4年目を迎えた2025年の戦況図は、一見23年と何も変わっていない様に見えますが、ウクライナ寄りのサイトMediazonaがまとめたロシア軍戦死者数の推移を見て解るように、2025年に入ってからロシア軍の死亡者数は減少し、週当たりの占領地域は増加しており、消耗戦において圧倒的にロシア軍が勝利していることが明確です。

2025年における戦争決着の行方はまだわからないものの、勝利しているロシアの主張が通る内容になることは明らかであり、2010年の大統領選挙の結果の支持基盤に沿った分割がなされる可能性が高いと思います。それらすべてはウクライナ・グローバル陣営の、戦争を行うに当たっての戦略構築の失敗が原因であると結論づけられます。

 

II.  新型コロナ感染症の対応戦略の失敗

紙の爆弾などでも紹介しましたが、未知の感染症(X)に対する公衆衛生上の戦略策定は、感染症の毒性と感染力の違いで大きく4つに分かれます問題は(2)と(3)を見極めて封じ込め戦略を優先するか、集団免疫と必要に応じた医療の選択を優先するかの選択です。

これをGOST Frameworkに当てはめると図の様になります。ここで病原体の性質の見極めがその後の戦略策定に非常に重要である事が解ります。

拙ブログでも度々取り上げましたが、2020年6月の段階で、新型コロナ感染症はSARS1型のような封じ込め戦略ではなく、豚インフルエンザの様な集団免疫を中心とした対応が可能であることが明確になりつつありました。2023年の経過図を見ても、いかなる変異種が出現しても死亡率は減る一方であり集団免疫による対応が唯一の選択肢であったことが明確です。日本、世界はこの間、PDCAサイクルを一度も回していない事を「バカ」と言わずどう表現すれば良いでしょう?

ロックダウンや強制的なワクチン政策など強力な封じ込め策が取られ、各国が対応の見直しを許されなかった背景は、初めから目標や戦略が決まっていて、各国はそれらに沿った戦術的対応しか自由がなかった事に問題があると言えないでしょうか。

グレートリセットを目的とした計画された手段としてのプランデミックという表現もあります。

日本は生真面目に効果のない危険な遺伝子ワクチンを高齢者に接種し続けて、他の先進国が3回で止めて超過死亡も落ち着きつつある中、いまだに20%以上の高齢者を中心とした死亡者増加が続いています。

予防接種健康被害救済制度で認められたワクチン被害の件数は厚労省のデータで昨年12月の時点でこの4年間における新型コロナワクチンによる死亡認定数が、これまでの全てのワクチンによる46年分の死亡者数の5倍を超えています。それでもワクチンの安全性についてPDCAサイクルを回そうとしない厚労省は何を目的にしているのでしょう。

 

III.  国家を超えた経済ー政治機構の確立

Ian Davis氏がまとめた国家を超えたGlobal Public-Private Partnershipという経済―政治機構が確立されていることで、一部の超富裕層が世界の在り方、政治経済政策のゴールや目標を政策立案者としての立場で定めて、国連やIMF、WHOといった国際機関を通じて政策発表を行い、これを「国際ルール」と決めつけて政策推進機関である各国政府に遂行させている事を説明しました。

各国政府はそれが形式上民主政府であろうと権威主義的政府であろうと、GOST Frameworkで言えばゴールと目標を押し付けられた状態で戦略と戦術を決めるシステムの一部にしかなっていないのが現実であると言えます。

日本も内閣府を中心に各種政策がPublic Private Partnership推進政策に沿って総務省、経産省、国交省、外務省など各省庁を挙げて推進しているのが現状であることがホームページからも分かります。

これらのシステムは富裕権力者支配層がその権力を固定化するために作り上げたシステムであり、一部には問題点を指摘する声もありますが、殆ど認識されることもなく着々と政策が実行されていると言えます。リフレ派、ケインズ派、MMT派どの政策を選んでも結局巨大資本に収奪されて権力の固定化につながるだけであることを理解せずに議論を戦わせる事の不毛さを肝に銘じるべきです。そして最も大事なことは「政策のゴールと最終目標(GOST Frameworkの上二つ)を民主的政府が独自に定めることができる真の民主主義の確立」であると考えます。

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ぐあんばれハーバード大学(と農林中金)

2025-05-24 11:22:16 | 社会

2025年5月22日 トランプ政権は、ハーバード大学の留学生受け入れ資格を取り消すと発表しました。在学中の留学生については、他大学に転出しなければ、米国での滞在資格を喪失するとしました。

国土安全保障省のノーム長官は声明で、ハーバード大が「暴力や反ユダヤ主義を助長し、中国共産党と連携している」と非難し、学生ビザ取得に必要な「学生・交流訪問者プログラム」の認定を取り消すと説明しました。これに対して、ハーバード大は、政権の措置は違法かつ報復行為に等しく、数千人の学生に影響が及ぶとし、留学生を支援する姿勢を鮮明にしました。これまでにもトランプ政権はキャンパス内での反ユダヤ主義的ハラスメントなどを理由にハーバード大への助成金を凍結するなど、学問の自由に対して制裁を強めてきました。連邦判事は適切な手続きを踏まずに大統領令で留学生の資格取消しを行うことは無効であるという判断を下したそうですが、客観的に見てトランプ政権側に勝ち目はない事は明らかでしょう。

2024年5月ハーバード大学内のガザ支援ピケ(rakitarou撮影)

 

〇  反シオニズム=反ユダヤ

 

パレスチナで虐殺を行っている極右「シオニスト政権の現イスラエル政権に反対すること」が即ち「反ユダヤ」とイコールであるという決議2年前に議会で議決されましたが、100%理論的にも無理筋であることは指摘してきました。イスラエル国外でパレスチナ虐殺を批判している人達の多くは善良なユダヤ人であり、ユダヤ人が自分の意見を述べる事を「反ユダヤ」と批判するというのは論理破綻以外の何物でもありません。ユダヤ人の学生が当時のブリンケン国務長官に「米国でシオニズムを言論で批判するにはどうすれば良いのか?」というまっとうな質問に長官は答えられませんでした。

要はシオニズム批判を封じ込めたいのは「大量の金を持っているシオニストユダヤ人」団体のAIPACが金で議員と法曹界を支配して無理筋を通しているに過ぎないのです。彼らから「大量の金」が無くなれば一瞬にして「虐殺は悪」と定義され、「シオニズムは誤り」と葬り去られる運命にあります。だからハーバード大は最終的には勝ちます。トランプ政権は計算づくで敢えて今回の政策をこのタイミングで取った様に見えます。

アメリカイスラエル公共問題委員会AIPACの実態を伝えるNHK番組

 

〇 トランプ政権はイランとの戦争は避けたい

2025年4月以降で、トランプ政権の中東政策は大きく動いてきました。イスラエルのネタニヤフ政権はイランとの戦争に米国を巻き込む事を画策していましたが、トランプ政権は核開発について、イランと直接協議をすることを表明、イスラエルのイラン攻撃計画は支持しないと表明しました。

トップガンマーベリックの様な神業でイランの核施設を攻撃できるはずもなく、フーシ派攻撃に参加している空母がミサイルを避けようと急旋回して積んでいるF18が海に滑り落ちるという失態を犯すのが現実です。他にも味方艦船の誤射でF18が撃墜される事件も起こっており、紅海におけるフーシ派攻撃で米軍は3機のF18を失っています。実際に米国艦船はいない状況で、フーシ派は米国艦船への攻撃は辞めますという言質を取り付けて米軍はフーシ派と停戦(実際は退散)しました。

トランプがまとめたハマスとの停戦をネタニヤフが破った事もあり、トランプはネタニヤフと距離を置く様になり、ネタニヤフと近かったウヲルツ大統領補佐官を解任し、ウイトコフ特使をイランの外相と会談させて関係改善へ向かう方向になりました。NYタイムスも「イスラエル現政権は米国の同盟国ではない」という意見記事を載せるほどです。ウクライナへの無謀な武器支援で米国の武器の備蓄は払底しており、再度十分な備蓄を行うにはブースターをかけても数年かかると戦争研究所が報告しています。イランとの開戦はしないとトランプは結論付けたのです。そのためには国内の圧力団体であるAIPACとの決別も必要になります。

 

〇 Divide and ruleの国内版

 

権力者が強力な対抗馬を服従させる時、対抗者同士を対立させて、相手が協力して自分に立ち向かうことが無い様にする事が定石です。ロシアとウクライナ(西欧も)を対立させて双方の力を削ぐ。日韓、日中を対立させて双方の力を削ぐ。明治以来欧米の覇権国が現在も継続して行っている定番戦略です。同じ戦略を国内に適応したのが今回のハーバードへの暴虐でしょう。ボストンは民主党の牙城です。バイデン政権にガザ侵略への無制限の支援をさせた様に、AIPACは民主、共和両党の議員を金と権力で支配下に収めていて、数名を除いて反発できる議員はいません。ネタニヤフと距離を置き、ユダヤロビーを切りたいトランプ政権としては、中間選挙で民主党とAIPACが組んでしまうことは避けたい所でしょう。だから民主党の牙城でガザ支援の機運を高める状況を作り出して、民主党とAIPACを離反させる作戦を取っているものと思います。司法判断や諸外国を含めた常識的判断は大学の自治と学問、言論の自由に軍配を上げる事は間違いありません。そして現在イスラエル政府が勧めるガザ虐殺への批判を一層高めることで、イスラエルとAIPACを米国政府から追い出す、「米国の外交は米国が決める」という原点に返す作戦の一環なのだと私は考えます。その意味でも「ぐあんばれハーバード大学」と応援したいです。

 

〇 空気読まない小泉農相

農協からの出資で成り立つ農林中金は、昨年度資産運用の失敗で1兆円以上の赤字となりました。それに対して1兆3千億の資本増強を行って、今年度は黒字化を見込むという記事が出ています。

資産運用失敗による農林中金の巨額赤字  何故か今年度は黒字になる見通しと

出資元はコメの集荷売却を一手に引き受けるJAですが、コメの値段が昨年来上昇することで農家からの買い付け値は以前のままであったJAは随分潤ったことでしょう。農林中金の赤字補填に値上がりしたコメの差益が使われたとは思いたくありませんが、実際はどうなのでしょう? 備蓄米を直接バイヤーに卸すと宣言する小泉農相がJAから嫌われるのも当然かも知れません。まあ農林中金も「ぐあんばれ」と励ましておきましょう。

農協からの資本増強で巨額赤字が黒字に転嫁できるらしい。いろいろ書いてあるけど農家は苦しくても農協さんの資金は潤沢ということ?

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日本にも展開されるグローバル官民パートナーシップ

2025-05-19 08:12:32 | 社会

I.  グローバル官民パートナーシップ(G3P)とは何か?

 

前回のブログで、世界経済を統一的にグローバリストがコントロールするメカニズムとして、

(1)国家の枠を超えたグローバル官民パートナーシップの確立による事業展開

(2)世界銀行やIMFによる強制的国家債務の押し付けによる国家独立性のはく奪(債務帝国主義)

(3)パンデミックや温暖化といった大規模なパラダイムシフトによる強制的経済転換(グレートリセット)

があるというRJ Burrowes氏の指摘を紹介しました。

そこで、一見架空の陰謀論的なシステム、軍産複合体とかディープステートといった漠然としたシステムを考えがちなグローバル官民パートナーシップが、現実のものとして世界や日本で政府推進の下で機能していることを今回示します。前回ブログでは2021年に設立されたCOP26会議でのグラスゴーネットゼロ金融同盟GFANZを例示しましたが、英国政府は2019年に世界経済フォーラムとパートナーシップを締結したことを正式に表明していますし、保健医療などの世界では1990年代からこのシステムは世界的に展開されてきました。まずは、リバタリアン的ブロガーのIan Davis氏がまとめた前回も引用した図と、グローバル官民パートナーシップとは何かを解説した文を一部引用します。

英国政府と世界経済フォーラムが正式に取り交わした協定のプレスリリース

 

(引用開始)

投稿者:イアン・デイビス 2021年10月6日

グローバル官民パートナーシップ(G3P)は、ステークホルダーである資本家とそのパートナーによる世界規模のネットワークです。このステークホルダー集団(資本家とそのパートナー)は、グローバル企業(中央銀行を含む)、慈善財団(数十億ドル規模の慈善家)、政策シンクタンク、政府(およびその関連機関)、非政府組織(NGO)、選抜された学術・科学機関、国際慈善団体、労働組合、大手メディア、そしてその他の選りすぐりの「思想的リーダー」で構成されています。

G3Pは世界金融と世界経済を支配しています。G3Pは(グローバルガバナンスを通じて)世界、国家、そして地域政策を策定し、G3P内で「パートナー」でもある主流メディア(MSM)企業を利用してそれらの政策を推進します。その世界モデル形成は、1998年のダボス会議における国連事務総長、アナン氏の演説によると言われます。

1998年国連事務総長の世界経済フォーラムにおける演説のプレスリリース

これらの政策は、多くの場合、シンクタンクによって策定され、その後、G3Pのパートナーでもある政府によって採択されます。政府は、G3Pのグローバルガバナンスを明確な政策、立法、そして法律的強制へと転換するプロセスです。

現在のウェストファリア国家主権モデルでは、ある国の政府が他国の法律を制定することはできません。しかし、グローバル・ガバナンス(G3P)を通じて、G3Pは地球規模で政策イニシアチブを創出し、それが各国の人々に法的強制力を持って波及します。これは通常、IMFやIPCCなどの政策提言機関を介して行われ、各国政府は勧告された政策を施行します。

政策の方向性は、問題の正式な定義と規定された解決策によって国際的に定められます。G3Pが国際的に合意を得ると、政策枠組みが設定されます。その後、G3Pのステークホルダーパートナーは協力し、望ましい政策が法制化され執行されるよう努めます。これが、よく引用される「国際ルールに基づくシステム」です。

このように、G3Pは多くの国を同時に統制しています。これには、G3P(権威主義的な階層構造)の最高位パートナーによる決定に対する法的異議申し立てが極めて困難になるという支配者にとっての利点、つまりガバナンスやアカウンタビリティを気にしなくても良いという問題があります。

G3Pは伝統的に公衆衛生の視点で実現化されており、特に世界保健機関(WHO)などの国連機関の文書を含む文書において言及されてきました。WHOの2005年の文書「健康のためのつながり」は、ミレニアム開発目標が世界の保健にとって何を意味するかを指摘し、新たなG3Pを明らかにしました。

(引用終了)

 

II.  日本における官民パートナーシップの展開

内閣府のG3P推進を紹介するホームページ

日本においても内閣府を中心に官民パートナーシップは盛んに推進されています。これらは2020年から積極的に会議が開催されて推進されており、2023年にはアクションプランの改定が行われ、30兆円規模の事業目標が示されました。2025年2月には第6回の会議が開かれました。官庁としては、内閣府、経産省、国土交通省、厚労省などが中心になっています。それらを全て国民に害するものとして排除する必要はないと考えますが、前のめりになって無暗に進めてしまうことで、後から多くの問題が生ずる可能性について危惧される点も多くあります。

 

III.  保健医療関連で問題化するG3P

 

WEFはいかなる選挙による権限も持ちません。私たちの誰にも、その判断に影響を与えたり、疑問を呈したりする機会はありません。それでもWEFは、民主的に選出されたとされる政府や、G3Pの他の利害関係者と協力し、私たちが暮らす地球を再設計するために活動しています。G3Pの中核を成すのは、ステークホルダー資本主義です。本質的に、G3Pは利益を追求するグローバル企業を意思決定の中心に置くことで、民主的な政府(あるいはあらゆる種類の政府)を乗っ取ります。理論上は、政府はG3P政策を実施する義務はありませんが、現実には実施しなければなりません。

SDGsは、G3Pに基づくグローバルガバナンスの実践例の一つに過ぎません。このプロセスにおける選挙で選ばれた政治家の役割はごくわずかです。彼らは単に政策を実施し、国民に売り込む役割しか担っていません。誰を選出するかは問題ではありません。政策の軌道はグローバルガバナンスレベルで決定されます。

2000年に英国のWalt氏らがG3Pのガバナンスに関する懸念をWHO年報に発表しています。その指摘によると、G3Pシステムは、利点ばかりが強調されているが、そのシステムにはガバナンス、政策決定者の正当性、政策の市民への説明責任の所在、執行上の適切な能力、適性手続きの尊重の全てに問題があると問題提起されています。

日本においても、グローバル官民パートナーシップの研究が発表されていますが、保健衛生活動を通じた分析においても、企業利益の追求とNGOの求める公共性の両立、最終目標の認識の統一などの課題が提唱されています。

日本における研究良い面もあるが課題も多いと指摘

 

我々の日常生活で、政府が主体的に決めているように見える政策も知らないところで資本主義ステークホルダーが勝手に決めた政策(デジタル化やマイナンバーへの統一、保健衛生政策など)をやらされている事例が実は山積しているという視点が重要ではないでしょうか。

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Deal, Negotiation, 2030年の世界

2025-05-10 15:55:32 | 社会

トランプ大統領の政策に世界は翻弄されていますが、彼の特徴は対外政策、国内政策共に「ディール」にあると言われます。本来外交官などが国際問題で交渉する場合は「ディール」ではなく「ネゴシエーション」という単語を使います。ディールは商売人の交渉で使う単語であり、ネゴシエーションとの違いは後者が±10の間で合意点を見つけてゆくのに対して、ディールはゼロと100の間で交渉するという点でしょう。交渉が成立しなければゼロで終わりますが、大幅に値切られても20で成立すれば±10で10を得るよりも大きな利得を得る結果になります。

トランプは関税交渉で思い切り吹っ掛けて、8割引きで妥協するといった駆け引きを行っていますが、正にディール方式で大きな利得を得ていると言えましょう。日本は大慌てで8割負けてもらって胸をなでおろしている様ですが、本来のネゴシエーションでは±10の間で決着を付けなければ「大負け」であるという自覚がありません。ロシアや中国のトランプ対応を見ると、ディールそのものは相手にせず、「自国の原則から一歩も動かない」という王道のネゴシエーション対応をしている様に見えます。

 

〇  トランプの狙いは国民経済

 

3つ前のブログでトランプディールの正体は国民経済の確立にあることを指摘しましたが、グローバリズムを奉ずる解放経済においては、経済が政治を支配する状態であるものを、ディール政治で経済をかき回すことで政治が経済を支配する国民経済に変える事を目論んでいると思われます。そしてDani Rodnikが提唱する政治経済のトリレンマの三角形において、米国の地位を右中央から左下寄りにすることを目指していると思います。

Dani Rodnikの政治経済のトリレンマ

 

〇  グローバルエリートの構築した経済構造

 

前回のブログで、いかなる通貨政策を行っても、ごく一部の資本家・資産家に富が吸収されてしまう状態をOxfamのレポートを元に示しましたが、このような経済体制、経済の仕組みがいかにして形成されたのか、その具体的な構造はどうなっているのかについて、グローバルエリートの構築した経済構造「グローバルエリートの歴史的分析: 何も所有しなくなるまで略奪する。」というレポートをCenter for research on globalization(CRG)のRobert J Burrowes氏がまとめていたので、第10章まである論文ですが、現在の状態を良く説明した第二次大戦以降の部分のrakitarou要約を載せます。

 

〇  第二次大戦まで

 

世界経済フォーラム(ダボス会議)が2016年に公開したビデオには「2030年の世界では、誰も何も所有せず、足りない物もなく、幸福な人生を送る日が来る」と予言されたのですが、それは一部の富者が全ての富を独占し、それ以外の貧者は「富者から定期的に与えられる配給で所有や貯蓄に拘らず一生暮らす日が来る」と解釈されます。1%の富者が40%の世界中の富を独占しつつある現在、いかに残り60%を今後10年以内に吸収するかの仕組みを解説したのがこのレポートです。

産業革命以降の世界経済の拡大において、一部の財閥が銀行と組むことで、富を独占し、その富で産業や土地開発を手掛けて更なる経済拡大と富の集積につながった事は明確です。株や債券といった仕組みは、実在の貨幣量以上の経済を動かす原動力になり、仮想経済が実体経済をけん引する良い関係も築かれました。グローバルエリートを、19世紀末までに莫大な富を築き、世界社会において卓越した政治的・経済的権力を確固たるものにした一族と定義すると、これらの一族(ロスチャイルド家、カッセル家、そしてモンタギュー家、ヒルシュ家、サッソン家といったユダヤ系銀行家一族)はそれ以前だけでなくそれ以降も、制度や出来事の形成において中心的な役割を果たし、その後の富裕層が台頭する枠組みを提供してきたと言えます。

特に、戦争においては、国家は勝利のためにいくらでも借金をし、勝者は敗者から負債を取り立てる事が明確となり、戦争は銀行と財閥にとって絶好の投資となった。また米国においては、ロックフェラーの義父ネルソン・アルドリッチを始めとする7人が連邦準備銀行を設立して以降の米国の富を集中管理する様になる。FRB設立の趣旨は5つの目的を達成するカルテル協定であり、その目的とは1.国内の新興銀行の競争阻止、2.貨幣を創造して融資する、3.全銀行の準備金管理、4.損失は納税者に負担させる、5.カルテルの目的は国民の保護だと議会を通じて納得させる、であり、それらは21世紀の現在も成功しています。

 

〇  第二次大戦後の支配構造構築

1930年に国際決済銀行(BIS)が設立されたことは、有力な銀行が世界経済を統制的支配する現在も役立っている。そして第一次大戦、第二次大戦は大規模な殺し合いと破壊によって、新たな経済需要と拡大した経済の支配体制構築に大いに役立ちました。特に国内の破壊が皆無で経済をフル稼働させた米国は、ロスチャイルド家、モルガン家、ロックフェラー家、ウォーバーグ家などがニューヨーク連邦準備銀行の株を支配して世界のパワーエリートの地位を確立することになります。

 

そして後にグローバル官民パートナーシップの原型となる、世界銀行、国際通貨基金、G20、G7、世界貿易機関(WTO)、世界経済フォーラム(WEF)、三極委員会、ビルダーバーググループ、国際決済銀行、外交問題評議会などの国際機関を通じて、国家を超えた経済的統治形態システムが構築されてゆきます。

債務帝国主義を紹介するDuke univの著書

それらを第一とすると第二に債務帝国主義の遂行、第三にパンデミックや温暖化に隠れて世界経済フォーラムが推進する「グレート・リセット」の目指す経済構造の変革が目論まれてゆきます。

 

〇  グローバル官民パートナーシップ(G3P)

これらを各国の都合と関係なく推進するシステムが「グローバル官民パートナーシップ」(G3P)と呼ばれるシステムです。(図)グローバリズムを奉ずる解放経済においては、このG3Pシステムが有効に機能して、各国の都合と関係なく政策が進められてゆきます。2021年11月のCOP26会議では、グラスゴーネットゼロ金融同盟GFANZという組織が立ち上げられ、各国に債務を負わせつつSDGs推進を強制する基盤が作られました。

GFANZのホームページから紹介

 

〇  完全支配体制への準備

 

中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、中央銀行がデジタル通貨をどの商品やサービスに、いつ、どこで使用できるかを決定可能にできます。また、発行当局は、あなたの「社会信用スコア」、政治的忠誠心、あるいは特定の指示に従わない場合、あなたの銀行口座を凍結、減額、または空にしたり、最新の「アップデート」で機能を変更したりすることもできます。CBDCを国際的に繋げたmBridgeは世界規模の統制を可能にします。またG20で合意した世界的衛生シールドもワクチンパスポートにつなげる国民管理手段として有用でしょう。

BISが主導するmBridge

世界衛生シールドはワクチンパスポートにつながる。

1971年のブレトンウッズ体制の終焉後、世界の政府と中央銀行はほぼ300兆ドルの新規通貨と2.2京ドルの信用通貨を創出し、政府所有の2兆ドルの金に比して10000倍のレバレッジを現在の共同幻想たる通貨に持たせている計算になります。現在金は天井知らずの上昇傾向にありますが、通貨の価値が1/10000になるハイパーインフレが起こった際に、財を持つ者が権力を維持できるかが問われる所でしょう。AI、バイオテクノロジー、暗号通貨といった新しい概念で現在の支配構造を維持できるか、まったく新しい構造が構築されるかは解りませんが、グローバリズムの経済構造が歴史の中で構築されてきた強固なものであることは理解できると思います。

 

〇  富の収奪のポイントは信用通貨の多さ

 

上記の要約では経済構造までは解るものの、実際に経済を回している世界の人々からごく一部の限られた富豪たちのみに金が吸い込まれる理由がまだ見えにくい様に思います。rakitarouとしての解釈を加えると以下になります。

実体経済を日々の生活で回しているのは市井の人々です。銀行が発行した通貨を使ったり、貯蓄したりしている市井の人達が所有しているのは信用通貨を含めた全体の富からは数パーセントに満たない量でしょう。実体経済と信用経済の比率が1:2程度であれば、信用経済が実体経済を牽引する良い刺激になるのでしょうが、余りに比率が離れてしまい、実体経済を活性化するには政府が債務の形で財政支出を続けないといけなくなり、国民の側もそれを当たり前の様に考えるようになってしまった(MMTや財務省解体論などその最たるもの)。その債務漬けの活性化の方法は、「グローバル官民ワークショップ」があたかも人類にとって有益である様にみせかけて提示する。実体経済と信用経済の貨幣価値が同一なので、圧倒的量の信用経済側の貨幣を持つ一部の人達が実体経済を動かす不動産や会社の持ち株、メディアの所有権などを全て支配してしまい、所有権のない人々が少々意見を述べようが体制はびくともしない、というのが現在の仕組みです。

トランプの乱暴ぶりは拡大しすぎた信用経済の適正化に働くか?

一極グローバル体制から、実体経済の半分を握るBRICSが独自の通貨、銀行、国際決済などの体制を構築しようとし、多極体制(二極?)にしようとする動きが現在見られており、一極グローバル側が必死に抵抗しています。戦争というハードランディングは避けたいですが、乱暴なトランプ氏の存在は信用経済の幻想を壊すには有用にも思います。トランプ関税騒ぎで、株価が暴落して東証だけで155兆円が消滅したと報道されています。しかしこの資産価値の消滅は実体経済の景気が原因ではなく、勝手になくなったと言ってよいものです。開放経済から国民経済への変革は、大きくなりすぎた信用経済の適正化につながるならば歓迎すべきではないでしょうか。

 

独立言論フォーラムさんの主催で茶話会が開催されます。ご興味のある方はご参集下さい。

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リフレ、ケインズ、MMT、バラマキ

2025-05-05 11:51:29 | 社会

経済について疎いrakitarouとしては財務省解体で日本は良くなるとか、財政の均衡に意味はないといった理屈が今一つ理解できません。リフレ、ケインズ、MMTの違いについて簡単にまとめたサイトがあったので表を引用しつつ、それでも経済がうまくゆかない理由をOxfamの報告書から検討してみたいと思います。

通貨リフレ理論、ケインズ理論、MMT理論の違い

 

I.  にわかに拡大している財務省解体論

2025年2月に拡大した財務省解体論のデモ

2025年の2月後半頃から、この連休中にかけても、日本をダメにしているのは財務省であるとして、「財務省解体デモ」に千人以上が集まっていることが報じられています。これに新型コロナ対策やワクチンへの不信、WHOへの不信が合わさり、「財務省・厚労省解体デモ」に主張が拡大し、「反グローバリズム」反ディープステート的な主張が合体していると報じられています。

財務省批判の根底には、経済アナリスト故森永卓郎氏の理論である「財務省の財政均衡主義が経済をダメにしている」「政府は積極的に国債発行をして経済回復をせよ」という主張があると言われます。これはいわゆるMMT理論、現代貨幣理論(政府は自国通貨であればいくら借金をしてもデフォルトにはならず、財政破綻もしない)をベースにしていると思われます。しかしMMT理論が絶対的真実で理論通りであるという確証が得られたという話は聞いたことがありません。それを信じている学者が信じていないヒトを阿呆呼ばわりしているのは聞いたことがありますが、それはマクロ経済学が極めてサイエンスとして不正確でパラダイムの確立が困難である事を胡麻化した様だと私には思えます。

MMT理論には慶応大学の小幡教授の様に厳しい批判もありますが、単純明快な理屈で、目先の利得につながるように見えるので受け入れやすいのかも知れません。

 

II.  世界の経済の仕組みを見直さなければ結局国が貧しくなるだけ

 

日本に限らず、世界各国の財政赤字は増加の一途であることは知られています。旧来のケインズ理論では、政府が財政支出を増やせば、庶民の所得が増加し景気が良くなって結果的に政府の税収も増加して財政赤字がなくなるという物です。しかし政府が赤字国債を発行して財政支出を増やしても、増やした支出分の貨幣はどこかに吸収収蔵されて一般庶民が潤うことも政府財政に戻る事もないために、ポストケインズ理論とも言われるMMT理論が考え出されて、財政均衡は無視して支出はいくら増やしても良いという理屈になったと考えられます。しかしこれは共通幻想としての貨幣価値が保たれれば問題ない(ハイパーインフレは避ける)としても、経済構造の結果、結局0.1%の富裕層が独り占めした富によって世界が支配される体制が固定化されるだけの理論ではないでしょうか。つまりMMTこそがディープステイト御用達の理論に私には思えます。以下Oxfamの新しいレポートを交えて説明します。

2025年Oxfamのレポート  

2021年、世界の富裕層1%の資産は世界中の資産の38%、下位50%の資産は2%と言われましたが、2025年1月にOxfamが発表したレポートでは、2024年には富が偏在する速度は一層早まり、貧困層の所得は増えない一方で、億万長者の資産増加率は2023年の3倍になり、しかも億万長者の富の大部分は勤労所得ではなく不労所得あるいは相続によるものであり、グローバルサウスからグローバルノースの1%富裕層へ1時間あたり3,000万ドルの速度で富の搾取が継続しており、世界の二極化が急速に進んでいる事があきらかになったと言います。また2/3の国では直径子孫への相続税が課されることはなく、億万長者の半数は相続税のない国に住んでいると言われます。日本は3代相続すると遺産はなくなると言われますが、米国は25億円までは非課税、欧州の国々でも数億円まで非課税の国も多くあります。各国が自国通貨を発行すればするほど、これら富裕層が金持ちになり、土地や社会インフラ、企業などをますます独占的に所有することになって人類の二極化、支配する者とされる者の固定化が進むという事ではないでしょうか。私がMMTこそDS御用達の理論という理由はここにあります。

現在は富の移管が急速に進んでいる。  富の移管の多くはいびつな経済構造により収奪や相続によるものとなった。

 

III.  全世界の官僚が協力して一律の相続税を課す

相続税の課税率比較 日本は諸外国に比して厳しい(経済構造のいびつさを考えると諸外国が日本に合わせるべき)

どうすれば経済構造を変えられるかは分かりませんが、一つのヒントとして、国家のしくみを管理しているのは公務員である官僚ですから、世界の官僚(多分大金持ちではない)が協力して富の偏在を正してゆく税制を構築する以外ないと思います。そのためには金で支配された政治家を排する必要があり、真の民主主義を再構築する必要があるでしょう。全く簡単ではありませんが、まずは貧しくなりつつある中間層の再生から始める必要があるでしょうか。その答えはバラマキではないと思われます。

コメント (7)
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ロシアの要求を呑む以外ウクライナに平和は来ない

2025-04-29 11:50:29 | 社会

ローマ教皇フランシスコ氏の2025年4月26日の葬儀では、トランプ大統領とゼレンスキー大統領が簡素な椅子にひざを突き合わせて会談する様子が公開され、新たな停戦への展開が期待されました。

ローマ教皇葬儀でのトランプ・ゼレンスキー会談

一方で同日、ロシア軍のバレリー・ゲラシモフ参謀総長がウラジミル・プーチン大統領に対し、ウクライナ軍からクルスクを解放する作戦が完了したと報告したと発表しました。この作戦でウクライナ軍は7万6000人以上の兵士が死傷したと報告され、またこの作戦に朝鮮の戦闘員が参加していたことも明らかにされて、この北朝鮮軍の参加は金正恩自身も認めました。rakitarouは、北朝鮮軍参戦はフェイクだろうと言う立場でしたが、誤りでした。ヨンハップニュースによると北朝鮮軍はロシアに派遣されて数か月後から前線に参加したという事で、元々精鋭部隊であった上に、ウクライナ戦の戦闘訓練も加えて参戦した様です。要はドローン戦、西側のミサイルや砲火などの実戦的知識を習得する目的で2024年6月に締結した相互援助条約に基づいてプーチンに頼み込んで参戦したのでしょう。北朝鮮は砲弾も供給しており、ウクライナ戦争には深くコミットし続けたと言えます。

公開されたロシアで訓練中の北朝鮮軍兵士とプーチン、金正恩による条約締結

 

I.  負けている側は勝っている側の条件を呑む以外停戦できない

 

開戦当初の2022年4月の段階の様に、ロシア、ウクライナ側の犠牲が五分五分の状態であれば、双方が条件を出し合って停戦に持ち込む事は可能ですが、まとまりかけた停戦をウクライナ側から一方的に破棄し、その結果敗北に至っている現在、停戦を承諾してもらうには勝っているロシア側の条件を全て呑む以外仕方がないのは実戦を伴う戦争では常識です。セルゲイ・ラブロフ外相は、4月28日のメディアインタビューでウクライナ和平に対するロシアの要求を改めて語りました。以下、必要条件として

 

  • ウクライナによるロシアとの直接交渉。
  • ウクライナが、1990年代のウクライナ国家主権宣言に従って、中立かつ非同盟国の地位に戻る。
  • ウクライナ国内において、言語、メディア、文化、伝統、ロシア正教など、ロシア文化を破壊する政策の終焉。
  • クリミア、DPR、LPR、ヘルソン地域、ザポリージャ地域のロシアの所有権の国際的な承認。
  • これらの立場を法的に修正し、恒久的なものにし、執行メカニズムを持つための措置。

これらに次いで西側に対しては、プーチン大統領が昨年6月に再度明らかにした

(1)ウクライナにおける脱ナチ化のスケジュール

(2)ロシアへの制裁、行動、訴訟、逮捕状の解除

(3)そして西側で「凍結」されているロシアへの資産の移転

(4)ロシア連邦の安全、およびNATO、EU、および個々の加盟国の西側の国境での敵対的な活動によって生み出された脅威に対する信頼できる保証。

 

これらの要求は、ウクライナ及び西側に何度も騙されてきたロシアの側から見ると妥当な要求に見えます。このまま戦争を続けて、ウクライナが国家として崩壊し、ロシアによる完全な傀儡政権が樹立されて戦争が終結するよりは、いくらかでもウクライナの主体性(西側への交流の余地)が残された状態で停戦に向かえる方が、ウクライナ国民にとっては良いようにも思います。

米側ケロッグ氏が提案する和平後のウクライナ(ロシアの要求とはかなり遠い)

 

II.  ウクライナ市民の本音

 

西側メディアがウクライナ市民を自由に取材して本音を報道する機会は極めて少ないですが、スイスのジャーナリストがウクライナ国内で2か月取材した結果をロシアのMeduzaに出した長い記事の一部翻訳を転載します。

(引用開始)

シュラ・バーティン氏による、ウクライナ人の間で増大する戦争の疲労感についてのレポート

2025年3月28日午前4時12分  出典:Meduza

ロシアとウクライナは3年以上にわたって全面戦争を続けています。この間、ウクライナ人はロシアの侵略に対して激しい抵抗を続けてきたが、その力は衰えているように見えます。スイスの出版社「Reportagen」のジャーナリスト、シュラ・バーティン氏は、ウクライナに2カ月間滞在し、キエフやドンバス地方を旅し、その間ずっと人々と話をした。彼は、過去1年半で著しく変化した国民の気分を観察しました。徴兵される可能性に怯えた多くのウクライナ人は、軍のパトロールから逃れるために隠れている。前線では兵士が不足しており、現在、そこの兵士は数ヶ月間ローテーションできていません。脱走は日常茶飯事になっています。負傷者の避難も難しくなり、主にドローンが古い兵器よりもはるかに効果的に歩兵を殺すため、生存率が急落しています。

激戦が続いたChasov Yarの現在

メドゥーザは、ウクライナ軍の前線と背後の雰囲気を描写した数十の証言を含むバーティンの報告書を掲載しました。これらは、痛み、無力感、絶望に満ちた悲惨な話です。

パート1

採用センター(TRC)

1年半前、キエフはウクライナ東部での戦争から苛立たしいほど孤立していると感じていました。今日、侵略の影は明らかに近づいています。朝の5時に駅を出て歩いていると、すぐにサイレンが聞こえました。肌寒く灰色で、粉雪の中、数人の通行人がヤロスラビブ渓谷を急いでいました。この1年間で街の雰囲気が変わったことはすぐに明らかになりました - それはどういうわけかより荒涼としていて、絶望的になっていました。すぐに、強力な爆発音が鳴り響き、ミサイルがホリデイ・インに命中した。その後、ニュースは誰かがそこで亡くなったと報じました。

しかし、ミサイル攻撃以上に、首都を戦争中の都市のように感じさせるのは「TRC」です。厳密に言えば、採用センターは軍の入隊事務所を指しますが、日常会話では、略語は、街頭で男性を捕まえて前線に送る軍のパトロールを意味するようになりました。今日、「TRC」はおそらくウクライナで最も話題にされる言葉です。

徴兵官に召喚状を渡される市民

戦争が始まったとき、ウクライナは兵士に事欠かず、膨大な数の男性が自発的に前線に赴きました。しかし、多くの人が亡くなり、今では戦う意欲のある人ははるかに少なくなっています。当初、TRCのパトロール隊は単に街頭で徴兵通知を配るだけで、その後州は徴兵忌避に対する罰則を強化しました。これが不十分であることが判明すると、当局は武力を行使し始めた。パトロール隊に止められ、バンに押し込まれ、軍の入隊事務所に連れて行かれて健康診断を受けます。このプロセスは「バス化」と呼ばれ、おそらく今日のウクライナで2番目に広く使用されている言葉です。バス化されると、その日の夜遅くから翌朝に厳重な警備の下、基本的な軍事訓練などを受ける、森の中にあるブートキャンプに送られます。

1年半前、人々はすでにバス化についてささやいていましたが、脅威はまだここまでではありませんでした。TRCのパトロールは村や小さな町を席巻しましたが、キエフはまだ首都のリラックスした生活を楽しんでいました。その後すべてが変わりました。インターネットには、TRCの警官が逃げようとした男性を殴ったり、健康診断を拒否したり、ブートキャンプに送られるのに抵抗したりする様子を映したこのようなビデオがあふれています。

一人の男がウサギのようにジグザグに通りを疾走し、兵士たちが熱心に追いかけてくる。血まみれの顔をした男たち。移動中のバンから飛び降りる男たち。ウクライナのソーシャルメディアでは、このような光景は今や当たり前になっています。政府は介入を約束したが、何もしない。一方、男性は軍の入隊事務所で亡くなり始めています。TRCによって数人が殺害された。前線やロシアの爆撃で亡くなった人々の数に比べれば、取るに足らないことのように思えるかもしれませんが、これらの事件はウクライナ国民の士気を深く低下させています。

Poltava TRCのレポートは、採用オフィス内の雰囲気を捉えています。

2025年3月14日午後3時頃、入隊所で、25歳の市民が兵役に適していると判断されたことを知った後、故意に鍵で腕をこすり始めました。同日午後6時頃、32歳の徴集兵が割れた瓶のガラスを使って同様の行動を繰り返した。どちらの場合も、軍事委員会の医師が応急処置を提供した。TRCの当直担当官が呼んだ救急車は、男性の生命に対する脅威がないことを確認した。しかし、これらの「男たち」が国を守るよりも自殺する方がましだと述べたため、彼らは精神病棟に移されました。メディアは、これらの恥ずべき臆病な行為と自傷行為を「自殺未遂」と表現しているが、ポルタバ地域TRCと入隊局の司令部は、これらを兵役逃れの試みと見なしている。

ウクライナでは、動員に反対することは実際には不可能です。法律により、人は兵役の代わりに懲役刑を選択する権利があり、多くの人がこの選択肢を選ぶでしょう。実際には、これらの男性でさえブートキャンプに送られ、その後前線に送られます。

ウクライナの多くの人々は、TRCの将校を敵と見なしている。キエフや他の都市には人気のテレグラムチャンネルがあり、地元の人々はパトロールの目撃情報について常に最新情報を共有しています。海外の反体制派ブロガーはTRCを激しく批判しているが、ウクライナの主流メディアは、徴兵忌避者に対する刑事事件、軍の入隊事務所での殺害、脱走をほとんど報道しない。多くの男性が兵役に就くことを望んでいないことを認めることは、国益に反すると考えられてきた。スローガンは、「勝利が近い、軍隊に栄光、国は握りしめた拳のように団結している」などというウクライナの一般的なレトリックを煽る。

前線の野戦病院の様子

ウクライナのメディアは、軍の問題をどのように報道してきたのでしょうか?

今年キエフに到着したとき、パトロールが常駐しているため、友人たちはもう地下鉄を利用していないことを知りました。彼らは他の都市に旅行することはなく、必要でない限り外に出ることを避けます。これらの予防措置にもかかわらず、TRCは数週間以内にこれらの人々のうち2人を「バス化」しました。将校が彼らを外に捕まえた後、彼らは入隊事務所で一夜を過ごし、翌日にはブートキャンプにいた。

日曜日に30分間の電話アクセスが許されたとき、彼らの散らばったメッセージは、そこが刑務所のようであることを明らかにした:酔っぱらいでいっぱいで(より慎重な男性は正しいテレグラムチャンネルをフォローし、いつ屋内にいるべきかを知っているからだ)、外に出るチャンスがない。1ヶ月の基本を学んだ後、あなたはすぐに前線に送られます。志願する男性には、サービスの部門、トレーニング、専門分野など、いくつかの選択肢が与えられます。しかし、路上で捕らえられた場合、健康状態、職業、好みに関係なく、歩兵として最前線に配置されるだけです。

私の友人の一人が並外れた才能を持つプログラマーだったので、彼は何かの無線情報部隊に配属されるのだろうと思っていました。

私たちの共通の友人であるヴァーリャは、これに別の解釈を加えました。彼は私に言った:「まるで彼らが今彼を行かせるかのようだ - それは奴隷市場だ」と、旅団がいわゆる「バイヤー」を基本的な訓練キャンプに送り込み、一定数の新兵を要求する方法に言及した。

パート2

殺人鬼

2月の1週間で、衝撃的な話がいくつもありました。ザポリージャでは、24歳の男性が軍の入隊事務所で殺害されたが、彼の母親が弁護士であることが判明し、事件の調査を開始した。リヴィウ出身の核物理学者が、彼をブートキャンプに運んでいた移動中のトラックから飛び降り、頭蓋骨の付け根を骨折した(彼は脱出を試みる前にられていた可能性もある)。フメリニツキーでは、TRCの男性が自分の喉を切り裂いて死亡した。ポルタバ地域では、狩猟用ライフルで武装した男が、徴兵者を基礎訓練に護衛していたTRCの将校を撃ち殺した。これがオンラインで悪意のある喜びの噴出を引き起こしたとき、愛国的なサークルは、ウクライナの保安庁がそのようなコメントを投稿した全員を特定し、彼らを前線に送るよう要求しました。また、警官の殺人者をリンチする声もあった。

以下略(引用終了)

以降パート10まで憂鬱な内容の実話が続くのですが、西側の鉄砲玉として戦争をさせられているウクライナ市民の実相を知れば、一日も早く戦争を終わらせるべきだという考えが正しい事は理解できると思います。

 

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「独立言論フォーラム」さんで来る5月27日(火曜)に「コロナとウクライナの戦略的失敗に学ぶ」と題した小さな茶話会を開催します。お時間とご興味のある方は是非左記サイトからご参加ください。

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世界貿易システムの再構築(ボラティリティ・リスクに弄ばれる世界)

2025-04-11 15:12:41 | 社会

I.  日本は既に貿易赤字国(モノツクリ大国ではない)

 

トランプ関税を負けてもらう事で全てがうまく行くと言わんばかりの報道が続いています。自動車や関連産業、輸出食料品に至るまで、対米輸出は黒字かも知れませんが、経産省の資料(下図)からも明らかな様に日本は対外資産の運用などを含む経常収支は黒字ですが、モノの輸出入による貿易収支は赤字であり、サービス収支に至っては大きく赤字の状態です。日本の円安は、一時所得収支(資産運用)がドルのまま運用され、貿易・サービス赤字で円の需要が少ないせいであることは明らかです。対米関税の事だけ騒いで報道すれば日本の問題は解決するでしょうか?

日本の経常収支黒字を支えているのは対外資産運用であって貿易収支は2010年以降兆円単位の赤字が常態化している。

確かに世界はトランプ政権が打ち出した貿易関税に翻弄されて、株価が乱高下しています。日本の経済専門家と称する人達の解説も、「経済を混乱させる」とトランプを批判するばかりで高額同時関税の本当の狙いや効果的な対応策についての解説はありません。元々理解する能力がないのか、解っていてもできないのか経済が不得意の私には解りませんが、この経済政策が外交軍事政策とリンクしたトランプの米国政策の一環である事位は理解できます。

 

II.  世界貿易システムの再構築(論文)

 

トランプの経済政策が政権の経済顧問スティーブン・ミラー(Steve Miran)の2024年11月に発表された「世界貿易システムの再構築」に沿っている事は知っている人は知っているのでしょうが、日本のメディアでは読売新聞で少し触れる程度で「トランプの気まぐれで行っている」などという解説が主体です。これでは奇抜な関税政策に翻弄されるだけです。今日になって、対抗関税をかけない方針の国には実施が90日延期という方針が急遽発表されました。
この経済政策の要点は、米国を多極主義の一つの極にするというMAGA政策の一環として、グローバリズムの中心として拡大しすぎた信用経済の基軸通過としての米ドルの強制的切り下げを目論むものです。グローバル経済の下で、準備通貨として米国が慢性的貿易赤字にも関わらずドルを刷りまくって、それをグローバリズムの中心を担う一部の投資家だけが回収し、世界の富が偏在して行くしくみを変え、鉱工業などの実体経済でも米国が儲かる様に変える方向性と思います。4月7日にホワイトハウスはミラー(Steve Miran)のハドソン研究所における発言を公表しましたが、トランプの言動に実際の経済状態とは関係なく株価が乱高下するのはボラティリティ・リスク(金融経済リスク)によるものであり、大きくなりすぎた信用経済を支配するグローバリストが大損をして、多極主義になっても米国が生き残れる経済システムを作るというのが目的なのだと思われます。

メディアの経済解説はその方向性で日本が生き残れる方策を考えてゆくべきなのですが、まったくそのような解説が見られません。少なくとも大手メディアで「関税と通貨の為替レートの関連付け、非関税障壁などを包括して論じている経済解説がない」事が解説のレベルの低さを表していると言えるでしょう。今回備忘録と今後の展開の指標として2024年11月に発表された「世界貿易システムの再構築」ユーザーズガイドと記された冊子の要点(rakitarou意訳含む)簡約を以下に記します。後からコメントする様に素人目にも強引(矛盾)と感ずる所もありますが、参考になると思うので以下に記します。

〇 世界貿易システムの再構築(Steve Miran

要 約

「世界貿易システムを改革し、アメリカの産業を世界の他の地域に対してより公正な立場に置くという願望」は、何十年にもわたってトランプ大統領にとって一貫したテーマでした。経済の不均衡の根源は、国際貿易のバランスを妨げる持続的なドルの過大評価にあ、この過大評価は、ドルが国際準備資産としての需要によって引き起こされています。世界のGDPが成長するにつれて、米国内の製造業と貿易可能な産業が「ドルの過大評価」によって適正なコストによる貿易ができなくなり、また準備資産としての需要と同盟国への安全保障や拡大抑止の提供に資金を提供することでますます負担が大きくなります。

この論文では、これらのシステムを再形成するために利用可能なツールのいくつか、それらのツールの使用に伴うトレードオフ、および副作用を最小限に抑えるための政策オプションを示します。

関税は歳入を提供し、通貨調整によって相殺された場合、トランプによる2018年から2019年の経験と一致して、インフレまたはその他の悪影響を最小限に抑えます通貨相殺は貿易の流れの調整を阻害する可能性がある一方で、関税は最終的に関税を課せられた国によって賄われ、その実質購買力と富は減少し、その歳入は準備資産供給の負担分担を改善します。関税は、国家安全保障上の懸念と深く絡み合った形で実施される可能性が高く、ここでは様々な実施計画とその影響について議論しています。他国の通貨の過小評価を是正することを目的とした通貨政策は、まったく異なる一連のトレードオフと潜在的な影響をもたらします。歴史的に、米国は通貨調整に対して多国間アプローチ(プラザ合意とか)を追求してきました。多くのアナリストは、通貨の誤評価に一方的に対処するための手段はないと考えていますが、それは真実ではありません。(関税は通貨切り上げ、切り下げの作用を持つのです)この論文では、多国間および一方的な通貨調整戦略のためのいくつかの潜在的な手段、および望ましくない副作用を軽減する手段について説明します。

 

第一章 トランプの通貨政策と関税

 

グローバリズムの原則では、政府は国際貿易システムを変えることはできず、その手段もないとされてきましたが、ウォール街や学術的な言説とは対照的に、交易条件、通貨価値、国際経済関係の構造に影響を与えるために政権が使用できる強力なツールがあります。トランプ大統領は選挙戦で、中国に対する関税を60%、その他の国々に対する関税を10%以上に引き上げることを提案し、国家安全保障と国際貿易を絡め合わせました。輸入関税は国内にインフレを招き、経済や市場の大きな金融リスクを引き起こす可能性があると多くの人が主張していますが、必ずしもそうではありません。実際、2018年から2019年にかけての中国などへの関税は、実効税率の大幅な引き上げであったにもかかわらず、マクロ経済にはほとんど目立った影響を伴いませんでした。ドルは実効関税率とほぼ同じ量だけ上昇し、マクロ経済への影響の大部分を無効にし、その結果、かなりの歳入が得られました。中国の消費者の購買力が通貨安とともに低下したため、中国は事実上、関税収入を支払った結果になりました。

貿易の観点から見ると、ドルは絶えず過大評価されていますが、これは主にドル資産が世界の準備通貨として機能しているためです。この過大評価は、アメリカの製造業に重くのしかかり、経済の金融化されたセクターに利益をもたらし、裕福なアメリカ人にのみ利益をもたらしています。

 

第二章 ドルの過大評価の弊害

 

資本主義が世界唯一の経済システムになり、歴史が終わったと言われてドルがグローバル経済の中心、国際貿易の準備通貨になって強力な通貨になった副作用として、米国の製造業は競争力を失い多くの勤労者家族は自活できなくなり、政府の配布物やオピオイド中毒になったり、より繁栄した場所に引っ越したりします。政府がインフラを整備しなくなるとインフラは衰退し、住宅や工場は放棄された。コミュニティは「荒廃」しています。中国が経済力、国際競争力を高め、ロシアとともに安全保障上の脅威ともなるにつれて、経済アナリストは経済と国家安全保障を連携して考える事をせず、国家資本主義の台頭によるサプライチェーンの不安定化などに対しては、単にグローバリズムを強化することだけに注力してきました。

通貨市場が貿易の不均衡にも関わらず是正されないのは、モノの交易と金融の交易の二つが相互に影響し、特に後者は大量の貯蓄プールや国債の需要に使われるためにモノの交易の多寡による是正が効かないシステムになってしまっていると言えます。これはベルギーの経済学者ロバート・トリフィンにちなんで「トリフィン効果」と名付けられています。IMFによると、世界の外貨準備高は約12兆ドルで、そのうち約60%がドルで割り当てられており、実際には、準公的機関や非公式機関も準備目的でドル資産を保有しているため、ドルの準備金保有ははるかに多いものです。準備資産の安定性から、不況時にはドルが買われて上昇し、他の通貨は景気後退により下落するのが一般的です。これがドルの過大評価にもつながります。

アメリカは、軍事力の代わりに金融力を用いて、外交政策や安全保障政策においてその意志を発揮することができました。アメリカは、資産の凍結から、SWIFTからの国家の切り離し、グローバルビジネスを行うあらゆる外国銀行にとって重要な米国の銀行・金融システムへのアクセス制限まで、敵を弱体化させる外交政策の目的を達成するために、一人の兵士も動員することなく、その財政力を行使してきました。このドルの強みが、友好各国への安全保障を提供するトレードオフとして、公正なドルの評価を妨げて来た事も確かで、友好国は米国産業の犠牲にタダノリして自国の産業を育成して貿易黒字を重ねて来た歴史もあります。しかし米国のGDPと軍事力が相対的に縮小するにつれて、このトレードオフを続けることが困難になってきていることも強調するべきです。

 

グローバルシステムの再構築

トランプ政権による関税政策も通貨政策も、アメリカの製造業の競争力を向上させることを目的としており、その結果、アメリカの工業工場を増やし、世界の他の国々からの総需要と雇用をアメリカ本土に割り当てることを目的としている。これらの政策は、高付加価値製造業におけるアメリカの優位性を維持し、さらなるオフショアリングを遅らせ、防止し、他国から市場をアメリカの輸出に開放したり、アメリカの知的財産権を保護したりする協定を他国から調達するための交渉レバレッジを高める可能性がある。さらに、トランプ陣営の多くが貿易政策と国家安全保障は密接に絡み合っていると見なしているため、多くの介入は、安全保障にとって重要な産業プラントに向けられるだろう。国家安全保障は、例えば半導体や医薬品などの製品を含むように、ますます広く考えられていくでしょう。

ドルが米国の製造業に重くのしかかっているにもかかわらず、トランプ大統領は、世界の準備通貨としての地位に価値を置くことを強調し、ドルから離れる国を罰すると脅している。私は、この緊張関係は、ドルの地位を維持しながら、貿易相手国との負担分担を改善することを目指す政策によって解決されることを期待しています国際貿易政策は、我が国の予備費が貿易相手国にもたらす利益の一部を取り戻し、この経済的負担分担を防衛負担分担と結びつけようとするものです。トリフィン効果は製造業に重くのしかかっているが、システムを破壊することなく、システム内でのアメリカの立場を改善しようとする試みはあるだろう。

 

第三章 関税と為替

 

今迄の経験では、関税は為替レートの変動と相殺しています。為替レートへの影響は時間がかかりますが、国際貿易がどの通貨で行われるかによって影響が変わってくるものです。だから必ずしも関税と為替が相殺するという法則は成り立ちませんが、トランプがドルの基軸通貨性の持続を強調するのはこの理屈によるものです。

マクロ経済データは通貨オフセット理論と一致しているように見えますが、商品レベルのミクロデータを研究している学者は、この経験に対してより厳しい見方をしています。例えば、Cavallo, Gopinath, Neiman and Jang (2021)は、小売業者が輸入した商品の詳細なミクロデータを調査し、ドルの輸入価格が関税の額だけ上昇し、ドルの上昇が関税を相殺するのにほとんど役立たないことを発見しました。Cavalloによると関税は小売価格に転嫁できなかっただけで、輸入業者のマージンを圧迫したから消費者物価指数に反映されなかったと主張している。為替市場が調整すれば、関税は消費者物価に0%から0.6%のインフレ効果をもたらす可能性があります。近年のインフレ率の不安定性を考えると、1%程度のインフレはほとんど大きな問題ではありません。明らかに、2018年から2019年の経験は、一般的な価格レベルでは知覚できないほどわずかだったと言えます。さらに、米国内の税制改革、規制緩和、エネルギーの豊富さの全体像は、初期のインフレ衝動を抑えるディスインフレの推進力として機能する可能性があります。

減税による景気押上げ

第一次トランプ政権では、法人税、所得税をOECDで2番目の高水準から20%まで引き下げた結果、国内投資が20%増加しました。低税率の維持は、アメリカで投資と雇用を生み出す手段であり、外国からの輸入品に対する関税によって部分的に資金を調達すれば、さらに良いことである。 この議論は、所得税率にも当てはまります。労働供給が完全に弾力的でない限り、所得税は労働者が受け取る税引き後賃金を減らし、企業は税金の一部をより高い賃金で相殺することを要求します。

 

第四章 外交的通貨政策

多国間通貨アプローチ

歴史的に、多国間通貨協定は、ドルの価値を意図的に変更するための主要な手段でした。1985年のプラザ合意では、米国、フランス、ドイツ、日本、英国が協調してドル安を抑制し、1987年のルーブル合意ではドル安を食い止めたが、一般的には通貨水準の調整に成功したアプローチと見なされている(ただし、その経済的影響については議論の余地がある)。 外国為替でのドルの価値は、貿易相手国の通貨に影響を与える力にも依存するため、ドルの価値を変更するという目標に関するパートナーとの調整は非常に役立ちます。今日、他の2つの主要通貨はユーロと人民元ですが、円も輸入されています。しかし中国は米国と協調して通過調整を行うとは考えられず、多国間アプローチが有効な手段となることは困難でしょう。

単一通貨アプローチ

ウォール街のコンセンサスは、トランプ政権が過小評価されている通貨を強化するために取ることができる一方的なアプローチはないということです。これらのエコノミストは、連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利をドルの主な推進力として指摘し、大統領が通貨の結果を達成したいからといってFRBが金利を引き下げるわけではないと強調する傾向があります。

 

第5章 市場と金融資産変動(ボラティリティ)に関する考慮事項

 

今回のトランプ政権は3期目がないため、レガシーとして米国の再工業化、製造業の活性化、国際競争力の向上という彼の主要な目標に全力を注ぐでしょう。金融資産の変動リスクは重大ですが、その安定化には注意を払うでしょう。一つは多国間通過アプローチで、貿易相手国に、過小評価されている通貨を強化するための多国間アプローチに同意させることで、望ましくないボラティリティを抑えることができます。取引パートナーが保有する準備金を超長期のUST証券に限定する契約により、a)財務省への資金調達圧力を軽減し、財務省が市場に売却するために必要な期間を短縮します。b)予算が時間の経過とともに悪化するにつれて、より高いレートで繰り越す必要のある債務の額を減らすことにより、債務の持続可能性を改善する。c)防衛傘と予備資産の提供が絡み合っていることを確固たるものにする。この不測の事態では、センチュリー債ではなく永久債を売るという議論さえあるかもしれません。

ただし、米国のパートナー国や同盟国のほとんどは、単なる米国の経済植民地に過ぎません。アメリカの植民地帝国は、G7(ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、日本、カナダ、アメリカ)、EU、韓国、オセアニアを構成する国々を指します。私たちはこの世界を「Collective West(集合的西側)」と呼んでいます。しかし、私の考えでは、フランスはやや例外です。1960年代にドゴールが独自の核戦略を持った事が大きいでしょう。

問題は、アメリカだけでなくその植民地も巨額の債務を抱えて国家財政は破産しており、危険な状態であることです。かつては、債務残高がGDPの60%を超えてはならないという確固たる見解があり、これは EUの債務収束基準にも当てはまります。しかし 今日、事実が悲惨な状況を示しているため、これらのルールは意図的に無視されているようです。

西側を含む世界の政府が抱える負債は回復不能なほど巨額になりつつある。この負債は一般市民には還元されず、最終的にグローバリストの一部富豪に全て吸収されるしくみになっている。日本の負債はGDPの200%以上(黄色)で世界でもダントツあるが、本当に財務省解体して積極財政などして良いのか?グローバリストが喜ぶだけではないか? 

米国の負債増加率も近年(バイデン政権)急上昇していて第二次大戦終了時を超えている。

一方的な通貨アプローチ(一国通過アプローチ)は、より大きな信用通貨変動リスクをもたらしますが、行動の柔軟性は高まります。もしFRBが外国資産を買うためのドルを創り出せば、その貨幣創造を不胎化しようとするかもしれず、 おそらく、前期利回りは上昇し、後退利回りは低下し、イールドカーブはより平坦化するだろう。FRBの金利変動の調整は有効だが種々の結果をもたらしえるものです。

 

第6章 結 論

 

政権はウォール街のコンセンサスとは異なり、ドルと為替へ影響を与えることが出来る。トランプ大統領は、関税が貿易相手国から交渉上のレバレッジと歳入を成功裏に引き出す手段であることを示したため、通貨ツールよりも先に関税が使用される可能性が非常に高い。関税は米ドルにとってプラスであるため、投資家は国際貿易システムの改革の順序を理解することが重要になります。ドルは、反転する前に上昇する可能性が高いです。

 

(論文引用終了)

 

〇 感 想

多極化を推し進めている一方で、今までのグローバル一極状態の恩恵(基軸通貨の維持)は持ち続けようとしているのは虫が良い。確かに直ぐに通過バスケットやドルに代わる通貨(BRICS通貨)が出現することはないが、ビットコインなどの仮想通貨や中央銀行が支えるデジタル通貨の実用化もまだ時間がかかる。今回限りの4年間の過渡期をトランプ特有のディールと強気の交渉で乗り切ることが出来るかは未知数なところがあり、中国やBRICSの協力がどうしても必要になるだろう。その意味で新たに台湾有事とかイラン中東戦争をしている場合ではないと考えられる。

エコノミスト誌が示す様にトランプ、プーチン、習近平によるニューワールドオーダーが必要かも知れません。

 

追記:2025年4月12日

 

昨日トランプ関税の重要なファクターは、ブログの題に示した様に、論文の第五章にまとめられたボラティリティ・リスクにあることを強調しましたが、副島隆彦氏の解説 (重たい掲示板3181)で、相互関税を先延ばしした理由は米国債が売られて値が下がった事と、その売却は日本の農林中金が引き金になった事が示されました。論文の第五章の要約は論文そのものの他にホワイトハウスが発表したSteve Miran氏のコメントで触れられていた西側諸国(米国植民地)の負債についてrakitarouが追加したのですが、正に米国の負債超過で国債の暴落に耐えられない事が背景にあることが解説されました。政府以外にも米国債を多く持っている金融機関やファンドは多数あるでしょうが、今後米国債が大きく値を下げる事になるといよいよ論文にあった「一国通過アプローチ」では立ち行かなくなる可能性が出て来たと言えます。

日々変化する情勢を的確に解説する専門家と大手メディアが渇望されます。

 

追記:2025年4月16日

4月15日の東京新聞「こちら特報部」でやっとSteve Miranの論文が紹介されて、トランプの狙いがドル安誘導、新たなプラザ合意(マールアラゴ合意)狙いであることが示されました。もう一歩踏み込んで米国政府の負債が国債の暴落に耐えられない、ボラティリティ・リスクが大きくなりすぎている状態、これから多極化へ向かう事、ウクライナ戦争を継続させている場合ではないことなど踏み込んで解説すれば東京新聞の面目躍如でしたが惜しい所です。

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メディアは歌舞伎か規範か

2025-04-04 10:32:14 | 社会

2025年4月始めのメディアはフジテレビ問題で一色でしたが、女子アナを喜び組として扱ったフジテレビは1980年代に「楽しくなければテレビじゃない。」と公言し、社会はフジテレビを時代のエリート、寵児として持ち上げていました。言わば「かぶく=はみ出し者、ならず者」としてエンターテインメントを重視することを社是として掲げていた訳で、「女子アナ≒知的アイドル」という立ち位置を社会も100%受け入れていた事は誰も否定できません。

 

I. メディアは歌舞伎か規範か

 

この二者択一の問いに答えはなく、どちらの要素も含むが答えでしょう。規範的な部分が強いNHKでも「演芸」「ライフ(コント番組)」「バラエティ」と銘打った上でおふざけ番組は放映しています。民放も「ニュース」と銘打った番組は内容の正確さはともかく「規範」に従う報道番組として流しています。しかし一番悪質なのは民法における「規範を装った歌舞伎番組」つまり朝、昼、晩に長時間ただ流される「(ニュース的)ワイドショー」番組です。これらの内容は硬軟取り混ぜた時事問題(ニュース)であり、規範を装ったコメンテーターが「正しい?解説」を繰り出しながら世論を作り出す様な仕組みになっています。製作側はニュース素材を扱うので費用が掛からず、尺もつぶせ、もっともらしい内容を確保でき、視聴者側も「にぎやかし」「時間確認」的にテレビを付けて興味がある内容なら見るというものです。

「これはバラエディであって規範的な内容ではありません」と断って放送するならまだ良心的ですが、そのような番組は一つとしてなく、コロナ関連、ウクライナ関連、国内政治もMCやコメンテーターが視聴者を教え導くが如くに放送されているのが実態でしょう。特に正体が不明であった新型コロナ感染症は、一般の人はマスメディアでまず情報を得る以外、医療や公衆衛生対応について知る方法はなかったのですからほぼマスメディアが報じた事が全て(真実)と受け取られざるを得ない状況でした。これはネットに押されて衰退気味のマスメディアにとって、民衆の需要性を取り返す「干天の慈雨」だったことでしょう。結果は日本を含む世界中の経済体系のグレートリセットに有効に働いて、数々の弊害や齟齬が生まれた事は明らかです。そしてその総括はタレントの乱交問題には行われても、コロナに対しては一切行われる気配もありません。

 

II. 現実を操るマスメディア

 

稲増一憲 著「マスメディアとは何か」(影響力の正体)中公新書2706(2022年刊)は、マスメディア論の専門家として実際の影響力は限られているという種々の実験結果などを紹介しながら、マスメディアの持つ根本問題を鋭く分析、指摘しています。全体的にはメディア肯定論的なのですが、専門家として各種実験的研究の成果を紹介しながら客観性を持って説明していると言えます。

その第4章「マスメディアは現実を操れるか」という章において、メディアの影響力が何故生ずるかについて解説した一文があるので引用します。

(引用開始)

 人間が直接経験することのできる範囲は限られている。そのため、マスメディアを通じて間接的に経験した内容が現実認識の大きな部分を形作ることとなる。ここで、マスメディアが世の中のすべての出来事を伝える事は不可能であるため、伝える情報と伝えない情報を選別するゲートキーピングの役割を担う。従って、マスメディアが構成する環境は現実そのものとは異ならざるを得ない。人々の現実認識は、このマスメディアによって構成された現実の影響を受けているため、現実そのものとは異なる疑似環境と呼びうるものである。

(引用終了)

 

稲増氏は、このメディアの選択によって、本来的に議論されるべき「第一レベルの議題設定」(争点型議題設定)が、メディアの選別(フレーミング)後に残った「第二レベルの議題設定」に落とし込まれてしまう、と注意喚起します。新型コロナ感染症で言えば、本来議論するべき「新型コロナはロックダウンして完全予防が必要か、必要に応じた医療で集団免疫を得る対応でよいか」と言った議題設定は敢えて争点にせず、「3密を防ぐ方法を徹底させるには」が議題に選ばれて議論されるといった事に当てはまります。

 

III. 培養理論とマスメディアの共振性

 

メディアの描出する世界が現実そのものでなくとも、各メディアが異なる視点から様々な報道をすればバランスの取れた内容になる。しかし現実には、特に日本のマスメディアはどれもほぼ同じ視点、同じ内容である。稲増氏は世論研究者のノエル・ノイマンが提唱する「マスメディアの共振性」という理論で説明する。一つの原因は「有力メディア」の存在、そして重要なニュースを一社のみ報じない「特落ち」を避ける横並び意識がどのメディアも同じ内容に偏向する状況を産み、それらが重なる事によって「共振性」「主流形成(培養理論)」となって世論を作り出す作用があると説明します。

日本はNHKを含むどのメディアも、海外ニュースはNYタイムスや英国BBCをまず第一に引用しますが、USAIDがBBCに本部を置くTrusted News Initiativeを資金援助し、このメディアスクラムにはロイター、フィナンシャルタイムズ、日本のNHKも参加していたことがTNIのホームページに記されています。メディアの共振性と培養理論を利用して世論形成を作り、「メディアの作る仮想現実」が培養理論によって「現実そのものに影響を与える」しくみが浮き彫りにされたと言えるでしょう。

IV. ネットとエコーチェンバー、アルゴリズム

 

インターネットの普及によって、テレビや新聞などのメディアが視聴される機会が減り、ネットでは自分の好みや主張に合う内容が多く選択され、またプロバイダーもBig dataを駆使してユーザーの嗜好に合わせた検索結果やCMが流れる様なアルゴリズムを駆使していると言われます。結果的にユーザーは自分の嗜好に合ったコンテンツばかりを視聴するようになり、一層世論の分化が進む、所謂エコーチェンバー現象が起こり、政治的主張なども分断化が促進されると言う批判が絶えません。

稲増氏は同著の第五章「マスメディアとしてのインターネット」という章で、グーグルやヤフーなどのポータルサイトが行うアルゴリズムに基づくパーソナリゼーションも必ずしも偏った情報のみを目にする結果にはならない、という米国の研究結果を示している。ポータルサイトが掲示する政治ニュースは、アルゴリズムに係わらずユーザーに同一の内容が上段のいくつかは示される規定になっていて、目にする情報自体は完全にパーソナライズされていないと言う。むしろ目にするユーザーの方が政治に興味があるか、娯楽に興味があるかによって目にする情報の消化に違いが生じている結果が示されているという。但し、引用されている2015年のBakshyらの研究では、米国で5万人のユーザーが23億件の情報閲覧を集計した結果で、保守系(共和党系)とリベラル(民主党系)の支持別の統計において、イデオロギーが異なる記事に接する割合は保守系の方が多い傾向が出ていました。それはメディア自体が提示する報道の量に保守系、リベラル系で均一でない事が基本としてあるためと思われます。

カナダ人ニュースのヤマタツ氏、2025年4月2日の動画において、リベラル系を主に報道する大手メディアは、保守系がネットを重視することに危機感を強めていて、SNSを標的にした言論統制は圧倒的にリベラル派が保守に対して行う傾向にあると報告しています。

 

V. SNSに対する組織的検閲は主に保守系をターゲットにしている

 

以下は上記ヤマタツ氏の動画からの引用になります。Media Mattersの調べによると、SNSにおいて100万以上のフォロワーがあるサイトの共和党寄り(赤)と民主党寄り(青)の数を比較すると、圧倒的に保守・共和党寄りのサイトに人気があることが解ります。それはYou tubeなどの動画も同じで再生回数は保守系の内容が圧倒的です。

100万以上のフォロワーを持つサイトや動画のビューは圧倒的に保守派コンテンツが多いというMedia mattersの調査結果

一方Gallopの調査でマスメディアへの信用度は保守系の人ほど低く、2024年には12%まで落ちているのに対して、リベラル系は24年においても50%が信用しているとされ、マスメディア自体がリベラル系に偏向している事が示されています。この結果を見るとSNSの検閲をリベラル側が強く求める理由が明らかであると解ります。

共和党(赤)と民主党(青)支持者のメディア信頼度(黒は独立系)

日本における2023年の総務省の統計では、米国よりもすべての年代でマスメディアへの信頼が未だに高い事が示されています。これを幸いと見るか、残念と見るかはオルタナティブメディアの情報に信頼性を置くか否かで分かれると思いますが、日本で検閲が進むと米国以上に情報の偏りが徹底してしまう事が危惧される結果と言えるでしょう。

雑誌の信頼度が低いのは言論誌の数や部数が少ない事、全年齢層で政治への関心が低い事にも原因がありそう。

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高齢ドライバー事故と薬剤

2025-03-27 14:17:25 | 社会

高齢者の起こす自動車事故で子供たちや若い人が犠牲になることは非常に悲惨な事です。高齢者の自動車事故の特徴は高度な技術や注意が必要と思われない場所であり得ない様な事故が起きることです。これには高齢者特有の事情が原因にあることは間違いないのですが、日本では「高齢による注意散漫(ボケ含む)や運動能力の低下」ばかりに原因を求めがちです。

精神科医の和田秀樹氏は高齢者の事故原因は「高齢」ではなく「薬剤誘発性」の場合が多いと紙の爆弾誌(2025年2月号)で問題提起をしています。2019年の元通産省技官飯塚幸三氏(当時87歳)による池袋暴走致死事件では、本人が事故時点の事を「覚えていない」と言って「ふざけるな!」という反応が起きました。2025年3月の浜松の小学生の列に軽自動車が突っ込んだ事故でも78歳の農業を営むドライバーは「何故ぶつかったか分からない」と事故時点の記憶が曖昧である事を供述しています。

欧米では、高齢者が多くの意識や運動能力に影響する薬剤を使用していることは当然の事としてこれら薬剤の事故への影響を注意喚起する論文が数多く出され、薬剤使用時に運転を控える注意喚起が政府主導で多くなされています。

 

米国医学会雑誌(JAMA)2023年12月号に掲載された「高齢ドライバーの運転障害」という短報が良く整理されているので引用します。

(引用開始)

高齢ドライバーの運転障害 Rebecca Voelker

危険因子(赤)安全運転へのヒント(黄)安全運転支援の方策(青)信号で表現

高齢ドライバーは、加齢や健康状態により運転能力に影響を及ぼす場合があります。自動車事故の 90% 以上は人為的ミスが原因です。高齢者の場合、加齢による視力低下、認知機能低下、反応時間の遅れ、握力の低下などの変化により、車線を外れたり、速度制限を守らなかったり、交通標識を見落としたりするなど、一般的な運転ミスのリスクが高まります。

自動車事故で死亡するリスクは、若いドライバーに比べて、75~79歳のドライバーでは2.5倍、80歳以上のドライバーでは5倍高くなります。

 

〇 高齢者の運転能力に影響を及ぼす可能性のある病状

 

運転能力を低下させる可能性のある急性疾患には、発作、失神、低血圧、低血糖、不整脈などがあり、めまいや呼吸困難を引き起こす可能性があります。

運転能力を低下させる可能性のある慢性疾患には、認知症、パーキンソン病や過去の脳卒中など筋力や協調性に影響を与える神経疾患、運転中に居眠りするリスクを高める未治療の睡眠時無呼吸症などがあります。

 

〇 高齢者の運転能力を低下させる可能性のある薬

ベンゾジアゼピン(ハルシオン、レンドルミン、ベンザリンなど)、オピオイド(麻薬系鎮痛剤)、抗コリン薬(頻尿薬、アキネトンなどの抗パーキンソン薬)、特定の抗けいれん薬(リボトリール、マイスタンなど)や抗精神病薬(トランキライザー)など、眠気を引き起こしたり、思考力に影響を及ぼす薬は、自動車事故のリスクを高めます。高齢のドライバーが複数の鎮静薬を服用すると、運転リスクが高まります。

 

〇 高齢者の安全運転を支援する

安全運転に危険を及ぼす人物を特定する必要があります。高齢ドライバーと同乗する家族はその運転者が安全かどうか判断しえるでしょう。運転中の携帯電話での通話やテキストメッセージなどは厳禁です。鎮静剤の服用は避けてください。危険な薬についての情報は医師や薬剤師に教えてもらえます。白内障手術や睡眠時無呼吸に対する持続陽圧呼吸療法 (CPAP) など、潜在的に回復可能なリスク要因の治療も推奨されます。

 

〇 高齢ドライバーを評価するテスト

GPS連動の運転記録は運転者の運転技術を記録できます。作業療法の専門家が実施するパフォーマンスベースの路上テストは、高齢ドライバーが交通状況をどれだけうまく乗り越えられるかを評価し、運転免許を取り消す必要があるかどうかを判断するのに役立ちます。

 

〇 高齢ドライバーを支援する技術

一部の車には、自動運転、ブレーキ補助システムが付いており、事故の予防に役立ちます。一部の車には自動縦列駐車や緊急ブレーキが装備されており、悪天候や遮られた交通標識に関する警告も提供され、運転ミスを減らすこともできます。自動運転車は現在、米国のほとんどの地域では利用できませんが、将来的には高齢ドライバーにとって役立つ選択肢となるかもしれません。

詳細情報

(引用終了)

またBMC Geriatrics2022年にフランスから発表された「高齢者の運転障害を起こす薬剤使用状況」という論文では、65歳以上の1,783名の何等かの疾患治療を受けているドライバーを対象にした研究で、21%373名が運転障害を起こす可能性がある薬を使用しており、その中で多く使用されていたものは以下の通りでした。()内は日本における商品名

最も頻繁に服用されていた運転に影響しえる薬( PDI 薬)は、ゾルピデム(マイスリー) (11%; n  = 60)、ゾピクロン(アモバン) (8%; n  = 45)、ブロマゼパム(レキソタン) (8%; n  = 44)、トラマドール (トラマール)(7%; n  = 39)、プレガバリン(リリカ) (6%; n  = 31) であった。

 PDI薬を服用しているドライバーは、慢性疼痛(OR [95% CI] = 2.30 [1.54–3.46])、うつ病の病歴(4.28 [3.00–6.14])、多剤併用(少なくとも5種類の薬を服用、4.32 [2.97–6.41])の割合が高く、2型糖尿病(0.54 [0.37–0.79])およびAF(0.48 [0.32–0.71])の割合は低かった。逆に、日常生活動作スコアは低かった(0.34 [0.17–0.68])。

 

こういった薬剤は日常的に私(rakitarou)も処方したり、自分の患者さんが薬剤手帳などから使用していることが確認できる薬剤であり、使用者全員が事故を起こす訳ではありませんが、0.1%が何らかの事故につながる事象(ヒヤリハット)を起こすとしてもそれが100件集まれば必ず大きな事故につながる物と思います。

日本人は薬好きであり、国民皆保険であることからも薬剤への敷居は低い国民性です。先日私は運転免許の更新をしましたが、その際の講習でも薬剤の事は一切触れませんでした。メディア及び警察は高齢者の事故と薬剤の関係をもっと積極的に報じて注意喚起する必要があります。マイナンバーと免許の連携をするなら、折角健康保険証と連携させたのですから薬剤履歴との照らし合わせで処方時に薬局で注意喚起するパンフレットを配布できるようにするとか、免許確認時に危険薬剤との符合が確認できるシステムにする必要があると考えます。

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ディストピアを礼賛する地下鉄サリン30年目の東京新聞社説

2025-03-21 15:50:47 | 社会

地下鉄サリン事件30年目を迎えて、各新聞メディアらは事件を振り返る種々の特集を組み、多くの犠牲者を出した無差別テロ事件を風化させまいとする論説を張りました。その目的とするところは良いと思われるのですが、2025年3月20日東京新聞の社説『「陰謀論」に勝る理性こそ』には驚かされました。メディアやジャーナリズムが「権威を疑う事」「謙虚であること」という原則を失い、権力に阿り大衆を下に見て自らの権力を「報道の受け手」を従わせる道具にするという劣化が起こって久しいと痛感していたのですが、この社説は余りに痛い内容であり、メディア劣化の記録としても残しておく意義があると考えブログ題材としました。

 

〇 疑惑を陰謀論で片づけず、科学的思考と理性で判断する重要性

地下鉄サリン事件30年を記して、事件を知らない若い人にも理解しやすい様に「オウム真理教」や事件の概要を説明する事は良いと思います。そして信者を一般社会から隔絶した世界に閉じ込め、生活上必要な全ての金銭を供出させ、教祖の宗教的権威は詐欺的幻想と極限的環境を与える事で正常な判断ができない状態にするといった説明もその通りと思います。しかしここで大事なのは、当時一流大学の理系学生達の多くが教義に賛同して活動に参加したのは何故か、多くの疑惑がありながらメディアがある種スター性を持って教祖や幹部を紹介、報道したのは何故か、そして何故最終的にサリン散布による大量無差別テロという結論に結び付いたのかという論説であるはずです。

しかし社説が導く結論は驚くことに以下の様な内容でした。そのまま引用します。

 

(引用開始)

 

「予防」で有害性を知る

 

 横浜国立大学の村山太一助教らが約2万人を対象に行った調査では「ワクチンの有害性は隠されている」「在日外国人が政治家やメディアを操っている」「地球温暖化はデマである」という陰謀論を「正しい」と答えた人はそれら言説を知る人々のそれぞれ約15%、約9%、約8%を占めました。

 状況を複雑にしているのは、いったん信ずると正常な判断に戻ることが困難なことです。陰謀論を否定する証拠を示しても、改善がほとんど見られないそうです。

 村山さんは「効果的なのは『予防』」と説きます。陰謀論に触れる前にその有害性を知り、科学的な真実を学んでおくことです。

 SNSや読書の履歴などデジタルデータを解析して、陰謀論に陥りやすい条件を備えた人々を割り出し、いち早く注意喚起する手法も研究されています。

 陰謀論を信奉する人の特徴として、直感に頼る傾向や孤独感が指摘されています。思考停止に陥らずに熟慮する姿勢や、家族や友人ら信頼できる人々とのコミュニケーションも大切なのです。

 戦争や気候変動、少子化、財政難など将来の不安や閉塞感を打ち破ろうと、極端な主張によりどころを求める人がいるかもしれませんが、それが悲惨な結果を招くことは教団が証明しています。衆知を集め、理性的に解決する姿勢こそが陰謀論を打破できるのです。

 

(引用終了)

 

いちいちツッコミは入れませんが、余りの内容に脱力とため息しか出ません。ジョージ・オーウェルの「1984に描かれたディストピアこそが混乱のない統制された社会を築く基である」と2025年の新聞は堂々と社説で述べるようになったのです。一方的な言論のみを真実と洗脳され、異なる意見、異論反論に接することを社会から隔絶されることで予防的に禁じられた結果「オウム真理教の悲劇」が起こったと言いながら、権力側の一方的結論のみが正しく異論反論を陰謀論と一括りにしてそれに接しないためには予防的に抹消(バン)することが大事だという論説を展開するとは少しは恥ずかしいとは思わないのだろうかと思います。

これがどこぞの宗教関係のプロパガンダ新聞ならば「あり」でしょうが、読者から金を取って記事を書いている、しかも「東京新聞」なのですから畏れ入ります。

 

〇 疑う事を禁じたら既に科学(サイエンス)ではない

 

当ブログでは今まで何度もカール・ポパーの反証可能性について触れました。私の東京医科大学における最終講義でも科学は疑いを持つことから始まる事を学生達への置き土産として話すことから始めました。以下に学報雑誌に掲載された私の最終講義の冒頭部分を載せます。

 

(引用開始)

 

  1. 医学と医学教育の位置づけ

 最終講義を行う上で、医学と医学教育における大前提について話します。一つは、大学教育は高校までが「必ず答えの出る問題について学ぶ場」であるのに対して、大学は「必ずしも答えの出ない問題をいかに考えるか、という方法論を学ぶ場」である事です。だから普通は大学卒業にあたって独自性のある「卒業論文」を仕上げ、「方法論を学んだ証」とします。しかし現在の医学教育は「医療の均霑化」という国民の要求に答える必要もあって全国一律の教育目標の下、ある意味「専門学校化」して「未知への探求」を教育目標には上げていません。答えの出ない問題探求は大学院での医学研究で学ぶ事になりますが、国家試験では必ず答えが出る医学も実臨床の現場では必ずしも答えが一つとは限りません。

 もう一つの大前提は、「西洋医学は演繹法で答えを出す自然科学の一分野である」という事実です。オーストリア生まれの英国の哲学者、カール・ポパーは1934年「探求の論理」を著し「演繹法に基づいたパラダイムの構築には反証可能性(疑問を持って検証すること)が必須である」と提唱しました。つまり自然科学の成立には常に「仮定、論理展開(研究)、結論」という演繹法の各ステップに疑問を持ち続け、疑問には確実な検証で答える必要性を強調したのです(図)。そしてこの理論が自然科学の成立には必須の条件であると受け入れられて来ました。疑問の提示を「禁止する」事は科学においてはあってはならないのであり、あらゆる「当たり前」とされる事にも疑問を持ち続ける事が「科学の進歩」と「信頼性」には必須なのです。

(引用終了)

 

〇 専門家 ≠ 正しい政治決断

新型コロナワクチンの効果、安全性についての国会質疑で、「専門家による審議会」という権威で押し切る厚労省

政府各省庁が政策を進めるにあたり、その決定には必ず「専門家による審議会」で検討が行われます。科学技術の進歩により、物事を決定するにはその分野の知識が豊富な専門家による検討が必須であることは当然と思います。しかし専門家の役割は、当該問題事項について非専門家でも理解できるように物事の利点欠点などを解りやすく整理解説する事であり、最終的な決断は責任権者(政治家)が名前と顔を出し責任を明確にした上で行う必要があります。そして専門家は正しく解説はできるでしょうが、政治的決断が正しいという保証はありません。これは当然の事実ですが、「専門家の判断=正しい」がデフォルトとして刷り込まれているために、「専門家の判断に異議を言えない」「専門家の判断に責任は問えない」という形で「専門家による審議会」は政府役人にとって都合よく利用されているのが現実です。コロナワクチンに関する政府の答弁でも「専門家による審議会」という免罪符を多用してまるで専門家が常に正しい政治判断を下している前提で追求がかわされます。

 

〇 軍におけるジェネラル(将軍)の重要性

 

常に合理性が追求される軍事組織は、専門家と最終決断を下す権力者を明確に分けている事が手本となります。自衛隊や米軍では兵科といってそれぞれの士官、兵は軍内での自分の専門性を持って仕事をします。自衛隊では歩兵は普通科、砲兵は特科、戦車は機甲科であり、軍医は衛生科に属し、それぞれ軍服には専門科の徽章を付けます。徽章を見ればその軍人は何が専門かが解ります。例えば高射特科、偵察、需品、輸送、施設(土木工事)、法務など数多くあり、それぞれに軍の専門学校があります。これは旧軍でも同じで、私の父は一ツ橋在学中に学徒動員に取られたため陸軍主計少尉(今の会計科)でした。

この専門科は一佐(大佐)が最上級の位であり、将軍(ジェネラル)になると徽章を外して全ての科に精通(名前の通りジェネラル)する存在として最終決断を下す立場になります。勿論もともとの得意とする専門科はあるのですが、ジェネラルは幕僚会議などで一佐までの科ごとの専門家が示す状況解説を総合的に判断して軍の活動目標が達成できる決断を下すことになります。当然専門家と意見が異なる事は多々あります。ジェネラル(将軍)は「専門家がこう言ったから」という言い訳は一切しません。なぜなら軍の行動に対する決断は自分の責任で行っているからです。

私も師団司令部の医務官(幕僚)であった時、冬場の演習でインフルエンザの流行で部隊の無効率(病欠者による部隊の活動率)がどの程度であるかを日々師団長、幕僚長に報告し、人事(一部長)や後方支援(衛生を含む四部長)らと協議しながら防疫処置の必要性などを師団長に意見具申しました。

余談ですが、日本には制服自衛官の最高位である統合幕僚長(四つ星)は一人です。第二次大戦時、1,500万人の米軍を従える四つ星将軍は3名でした。しかし現在米軍(130万人)の四つ星将軍は44名もいます。多くの船頭が権力分散して自己主張すれば総合的な戦力は弱くなります。現在の米軍はウクライナ戦争で戦力が3倍に増加したロシア軍には勝てないと言われる所以です。

 

誰がどう言おうが決断は責任者(石破総理)が下さねばならない

決断を下すのは政治家(総理・大臣)なのですから、国会答弁において、「専門家による審議会」云々という言質は禁止すべきではないでしょうか。

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子離れ(米国)親離れ(日本、欧州、イスラエル)できるか

2025-02-08 15:37:04 | 社会

トランプ政権が開始されて2週間足らずで、各省長官人事もやっと決まりつつある状態でありながら、世界情勢が目まぐるしく展開してそれぞれの意味合いを理解するのも困難な状況です。大きくは、多極化に向かう世界で米国を多極の一極に据えるMAGA(=米国モンロー主義の復活)に進むトランプ大統領陣営と米国覇権維持グローバル(Deep state巨大資本陣営)のせめぎ合いなのですが、圧倒的に権力を持ったトランプが1期目ではできなかった改革を用意周到邪魔される前に手を打って改革を進めている物と思われます。

つまり米国は子離れ(従属国の独立)を指向、従属国は親離れを強いられているものの、それぞれで対応が異なっている状況と言えます。

トランプ大統領と最初に会談をしたのは、イスラエルのネタニヤフ首相でしたが、その反応は「勝手な事はするな」(米国独自の価値観の押し付けはイスラエル権力層=AIPACが許さない)という内容でした。欧州の反応は「我々は独立しましょう」(グリーンランドに防衛軍を送る。ウクライナは独自に対応)の方向ですが、2番目にトランプと会談をした日本は「え?対米独立?今こそ日米同盟強化でしょ?」という多分トランプ的には「それなら米国の要求は全て飲んでもらうよ」という反応でした。以下最近の動きをその観点から纏めます。

英国がウクライナ支援の主導を引き継ぐという2月6日テレグラフ紙の記事

 

〇  CIA(米中央情報局)USAID(米国際開発庁)解体

CIA解体について日本では全く知らないヒトも多いのでは?

米国政府の無駄を省く手始めはCIAとUSAIDの解体でした。CIAは全職員に辞職勧告がなされて早期辞職に応ずればボーナスも支払われるようです。CIA解体は前回のブログで示した様に至る所で反響が出てきている様です。USAIDはCIAのフロント実行組織で、移民や被災民への慈善事業を表看板にした他国政府、メディア、反政府NGOへのCIAの意向に沿ったコントロールを行う組織です。ハイチの地震、ハリケーンへの援助事業は予算の数パーセントしか実際の援助には使用されず、殆どの予算(税金)が中抜き、裏工作、キックバックに使われたと言われます。USAIDは年間6兆円(428億ドル)の予算でコロナウイルス開発を始めとする世界を混乱に陥れる役を慈善団体という名目で邪魔をされずに実行してきました。今後は国務省の一機関として「真に慈善事業に使う分のみ」の予算で運営される予定です。

CIAの手足として動いて来た従属国の(梯子を外された)ポチ達は、現在右往左往し始めている所です。命令を下し、後ろ盾になっていたCIAのボス達が荷物をまとめて母国に帰ってしまったからです。日本、欧州、中東でも国内で大きな動き(力関係の移動)がこれからあるでしょう。

 

〇  ガザを米国が所有し、リヴィエラの様なリゾートに

トランプ氏には珍しく原稿読みで会見 ネタニヤフ首相は満足そうな表情 パレスチナの人達もそこに住むよとコッソリ発言はしている

トランプ大統領と最初に正式に会談した首脳としてネタニヤフ首相と共に会見したトランプ大統領がガザを米国が所有すると言って物議をかもしました。親イスラエル派からは概ね歓迎され、BRICS始め多くの反シオニスト派からは「何だって?」「信じられない!」という予想通りの反応です。

私は頭のおかしなシオニスト「神がパレスチナを数千年前からユダヤに与えた」から何でも許されると言い放つ輩を黙らせるのはトランプが「私が神として君臨しましょう。」くらいの阿呆を宣言する必要があったのだろうと考えています。「妄想には妄想で答える」形式。なぜなら記者会見においてトランプ氏はいつものフリートークを封じて「原稿読み」に徹していました。これは具体的な計画を一切述べず、展望のみ語る作戦であり、実行性の面で「米軍は現状派遣しない」「金はサウジに出させる」「完全停戦が実現してから住民の移住を行う」「エジプトとレバノンが移住を受け入れる」というどれも現状実現不可能な具体性のない展望に徹し、雰囲気だけシオニズムに希望を抱かせる内容にしている所がミソと思われるからです。ネタニヤフ首相としては極右リクードを黙らせる土産を持って帰国できる内容だったでしょう。

会談に際してモサドがヒズボラ攻撃(24年5月19日にヘリが墜落して死亡したイランのライシ大統領もポケベルを持っていた)に使った「金のポケベル」と「普通のポケベル」をトランプに贈ったそうですが、「頭のおかしな集団にはこの答えで」というにふさわしい解答だったように思われます。

 

〇  USスチールは日本が投資する。尖閣は5条の範疇

黄金時代とか持ち上げているけど大丈夫か?

続いて二人目の会談になった石破総理ですが、こちらはネタニヤフ首相と違い、具体的事象について会見で表明、しかしながら「軽くあしらわれたね」という印象。米国は全く損をせず、150兆円の投資を呼び込み、日米安保の口約束で(5条範疇に入る入らないは今まで何度も扇の裏表の様に繰り返された)喜んで帰国するのですからイスラエルに比べて何と楽なことか。対外投資で日本円が買われる事はありません。長期円安確定の約束を日本のメディアはどう報ずるか(売国の度合いが計れる)見ものです。

 

〇  ロシアの政治的要望は受け入れてもウクライナの地下資源は欲しい

ガザ沖の天然ガス埋蔵田(パレスチナの領海にある)  ロシア占領地域に集中する埋蔵レアアース

ガザの所有も本音はパレスチナの海洋天然ガスの奪取をイスラエルが目論んだ事が発端であることはイスラエル情報省の覚書(ハマス襲撃直前に覚書発行)から明らかになっていますが、ウクライナを米国が欲しがるのは特に東部ドンバス地域に埋蔵するレアアースなどの天然資源が目的です。キエフやリヴィウがある西部は主に穀倉地帯であり、それらは既にモンサントやカーギルが利権を握っていてウクライナ国民が所有する農地など残っていません。ロシアは東部ドンバス地域をロシアに併合し、残りのウクライナに親ロシア政権を樹立して中立非武装を宣言させて欧米の利権を追い出しにかかるでしょう。後はディールで農産物やレアアースの開発利権をトランプと協議してウクライナの再建資金に充てる方向で話が進むと思われます。2月9日のニュースではゼレンスキーは慌ててウクライナのレアアース共同採掘とウクライナ支援をリンクしてトランプと協議したいと言い出していますが、「100年遅い!」阿呆です。欧州としては一刻も早くロシアからの安いエネルギー輸入再開を図って、産業復興と物価安定に向かわないと完全にBRICSに経済を奪われる結果になります。

敗北寸前の国がディールできるという発想が余りに阿呆!100年遅い!

 

〇  対米自立をテーマにした「紙の爆弾」

目まぐるしく変わる世界情勢と対米自立をテーマにした「紙の爆弾」2025年3月号が発売中です。rakitarouも「日本だけ続く超過死亡増大」について論考を加えていますので是非お読みください。扉にカラーで掲載された各国の超過死亡統計表を示します。

また来る2025年3月9日(日曜)品川区スクエア荏原(武蔵小山商店街、戸越銀座商店街)にて13:30-15:50「メディア廃棄宣言」を執筆された(反)ジャーナリスト高橋清隆氏を招いて「温暖化とコロナに流されない市民の会」勉強会を行います。参加費1500円でこちらから申し込めます。rakitarouも前座としてワクチンと超過死亡の関連、トランプ後の世界情勢について解説します。交通の便が良い所ですので関心を持っていただける諸兄は是非ご参加下さい。

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「偽情報・誤情報、キャンセルカルチャーと忖度」=現代メディア

2025-01-30 16:12:22 | 社会

中居正広氏の女性問題から派生したフジテレビバッシングは、局の執行部退陣のみならず存続まで危ぶまれる事態になりました。しかし混乱の文春が報じた元情報である「フジテレビ幹部のA氏が食事会をセットしてドタキャンすることで中居氏と女性のみが残る設定をした」が全く偽情報であったことが明らかとなると、10時間に及ぶ「吊し上げ中継会見が必要なモノだったのか?」を含めて出席していたジャーナリスト全員が情報の確認(ファクトチェック)さえせずに責任追及をしていた事が露呈してしまいました。正にフジから広告撤退した空き時間に放映されている「ACジャパン、決めつけ刑事」(嶋田久作氏出演、ハイ人生終了!というキャンセルカルチャー問題も盛り込まれている)の実写版が繰り広げられるという大型バラエティになってしまいました。しかも会見が長引いて中止になったものの記者会見後の番組が「全国女子アナ選手権」的な特番が予定されていたというから完璧です。

ACジャパンの傑作 決めつけ刑事

ヒトも組織も「良い点」「悪い点」があるのは言わば社会の常識に当たるモノですが、一部の悪い点をあげつらう事で対象の存在全てを否定する「キャンセルカルチャー」の流行は社会の幼稚化を表す現象です。上記決めつけ刑事の「ハイ、人生終了!」のセリフに象徴される批判される内容の意義付けや改善の機会などを考慮せずに「全否定」というのは善悪二元論に基づくものであり、携帯という小さい情報提供メディアで結論だけを得る事に慣れた現代人の知性劣化を物語るものでしょう。

 

〇 失敗を社会全体の改善につなげる根本原因分析

Root cause analysisの手法 Fishbone diagram

東京大学名誉教授の石川馨氏は、世界の見本となった日本のQCサークルの生みの親とも言われて、品質管理の向上に多用される根本原因分析(Root cause analysis)を1960年台に築き、それが世界中で建設、航空、医療などの安全管理にも応用されています。To err is human「ヒトは誰でも間違いを犯す」という前提で、個人の責任を問う事はせずに、間違いを犯しても大事に至らないシステムを作るFail safeとかFool proofといった改善が社会の安全に繋がるという思想が大事にされています。ブレーキが自然にかかるとか、逆の接続は端子自体がつながらない仕組みになっているといった事で至る所で応用されています。個人の責任を問わない文化が伸びた一方で「一事を持って全否定につなげるキャンセルカルチャー」が何故全盛になってきたかは主に政治的社会的理由が背景にありそうです。

 

〇  司法の政治利用 娯楽としての公開裁判(炎上)

キャンセルカルチャーは善悪二元論による全否定と安易な娯楽としての公開裁判の意味を持つ

巨大資本でメディアと米国民主党を牛耳るグローバリスト権力層にとって、米国をグローバリズムの中心ではなく、多極化を認め、米国を極の一つとして再構築しようとするトランプ大統領は「政治生命を消したい対象」でしかありませんでした。2020年選挙時の「議事堂襲撃扇動問題」や「機密書類持ち出し」、「ロシア疑惑」、果ては「ポルノ女優口止め料問題」と数々の無理筋提訴でトランプ氏の政治生命を絶つ事をグローバル陣営は試みましたが結局失敗、暗殺も2回試みて失敗し結局トランプ氏は大統領に返り咲きました。CNNのファリード・ザカリアはハリスの敗因の一つが「司法の武器化」に米国市民が拒否反応を示した事だと明確に評しましたが、こういった指摘は日本のメディアで聞いたことがありません。「トランプはレイシスト」「トランプはヒトラーと同じファシスト」「分断を煽る」などという「社会正義に反する」という印象操作による政敵排除を目的としたキャンセルカルチャー発動をメディアは繰り返してきましたが結局失敗に終わっています。

日本のメディアも同様の印象操作を繰り返してきましたが、「社会正義に反する」と規定した「芸能人」や「贅沢な立場にある者」を公開の場で吊るし上げる「公開裁判」は日本のメディアにとって「金のかからないバラエティ」としてワイドショーの時間つぶしにこの10年以上使われてきたネタと言えるでしょう。今回のフジテレビの一件はその「悪しき集大成」と言えるように思います。メディア全体が「安易な自らの在り方」を真剣に反省し、新たな「ジャーナリズムの規範」を作って立ち直れるか否かに既存メディア再生存続の可能性が問われていると私は思います。

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米国の外交は米国が決める(by Trump)

2025-01-18 14:01:24 | 社会

次期米国大統領のトランプ氏就任まであと数日になり、就任式の会場が急に屋内に変更になるなど無事に就任自体が行われるか注目される所です。またLame duck状態のバイデン政権が、ウクライナにロシア本土攻撃を米国製ミサイルやドローンで行う事を許可する(米軍情報機関のバックアップが必須)などトランプ就任後の行政へ様々な妨害工作をしている一方で、パレスチナ停戦合意、カナダやパナマ運河を合衆国の管轄にするとか、グリーンランドを買収するとか既に多くの話題を次期トランプ政権は打ち出しています。それらの実効性は未定ですが、これらの新たな外交政策に共通して見られる根本思想は「米国の外交は米国が決める」という事だと思います。イスラエルへの無条件の支援は主権の放棄だという論考で述べた様に、バイデン政権のイスラエル支援は自国内のみならず国際社会を敵に回し、国益を無視した「イスラエル隷従」でしかないものです。他国を支援・干渉するにしてもそこに米国の国益がなければ意味がありませんし、隷従支援のために国内の反対意見を取り締まる法律まで作るようでは完全な主権放棄と見なされても良いでしょう。これらトランプ外交の実効性については、メディアなどでは様々な意見が出されています。多くは悲観的(どうせうまく行かないという反トランプ的期待もある)なものですが、昨年7月の暗殺を免れて「神がかり」の啓示を感じたトランプ氏が失敗を恐れずにレガシィを残す偉業を画策することは大いに考えられます。また反対勢力側もある意味「一定の諦観」を持ってトランプ政権を迎えるであろうことは、選挙結果を見ても明らかだと思います。そこで種々の懸案事項についての見通しをrakitarou視点からまとめておこうと思います。

イスラエル虐殺に武器を送り続けたブリンケン国務長官は退任記者会見で(虐殺長官)などと揶揄される始末

I.  パレスチナ停戦合意

停戦合意についての3段階の概要  この狭い地域を15か月かかってもイスラエルは非武装住民の虐殺しかできず、ハマスの人数は不変という

2025年1月16日イスラエルは正式にハマスとの停戦に合意したことが伝えられました。第一段階は6週間続き、ハマスはイスラエル人人質33人を解放し、イスラエルは最大1,000人のパレスチナ囚人を解放することになっています。トランプ就任式前日から発行される停戦初日には、イスラエル軍はガザの人口密集地から撤退して7日目にはガザ北部への住民帰還が許可されます。また食料や医薬品を積んだトラックの毎日600台ガザ搬入が許可されます。

第二段階でイスラエルはガザから撤退を完了し、エジプトとの国境間のフィラデルフィア回廊に駐留を続ける一方ラファ国境検問所は明け渡す。第三段階では戦争の恒久的終結への交渉を行うことになっています。

トランプ次期大統領は「この壮大な停戦合意は、11月の歴史的勝利の結果としてのみ実現した。この合意は、我が政権が平和を追求し、すべての米国人と同盟国の安全を確保するための協定を交渉するというメッセージを全世界に送ったものだ」と彼はトゥルース・ソーシャルの投稿で述べた、とされます。

彼は、ウィトコフ特使と彼の次期国家安全保障チームは「ガザが二度とテロリストの避難場所にならないようにするためにイスラエルと同盟国と緊密に協力し続ける」と述べ「我々は、この停戦の勢いを基盤に歴史的なアブラハム合意をさらに拡大し、地域全体で力による平和を推進していきます。これは、アメリカ、そして世界にとって素晴らしい未来の始まりに過ぎません!」と付け加えました。イスラエルとしては、トランプの就任式に花を添える形での停戦は「あり」と考えたということでしょう。

 

ベギン、ラビン、ネタニヤフの系譜

イスラエルの二枚舌外交(というより約束を守らない国民性)は歴史では定番

1979年に、エジプトのサダト大統領とイスラエルのメナヒム・ベギン首相はカーター大統領の仲介でキャンプ・デービッド合意に達しましたが、パレスチナに対する自治容認は実行されませんでした。1993年のオスロ合意ではビル・クリントン大統領の仲介で、イスラエルのイツハク・ラビン首相とPLOのアラファト議長がヨルダン川西岸からのイスラエル撤退やパレスチナ国家の成立が合意されましたが、ラビン首相、アラファト議長は暗殺され闘争は継続されました。

一段落置くには良いタイミングか?

今回も恒久的停戦と2国家並存はないだろうと十分予測可能ですが、15か月戦争を続けて1万人の戦傷病者と891名の戦死(うち38名は自殺)、経済は回復に数年かかるほど下降し、米を除く世界から犯罪国家として扱われている現在、ネタニヤフは使用期限切れとして排除し、一度矛を収める事をユダヤの陰の支配者達が決断することもあり得るでしょう。シリアの半分はイスラエルが占領できそうで、トルコと新たな支配者ジョラニらの軍をいなして地盤を固める事も「大イスラエル建国」の準備段階としては重要と考えそうです。

大イスラエル国の範囲(先は長いがシリア領土獲得は大きかった) シリア反政府軍は味方にあらず、早速攻撃対象とするイスラエル

 

2.ウクライナ停戦

 

ウクライナとの戦争に勝ちつつあるプーチン大統領にとって、今譲歩を伴う停戦交渉をするメリットは全くありません。北朝鮮兵の目くらましに西側メディアが翻弄されているうちに粛々と東部戦線で支配領域を広げてゆけば良いと考えているでしょう。北朝鮮兵のニュースについては、未だにメディアの報道どおりではない様に私は思っています。毎日600-800名の戦死者が出ているウクライナで(政府は年間20万人のリクルートが必要と正式に認めている)2-3人の北朝鮮兵と見られる(言葉が話せない負傷をしている)捕虜の映像が、それほど意味があるものには思えません。多数のNATO諸国国籍の義勇兵(一部正規兵)捕虜が明らかにされる方が西側メディア的には怖れている内容ではと思います。

その意味でトランプが「就任24時間で停戦は無理だ」と言ったのは現実でしょう。早期にトランプが大幅な譲歩をして停戦したとなると沽券にかかわります。武器弾薬の供給の窓口を目立たない様に狭めつつ、ロシアの自然な進撃でドネツク・ルガンスク共和国を占領しきった所で残った領土での米国の権益を認めさせた上で脱NATO、非ナチ化、中立化した新ウクライナの存続をプーチンとディールすることになる様に思います。

砲爆撃力の差で消耗戦におけるロシア、ウクライナの戦傷病数は1:8でロシアが圧倒的に勝利しているのが現実

 

3.NATO、EU、グリーンランド

 

プーチンはウクライナの次はバルト三国、ポーランド、西ヨーロッパ諸国にも攻め込むつもりだ、などと威勢の良いヨタを飛ばしていたEU首脳達はトランプが「グリーンランドをよこせ」と逆侵略の意図を聞かされて驚いたことでしょう。各国首脳達は「もごもご・・」と歯切れの悪い反応を示すのが精一杯でした。選挙で国民から選ばれないEU首脳や官僚は単なるグローバリスト権力層の駒でしかなく、昨年来各国で正式に選挙で選ばれる「極右とレッテルを貼られる国民目線の政治家」達に徐々に排除されてゆくでしょう。

グリーンランドについては、領有するデンマークが「住民の意思で決めてゆけば良い」と言い、住民は「売り物ではない」と言いつつ協力関係は拒まないと言っているので、今後協定を結んで基地などの建設が進むだろうと思います。カナダが米国になることはないでしょうが、隣同士の国は協力して経済を盛り上げるのが最も両国の繁栄につながる事は古今東西問わない真実なのでカナダは妥協しつつも良い関係を続けるでしょう(医療保険制度などはカナダが明らかに良いし、住みやすい)。中日、ウクライナ・ロシアも隣国同士経済協力関係が良い方が両国にとって繁栄と幸福につながるのは米国・カナダと同じ。隣国同士を地球の裏側からけしかけて戦争をさせる(divide & rule)のが薄汚い英米欧の常套手段。油断すると飲み込まれるからけじめは大事ですが、他国の鉄砲玉として隣国同士で戦争させられるのは最悪の選択です。

 

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