【相模原19人刺殺】措置入院後2週間で退院、「家族同居」もフォローなく…植松容疑者“野放し状態”で惨劇
戦後最悪とも言われる大量殺人事件で、小出しにされる情報からは全貌をつかむことができないのですが、今回の事件を複雑にしているのは、犠牲者が重度の障害者のみ選択的に被害を受けたこと、加害者が精神疾患で措置入院を施されて退院して間がないことにあると思います。
メディアで紹介されている衆議院議長への手紙などから加害者はある信念を持って「重度の障害がある人は生きている価値がないので殺してしまうべきだ」と考えていて、「日本国からの指示」があればいつでも殺害する、と言ったことで措置入院になっていたようです。そして実際に犯行に及んでしまった訳ですが、実行するにあたって大麻などのドラッグが関与していたことも明らかになってきたうようです。しかし総合的に考えてもこの犯人の精神状態を「精神疾患」として病気のせいだと考えることには無理があるように思います。
この犯人には「誤った信念」と「社会性の欠如」があることは明らかですが、これは精神疾患、医学の問題ではありません。フランスや米国における最近の大量殺人は「テロ」と定義されていても精神疾患による犯罪とは言われていません。「ジハードによる異教徒無差別殺人」や「同性愛者は殺しても良い」というのは「誤った信念」であって、後は犯人が「社会の中で責任ある存在として生きてゆく」という「社会性が欠如」して「自分は何をやっても良い」「事件をおこして自分が死んでもかまわない」という状態になれば、場合によってドラッグなどの後押しがあるかも知れませんが同じような大量殺人は世界中どこでも起きてしまうと思います。
今回の事件は、加害者が精神疾患であって、その管理に問題があったという結論に落とし込んでしまう方向で社会が動いていますが、私はこの人は精神疾患ではないし、このような結論にしたところで何の解決にもならないのではないかと思います。かえって今までの類似した事件のように本当の精神疾患の患者さんへの誤解や社会的差別を助長するだけのように思います。
猟奇的な殺人があると、犯人は精神病であるとか心神耗弱状態だったので責任能力が問えないなどと、刑事罰を回避するための法廷戦術として精神疾患が利用されることが多々あります。しかし同僚の精神科医などは「このような犯人が精神病であることは殆どない」と以前話していました。「誤った信念」「社会性の欠如」がセットになっただけで精神疾患ということにされて加害者の法的責任が免除となり、周囲の人達や医師を含めた行政などの管理者が責任を問われるような結論にならないよう祈ります。これでは今回犠牲になってしまった方やそのご家族の方が浮かばれませんし、再発の予防にもなりません。