rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

グローバリズムと情報統制

2024-06-29 10:18:58 | 社会

Wikileaksのジュリアン・アサンジ氏が米国政府との司法取引によって英国の刑務所から解放され、母国であるオーストラリアで自由の身になる事が大きな事件として世界では報道されています。2010年から投獄や自宅軟禁、2012年から英国のエクアドル大使館に亡命という名で事実上監禁状態になり、エクアドルが親米派の大統領になると、亡命を取り消されて英国刑務所に収監され、ほぼ独房生活を強いられたと言われます。今回オーストラリア元首相のケビン・ラッド氏らによる種々の政治的働きかけで司法取引が成立しましたが、米国に対するスパイ容疑は成立したことになり、「米国の戦争犯罪を告発すること」=「国家機密の暴露で法に触れ」て有罪という事実を作ることによって権力側と痛み分けをしたことになります。

 

I.  WEF2024(今年の世界経済フォーラム)の最重要課題は情報統制

 

グローバリスト達の世界支配のための定例打ち合わせ会議である世界経済フォーラムの今年の課題の第一は経済問題でも気候変動でも戦争でもなく「フェイクニュースをいかに取り締まるか」でした。主要メディアがいくら偏向した情報操作を行っても、BRICSやグローバル・サウスの国々のメディアは異なる真実を報道し、日本を除く西側の市民達は、主要メディア以外のオルタナメディアにアクセスする事でメディアに対するリテラシーを確立しつつあります。今年行われる選挙では主要メディアが勧める政治体制とは異なる政治団体、多くは「権威主義極右ポピュリズム」と主要メディアがレッテルを貼る団体が勝利することになるでしょう。権威主義的極右ポピュリズム政党はそれぞれの国家や民族の生活や独自性を重視して、世界統一的な経済や政治的運営に反対します。単純に「反グローバリズムで多極主義的」という内容です。

WEF開催前に公表された(Global Risks Report)で直近2年間で最も憂慮される事はMisinformationとDisinformationと明記

 

II.  Global Engagement Centerと検閲産業複合体

 

以前のブログで米国にはジョージ・オーウェルの小説「1984」で描かれた真理省に相当する役所Global Engagement Centerがオバマ政権の時代に創設されて、既に政府の方針と異なる情報を偽情報と断定するなどして情報統制を行う中心として活動していることを紹介しました。Twitter(現X)の検閲について暴いたマット・タイビ氏はこのGEC、FBI、DHS(国土安全保障省)などの政府機関とスタンフォード・インターネット・オブザーバトリーなどのNGO、ニュースメディアが運営するファクトチェック機関などを検閲産業複合体(Censorship Industrial Complex =CIC)と名付けて民主主義、特に米国憲法が保証する「言論の自由(修正第一条)」に対する大きな脅威であるとしました。連邦最高裁は政府を含むCICがソーシャルメディアを含むコンテンツを検閲し、規制する事が憲法違反であるとする訴訟に2024年6月には判決を下す予定と言われています。Facebook、Google、X、You tubeなどのソーシャルメディア運営業者は通信品位法230条で、訴訟に対する保護を受けているのですが、政府はこの保護を喪失させることをちらつかせて内容の検閲を迫っていると言われ、実際政府の決定に沿わない内容のコンテンツは削除されてきたことは周知の如くです。

検閲産業複合体についてのレポート 政府の予算を得るシンクタンク内に検閲組織が設けられる事も多いという(マークされた機関)。

中心となるGECのホームページ

 

III.  日本も検閲産業複合体創設へ

 

日本はあからさまな政府の検閲は行われていませんが、運営業者による忖度に基づく自主的検閲はあります。しかしそれでは手ぬるいということで、総務省は「インターネット上のフェイクニュースや偽情報への対応」を公的な検討項目としてネットプラットフォーム業者や有識者との会合を重ね、2023年3月に対策報告書を公開しました。それによると、プラットフォームに対しては、プロバイダー責任制限法を整備し、検閲機関については、ボストン・コンサルティング社に業務を投げた上で、2025年までにネット上の偽・誤情報対策技術の社会実装に向けた開発・実証事業を公募した上で具体的に採択する、つまり「検閲産業複合体を公募して創設」するとしています。

検閲産業複合体を創設するにあたって、総務省は「概要」における目的に以下の様に記しています。

(引用)

 2016年のアメリカ大統領選などを契機とし、新型コロナウイルス感染症、ウクライナ侵攻に関するものを含め、インターネット上のフェイクニュースや偽情報が問題となっています。
 総務省では、2018年10月に立ち上げられた「プラットフォームサービスに関する研究会」の中で、「インターネット上のフェイクニュースや偽情報への対応」を検討項目の一つとして議論を行い、2020年2月に最終報告書(以下「2020年報告書」という。)を取りまとめました。
(引用終了)

総務省は手始めに2021年4月に「プロバイダー責任制限法」を公布、22年10月から施行することで、プラットフォーム事業者が情報の削除を行った場合、行わなかった場合の法的責任を明確にし、情報発信者の開示を請求できる権利などを明確にしました。まずは明らかな個人の権利侵害や公序良俗に反する内容について情報統制手段とする物ですが、25年以降実用化される「ネット上偽・誤情報対策」に援用されることを前提にしたものと思われます。日本は正に米国と同じ轍を踏もうとしている事が解ります。どこぞの命令で行っているのでしょうが、我々の税金を使って情報統制をすることが日本国民の利益につながるなどとお役人様が本気で考えているとは思えません。

総務省が手始めに2022年10月に施行された「プロバイダー責任制限法」についてまとめた図(ホームページから)

 

IV.   情報統制は末期を迎えたグローバリズム最後のあがきか?

 

明確に分類している評論は少ないですが、冷戦が終了して資本主義が世界で唯一の経済体制になると、「前期グローバリズム体制」として、中国を「労働を中心とする工場」、中東やオーストラリア、ロシアなどを「資源産出」、英米を「資本産出」で、欧州、日本などは「高度工業製品の工場」とする「国別グローバリズムの時代」が前期グローバリズムとして形作られました。

しかしこの時期に英米が輪転機を回すのみで資金を創出する不労所得で豊かになる国家となり、産業の空洞化が起こってしまいます。その後中国、ロシア、サウジアラビアなどの中東の国もユーラシアグループのイアン・ブレマーが2011年に明らかにした様に、「国家資本主義の政策」を取って資本を無から生み出す国の搾取を阻止して、国家内で資本、工業、資源を賄い、グローバル一極主義から多極化に向かい始めます。そしてグローバル資本は国家の枠を超えたGAFAMなどの寡頭資本に集約され、英米も富者と貧者の2極分化が進んでしまった。これが「後期グローバリズム」で今です。

解決策は巨大資本の分散化と多極化で空洞化した部分を国内に戻すしかないのですが、金と権力を持つWEFに集まるグローバリスト支配者が抵抗しているということでしょう。

国家の枠を超えたグローバリズムにとって、民族主義や国家主義による民衆支配はできません。可能なのは世界共通の知識である「科学の権威による民衆支配」(下図)しかありません。だから科学的真実ではないが、「科学的」とされる「地球温暖化」や「パンデミック対策」「遺伝子ワクチン」といった政策で民衆を従わせようとし、しかも「まっとうな科学的反論」を「偽・誤情報」として取り締まる必要があるのです。

科学は反証可能性が確保されて初めて真実に到達するきわめて厳しい世界です。グローバリストの我欲煩悩を満たすために利用され、その目的で情報統制などされては人類への害以外の何物でもありません。

科学的真実の確立(パラダイムの構築)には反証可能性が必須であり、疑問を検閲しては絶対にいけない(rakitarouによる大学の最終講義スライドから)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

狂った政府と正気の国民

2024-06-22 14:19:18 | 政治

グローバリズムが支配する権力つまり西側同盟政府とNATO、日本を含む西側主流メディアは狂い続けています。一方で欧米の一般市民達は、まともなオルタナメディアを視聴し、最近の選挙においては自国や市民社会の破壊を否定、戦争の拡大を防ごうとする「主流メディアが嫌悪する所謂極右ポピュリズム政党」を選択しています。まさに「狂った政府と正気の国民」の図と言えます。

 

I.  狂った政府の所業

 

「テロとの戦争」に戦略は不要でした。理不尽な「侵略と征服」に弱者はテロリズムで戦うしかなく、テロとの戦争をしかけたい側が侵略を続けていれば「テロ」は無くなりません。国内問題であれば、本来テロに対しては「警察」が対応し、対応方針(戦術)さえしっかりしていれば軍隊であっても「戦争に勝つための戦略」は必要ないのです。だから西側陣営は「戦略のない戦争」に慣れてしまったとも言えます。

しかし非対称戦でも、増してウクライナの様な国家対国家の「対称戦」では戦争の目標を定めて出口を見据えた戦略(off ramp strategy)が必須です。相手が全滅するまで戦うのでなければ、妥協も必要であり、テロとの戦いの様に「戦略」を定めずに「ダラダラと戦争を続ける」事は絶対に行ってはいけません。

ウクライナが敗退する理由を考える上での、ロシアとウクライナの違いを表にしたので示します。

状況に応じて「戦略を立てる総司令官がいない」戦争は勝てる訳がない

 

II.  西側諸国は徴兵制復活なるか

 

ウクライナが敗戦必至と考えた西側諸国は、NATO参戦によるロシアとの全面戦争を視野に入れて、大戦争では大量に捨て駒にできる兵隊が必要となり、現在の兵員数(プロの兵士)ではとても足りないため、冷戦時代以降終了していた徴兵制の復活を模索し始めました。しかし欧州の国民は当然ながら戦争などする気は一切ありません。移民やエネルギー高騰で散々苦労させられた欧州市民達は、一部金満グローバリストの繁栄のために戦争をする気など一切ありません。正気の市民達は次の選挙でグローバリスト政党を落選させ、自国を大事にする政治家を選ぶ事は間違いありません。問題は庶民の生活と関係ない「政治とカネ」の報道ばかり聞かされている日本人が「現実の世界情勢」に興味がなく、正しい知識を持っていない事です。

戦争のスキルがあるプロ兵士を無駄にしないため、捨て駒兵を大量に作れる徴兵制が大戦争には必須

 

III.  初めから失敗していたゼレンスキーサミット

 

2024年6月16日に閉幕したスイス・ビュルゲンシュトックにおける「ウクライナ平和サミット」は参加110か国・国際機関のうち84か国が「食糧安全」「原子力安全」「捕虜と子供たちの解放」(殆ど戦争と関係なく、しかも拒否国多数)という漠然とした共同声明に署名して終了という散々な結果でした。

直前にプーチン大統領から出された「東部4州からのウクライナ軍撤退」「ウクライナNATO加盟断念」「米欧の制裁解除」を条件に「交渉しても良い」という提案を、西側は誰も責任者がいない中で即座に「拒否」を表明しました。上記表にも記しましたが、戦争で責任者が不在の状況で終結の交渉などできません。2022年3月の時点では「ゼレンスキー氏」はウクライナ側の責任者として和平交渉に参加し、合意に達しましたが、外野である英米の指示によって合意を反故にしました。現在は、ゼレンスキーは法的な大統領でさえありません。プーチンはウクライナ代表を法的に有効であるウクライナ議会と考えており、ウクライナ議会はプーチンの提案を真剣に検討を始めていると言います(日本のメディアも報道してほしい)。ウクライナの国民は戦争に出向く肉親に対して「生きて帰ってきて欲しい」と心から願っています。この気持ちがわからないバカは戦争について語る資格はありません。

ウクライナ市民は無意味なサミットなど期待していないというAFPの記事

 

Ⅳ.  イスラエル・ヒズボラへの核使用から世界戦争の危機

イスラエル兵の犠牲も増加し続けている

ガザ紛争は発生後9か月経過して、4万人に迫るガザ市民が犠牲になっているにも関わらず、ハマスは壊滅などしておらず、イスラエル軍は600人の死者、4,000名の負傷者を出してまだ戦争を続けています。「鉄の剣」というガザ侵攻作戦は「テロとの戦い」ですが、形態は「非対称戦」であり、戦略に沿っているものの相手のハマスが形の見えない軍であるために一般市民の巻き添え犠牲ばかりで「軍としての勝ちが見えない」戦争になっています。テロとの戦い方COINを提唱したペトレイアス元将軍が批判した様に、戦争の仕方が間違っているのです。

戦争の仕方が間違っていると批判するPetraeus将軍

ハマスの壊滅が叶わず、避難民がいるラファへの攻撃が世界中から批難されると、イスラエルはレバノンのヒズボラとの戦争を画策し、戦闘は日ごとに激しくなっています。2006年7月のイスラエルによるレバノン侵攻では、弱いと見ていたヒズボラに散々叩かれて国連安保理の仲裁を受けてイスラエルは撤退しています。現在のヒズボラは当時の数倍の力を有し、ロケット数十万発、兵力10万、イランが後ろ盾にあります。米国はイスラエルロビーのAIPACの言いなりですから、単独で負けると分っているヒズボラに戦争を仕掛けて本格的な中東戦争を始めようとしています。その際ウクライナで使用されそうもない(勝っているプーチンは自分からは使わない)戦術核をイスラエルは兵力で優るヒズボラに使用する可能性が高いのです。イランが背後にあるヒズボラも現時点で核戦力を持たないイランも運搬手段のミサイルは豊富にあるため、秘密裡にパキスタンやロシアから入手した戦術核(既に持っている可能性大)をレバノンに供与して、中東核戦争(聖書に記載があるような奴)に発展する可能性が大なのです。米国がその時点で中東戦争に巻き込まれていると11月の選挙どころでは無くなり、イラン、ロシア、トルコなどを巻き込んだ世界戦争に発展するリスクが高いと言えます。イスラエルは理屈(グローバリズムは経済利益の有無)でなく宗教教義で動く国だから厄介なのです。

昨年11月から続くヒズボラとの交戦が本格化しており、核戦争へ発展する可能性がある。

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Petrodollarは終焉するか

2024-06-15 14:19:32 | 社会

グローバリズムは米ドル一極体制に裏打ちされています。そのドルを中心とした信用経済が実体経済の数十倍まで拡大してしまい、しかも一部の人材や会社が富を独占してしまった現在、有り余る富の有効な活用法が戦争経済以外見出せなくなってしまった(パンデミックもこれ以上世界は踊らなくなり、温暖化詐欺によるノーカーボン社会は挫折)ことにグローバリズム支配層は焦りを感じています。その様な中、数年前から囁かれていたのが、中東諸国が石油をドル以外でも取引する様になり、石油(取引)を担保にした米ドル基軸通貨体制の基盤が揺らぎ始めた事でした。

 

I.  オイルダラー協定は継続されなかった?

世界市場で原油取引に米ドルを使用する(原油価格をドルでのみ決める)というサウジアラビアと米国で1973年の石油危機以降結ばれた「オイルダラー協定」は、1974年ヘンリー・キッシンジャー国務長官とサウジアラビアのファンド・イブン・アブデルアジズ王子が50年を期限とした協定として締結したものです。この協定により、OPEC加盟国による原油販売は米ドル建てで行われることになり、その見返りとして、米国はサウジアラビアに軍事的保護と経済的インセンティブを提供してきました。この6月9日には、協定の期限が切れるために今後も続けるのであれば「継続」が発表されなければならないのですが、米国、サウジアラビア共に公式に継続する意思を示しておらず、種々のサイト(ここここ)で指摘されている様に継続されなかったと考えられます。サウジアラビアはBRICS加盟を表明しており、前回紹介した様に、実体経済を主体とするBRICSは独自の決済通貨としてゴールド40%、BRICS+各国の通貨を基盤とする{ユニット}なる決済インフラ構築を表明しています。

 

II.  今後の基軸通貨としての米ドルの見通しは?

サウジが中国元を原油決済通貨と認めたWSJ記事(2022)

WSジャーナルによると、既に20%の原油取引はドル以外の通貨で行われており、オイルダラー協定も強制力は既に失われていたと考えられます。今まではサウジアラビアのオイルマネーの多くは米国債購入に充てられていたため、それも米ドルの安定に寄与していたと思われ、米ドルとサウジリヤルが固定制であったこともあって直ぐに米ドルが原油取引や基軸通貨としての機能を失うとは思われませんが、大きな事件や食料危機などがあったり、また時間経過とともに、米ドルの価値は低下して行くと思われます。信用経済は穀物や鉱工業製品、エネルギーといった実物のやり取りをする実体経済と異なり、「共通幻想」に過ぎません。人々の「幻想」が崩れた瞬間にその価値は消失してしまうものです。原油という実物が必ず付いてくると言えなくなった米ドルがいつまで人々の「幻想」を維持できるか分かりません。

 

III.  mBridgeプロジェクトの今後

各国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)システムを相互接続させるプロジェクトをmBridgeと言い、2024年には実用化段階に入ると言われます。サウジアラビアはこのプロジェクトにも参加しており、デジタル人民元を本格化させつつある中国は、まだ国内向けですが2023年の前半期にはデジタル人民元取引が37兆円に達したと言われます。

IMF資料でも世界の外貨準備における米ドルの割合は確実に年々減少している

 

IV.  日本も真剣に多極化に向き合うべきではないか

 

日本のメディアは未だに「ウクライナ善玉」「ロシア悪玉」、中国の経済見通しは暗い、カーボンニュートラルを目指すべきだ、「もしトラ」になったら大変だ、WHOの決定に日本は無条件に従う、というグローバリズム一本槍の見方しかありません。世界が大きく動いている現在、21世紀を生き残るためには多極化(multipolar world或いはmulti-nodal world{Chaz Freeman}とも言われる)の見方を進めるべきだと思います。

G7で国民に認められていて盤石なのはイタリア首相(ウクライナ派兵に絶対反対)位ではないか?

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キューバ危機再び?

2024-06-13 13:15:46 | 政治

米国がロシア領土内への攻撃をウクライナに許可した事に応じて、ロシアはキューバに長距離ミサイル配備を促すという行動に出ています。ロシア領内に直接届く距離であるウクライナ国内に長距離ミサイルを欧米が配備することは、キューバにミサイル配備することと同じである以上、米国は文句を言えない立場にあります。またウクライナが勝手にミサイルを発射して良い、とするなら、キューバが米国に勝手にミサイルを発射することもロシアに責任はないと言い張れます。

 

I.  背景にあるキューバの経済危機

キューバは経済危機の状況にあり、昨年来民衆が各地でデモや暴動を起こしており、ペソがドルに対して大幅に下落していて、裏には米国の陰もあると疑われています(上記記事)。

キューバのミゲル・ディアス・カネル大統領は、2024年5月、クレムリン外の赤の広場で行われた毎年恒例の軍事パレードでプーチン大統領と会談、2022年の会談以来、両国はより緊密になっていました。

 

II.  1962年キューバ危機(WIONニュースのまとめ)

 

キューバ危機は、米国と当時のソ連との間の大きな対立であり、世界を核戦争の瀬戸際にまで追い込んだ。 危機は1962年に勃発し、1か月以上続いた。トルコへの米国のミサイル配備に対し、ソ連がキューバに弾道ミサイルを送って対抗したのがきっかけだった。1960年、ソ連の元首相ニキータ・フルシチョフは、米国がキューバへの中距離および中距離弾道ミサイルの設置を阻止しないと仮定して、ソ連の武器でキューバを防衛することを約束した。 

この事件は、世界が壊滅的な核攻撃を恐れるレベルにまでエスカレートした。そして、キューバから発射された場合、そのようなミサイルは数分以内に米国東部の大部分を襲う可能性があると報じられている。 

当時のジョン・F・ケネディ米大統領が介入するまで、主張と反論は続いた。大統領は選挙で忙しかったが、これらの施設の存在を知ると、安全保障顧問に相談した。米国が空爆を開始すべきだという提案さえ受けた。 

しかし、彼はソ連のミサイルのさらなる輸送を阻止するため、キューバに海軍による「検疫」または封鎖を課すことを決定した。彼は、ソ連の船舶が「攻撃用兵器および関連物資」をキューバに輸送しようとした場合、米軍がそれらを押収すると警告した。 

危機は最終的に回避され、ソ連の船舶は進路を変えて隔離区域から撤退し、その年の後半にフルシチョフはケネディに対し、キューバにすでに配備されているミサイルはソ連に返還され、ミサイル基地での作業は中止されると伝えた。 

一部の報道では、ケネディ大統領がトルコから核兵器搭載ミサイルを撤退させると秘密裏に約束し、米国がキューバに侵攻することは決してないと確約していたとさえ報じられている。 

(引用終了)

III.  ロシア海軍艦艇4隻、キューバ寄港 米を牽制か

CNN 報道から引用 2024.06.13 Thu posted at 07:06 JST

寄港した艦艇は計4隻。多くの見物人が見守る中、艦隊を率いるフリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」に続き、核ミサイルを搭載できる原潜「カザン」、救助船、補給艦が入港した。ゴルシコフはロシア海軍の最新艦の一つ。

ロシア海軍の艦艇がキューバに立ち寄るのは初めてではないが、4隻もの同時寄港は過去最大規模。米当局者によると、カザンには核兵器は搭載されていないと米国はみている。

キューバは米フロリダ州から144キロほどしか離れておらず、今回の寄港は米国を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。数週間前に米国は、供与した武器でウクライナがロシア領を攻撃することを認めた。

艦隊のキューバ寄港は5日間にわたる。ロシアの外交筋がCNNに明らかにしたところによると、13日から3日間にわたって毎日4時間、ゴルシコフはキューバ市民の見学を受け入れる。

軍事アナリストらは、ゴルシコフは長距離任務や対潜水艦戦を遂行でき、地対地や地対空のミサイルの搭載が可能とみている。

キューバ寄港に先立ち、ロシア国防省は11日、ゴルシコフなどが大西洋で軍事演習を行ったと発表した。ロシア国営タス通信の報道によると、ゴルシコフとカザンがコンピューターシミュレーションを用いて約600キロ離れた「敵艦」を高精度ミサイルで攻撃する訓練を行った。

米軍は偵察機や艦艇を派遣して一連の軍事演習と艦隊の航行を監視しているという。

公表されたフロリダ近海で演習をするロシア艦艇の動き

 

IV.  バイデン痴呆大統領退任まで米側のエスカレートを遅延させる目的か

 

11月の選挙ではバイデン再選はまず不可能で、トランプが復帰すればウクライナ戦争は終わりにできるとプーチン大統領は読んでいるでしょう。グローバリズム側としてはそれまでに戦争を拡大させてNATOを参戦させる、あわよくば限定核戦争になれば選挙は中止になるとして、現在必死に戦争拡大を画策しています。米国国民が「他人事」ではなく「自分の事」として核戦争の脅威を感じ、1960年代、フルシチョフと直接話せるケネディであったからこそ避けられた核戦争は痴呆大統領では対応不可能であると実感させる上でも今回の処置は有効かもしれません。

ロシアとしてはサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで明らかにされた様に、第三次大戦よりもBRICS諸国の拡大と経済活性化を狙っておりペペ・エスコバル氏によれば以下の3つのメッセージが世界に発せられたと言います。要約すると、

今回のフォーラムには139カ国以上を代表する21,000人以上の人々が集まり、まさにグローバル・マジョリティの縮図として、多極的で多中心的な世界に向け議論が行われ、わずか3日間で780億ドル相当の取引が成立しました。そして世界へのメッセージとして

メッセージその1:

プーチン大統領は、フォーラムの全体会議でロシア経済について非常に詳細な1時間の演説を行った。

重要なポイントは、西側諸国が共同でロシアに対して全面的な経済戦争を開始したため、ロシアは経済に力点を移し、購買力平価(PPP)で世界第4位の経済大国としての地位を確立した。

ロシアは不当な制裁を回避するだけでなく、世界貿易を志向し、BRICSの拡大に結びつけた。

メッセージ2:

プーチン大統領は、BRICS諸国が西側諸国による圧力や制裁から独立して、独自の決済インフラの構築に取り組んでいると述べました。それは「ユニット」と呼ばれ、金(40%)とBRICS+通貨(60%)を基盤とする、政治的でない取引形式の国境を越えた支払い形式である。

新しい決済システムは、10月にカザンで開催されるBRICSサミットで議論される可能性が高く、現在のBRICS10か国と近い将来拡大されるBRICS+で採用される可能性が十分にある。

メッセージ3:

プーチン大統領を含め、誰もがBRICSが大幅に拡大することを強調した。サンクトペテルブルクでのBRICS関連のセッションの質は、世界の多数派が今、ユニークな歴史的転換点に直面していることを示した。サンクトペテルブルクでは、BRICSだけでなく上海協力機構(SCO)やユーラシア経済連合(EAEU)にも59カ国以上が加盟する予定であることが確認された。

 

日本のメディアでこれらを明確に報道しているものを見た事がありません。日本が取り残されてゆく感じがします。

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

採択された国際保健規則(IHR)改正案

2024-06-11 08:50:47 | 社会

2024年5月中旬から開催されていた第77回WHO総会は、2005年以来となる世界保健規則(IHR)の改定と、それに従う世界各国のパンデミック条約の成立を目標にしていました。世界各国がそれぞれの国家主権が無視され、民主主義と関係がない一部利益団体が出資するWHOの決定に無条件に従って個人の生活の自由を規制したり、ワクチン投与が義務付けられる恐れがある【パンデミック条約】の締結は不成立になったことは既述しました。しかしこれの基になる世界保健規則IHRが改定されてしまう事は様々な懸念事項つまり「政府が誤報や偽情報に「対処」するという合意や、監視をさらに強化する文言などがあり、監視、脅威宣言、ロックダウン、強制的な大量ワクチン接種のアプローチの土台を築くもの」という恐れがありました。今回のIHR改定の内容は、パンデミック緊急事態の定義、各国の連帯と公平性への取り組み、締約国委員会の設置、および国家IHR当局の創設などが含まれていると公表されています。

新たな国際保健規則改定を公表するWHO公式ホームページから

ワクチン利権を持つビルゲイツ財団やGAVIワクチン財団からの資金で成り立つWHOの決定は明らかな利益相反である。

 

I.  非民主的に密室で決められた改定案

 

今回のIHR改定の経緯を追ってきたジャーナリストは、その成立過程が強引で拙速なものであったと批判しています。つまり「確立されたプロトコルと手順を露骨に無視して、包括的なIHR改正案が密室で準備され、その後、会議スケジュールの最終日である土曜日の夜遅くまで続いた会議の文字通り最後の瞬間に、両方の改正案が世界保健総会に提出され、承認された。総会から具体的な成果物を急いで出すため、4 か月の検討期間という要件は無視された。これらの修正案を確認し承認するための投票は実際には行われなかった。WHO によると、これは投票ではなく、選挙で選ばれていない内部の会合での「合意」によって達成されたという。WHO 加盟国の代表者の多くはその場にいなかったし、そこにいた人たちも沈黙するよう促された。これは明らかに、内部の徒党が通常の手続きを回避するために一方的に行動したものであり、テドロス・ゲブレイェソス氏の事務局長再任を確認するために使用された同様の手続きを反映している。」と報じています。

 

II.  各国には決定を拒否する10か月の猶予がある

 

EXPOSEのローダ・ウイルソン氏は「各国には条項を留保または拒否する猶予期間が10カ月あることに留意することが重要です。ただし、2022年の改正案を拒否した国には18カ月の猶予があります。したがって、私たちは意識を高め続け、2025年3月末までに改正案を拒否するよう政府に圧力をかけなければなりません。」と警鐘を鳴らします。我々の自由と主権をはく奪し、支配しようとする人達に「法で規制する権力を与える」事は売国以外の何物でもありません。今回のコロナ騒ぎで痛い目にあった我々が目を覚まさなければ、また同じ苦痛を味わう事になり、それは我々の子々孫々に続きます。

我々の子孫たちから21世紀初頭の日本人が「2000年の日本の歴史の中で最も愚かだった」と批判されないために我々は真剣に考える必要があるのではないでしょうか。

少なくとも他国の愛国者たちは真面目に考えて「拒否」する方向にあります。

 

III.   今回の改定案はまだ最悪とは言えない

 

メリル・ナス博士は、今回の改定案は当初の目論見からかなり骨抜きにされ、各国の情報統制の強要以外は大きなリスクは回避されていると述べています。以下に一部重複もありますが、彼女の主張の要点を記します。

(引用開始)

2つの大きな議論(そして私が以前に詳述した多くの小さな議論)がある。 ここ そして ここ) WHO は独自の手順に従っていないため、

  1.  昨日のIHRに関する決定は、IHR第55条第2項の規定に従い、最終的な修正案が加盟国に検討の4か月前に提示されなかったため、無効であるべきであり、
  2.  2022年に可決された改正案は本会議で投票されなかったため無効となるべきである。

しかし、現時点ではこれらの手続きの有効性に異議を唱えた加盟国はなく、もし異議を唱えなければ、国民と選出された代表者たちはWHOを止める方法を見つけられなかったことになる。

WHO が多くの手続き違反で訴えられないと仮定すると、次のような結果が予想されます。

1.  2022年の改正に関して関連する留保または拒否を表明した国(スロバキア、ニュージーランド、イラン、おそらくオランダ、その他の国々を含む)については、これらの国々が18か月以内に留保または拒否を表明しない限り、新たに可決された改正は2年後の2026年6月1日に発効する。

2.  その他のすべての国については、10 か月以内に留保または拒否しない限り、改正案は 1 年後の 2025 年 6 月 1 日に発効します。

これは、各国が新たに改正された文書で気に入らない条項を回避するのに最低10カ月の猶予があることを意味する。各国はWHOに書簡を送り、気に入らないものはすべて拒否すると伝えるだけでよい。 米国では、次期大統領が2025年4月1日までにこれを行うことができる。

スロバキアの外交官は、文書の承認を阻止するために「合意を破った」わけではないが、その直後、機会が与えられると、スロバキアは改正されたIHRを拒否するだろうと述べた。

(引用終了)

今月号の「紙の爆弾」誌に高橋清隆氏がまとめておられる様に、日本政府は我々の自由と主権をWHOに売り渡す(全て言われる通りにする)予定であると思われます。2024年4月24日時点でまとめられた内閣危機管理室の「新型インフルエンザなど対策政府行動計画」では、情報統制についての記述は目立たないものにはなっていますが、何らかの対処をすることは明記されています。私は前に記した様にパブコメを送りましたが、国民が自覚をもって声を挙げなければまたコロナ騒動の愚を繰り返すでしょう。それでなくても日本は世界が3回で止めたワクチン接種を7回も打っている「超」が付くおバカ国民であり、世界中から「間抜け」扱いをされている事に未だに気が付かない国民なのですから。

行動計画書に記された情報管理についての文言

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

CFRの考えるウクライナ戦争勝利の定義

2024-06-06 16:28:19 | 社会

米国には外交問題評議会(CFR:Council on Foreign Relations)という1921年ロックフェラーらが設立したシンクタンクがあり、キッシンジャーを始めとする錚々たる外交専門家が米国の外交に影響を与えてきました。当然米国巨大資本(グローバリスト)のお抱えであり、グローバリズムが得をするための政策を提言します。2023年12月には名誉会長であるリチャード・ハース氏が日本の上川外務大臣を訪問し、日本は旭日重光章を授けて「何でも仰せの通り従います」と恭順の意を表しました。(外務省ホームページから)

現在のバイデン民主党政権も全て言いなりですが、CFRの提言に従うとしても「負けると分っているウクライナ戦争を核戦争に発展するリスクを冒して何故ダラダラと続けるのだろう?」という誰でも抱く疑問への答えらしきものを見つけたのでまとめました。

 

I.  戦争に勝つということ

 

以前のブログで「戦争に勝つということ」と題して、戦争の勝利には3通りあり、

(1)相手が全員死亡・絶滅して戦う相手が消滅することによる終戦。

(2)相手が無条件降伏(unconditioned surrender)を受け入れて終戦。

(3)自国にとって有利な条件で双方が終戦(休戦でなく)を受け入れる。

が考えられて、特に(3)については、国民にとって有利と考える利益の内容を

a)  国民全員(将来含む)に明確な利益になる。

b)  支配者や資本家だけの利益になる。

c)  軍産複合体、武器商人だけの利益になる。

の3通りに分けました。いずれにしても戦争は犠牲になる一般市民に良い事など一つもないのですが、損ばかりする一般市民が「戦争反対」について無関心だからこそ、自分が痛い目を見ない権力者が平気で戦争遂行を考えてしまうのが世の常です。

 

II.  成功の定義を変える

 

CFRのリチャード・ハース氏は2024年5月19日発行の「ウクライナにおける成功の定義」という論考で、一般的な定義でウクライナがロシアとの今回の戦争に勝つことは不可能なので、「成功の定義を変える」必要がある、と表明しています。以下に一部抜粋を載せます。

 

ウクライナにおける成功の定義(リチャード・ハース)

2月に私は「ウクライナは生き残れるか?」というタイトルのコラムを書きました。ありがたいことに、ウクライナが戦い、犠牲を払う意志があり、米国が相当な軍事援助を再開したことにより、来年の答えは「生き残る」です。

同時に、ロシアはウクライナ第2の都市ハリコフを脅かす北東部で新たな攻勢を開始し、長期戦に備え、軍を大幅に再編した。これは重要な疑問を提起する。新たな援助を手にしたウクライナと西側諸国は何を達成すべきか?何を目標に成功とすべきか?を考える必要があります。

成功(この戦争における勝利)とは、ウクライナが失った領土をすべて回復し、1991年の国境を再び確立すること、と答える人もいる。ジェイク・サリバン米国家安全保障担当大統領補佐官は、 2025年はウクライナがロシア軍に対して再び反撃を開始する時期になる可能性があるとの見解表明している。

しかしこれは重大な過ちとなるだろう。誤解しないでほしいが、正当かつ合法的な国境の再確立は極めて望ましいことではある。だが外交政策は望ましいだけでなく実行可能でなければならないし、ウクライナは軍事力でクリミアとその東部地域を解放できる可能性はない。

(中略)

では、ウクライナとその支持者はどのような戦略を追求すべきか。まず、ウクライナは、限られた資源を節約し、ロシアを苛立たせる「防御的なアプローチ」を重視すべきだ。

第二に、ウクライナには、ウクライナ国内のどこにいてもロシア軍を攻撃できる手段(長距離攻撃能力)と自由が与えられるべきであり、黒海のロシア軍艦やロシア国内の経済目標も攻撃できる。ロシアは、自らが開始し、長引かせている戦争の代償を実感しなければならない。

第三に、ウクライナの支援国は長期的な軍事援助を提供することを約束しなければならない。これらすべての目的は、ウラジミール・プーチン大統領に、ロシアの時間は長くなく、ウクライナより長く続く望みはないというシグナルを送ることである。

(以下略)

何とも傲慢で当事者のウクライナ市民の犠牲など何も考えていない(傲慢と無関心)この旭日重光章受賞者は、「既にウクライナに勝ち目はない、西側は武器を与え続けてロシア国内を攻撃し続ける事で、プーチンを経済・政治的に追い詰める事が我々の新たな勝利の定義なのだ」と言い放っているのです。その目的のために「西側国民は税金でウクライナに兵器を送り続けよ、ウクライナ市民は全員死ぬまで戦争を続けろ」と宣っておられる。

 

III.  核戦争に持ち込みたいゼレンスキー大統領

2024年5月31日から6月2日にかけてシンガポールで開催されたIISSアジア安全保障会議は、英国国際戦略研究所が主催する国際会議で、政府間で国際協定を結ぶ様な正式なものではないものの、権力者の都合で言いたい事を言って来る会議だろうと推測されます。呼ばれてもいないウクライナ(アジアの安全保障と関係ない)のゼレンスキー大統領までやってきて「スイスの会合に出ろ」と中国に圧力をかける始末。そのウクライナは5月下旬にバイデンに圧力をかける意味でロシア国内の核警戒レーダーサイト(OTH over the horizonレーダー)を攻撃しました。あえて核戦争に備えたレーダーサイトを攻撃し、無力化する意味は、西側が戦略核を使用してもロシア側が解らない様にするためであり、極めて危険な行為と言えます。

平和へのまともな戦略もなく、グローバリズム支配層のために戦争を続けさせようとする米国、既に正式な大統領でもなく、世界を核戦争に引き込む事で生き残りを掛けるゼレンスキー、戦術核演習で答えるロシア、現在の状況を正しく把握している日本人はどれだけいるのでしょう?

追記 2024年6月7日

本日発売の「紙の爆弾」7月号にrakitarouのウクライナ戦争、ガザ紛争に関わる論説が掲載されました。「ウクライナに勝ち目がない」という見解についてはCFRのリチャード・ハース氏と同じです。是非ご一読下さい。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Douglas AD-4 Skyraider Hasegawa 1/72, Westland Wyvern Trumpeter 1/72

2024-06-03 17:16:27 | プラモデル

第二次大戦後実用化され、異なる命運をたどった2機を作りました。ダグラス・スカイレイダー(空の侵入者)はヘルダイバー、アベンジャーと言った艦上攻撃機の後継として1944年に設計され、オーソドックスなレシプロ機ながら高性能で使い易かったため、海兵隊の地上援護機や偵察・救難など幅広く使われ3,180機が生産され、朝鮮戦争、ベトナム戦争でも1968年まで使用されました。18気筒2,800馬力エンジンを搭載し、航続距離2,000km、最高速度500km/h、3,500kg近くの各種爆弾兵装搭載可能で、4発のB−17(3,600kg爆弾)に迫る攻撃能力でした。20mm機関砲4門を装備し、ベトナム戦ではミグ17を撃墜した記録もあります。

凡庸なデザインながら汎用性があり各種任務に多用された最後のレシプロ攻撃機。 飛行機の絵を描けと言われるとまずこのプロフィールを書きそうな体型

 

模型は安定のHasegawa製で比較的新しい金型を今年新たに再販したものです。機体は1960年空母イントレピッド搭載の165攻撃飛行隊司令官機で下面白、上面SF16440です。

爆弾とロケットポッド、増槽を装着した機。パイロットはハセガワの現用空軍兵のセットを使用。

一方のウエストランド・ワイバーンはレシプロ機のブラックバーン・ファイアブランドやフェアリー・スピアフィッシュに替わるターボプロップエンジン搭載の雷撃機として設計されましたが、ロールスロイス社がターボプロップエンジンの開発を延期したのでアームストロング・シドレー社のエンジンを使用することになり、開発が送れた上に性能低下も起こしました。シドレー社のターボプロップエンジンは後のフェアリーガネットに搭載されて活かされますが、ワイバーンは開発に苦労した割に127機の生産に終わり、実戦も空母イーグルに搭載されてスエズ危機に出動した程度で終わりました。

ターボプロップエンジン搭載のユニークな機体。複雑な機構で、尾翼の安定板などに苦労の跡が偲ばれますが、活躍の場も少なく、短命に終わりました。

模型はマカオにあるトランぺッター社製で、金型も丁寧で日本のフジミ製品なども作るだけあって安定しています。複雑なワイバーンの機体を良く再現していて搭載武装も豊富なバリエーションでした。上面エクストラダークシーグレー、下面スカイでスエズ危機の際のイーグル所属の機体を作りました。二重反転プロペラながら、ガネットと異なりエンジンは1機で3,500馬力、離陸には翼下にロケットを追加装備する必要があり、スカイレイダーと比べても使い勝手は悪そうです。2機とも大きな機体で、第二次大戦機であれば双発機ほどの大きさがあります。やはり大型機であったガネットと並べてみました。

艦上機で翼の折り畳みが複雑な上にダイブブレーキまで付いていてビジーな下面。離陸にはロケットブースターが必要で魚雷は第二次大戦以来の安定板が付いている。

少し大きいガネットはシドレー社のターボプロップエンジンをタンデムに2基搭載している。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国泌尿器科学会2024のまとめ

2024-06-01 13:36:14 | 医療

今回は専門的な内容の備忘録です。2024年5月3日から6日に米国テキサス州サンアントニオで米国泌尿器科学会総会が開かれ、rakitarouは現役として最後だろうと考えて出席してきました。全体の印象は前回出席したBostonの総会に比べて内容含めて「地味」の一言に尽きる様に思いました。最近の泌尿器科全体として注目に値する新しい話題がない事もありますが、日本の泌尿器科学会も教科書的な総論が多く、現在の日本において倫理規定が厳しすぎてユニークな研究がほぼできなくなっている事も背景にあると思います。Plenaryと呼ばれる専門に特化しすぎない教育的内容の催しもBostonにおいては医療過誤の模擬裁判や当時先進的であった遺伝子治療や免疫治療について判りやすく問題点などを解説する内容で参加する意義があると感じたのですが、今回は「そうだよね。」と既に納得している内容が多く、わざわざ米国南部まで来なくても、と感ずる物が多いと感じました。

その様な中でもいくつか今後のために特記するものを記しておきます。

会場となったHenry B. Gonzalez Convention Center街の中心部にある巨大な会場

I.  BCG抵抗性の膀胱上皮内癌に対する全摘手術以外の治療法

1) ICI(免疫チェックポイント阻害剤)Keynote-057でも報告済で、日本でも化学療法後であれば保険適応になっており、私も実際に患者さんに使用したこともあります。研究では投与中央値が7回で、3か月時点で40%に完全奏効CRが見られたとされます。

2) TAR-200徐放性膀胱内注入デバイス これは日本では未導入ですが、化学療法で用いるジェムシタビンを2週間かけて膀胱内に徐放性に効かせるデバイスで、平均6回注入して奏効率80%以上という良好な成績です。血中移行は代謝物が少量検出される程度で膀胱痛など副作用も少なく(8%)(SunRISe-1試験)、膀胱全摘に代わる優れた治療と思いました。

膀胱内にコイン大のジェムシタビン徐放性デバイスを2週間留置する。ジェムシタビンやシスプラチン注射液の膀胱内注入はショックなど悲惨な結果だっただけに、徐放剤は期待できる。

 

3) 腫瘍溶解性ウイルス感染による治療 正常細胞に感染せず、がんに特異的に感染するウイルスを用いて腫瘍を壊死させて新たに免疫誘導もすることで治療する。これはまだ実験段階。

腫瘍溶解性ウイルス治療の概念図。各種ウイルスで効果試験中。

 

II.  前立腺癌に対する集束超音波治療(HIFU)

これは自分が専門に行っていて、全摘に匹敵する効果が期待されたのですが、標準治療にはならず、現在部分治療(Focal therapy)が中心になっていますが、フランスからの報告では、比較的悪性度の低い治療群においては全摘手術に非劣勢の結果であった(HIFI trial)。

米国ではwhole gland治療は否定されて部分治療のみになったが、フランスでは見直されている。

 

MRIガイド経尿道的超音波治療(TULSA)が経直腸HIFUに代わって紹介されていますが、1年生検での再発率が11.8%(18/152)と予想通り悪く、今一つと考えます。私が行っていたDegarelixを2回投与した中間の2週目にHIFUを行うやり方(5年で再発率6.7%1/15)の方がはるかに有効だと思う。

TULSAはあまり期待できないと思う。右はHOLEPとHIFUを同時に行って肥大症と癌を同時に治療するというもの。力業であまり勧められない。TUR-P先行で後日HIFU+Degarelixが確実。

 

III.  前立腺肥大症の新しい治療 iTIND

米国オリンパスがイスラエル企業と共同で開発(合併)した尿道に6日間拡張デバイスを留置した後除去することで、肥大組織が圧迫壊死を起こして肥大症が改善するというもの。数年は効果があると言われる。局所麻酔でも挿入可能で、高齢者の前立腺肥大による尿閉でカテーテルを留置している患者さんにも安全に行い得るため、日本でも需要が多いと思いました。会場にいた日本から派遣されたオリンパス技術部員に日本でも発売するよう話しました。

前立腺部に拡張ワイヤーを留置する。国内での発売が待たれるiTIND

 

IV.  前立腺癌治療後のMRI、生検のGleason分類、PSMA―PET

初回診断時にPSMA-PETはMRIや生検の代わりにはならず、使えない。逆に治療後はMRIにおけるPIRADS-Scoreや生検のGleason分類は意味がなく、PSMA-PETで癌の有無を検索する意味がある。

以上

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする