rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

何故トルコにISがテロを仕掛けるか

2016-06-29 18:06:25 | 政治

トルコ空港テロ、首相「IS関与の可能性」 36人死亡

トルコにおけるテロはクルド人組織のせいにされることが多く、トルコは陰でISを支援しているという評判もありました。今回トルコの空港でISがテロを仕掛けたとすれば(政府がクルド人ではなくIS関与と声明を出したということはかなり確実なのでしょう)、エルドアン大統領がロシアに対して昨年のISを攻撃しているロシア軍機を領空侵犯を口実に撃墜した事件を正式に謝罪し、ロシアとの関係修復に乗り出したことへの警告と取るのが妥当ではないでしょうか。

NATOに属するトルコは領空侵犯を理由にISに効果的な爆撃を行っていたロシア軍機を撃墜し、ロシアによるIS撲滅を止めるか、あわよくばNATOを巻き込んだロト戦争にまで発展させようとしていた可能性があります。ウクライナの内戦ではロシアが正式に親ロシア派勢力に加勢することを避け、NATOとの開戦に発展しそうになることをプーチンは避けてきました。トルコによるロシア軍機撃墜もプーチンは挑発にのらず激怒したいところを抑えて米国の一部勢力が画策する戦争への発展を防ぎました。戦争を始めたくないオバマやメルケルらの欧州指導者達もどこかでプーチンにシグナルを送っていたものと思われます。結局リスクを犯したエルドアンだけがはしごを外されて浮いた存在になり、国内の治安や経済が厳しい状態になってしまい、大量のシリア難民を欧州に送り出す戦略もEU諸国から総スカンを食って遂に英国のEU離脱といった事態にまでなりました。

もう中東で大規模な戦争は起こらない、サウジとイエメン、シリア、イラク、イラン、トルコがいくら挑発してもどこにも大規模な戦争は起きないことがはっきりしたからロシアと手打ちをしたということではないでしょうか。

現状に不満を持つ若者が銃の乱射など起こしても、ISに示唆されてやったことになり、ISも後追いで声明を出すような風潮が見られますがどうも怪しい。本当は何の関係もないのではと思います。

ところで、英国のEU離脱問題で、早速移民に対する嫌がらせなどが増加したと報じられ「多様性に対する寛容が足りない」といった批判が見られます。本当は多様性を認めていないのは移り住む先の文化や生活様式に対して寛容でない移民の方が問題なのだという視点はありません。大抵迷惑を被っている一般市民が批難の対象となります。異なる文化や生活様式で暮らす世界各地の人達の多様性を認めず、一つの経済法則を押し付ける左翼グローバリズムこそが「多様性への寛容」を身につけるべきであると私は思います。

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EU離脱は本当にポピュリズムか

2016-06-25 14:11:08 | 政治

英国がEUに留まるか離脱かを問う国民投票は僅差でEU離脱が多数を占め、2年後の離脱に向けて準備に入ることが確定されました。英国のEU存続派を含め、日本を含めた諸外国の反応としては、EUからの離脱はEU圏内からの人の移動が自由であるため、貧しい地域からの移民が増加して地域社会が対応しきれなくなってきたことから、大衆が移民を拒否する、また民族主義を正面にかかげる右派、ポピュリズムの主張によるものであると批判しています。一方でグローバリズムの精神に則り、世界を受け入れてゆくことが理性的であり世界の経済にも有益であるとそれが規定の正しい姿であるがごとく上から目線で語る評論家が目立ちます。しかし私はそのような決め付けには違和感を抱かざるを得ません。

 

理性で煩悩を克服できるというのは既に否定された共産主義的思考である。

 

私有財産を否定し、計画経済で物を管理すれば全てうまく行くと考えた共産主義の実験は既に否定されました。人間は理性のみで生きてゆくことはできないのです。個々人の価値観や生き方が違うように、地域、民族によって社会のありようは異なります。それを統一した経済社会体制にしようというグローバリズムの考え方でうまくゆくはずはありません。結局うまくゆかずに末端の人達が苦労をする事に対しては力で押さえつけるか、「皆のために理性で我慢しろ」と強いることになります。

「世界は原始共産制に向かって進んでいる」というかつての愚かな信念と同じく「世界はグローバリズムの統一した価値観、経済観に向かって進んでいる」という宗教のような信念を恥ずかしげもなく語る学者がいます。そんな勝手な信念を押し付けられてはたまりません。世界は多様であり、多様性を保つことが進歩や予想外のカタストロフィーから人類滅亡を防ぐ担保になるのです。これは自然界における真実ではないでしょうか。共産主義経済と市場に任せれば全てうまく行くといった拝金資本主義経済は対極にありながらも、ともに理性を万能と考える類似した片手落ちの思想であり、どちらもその原理主義的な状態では人類全体の幸福につながることなどないのです。

 

ユーラシア大陸の両端にある政治経済共同体

 

ユーラシア大陸の西の端には、二つの大戦を経て力による統合ではなく、協調による経済統合を目指したEUおよびユーロ圏ができました。一方大陸の東の端には二千年前から力による多民族の統合を成し遂げた中国という政治経済共同体があります。ただし支配者はたびたび変わっており現在は漢民族が主体の共産党が支配しています。中国というのは中央権力がめちゃくちゃ強い欧州共同体のようなものと言えるのではないでしょうか。その中でEUにおける英国の位置は中国と日本の関係に似ていると私は思います。米国との強いつながりも同様でしょう。

 

今日本が中国を中心とするアジア共同体に属していて、人の移動が自由であり、チベットやウイグルから言葉の通じない移民たちが続々と日本国内に越してきて住みだしたとしたら明らかに困りますし、「共同体などに入らなくても日本は日本だけでやって行けます」となるのではないでしょうか。そこで諸外国から「理性的な判断をして中国経済圏にとどまれ」とか「移民を受け入れないのはエゴである」とか言われる筋合いはないと普通考えると思います。

 

ギリシャがEUやIMFの命令を聞かない政権を選挙で選ぶのはポピュリズムであると批判されます。フランスにおける移民排斥を訴える政党は超右翼とレッテルを貼られてやはりポピュリズムであると批判されます。米国の大統領選挙もトランプはポピュリズム、若者に人気のあるサンダース候補も人気のないクリントンと比較されるときはポピュリズムに分類されて批判されていました。国民が日々の生活に本当に困って「何とかしてくれ」という声に応えようとすることを「ポピュリズム」といって批判するのは誤りです。一部の既得権益者が金融支配を持続できるグローバリズムの発展だけが正しいことであるような幻想は否定しないといけません。またグローバリズムを阻もうとする勢力を「ポピュリズム」と言って一段下の問題であるように批判するのは民主主義の否定でしかありません。今世の中で問題になっている事のほとんどは1%の既得権益層が推進するグローバリズムと99%の一般民衆の日常生活を守ろうとする戦いであるように見えます。

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映画 セッション(Whiplash) 感想

2016-06-07 19:13:02 | 映画

セッション(Whiplash)2014年米国 監督 デイミアン・チャゼル 主演マイルズ・テラー(アンドリュー)、J/K シモンズ(フレッチャー)

 

偉大なジャズドラマーになるべく名門シェイファー音楽学校(バークリーみたいな所)に通い、練度ピカイチのジャズバンドに参加することになったアンドリューだが、その指導者(フレッチャー)の指導が人間の極限を追求する理不尽なもので多くの若者は挫折してゆく。最後憎しみ会う程対立する二人だがその対立の頂点で珠玉の演奏が生まれるというもの。

 

   映画表紙  度を超した指導(なかなかこんな先生いない)  血が出るまで練習   熱演でアカデミー賞を授賞したJK Simmons

 

実際に視ていないと音楽を通した映画の緊張感は理解できないと思いますが、教育者のフレッチャーのやり方は度を超していて現在の日本ではまず受け入れられないとは思います。しかし小中学校の音楽の授業ではなく、プロのしかも時代を代表するような天才ミュージシャンを育てたい、或は才能を引き出したいのであれば、こういった教育方法もありではないか(勿論映画のはやり過ぎですが)と思わせるものがあります。

 

「この演奏が好き」という場合、ミュージシャンの人柄や人生とは関係なく「演奏自体が良い」というのが聴く人の本音だと思います。そこが絵画や小説のようにある程度作者の人間観と共鳴する部分を持つ芸術と音楽の違いでしょう。だから「究極の良い演奏」を追求するには奏者の日常生活や感情を切って捨てて音楽そのものに全身全霊のめり込む必要がある、というのがフレッチャーの思想なのではないかと思います。音と譜を極限まで追求して指揮する者と演奏する者の時空が完全に共有されて初めて満足のゆく演奏に至るという考えなのでしょう。フレッチャーの悪い点は「こいつは行ける」と見込んだ相手をとことん追いつめて潰してしまう所です。主人公のアンドリューも追いつめられながらも必死に反発して答えようとして遂に壊れてしまいます。多くのカリスマ的ジャズミュージシャンが薬などに溺れて短命であるのはそういった純粋さから来るものかも知れません。米国のジャズ奏者は即興部分を徹底的に練習してから演奏する(もはや即興とはいえない)と言われていますが、一見自由に演奏しているように見えるジャズもそういった厳しさがあるから素晴らしい演奏に繋がるのだろうと思います。自分自身の仕事への情熱や厳しさを改めて見直してみるという気持ちにさせる映画でもあります。その点音色が複雑な管や弦でなくあえてドラムスを主題とした事で訴えかける内容が解りやすくなったと思いました。

Law & Orderで渋々の役を演じたスコダ先生、このwhiplashでアカデミー助演男優賞も授賞していて実は幅の広い上手な役者なのだなと感じました。全ての男児に一見の価値ありの映画です。

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