rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

北朝鮮国内の混乱が米朝会談を左右するか

2018-05-24 20:43:12 | 政治

とんとん拍子に進んでいた南北朝鮮の対話ムード、北朝鮮の平和攻勢がここにきて頓挫しつつあります。テレビなどでは「専門家」といわれる人達も誰一人現在の状況を的確に自信を持って分析している人はいません。5月24日(本日)北朝鮮は宣言どおりに核実験施設を破壊し、メディアに公開することを示したようですが、これはおそらく中国の指示もあってのことであり、6月12日にシンガポールで予定されている米朝会談がどうなるか、今のところ恐らく誰も予想できないのではないでしょうか。

 

今この段階で何故北朝鮮の対話ムードが縮小してしまったのかについて「より米国から譲歩を引き出すための作戦」と説明するメディアが多いのですが、私は違うと思います。私は北朝鮮の政権内での内部混乱が原因ではと疑っています。北朝鮮の政権を金正恩氏の独裁で完全に一枚岩で皆同じ意見であると勘違いしている人が多いのですが、独裁政権ほど体制維持が大変である政体はないというのが人類の歴史で証明されている事を忘れてはいけません。体制が好転している時の独裁政権は確かに安定していますが、変革期に入ると最も脆いのが独裁政権です。これは民主的に選ばれたリーダーが「緊急時」のみ独裁的権力を行使する「大統領による戒厳令時の独裁が危機管理上良く機能する」という物とは根本的に違います。危機時に独裁が機能するかの「鍵」は「政権を周りでサポートする人たちが同じ方向を向いているか否か」です。

 

正恩氏は権力を握った後、おじの張成沢氏ら中国とパイプが太い実務派の閣僚たちを次々に粛清し、デノミなどの経済改革を進めようとした閣僚も失敗を理由に公開処刑するなどして切り捨ててきました。軍人も核とミサイルに従事する者、特殊部隊などは手厚く取り立てて来たようですが全体を潤すには十分な資金もありませんでした。脱北者はあとを絶たず、かなり重要な地位にあった人たちも脱北するに至り、様々な軍内部の情報も韓国などに伝わったと思われます。軍内では若い時をスイスで優雅に過ごした正恩氏を愚弄する風潮が広がり、いつ自分や家族が粛清されるかも知れず、心から正恩に尽くそうなどという人間は少ない状況です。まあ古今東西の人間の心理として当然の事だと思います。項羽と劉邦の故事をひくまでもなく、国が富み発展するには多数の人材が自由に能力を発揮できる基盤が必要で上に立つ者は「うしはく」ではなく「しらす」でなければならず、人の能力を認めて「自由にやれ、責任は俺がとる」という人間でなければリーダーたる資格はありません。正恩氏は項羽ほどの能力もなく、外国育ちの苦労知らずのぼんぼん、としか思われていない、気に入らない人間は平気で殺害するデブとしか国民に認識されていません。

 

昨年まで軍よりも国民の生活を考え、中国との関係改善などに尽力してきた人たちを迫害し、米国との戦争に備える事を第一にしてきた正恩体制が冬季オリンピックの手前から平和攻勢、雪解けムードを前面に押し出し、「米帝」と表現していたアメリカを「合衆国」と呼んでその大統領との会談に先立って一心不乱に開発してきた核を放棄する、中国の言うことも全面的に聞く、と変わったとき、次に粛清されるのは今まで正恩氏の周りにいた人達であるという恐怖が広がることは想像されます。彼らはその逆を行うことで生き残ってきた人達ですから。米朝会談で体制が保証されて、経済援助が盛んに行われるようになると、米中韓の経済資本が大量に北朝鮮内に流れ込んできます。当然各地にある反体制者を残酷に扱う収容所もそのままでは済まなくなるでしょう。今まで迫害していた側、されていた側が朝鮮人特有の手のひら返しでどのような状態になるか、それに恐懼する集団が黙っているとは思えません。そういったクーデターをおこしかねない人達を残して独裁者がシンガポールに出向いて米国に妥協するような決定を下せるでしょうか。所詮外国育ちのおぼっちゃんを「裏切り者」程度にしか思わない北朝鮮エリートは山ほどいるでしょう。その政権基盤の脆弱さが今会談を前にして露見したと言う事だと私は思います。

 

米朝会談を前に国務長官のポンペイオ氏は横田基地経由で北朝鮮を訪れて正恩氏と2回目の会談を行った際に、リビア方式の核放棄と引き換えに米軍の韓半島からの撤退も提案したようです。トランプ大統領が「北の非核化」でなく「朝鮮半島の非核化」という表現を用い、「正恩に新しい提案をした。きっと気に入る。」とツイートしていたことからも明らかだと思います。しかし真に国家の事を考え、実務的な能力に長けていた優秀な人達を粛清してきた現在の正恩氏の周りには、それでは困る人達しか残っていなかった、というのが現実なのではないでしょうか。

 

米韓軍事演習で核を搭載できる爆撃機を見て震え上がってしまった閣僚達に「俺に任せろ、悪いようにはしない。」と正恩氏が説得することは人徳的にも不可能なのだと思います。南北閣僚級会議で具体的に決める内容を指示することなど、その通りになった時に、北で今権力を持っている人達の体制保証ができない状況では、会議を開催することもできなかった可能性があります。能力のある人でも「今国のためを思って勝手に動いた結果あとでひどい目に合う可能性」を考えると「何もしないで保身のためじっとしておく」というのがせいぜいだと思います。

 

これからどうなるか

 

正恩氏が様々な意見や能力を持ったエリート達を大事にしつつ、現在の政治状況に導いてきたのならば、米朝会談も成功し、うまくすれば韓国から米軍が撤退しつつ統一朝鮮が一国二制度で緩やかな改革開放を行いながら、話がまとまっていった可能性があります。中国も北の核放棄と引き換えに韓半島全体を属国として保護する体制を作って行くことになったでしょう。しかし「どらえもんのスネオ君」のような者ばかりが残ってしまった今の体制では大きな変革はできそうもありません。結果的には

 

1)会談中止、米軍は再び戦争準備状態に戻りどこかで斬首作戦実行。

2)会談は行うがヘタレな内容しか正恩が示さず、物別れ、1の状態に。

3)会談して何とかまとまるが、その後北内部の混乱で先が見えない状態になり、結局米中ロが介入する羽目に。

 

のどれかではないか、というのが私の予想です。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする