rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

健康診断とコレステロール

2012-01-20 18:53:49 | 医療

年に一回職場の健康診断を受けねばならないので今年も受診しました。私は随分前から大して酒を飲む訳ではないのにγ—GTPという肝機能の指標となる酵素が100以上あって(異常なので精査して下さい)という結果が帰ってくるのですが、今回は二ケタに低下しました。肥満度を示す体格指数は22.5と理想的で腹囲も81cmなので問題ないのですが、総コレステロールが233mg/dlと基準の140-199を上回っていて、悪玉と言われるLDLコレステロールが137(基準60-119)と上昇しているので「生活改善が必要です」と書かれてしまいました。

 

普通の人ならば「コレステロールが高いから注意しないと」などと書かれた結果を鵜呑みにして、不勉強な開業医などの所に行けば「少し薬を飲んでおきましょう」などと必要もないスタチン製剤などを処方されて延々と医者通いをする羽目になるところかも知れません。

 

男性においてはLDLコレステロールが高いと虚血性心疾患が起こる確率がやや高いらしいとされていますが、総コレステロール値は疾患とは何の関係もないというのは最早医者の間では常識です。また女性はコレステロールを下げることで疾患予防の意味がないということが世界で最も権威ある医学雑誌であるNew England Journal of Medicineで掲載されて世界においては女性にコレステロールを下げる薬は出さないことが常識となっています。それどころか日本の今までの多数の疫学研究で「低コレステロール」こそが多くの疾患の原因であり、脳梗塞は発症も死亡も栄養を改善し、コレステロールを上げることで少なくする事ができることが証明されています(日本人のLDL悪玉コレステロール値と各疾患死亡率の比較図参照、棒の幅はサンプルの実際数に比例私の値は最も死亡率が低い健康的な値であることが解ります)

 

基礎医学の授業、生化学で我々はコレステロール代謝について勉強しますが、動物にとってコレステロールは生きてゆく上で必須かつ貴重な栄養源であるが故に、一度腸内に胆汁とともに排泄されたものを再び腸管から吸収して肝臓に戻す、所謂「コレステロールの腸肝循環」のしくみを習います。つまりコレステロールが低いと健康に生きれないため、動物は長い世代をかけてコレステロールを高めるしくみを遺伝的に作ってきたのです。肉食が多い欧米人は本来動物が自然に得がたいコレステロールをふんだんに食物から吸収するために高コレステロール血症になる傾向がある。そして欧米人の動脈硬化と心血管イベント(心筋梗塞や脳梗塞など)の発生が高コレステロールのせいではないか、という仮説が唱えられて、コレステロールを下げれば心血管イベントも減らせるという仮説があたかも「真実」として医療に組み込まれてきました。特に日本人が発見したコレステロールを低下させるスタチン製剤が世界中で使用されて製薬会社の大きな収入源になるにつれて、仮説を真実に変えるための多くの試験が行われてきました。

 

しかし2005年に「薬屋から金をもらったその薬の薬効研究は発表してはいけない」という世界的な決まりができた途端に薬剤によるコレステロール下降と心血管イベント発症の予防には何の関連も見いだせないという結果ばかりが出るようになり、いままでのもっともらしい研究発表がかなりいかがわしい物である事が実証されてしまいました。

 

だから勉強しているまともな医者は自分の患者さんにもきちんと事実を説明しますが、そうでない医者か、コレステロール値にどうしてもこだわりたい医者は信念として現在も薬を出し続けている訳です。

 

私の80になる母は大分前からコレステロール高値でしたがかかりつけの開業医さんが「年寄りは少し高い位が却って良いんですよ」と話してくれるまともな医者だったのでそのまま放置され、食道がんにはなりましたがそれも放射線治療で克服していまだに元気です。血栓の形成とコレステロールとは直接比例関係にある訳ではないのに血液どろどろとか、サラサラという表現と高脂血症は現在も同次元で語られています。血栓形成を防ぐ薬は抗凝固薬であって高脂血症の治療薬とは異なります。脂肪酸の成分を変える薬はまた別物ですが、その辺りはまだ研究中であり、有望ではあるものの疾患予防について確立されたエビデンスまでは達していません。

 

厚労省はメタボリック症候群なる病気を作り出して健康な国民を病人にして必要もない栄養指導を各職場で無理やり受けさせるよう指導しましたが、実際には一向に進んでいないようです。不況の影響でそれどころではないという実情もあるでしょうが、もともとエビデンスのない出鱈目なのですから相手にしない方が精神衛生的にも良いと思います。

 

アメリカ的ジャンクフードは拒否して、日本人の繊細な味覚に基づいた日本人好みの日本食や日本的洋食を食べていれば病気にはなりません。皆さん美味しいものを食べましょう。

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イラク、アフガン、パキスタンとオバマの新国防戦略

2012-01-12 00:29:36 | 政治

「イラク、アフガニスタン、パキスタンとオバマの新国防戦略の関連について簡明に説明せよ」という問題を今年の新聞社やテレビ局の入社試験に出したらどうでしょう。大学生でこれらの業種に就職しようとしている人達はこの程度の時事問題については勉強しているとは思いますが。

 

しかしながら大手メディアでこの問題について簡明に説明しているものが見当たらないので私自身もどう答えてよいのか正直な所は解りませんが、答えるとしたらどうなるかを自分なりに考えて見ました。

 

まずこの問題に答えるにはいくつかの前提が必要になるだろうと思います。

1)            米国の国防戦略とは「国防」といいながらも自国の防衛ではなく、世界を米国にとって都合の良い状態に維持するための軍事戦略を意味します。勿論米国内に対するテロ攻撃やサイバー攻撃に対処するための戦略も含みますが、世界の警察と言う名前の世界支配のための戦略であることが大前提になると考えます。今後ロン・ポール氏が唱えるような米国以外から全兵力を撤退させて国内防衛のみを考える戦略に転換した場合は、これらの意味合いは全く変ってきます。

2)            「テロとの戦い」は警察でなく軍が行なう戦争行為と既定する。軍を用いた戦争はある国家同士の争い事において、ある政治目標を達成するために軍事的に具体的な目標を定めた上で限定的に用いることが原則です。ある民族や国家を完全に消滅させるために軍を用いる(要は虐殺を行なう)ことや自国民を服従させるために軍を用いることは本来の目的に反しますし、このような使用で後日物事が丸く治まった例は近代ではありません。民間人を目標にしたテロを取り締まることは本来警察の仕事です。警察官は各人が相手を逮捕・攻撃してよいか判断することができます。それを米国は「軍隊」が行なっているために、兵士は自分の判断で相手を攻撃してよいか決められないため、多くの戦士でない民間人が巻き添えで殺されています。しかし米国は国家戦略としてテロとの戦いを戦争と既定したので今後もこの状態が続く事になります。

3)            9.11はアルカーイダが行なった犯行であり、9.11の時はサウジアラビアからの米国の撤退がテロの目的でしたが、現在のアルカーイダのテロの目的は最大多数の米国人の殺害にある、と既定しています。なぜなら「アルカーイダを殲滅しない限りテロとの戦いは終わらない」という理由付けができないからです。

 

以上のような前提があるとした上で、イラク、アフガン、パキスタンと新国防戦略の問題を検討してみたいと思います。

 

9.11の後、アフガニスタンのタリバン政権がアルカーイダを匿っているという理由でアメリカと有志連合、アフガニスタン北部同盟がタリバン政権を攻撃、撃破して2001年の12月にはハミド・カルザイを首班とする暫定政権ができ、翌年タリバンに代わる現在の政権が樹立されました。しかしタリバンの勢力は未だに衰えておらず、現政権の治安維持のための軍事行動が続いています。アメリカはアフガニスタンという国家に対して戦争をしているのではないのでアフガン紛争と呼ばれていますが、オバマ政権になってからむしろタリバンの支配地域が増大しているので3万人近い兵力増強を余儀なくされました。

 

一方で2003年に始まったイラク戦争は、イラクのフセイン政権に対する国家同士の戦争であり、フセイン政権を倒すまでは本来の軍隊の使い方がなされた米軍にとってみれば「働きがい」があり、「腕の見せ所」といえる紛争でなく戦争でした。戦闘が終わって、マリキ政権になってからの治安維持の方が軍の犠牲者が多いのですが、これはアフガンと同様の治安維持のための軍事行動が延々と続いたいたことによります。こちらは前回書いたように昨年末までに荷物をまとめて全て退散しており、現在完全に終結しています。

 

パキスタンの存在は米国にとって微妙な位置づけであって、本来米国に協力的でアフガニスタンへの侵攻の足場にもなっていたはずであるのに、パキスタンの北部はタリバンやイスラム武装勢力が支配していて、アフガンから逃げてきたアルカーイダの安定した拠点になっていしまっているのが現状です。アフガン侵攻の第一の目標であったビン・ラディン氏は何故かパキスタンで昨年見つかって殺害されましたし、昨年11月の米国のパキスタン検問所誤爆によってパキスタン政権中枢は反米の方向に向きつつあります。ムシャラフ・ザルダリと続いた親米政権が崩壊すると、パキスタンは米国が手を付けられないイスラムの聖地になってしまう可能性があり、しかも既にできあがった核をもっているという意味でイラン以上にやっかいな国になってしまいます。インド・ムンバイのテロ(ラシュカレトイバの犯行とされる)もパキスタン情報部(ISI)が糸を引いていたというCIAの報告もあり、対応を誤るとインドとの間に再び核を使いかねない戦争に発展する可能性もあります。そうなると米国の財を無限に費やしてきた10年に及ぶアフガニスタン紛争など何の意味もなくなってしまいます。

 

2012年1月5日に発表された米国の新国防戦略"SUSTAINING U.S. GLOBAL LEADERSHIP: PRIORITIES FOR 21st CENTURY DEFENSE"(「米国リーダシップの維持:21世紀国防の優先課題)の要旨はアジア重視と二正面同時作戦の否定(といってもイランと中国は同時に対処可能らしい)にあるようですが、あれもこれもといった世界中に軍をばらまくのでなく、「選択と集中」によって限られた戦力で有効に米国の国益を守るという形に方針を変えるという意味があるようです。本文では軍の対処はテロリストやゲリラコマンドにも対応可能で、サイバー攻撃にも対処できることを謳っているようですが、私は泥沼のようなアフガニスタン、複雑なパキスタンからさっさと軍を引き上げて歓迎されない土地から米軍を引き上げることで「テロとの戦争」を幕引きにしたい、というのが本音ではないかと考えています。これ以上いくらアフガニスタンに米国の資産人材を投入しても米国が受ける利益は殆どない。であるならイスラム過激派が望むように米軍を引き上げてしまえば後はどうでも良い、という方向に戦略が変ってきたのではないかと思うのです。NATO諸国も財政破綻状態で戦争は継続不可能というのが本当の所でしょう。

 

つまり新国防戦略では、最初にあげた所の、いままで前提としてきたテーゼをある程度破棄して、新しい国是に基づいて戦略の組み治しを始めたのではないかというのが私の意見ですがどうでしょうか。

 

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