rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

戦争に勝つということ

2023-08-24 15:28:02 | 政治

日本では「戦争」というとボロボロに負けて原爆まで落とされた「太平洋戦争」の事しか論じられません。

終戦の日や原爆忌に戦争について語るのは大事ですが、非常に「皮相な内容」で本気で今後起こるかもしれない戦争を避ける方策を真剣に議論している様には見えません。戦争体験者の方々は本気で「戦争はやってはいけない」と考えていると思いますが、教えを受け取る我々戦後世代、特に40代以下の若い人たちが本気で戦争を避ける方策を思案している様には見えません。

戦争を論ずる時、負けた戦争だけ考えれば良いのでしょうか、勝ったとされる戦争「日清」「日露」「第一次大戦」について深く論じられているのを見かけません。戦争の「存在自体を全否定して後は考えようとしない」で済ませてないでしょうか。本当に非戦を誓うのであれば、「戦争」という相手のある「外交の一形態」で戦争まで発展しないための方策を考える。また戦争になってしまった場合の終わり方、「戦争の勝ち方(負け方)」について検討しておくべきだと私は思います。その意味で我々にとって傍観者(第三者)的立場で見ていられる「ウクライナ戦争」について上記に関する議論を尽くす事は有用と思うのですが、メディアで出てくる話は「ロシア悪い」だの「ウクライナがんばれ」という幼稚園児レベルの話ばかりです。そこで今回は「戦争に勝つ」という内容を論考したいと思います。

 

Ⅰ.  戦争に勝つとは

 

戦争に勝つという意味には以下の3通りがあると思われます。

 

(1)相手が全員死亡・絶滅して戦う相手が消滅することによる終戦。

今時これはないと思われますが、「テロとの戦い」は実はこれを目指しています。

(2)相手が無条件降伏(unconditioned surrender)を受け入れて終戦。

第二次大戦がこれですが、その後の戦争も相手国の政治体制を変革させるという点ではこれに近い。

(3)自国にとって有利な条件で双方が終戦(休戦でなく)を受け入れる。

第一次大戦までの外交の一形態としての戦争の一般的なありかたでした。この場合、「休戦による相手のリベンジ」を誘発しない工夫が必要です。「次は勝とう」と思わせる終戦では平和はやってきません。そのためには「有利な条件」なるものが「誰の利益になるのか」が問われます。利益には次の3通りがあります。

 

a)  国民全員(将来含む)に明確な利益になる。

b)  支配者や資本家だけの利益になる。

c)  軍産複合体、武器商人だけの利益になる。

 

この利益は、紛争内容が自治権(領土)なのか資源なのかによっても、国民に分配されて受ける利益の内容が変わってきます。戦争で苦労するのは国民です。国民が利益を感じない戦争(士気が上がらない)に勝ち目はありません。増して「テロとの戦い」の様に一体何と戦争しているのか不明な場合は、国民の利益と言えるものがあるのかさえ不明であり、b、cの利益だけだね、という結論になります。今テロとの戦いは知らないうちに終わっているようです。

 

II.  戦略と戦術

 

戦争の目的を達成するために建てるのが「戦略」であり、個々の戦闘に勝つための方策が「戦術」です。個々の戦闘は戦略に沿って要否や戦い方が決まるのであり、戦略と戦術は関連しています。個々の兵士にとっては自分の生死にかかわる「戦術」は非常に大事ですが、大きな視野での戦略に沿って戦争は進むので兵士は「コマ」でしかありません。結局「政治」が最も優先され、大事なのです。

 

III.  ウクライナの悲劇(攻撃=戦争の主導権という勘違い)

 

1) ウクライナ戦争における戦術の大変革

 

ウクライナ戦争は「正規軍同士の戦争」における「戦術」の常識を大きく変えました。第二次大戦におけるバルバロッサ作戦(独ソ戦)との比較が戦車や機械化歩兵を用いた戦争の例として持ち出されますが、戦術を検討する上でのISR(情報、監視、偵察)の在り方が全く変わり、衛星、ドローン、通信傍受を用いた現在「すべての軍の移動、集合は相手に筒抜けである」という前提で戦術を検討する必要があります。

 

西側にはロシア軍はISR、近代装備、士気、機構ともに「西側よりも劣っている」とする神話があります。特に専門家と称する人たちや軍の上層部にもロシア軍が圧倒的に勝っている現在においても「この神話」を信奉している人たちがいます。メディアがこれらの人たちの法螺をそのまま放送するので軍事音痴の一般の人たちも「弱いはずのロシアがなかなか降参しないのはおかしい」と思っています。現実にはロシア軍はISR、近代装備、士気、機構ともに西側より優れています。劣っているのは水上海軍力位でしょう。ウクライナ戦争についての解説が現実を反映していない「ちんぷんかんぷん」な内容なのはこのためです。ウクライナの春季(夏季)攻勢が圧倒的敗退をきたしたのはロシアISRがすべてを把握して防御したからに過ぎません。ゲームボードの様に俯瞰で眺めながら相手の戦力や出方を全て把握しながら防御(攻撃でなく)を用意周到十分な戦力で行えば自軍の犠牲を最小限にして相手を全滅させる事が可能です。

 

2)「攻撃=戦争の主導権」という勘違い

 

西側は当初ウクライナ戦争支援の目的を「プーチン体制の崩壊」に置いていました。ロシアはウクライナへの「特殊軍事行動(SMO)」の目的をドンバスの独立、ウクライナの中立化、非ナチ化、に置いていました。ゼレンスキーはロシアのクリミアを含む全領土からの完全撤退に目標を定めているようです。当初述べた「戦争に勝つ」定義において西側は体制変革2)を目指し、ロシアは有利な条件での終戦3)を目指している事が分かります。

当然戦争目標に向かう「戦略」にも違いがあり、西側はロシアプーチン体制が崩壊するよう「経済制裁」を行い「ロシアの休戦提案を拒否」して、ウクライナに近代兵器を援助し続け、「ロシア軍は弱いという神話」を信じ続けてロ軍が負ける事を期待しました。

ロシアの戦略は自軍の犠牲を最小にしつつウクライナ軍を叩き、戦争継続不可能にして有利な条件で終戦締結できる様にすることです。終戦後ウクライナ国民にリベンジ心を持たれないよう民間への攻撃損害は極力避けてきました。また降伏したウクライナ兵も保護してきました。この目的を達するために、防御を完全にしつつ相手の攻撃を誘う戦略を取ってきました。この1年戦線が膠着して動かない理由を「ロシア軍の弱さ」と解説する大馬鹿者がいますが、「戦略や戦術ISRの変革」をまるで理解していない事を露呈しています。

ロシアの侵略を受けたウクライナは、自軍の犠牲を少なくしてよい条件で終戦に持ち込むためには本来「防御に徹する」必要があります。ロシアは、現在ウクライナが春季攻勢をしているヘルソン地区を2022年秋から1年かけて3重の防御陣地を構築してきました。西側が本気でロシアに勝ちたいのならば、完全な防御陣地ができる前に徹底的に攻撃する必要がありました。現在「侵略」したロシアが防御を固めて、侵略されたウクライナが「攻撃」を続けています。この戦略の違いは「攻撃を続ける側に戦争の主導権があり、勝っていると印象付けられる」という思い込みがあります。実態は圧倒的強力な米軍を相手に勝つ見込みの無くなった日本軍が万歳突撃を繰り返していた太平洋戦争末期と同じ状態と言えます。「敵が見える状態で厳重な守りに付いている側が圧倒的に強い」のです。

 

追記:

ほぼ毎日更新してウクライナの戦況を解説しているWeeb Union氏が2023年8月25日の解説で「何故ウクライナが勝てないのか」について今までの戦い方の誤りを指摘しながら論説していました。結論的には私と同じ「攻撃を続けている」からというものでした。ロシア軍が半年かけて攻撃をしていたバクムート攻防戦においても、ウクライナは「撤退戦術」を取らず、ワグネルの小規模な攻撃に反応して「Head to head」で戦ったので、「ウ軍の状況をISRで全て掌握したロシア軍が強力な砲撃で殲滅する」戦法を取り続けて毎日数百人の損害を出し続けたと批判しています。小国は攻撃してくる大国を撤退しつつゲリラ戦で戦う(北ベトナムやアフガンムスリムの戦法)のが唯一勝利を得る方法であると喝破しています。

Weeb union氏の解説。戦争初期にキエフに侵攻したロシア軍にウ軍は集中。その間南にロシアが進撃した後ずっとロシア側が守りを固めてウ軍の攻撃を撃退する戦法を取っている。

 

3) 攻撃型兵器はゲームチェンジャーにならない

 

オランダなど一部の国は旧式化したF-16戦闘機の供与を決めたと報道され、ウクライナはモスクワ中心部へのドローン攻撃を繰り返しています。攻撃型兵器や細々とした攻撃を続ける事が戦争の大成を変えるゲームチェンジャーになると信じている人たちがいる証拠ですが、上記の様に実現不可能な戦略に基づく政策に効果はありません。万歳攻撃を続けるウクライナは2)の国家体制の消滅に向かっていると言えます。ウクライナは全部隊を一度退却させてドニエプル河の西側で防御態勢を組めば、ロシアは当初の目的を達することになるので双方に有利な条件で終戦に持ち込むことができるでしょう。誰の利益のための戦争か、我々日本人は第三者としてよく見ておきましょう。

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ワクチン地獄を永久に続けますか?

2023-08-20 10:36:43 | 医療

新型コロナ感染症も5類扱いになり、「治療が必要な患者を治療する」という当たり前の対応になって社会も落ち着いて来たように感じます。店や電車でもマスクをする人が減少してまともな風景に戻りつつある様に見えます。

そんな中、厚労省は9−10月に「現在」流行しているXBB.1.5株対応の1価ワクチンの接種を「無料」で「生後6ヶ月以上の全ての国民」に接種を開始すると発表しました。特に今まで追加接種の対象外として「全ての接種を避けて来た人」へも「初回接種の方も受けて下さい」などと「1億総接種」を打ち出しています。

厚労省のワクチン接種をよびかける広報(厚労省サイトから)

 

I.  ワクチンで耐性株発生の常識

 

感染症は原虫、細菌、ウイルス、など宿主に感染する原因で分けられますが、医学的治療薬としての抗生物質や菌やウイルス特有の抗代謝薬などを使い続けると、当初は有効であっても細菌やウイルスの側で「進化」「耐性化」することで薬が効かなくなる事は常識の範囲です。それは癌においても当初効果がある抗がん剤が、耐性株が増加することで最後は効かなくなってしまう事と同じです。

国立医療センターのサイトから耐性菌が発生するメカニズムの一般の方向け説明

 

コロナウイルス(風邪ウイルス)は感染を起こす接着部位のスパイク蛋白が容易に変化するので、ワクチンができないというのが医学の常識でした。インフルエンザも接着部位となるヘマグルチニン(H)やノイラミニダーゼ(N)が変異するので、ユニバーサルなワクチンができず、流行型を予想したワクチンを毎年施行しています。

インフルエンザの構造と変異する場所

 

新しい抗生物質は使いすぎると耐性菌発生に通じて、最終的にはスーパー耐性菌となり、あらゆる薬剤に耐性の菌が人類を滅亡させるリスクが生ずるため、適切な抗生剤を短期間使用することが義務づけられています。

耐性菌発生に警鐘をならすBBCやOECDの記事

 

II.  ワクチン接種開始以降スパイク蛋白の変化しか起こらない

 

厚労省の秋接種についてのお知らせには、年末にかけて毎年コロナが流行するので、予防的に秋に接種をと理由が書かれていますが、同じ図でワクチン接種を重ねる程、いままで拡大しないと見えない程であった感染者数が莫大な数に増加したという説明もできてしまいます。

厚労省の資料にワクチン投与時期(1ー5回)を加えたもの

オミクロン株発生以降の亜系統の移り変わり(厚労省の同じ資料から-全てオミクロンの派生である)

 

ワクチンを製造しているモデルナ社の公開資料からの図を示しますが、当初αやデルタなどの変異種と異なり、オミクロン株以降の莫大な流行をもたらした変異種は全てワクチンに用いられたスパイク蛋白の変異によって起こっている事が証明されています。つまり「スパイク蛋白のワクチンを使う程、同部位の新たな変異種が今まで以上に流行する」という事が証明されたと言えます。

モデルナ社の資料からオミクロン株以降の変異株の系統樹とスパイク蛋白上の変異個所の図

 

III.  論理(ロジック)でなくナラティブ(自分で決めた様に思わせる)で

 

ここまで明らかな結果が出ているのですが、この簡単な事実を元にワクチンをどうするべきかを論理的に考えてはいけないのでしょう。最近「ナラティブ」という言葉が汎用され、物語(ストーリー)を展開することで、ある結論に到達する事がスマートであるとされます。医療においても一方的に医師が医療の論理で治療を説明するインフォームド・コンセントよりも患者と一緒に治療を決めて行く過程を大事にするPatient decision makingの手法(Narrative Based Medicine)が大事とされます。しかし現実にはナラティブとは論理的に思考して結論に達するサイエンスの常道である「ロジカル」とある意味対極にある概念であり、一見自分で納得して得た結論に見えますが、後から支配者にクレームが来ない様にする高等技術とも言えるのです。このナラティブ技術は「ウクライナ戦争」についても、温暖化が原因とされる「ハワイの火事」についても言える様です。特にテレビ情報だけで全てを判断してくれる人達が「自ら物事の基本から考える」ような事を許してはいけないのです。断片的な事実を関連があるように並べて、特定の結論に結びつけさせる技術(ナラティブ)こそが、自分達が納得して結果的に自ら自滅させる高等技術なのです。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Bristol Blenheim Mk I Airfix 1/72

2023-08-13 14:50:27 | プラモデル

第二次大戦初期の英国爆撃機ブリストル・ブレニムMk1を作りました。1935年に高速旅客機として開発されたブリストル142を母体として高速性能を買われて量産が決まり、1936年に実戦配備されました。第二次大戦では既に防御武装が7.7mm背部旋回銃塔1丁と左翼の1丁のみという貧弱さで犠牲が多く、重武装化したMk IVに変わりました。しかし運動性能の軽快さなどから戦闘機型、偵察機型など各種改造され、また大戦前にはフィンランド、ルーマニア、トルコなどにも輸出され、枢軸軍機としても使われました。乗員は3名、機体重量は5,670Kg、ブリストル・マーキュリーMk8 9気筒840馬力2機を装着して最大速度418km、航続距離は1,810km、爆弾454kg装着可能でした。レストアされた飛行可能な実機は2016年の映画ダンケルクでも救出に出向く小型船の上空を横切る味方機として登場しました。

レストアされたBristol Blenheim Mk 1 実機       Airfix 1/72 model

モデルは安定のAirfixでしかも新金型であり、設計図も丁寧に記載されていて安心して組み立てられます。前作に難物(ブレゲーアトランティック)だったりすると気安く作れるモデルを次に入れて一休みします。上面ダークアースとダークグリーンの迷彩、下面は黒で1941年マレーシアButterworthのビクトリアクロス受賞者Arthur Stewart 指令搭乗機の物です。箱絵は日本軍の一式戦闘機「隼」に追いつめられている図ですが、加藤隼戦闘隊の加藤健夫中佐を撃墜したことで有名です。モデルには操縦手1体が付いていましたが、ハセガワ製の搭乗員2体を機首に追加してみました。昔作った旧金型のブレニムMk IVがあったので比べてみました。外見上機首の爆撃手席が延長されて独特の形状である点と武装が強化されている点が異なります。

機首部に搭乗員3名を入れてみました。  翼端灯は自作なのでやや形が悪い

車輪や爆弾槽の造りは新金型なのでさすがに精巧です。

箱絵は日本軍の隼戦闘機との空戦           武装強化型のMk IV(昔作った旧金型)と比較 機首に1、下面後方に向けて2、銃塔が2連装になる。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウクライナで露呈するNATOとEUの齟齬

2023-08-11 15:45:02 | 社会

拙ブログでも度々触れた様に、ウクライナ紛争というのは英米中心のNATOとロシアの代理戦争(proxy war)踏み込んで言うと世界巨大資本を中心としたグローバリズム対中露を中心としたBRICSを背景にした多極主義の代理戦争でもあります。ロシア対ウクライナの一国同士の戦争であれば、兵力・資源・資金力が途絶えた時点で終わりです。第二次大戦の日本がよい例です。自国民の若者以外何も持たないウクライナが1年以上ロシアと戦争を続けていられるのは、武器や金の流れを見れば、真の戦争当事者が誰であるかは一目瞭然で「民主主義のためにウクライナに支援を」などというたわごとで金を出しているお目出たい人は日本では知りませんが、世界では少数派です。

 

ウクライナ紛争では頻繁に欧州委員会委員長のフォン・デア・ライエン氏など、EUの代表者達が公の場に登場して種々の方針を述べます。それは外部にいる日本人にはNATOとEUが混然一体として機能している様に見えてしまいますが、本来NATOとEUは設立の目的や目指す所が異なる組織であり、その意思が一体であることはないのです。以下平凡社新書(1017)村上直久著2022年刊「NATO 冷戦からウクライナ戦争まで」を参考に論を進めます。

 

1)NATOとEU

 

(1)同床異夢の組織 北大西洋条約機構(NATO)は1949年にソ連の軍事的脅威から西側諸国を守る集団防衛組織として発足しました。1955年NATOに対抗してワルシャワ条約機構が設立され、いわゆる冷戦構造が確立されましたが、1989年ベルリンの壁崩壊で東欧諸国の民主化革命が進み、1991年ソ連消滅前に同機構も消滅してNATOは一発の銃弾も撃たずに冷戦終結に至りました。NATOはNo Action Talk Onlyなどと揶揄されましたが、その存在意義が終了したにも関わらず存在し続け、しかも民主化した東欧諸国を追加しつつ拡大してゆきます。2000年代にはソ連を継いだロシアがNATOのパートナー国として演習に参加したりする蜜月時代もあったのですが、ウクライナやグルジアのカラー革命を機に対立関係になり、現在に至ります。一方でNATOは戦勝国の英米が欧州を軍事的に支配するという目的を持ち、NATOに共同する反共秘密組織(主に国内向け CIAやMI5MI6フランスのジャンダルム、ドイツ憲法擁護庁)が各国にはあると言われ、欧州政府の政策を英米が支配する構図が影の目的としてあったと言えます。独自の核を持つ仏をはじめ、もともと米英よりも格が高いと考える欧州国民にとっては決して快いものではなく、まずは経済でドル一極体制に対抗する目的でECのちにEUが設立されました。

(2)加盟国の違い EUとNATO両方に加盟しているのは20カ国で、EUのみがフィンランド、スウェーデン(2国は2022年8月にNATO加盟承認すみ)、オーストリア、アイルランド、マルタ、キプロス。逆にNATOのみが米英、カナダ、トルコ、ノルウェー、アイスランドとなっています。トルコは経済的な理由から自国のEU加盟を条件にフィンランドなどのNATO加盟を認めたと言われます。

(3)世界経済フォーラムの関与 EUが欧米のグローバリズム経済の対極となることを嫌う世界経済フォーラム(WEF)陣営は、毎年世界から200名余りの若者をYoung Global Leaders(YGL)に選定して種々の支援を行って国家要職に就かせ、グローバリズムの指示に各国政府が進んで従う体制を作ってきました。当然EU首脳の多くもYGL出身であり、日本も小池百合子、高市早苗、林芳正、小泉進次郎、橋下徹などおなじみの面々がグローバリストの傘下に日本国民を差し出す役割を果たしています。しかし骨のある若者は訴訟を起こしてでもそのような誘いは拒絶するものです。グローバリズムを拒絶する米民主党のトルシー・ギャバード女子も勝手にYGLに選ぶなと怒りを表明しています。

社会を支配するため、各界で力を持つようにWEFは資源と時間をかけて人材を育成している。左上がトュルシー・ギャバード女子   勝手に選ぶなと怒る骨のある若者もいる(日本にはいないと思う)

 

(4)EU独自の軍事機構の模索 余り知られていませんが、EUが英米からの独立を目的とする以上、安全保障においてもNATOとは異なる機構の設立を目指した時期があります。92年のマーストリヒト条約に基づいて、共通外交安全保障政策(CFSP)が設立され、フランスのシラク大統領と英国のブレア首相が中心となってEU独自の3万人からなる緊急対応部隊設立を目指しました。特に独立志向が強かったのがフランスでしたが、2004年を機にEU独自の治安機構は主に警察治安任務を担い、軍事に関してはNATOを中心に据える方向に定められました。NATOは95年99年にセルビア空爆、2003年融資連合としてアフガニスタン出兵、2011年にリビア空爆など冷戦終了後から熱い戦争に参加して行きます。

 

2)ウクライナ戦争はEUを無力化する目的も

 

(1)軍事経済資源を差し出せ 1年以上続くウクライナ戦争にNATO各国は軍事物資、経済支援を限りなく続けて、空軍力を除く陸上の火砲、ミサイル、弾薬などは底を尽きつつある(ウクライナ反転攻勢は弾切れで頓挫、ロシア軍大攻勢で戦争終結へ (msn.com))と言われます。ドイツ経済を支えていたロシアからのノルドストリームパイプラインが米英の手で破壊されたのはシーモア・ハーシュ氏の暴露記事通りです。グローバル経済が行き詰まりつつある中、WEFが画策するグレートリセットを達成するには健全な欧州経済は邪魔です。健全な欧州社会も邪魔なので大量の移民で破壊する必要があります。フランスは移民による暴動で一時内戦状態であった事は記憶に新しい所です。

フランスは一時内戦状態に

 

(2)戦時経済体制のロシアと資本主義のままの英米 西側諸国は砲弾などを増産体制に変えたと言われますが、戦時体制に移行して24時間全力で無尽蔵に火砲を製造しているロシアにはかないません。米軍もあと2-3か月でミサイルや砲弾が尽きることを認めています。ビリニュスのNATO首脳会議でNATO諸国はウクライナのNATO加盟を「戦争終結後」と規定し、実質加盟を拒否、NATOの参戦も否定しました。イラク戦争で米軍の戦車部隊を率いた退役軍人のダグラス・マクレガー大佐は「NATOには図上演習だけが得意な将軍は山ほどいるが、部隊を率いて実戦で戦える人はいない。しかも多国の軍を統率して作戦を遂行することなど不可能だ。」と断言しています。

NATOは備蓄戦力を使い果たした。               世界銀行の調査では2022年のロシアの経済力は世界5位に上昇して日本に迫っている。

 

(3)日本のNATO事務局設置延期へ 2023年5月NATOストルテンベルク事務総長はNATOの連絡事務所を東京に開設することを日本政府と協議していると明らかにしました。しかし中国との対立を嫌うフランスの反対によって延期となりました。これ以上他国からの支配体制が増えて日本の自主独立が否定されるのは勘弁願いたいところですが、フランスに助けられた格好です。欧露が手を組んで英米グローバル体制から独立しないよう、NATOによる隣国同士の戦争(divide and rule)が仕掛けられてきました。日中韓が一体となることを防ぐ事も「分割して支配する」戦略には重要な要素です。2012年、日中の経済関係は戦後最大となり、ドルを介在させずに両国の通貨で直接取引をする準備を始めた事への米国の対応が売国奴石原都知事を使った「尖閣国有化宣言」(米国で宣言表明)だったのです。当然反発した中国と日本の関係は以降最悪となりました。石原は「息子伸晃を総理にしてやる」とそそのかされたのでしょうが、石原の死後、伸晃は総理どころか国会議員も落選し、政界から消えています。国家の利益より自分の利益を優先する人間の末路です。

分割して統治せよの良い見本 日中の蜜月をいかに米国が嫌ったかがよくわかる例

NATO東京事務所は仏の反対で開設延期に

 

3)ウクライナ敗北と必然的な多極化

 

世界最強の軍と化したロシア軍 ウクライナへの特殊軍事作戦SMOが始まった昨年2月時点では、最新装備とドローンなどのAIを供与されたウクライナ軍は、それらを駆使することで、ロシア機甲部隊に対して大きな被害を与える事ができました。しかし勝てないが負けないと評した様に、ウクライナ軍は統制のとれた戦術でロシア軍と戦闘した訳ではなかったため、ロシアがSMOから本格的な戦争にギアを変えた途端に被害ばかり多くて一切勝てなくなります。今年6月からの反転攻勢と称する攻撃もロシアの第一防御線まで引き入れてから殲滅する戦術を、引き入れられた事を前進と大きく報じてまるで勝った様に西側メディアが報ずるため、ずっと同じ攻め方で数十万人のウクライナ兵が無駄死、戦傷する結果になっています。現在ロシア軍は小型ドローンと衛星情報を駆使し、無人神風爆弾機、巡行ミサイル、誘導爆弾、西側の10倍の砲弾を用いて世界最強の戦闘集団になっています。戦略核を用いて双方を全滅させる戦法以外、NATOも米軍も勝ち目はありません。

第一防衛線まで引き込んでから殲滅する戦法がずっと有効なのはなぜか?

 

広島のG7サミットでゼレンスキーが停戦を懇願すれば、ミンスク合意の再来も可能であったかもしれませんが、JBPressの記事でも触れられている様に、今となっては図のような縮小ウクライナが残り、そこも西側資本の草刈り場となる運命になる事が予想されます。ウクライナの人たちが本当に気の毒です。

ミンスク合意的な解決もやり方によっては可能であったかも。      ウクライナにとって最悪の終結(メドベージェフ氏はロシア・ポーランドによるウクライナ分割をデュダ大統領に提案している)

 

コメント (13)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月山登頂と出羽三山参拝記

2023-08-09 22:27:23 | その他

夏期休暇に今年は富士登山を計画していたのですが、生憎の台風6号で中止を余儀なくされました。息子夫婦と合わせて休暇を取っていたので、折角の登山計画を家で過ごすのも残念に思い、「ヤマップ」などで天候が持ちそうな山形県の月山に行く事にしました。富士山は一泊二日の予定だったので、やや強行軍ながら出羽三山を巡る計画を立てて様々な偶然(神のお導き?)に助けられて達成することができました。

 

富士山も言わずと知れた霊峰ですが、出羽三山とは「月山」「羽黒山」「湯殿山」の三神の事で、死後の安楽を祈る月山が過去、現世の幸せを祈る羽黒山が現在、そして生まれ変わりを祈る湯殿山が未来を表し、三山を詣でる事がセットとなっています。江戸時代には西の伊勢参りと東の奥参り(湯殿山神社の奥の院の事)が「人生儀礼」の一つとされて全国から参拝者が集まったそうです。

 

I.   羽黒山参拝

羽黒山入山口にある随神門          樹齢千年という爺杉

庄内平野の鶴岡にある羽黒山に山形自動車道経由で行きました。関東からは東北道から山形道に入るのが普通ですが、混雑を避けて常磐道から入った所、東北道で大きな事故があって一時下り線が通行止めになったりしたので、それに合わずスムーズに仙台方面の連絡道から少し戻って山形道に入り、昼過ぎには羽黒山に到着しました。一つ目の神の導きでした。

羽黒山入り口の随神門を通って東北最古の国宝五重塔(改築中)、樹齢千年の爺杉など見ながら二千段の階段を登ると羽黒山山頂の三神合祭殿に到着します。冬場は月山、湯殿山は積雪で登れないので羽黒山に三神を合わせて祀ったとされます。三山を巡るにはまず入り口であるこちらをお参りすることになっている様です。

二千段の階段 小一時間はかかる                     羽黒山頂上の三神合祭殿(車やバスで直接行く事も可能)

伊勢宮の様に多くの社殿があって多種の神が祀られている

 

II.   湯殿山参拝

 

宿泊は、富士山をキャンセルした後たまたま空いていた月山の麓にある「志津温泉つたや」さんでした。羽黒山を後にしてから台風の影響で一過性の激しい雷雨に見舞われましたが夕方5時には到着。温泉と山菜を中心にした(山形牛ステーキも)美味しい食事を満喫しました。

この旅館はご主人含めて3名の方が本格的な修験者もしておられて、希望する宿泊客に毎日朝5時25分集合で湯殿山朝参りにマイクロバスで連れて行ってくれます。神主さんのお祓いなどもあるので宿泊とは別料金になりますが、期せずして湯殿山神社(奥の院)に本格的参拝ができた事は二つ目の神の導きでした。

湯殿山は標高1504mで、奥の院とされる湯殿山神社本宮は山の中腹にあります。ご神体は「見た内容を語るべからず」とされ(撮影禁)、お祓いを受けてから素足で参拝します。ご神体についてはそのような理由で敢えて触れないことにします。拝辞を神主さんとお参りする人全員が唱和してからお参りします。朝6時の清々しい時間帯に神主さん数名、宿泊者の希望者8名と引率の旦那さんのみ貸し切り状態での参拝でした。奥の院に参拝すると「生まれ変わる」とされるので、それぞれのご先祖様への感謝と供養をする儀式もあります。先祖を祀らない神道では異例の儀式ということです。

山菜など中心にした夕食        湯殿山奥の院参拝の時に唱和する拝辞(お経と違い音階がある)

 

III.   月山登頂記

下山してから月山全貌が拝めた                 隣接する姥が岳方面を月山から眺める

月山は標高1,984m日本百名山の一つであり、花の百名山としても有名でニッコウキスゲなど様々な高山植物も見られます。リフトで姥沢登山口に向かう途中に珍しい渡り蝶のアサギマダラにも出会いました。今年は卯年で547年の卯年に「霊験新たか」な神仏が月山に出現されたという言い伝えから、卯歳御縁年(うどしごえんねん)として参拝すると12年分の御利益があるとされています。その年にお参りできたのも第三の神の導きだったでしょうか。

渡り蝶のアサギマダラ(リフトから撮ったのでぶれあり)       ニッコウキスゲ

初心者向けとされる姥沢コースですが、台風の影響もあって風が強く、ガスも多く時々しか遠望が望めませんでした。それでも日本海や庄内平野、鳥海山なども見る事ができ、山頂の月山神社でお祓いを受けて三社参拝を果たす事ができました。前日の悪天候や平日だったこともあり、登山自体は割と空いていてリフトもお祓いも待ち時間なし。登山は、お参りや昼食含めて4.5時間くらいでした。

夏だが所々雪渓が残っている            頂上小屋の奥に月山神社の小さい社があって神官の方も数人いる

 

富士登山が果たせなかったのは残念でしたが、来年は大学も定年になるので生きながら新たな魂として生まれ変わる「うまれかわりの旅」ができたのは「神のお導き」だったかと感謝しています。宿泊した「つたや」さんは、+2,000円で月山登山パックとして往復のリフト券、昼のお弁当(炊きたて山形米の美味なおむすび2個と副菜)、登山後の入浴、天然水など付けてくれて大変「お得」でした。月山登山後、帰りは東北道で幸い渋滞もなく夜9時には家に到着しました。

姥が岳から鳥海山を遠望できた        霧が晴れると時々日本海や庄内平野が見えます。

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする