rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

古典的右翼左翼の定義では社会情勢を理解できない

2022-10-30 10:59:50 | 社会

民主主義と資本主義が同じであるか、といった問題についてイーロン・マスク氏がツイッターを買収した件にからめて10月30日のサンデーモーニングでも取り上げていましたが、リベラル的な説明では極めて誤解を招くというか、ほぼ理解不能な問題と思われたので改めて図示した上で検討しようと思います。

 

I.  1990年代に民主主義と資本主義がセットで社会主義に勝利したという誤解

 

1988年から91年のソビエト連邦崩壊により、国家の枠を超えた東側コミュニズム体制と社会主義経済が終了しました。西側陣営は当然喜んだのですが、これは社会体制として共産主義に対して民主主義が勝利したのと、経済体制として社会主義計画経済に対して資本主義経済が勝利した2つの意味がありました。

元々「経済体制としての資本主義」に対立する形で「マルクス主義経済学」が出現して社会主義国家が誕生した訳ですから、政治体制としての「民主主義の対立軸」として共産主義が出現した訳ではありません。だから計画経済が立ち行かなくなり、社会体制として東側社会主義国家が消滅して、世界中が資本主義にはなったとしても、政治体制が自動的に民主主義国家になる訳ではなかったのです。共産党一党独裁を貫いたままGDP世界2位になっている中国が良い例です。

 

資本主義を追求すると自然と民主主義になるということはなく、むしろ資本が力を持って民衆を平気で支配する事も可能になりました。つまり民主主義が対立軸を失って弱体化しているのです。ここに現在に至る問題の根源が潜んでおり、また東西冷戦時代の右翼左翼の定義で現在の体制を理解できない理由があります。

 

II.  市場原理主義(リバータリアリズム)から独占資本主義(モノポリー・キャピタリズム)強化へ

戦後冷戦期において、日本では左翼と言えばマルクス主義を信奉し、社会主義国家、計画経済による統治、当時のソ連や中国の在り方を「良し」とする考えを指しました。一方で右翼とは、ウエストファリア型の民族国家の繁栄を個人の自由よりも上に置いて、帝国主義的資本主義を「良し」とすることを典型としました。一方で左右どちらにも偏らないながら、個人の自由を尊重して国家の枠に囚われない「地球市民」的発想をリベラルと称していました。これらはやや極端な色分けですが、現在も概ねこのような概念で「レッテル貼り」が行われていると思われます。しかし図に示す様に、現在の社会を理解するには20世紀的な右翼・左翼の定義では理解できない状態になっています。

 

90年代に共産主義と社会主義経済がセットで敗北すると、マルクス主義に忠実な左翼は消滅します。一方で左翼全体主義の傾向を持った一群が資本主義に合流して「ネオ・コンサーバティブ」という法的統制を伴う狂暴な資本主義を推し進める事で、統制を嫌い市場の自然な動きによる発展を好む市場原理主義的資本主義(リバータリアリズム)は影を潜め、巨大資本が法的統制力で帝国的支配を広げる「独占資本主義(モノポリー・キャピタリズム)」が勃興し、国家の枠を超えて世界を統一的な価値観で経済を支配する、所謂グローバリズムにつながって行きます。新興国の中には、国を挙げて企業を支援する国家資本主義で独占的巨大資本に対抗する勢力も出てきました。これがソ連崩壊後から2010年頃にかけての世界経済・社会の動きであり、図の矢印の様にそれぞれが部分的に旧来の右翼・左翼的要素を取り入れてはいるものの、既に旧来の右翼・左翼の定義で社会を分析することは不可能になりました。

 

世界を一つの価値観で支配したいグローバリストは、LGBTなどの少数派尊重や温暖化阻止などの環境問題を重視している様にみせかけて、以前のリベラルの要素を取り込んでいます。また国家資本主義はまさに国家権力の伸張を重視する20世紀的帝国主義の要素があります。そういった要素で右翼左翼といった旧来のイメージがついたレッテルを、メディアを使って貼付けることで現実の姿、本当の目的を見えなくしているのです。

 

そして現在、一見国民国家毎に民主的に物事が決められて世界が動いている様に見えながら、実際はグローバリズム経済を仕切る国家の枠を超えた一部の人達の決定に従う国(西側と括られる)と、中国・ロシア・南米・中東第三世界などの非グローバリズム国家の対立の構図が出来上がって、新型コロナ、地球温暖化、ウクライナ紛争などで異なる対応をして対立しているのです。

 

III.  帝国(グローバリズム)の時代に20世紀的右翼左翼の定義では理解できない

イタリアの哲学者アントニオ・ネグリと米国の哲学者マイケル・ハートが2000年に出版した「帝国」はグローバル資本主義が既に国家以上の権力を持って「帝国」として人類を支配する事を警告する古典的名著ですが、彼らはその「帝国」にあらがう人々の「形」をマルチチュードと表現しました。しかし「帝国」が明確な概念である一方で「マルチチュード」が具体的にいかなる存在かまでは明らかにできませんでした。現在「グローバリズムの帝国」に明確に対抗しているのは、やはり一個人から見ると「帝国」である「国家資本主義からなる多極主義勢力」という事になります。「マルチチュード」=「多極主義勢力」ではないものの、グローバル帝国に対抗する多極主義勢力をやや期待を持って見守るほか、力のない一個人にはできないのが現状です。現在、米国では民主党がグローバリズム勢力、共和党が多極主義勢力側に概ね付いていると言えます。日本は与党も野党もグローバリズムに忖度した行動しかしません。もはやどちらが右翼、左翼と言ってみた所で当てはまるものではないし、理解もできないと納得されたのではないかと思います。

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癌治療の新しいトレンド

2022-10-26 18:34:37 | 医療

2022年10月20日から22日に神戸で開催された第60回日本癌治療学会学術集会に参加してきました。発表者と座長は現地参加ということで久しぶりに関西に出向くことができたのですが、往復の新幹線は平日ながらほぼ満席で「コロナ後」の回復に向けて日本はやっと本格的に動き出したかなと実感しました。

そのような中で専門の泌尿器科の学会に参加するだけでは分からない「医療界全体の癌治療のトレンド」が外科内科を問わず解るのがこの学会の利点なのですが、今回の学会に参加して感じた新しい癌治療全体のトレンドを備忘録的に記しておきます。

 

1)  遺伝子パネルによるがんの個別化治療

 

ヒト全ゲノム解析が終了してから、個体やがん細胞の遺伝子異常を網羅的に解析して、その細胞の遺伝子的特徴や弱点に合わせて薬剤を選択してゆこうという試みが全ての癌領域で試みられています。一部は既に実用化されて癌の根治までは行かなくても薬剤の有効性判定に利用されています。遺伝子診断には大きく分けて(1)腫瘍細胞自体の診断<病理組織による>(2)宿主・個体の遺伝的異常の診断<採血、白血球や口腔粘膜細胞採取による>(3)血液内の断片化された遺伝子の抽出による<リキッドバイオプシー>に分かれますが、それぞれが一部実用化されつつも発展途上という印象です。

 

2)  免疫治療強化に資するサルコペニア予防と栄養、運動

 

免疫治療と言うと、20年前までは膀胱癌のBCG膀胱内注入療法の様に化学療法よりも効くという例外的事例を除いて、有効率10%程度、或いは殆ど気休めという「キワモノ」扱いでした。ところが日本人の本庶佑氏の2018年ノーベル医学・生理学賞受賞につながった免疫チェックポイント阻害剤(以下ICI)が実用化されると、ほぼ全ての癌腫で有効であることが解り、進行癌の治療の中心に免疫療法が位置づけられる様になりました。特にICIと分子標的剤という細胞に特異的な働きを促すサイトカインという物質をブロックする薬を組み合わせると単独使用よりもより効果が出ることも解りました。私も自分の進行癌の患者さんにこの治療を行って、疼痛管理のために一日40mgのモルヒネを必要としていた状態から麻薬0の状態まで改善した例をいくつも経験しています。

 

ICIはがんになった患者自身の免疫細胞が自分の分身とも言える癌細胞を「非自己」と認識して排除する「がん免疫」を無限に強化する薬です。元々自分自身であった癌細胞のわずかな正常細胞との違いを認識して排除する機構が「がん免疫」なので、それを無限に強化する段階で自分自身の正常な細胞まで排除してしまう「自己免疫疾患」を起こしてしまうリスクがあります。また免疫機能が健全でないとこのような複雑な「がん免疫」を保つ事は困難です。(だから不必要な武漢株の中和抗体を全力で作らせるコロナワクチン、しかも自分の細胞に非自己のウイルス蛋白を超大量のmRNAを注入して強制的に作らせるコロナワクチンは自己の細胞を非自己と認識させてしまうリスクはないのか?という話題はまた別の所で)

 

ヒトの免疫能を健常に保つ要素は「栄養」「総合的体力」「精神的健康」であり、筋肉量の低下を示す「サルコペニア」、体力気力などの低下を総合的に表す「フレイル」、骨量低下を示す「オステオペニア」といった事の予防が免疫治療時代の癌治療で重視されるのは当然の事と感じます。以下箇条書き的に今回の学会で有用と思った物を記します。

 

〇 がん患者における栄養評価・炎症反応評価が術後回復力、長期予後に関連した。血中コリンエステラーゼとアルブミン値が栄養指標に有用であった。(福井大学 廣野氏)血清クレアチニン/血清シスタチンC比がサルコペニアインデックスとして有用。好中球/リンパ球比、アルブミン値、CRPが予後に反映。(群馬大酒井氏)

 

〇 サルコペニアと免疫。 CTで骨格筋インデックス(SMI)を測定し、低下しているとICIの効果が減った。(九州大学 胡氏)腸腰筋体積インデックス(PMI)が分子標的剤の効果と相関。(札幌医大 大須賀氏)カヘキシア(癌による身体異化)で出現する血中循環断片化DNA(super long fragment)が癌に伴う慢性炎症を反映。(日本医大 園田氏)サルコペニアで癌増殖を抑制する血中miR-133bが低下し、運動療法で増加した。(京都府立医大 木内氏)

 

〇 がんと腸内細菌叢。 がん免疫療法効果と腸内細菌叢が関連。(九州がんセンター 庄司氏)サルコペニアを予防する腸内細菌叢調整。(京都府立医大 榊田氏)歯周病の原因菌Fusobacterium属が食道がんの進展に関与。(熊本大学 馬場氏)同じくF. nucleatumが大腸がんで増加。Akkermansia属、Bacteroides属の一部が腸内にあるとICIの効果が増強される。(慶応大学、他グループ)

 

〇 免疫療法と化学療法。 化学療法は免疫細胞も障害するので免疫治療にはマイナスと考えられてきたが、がん免疫に適さない不要な細胞を除いてがん免疫に集中できる細胞を増やす環境を整えるのであれば却って化学療法後の免疫治療の効果があがる。GC化学療法後のアベルマブ維持療法が効果的である理由になり得る。(東京大学 垣見氏)

 

以上

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PZL.37 Los ZTS plastyk 1/72

2022-10-10 11:55:26 | プラモデル

ポーランドのプラモメーカーZTSが製品化したポーランドが第二次大戦前に開発した双発爆撃機PZL37のルーマニア空軍所属を作りました。PZL37ウオシ(ヘラジカの意)はポーランドの航空機メーカーPZLが単発の2人乗り軽爆撃機PZL23カラシュに継ぐ双発爆撃機の開発を1934年に開始し、1936年12月にJerzy Dabrowskiの設計で初飛行に成功します。ポーランドでライセンス生産された英国のBristol Pegasus XIIBエンジンを搭載して1,995kgの爆弾搭載量で当時としては最速の時速400km、航続距離2,600kmという高性能を示したため、ベルギー、デンマーク、エストニア、トルコなどへの輸出やライセンス生産が決まりました。しかし1939年ドイツとソ連によるポーランド侵攻のため約100機が生産された所で終了となりました。ポーランドが敗戦して実質的に消滅する段階で、ポーランド空軍は当時同盟関係にあったルーマニアに航空機ごと亡命し、以降30−40機のPZL37がルーマニア空軍第4航空隊所属として対ソ連戦に参加、ベッサラビア、キエフ、オデッサなどへの攻撃に参加した記録があります。一部は1944年にルーマニアが枢軸側から連合国側になってからも運用されました。特徴的な2重車輪は荒れ地の飛行場からの離着陸を可能にし、前線基地からの航空支援に役立ちましたが、本来中高度以上からの爆撃を想定しており、ソ連のIL-2の様な重厚な防御板が無いため、必要とされた低高度からの攻撃では対空射撃に弱く、犠牲が伴いました。また機銃3丁の防御では戦闘機の高性能化のため、味方戦闘機の援護がない爆撃任務には付けない状況でした。荒れ地からの離陸には爆弾搭載量も仕様の半分程度しか可能でないという制限もありました。PZL37は量産初期のA型10機は垂直尾翼が1枚であり、以降はH型の2枚尾翼(B型)でした。私は形として1枚尾翼の方が良いように見えたのでそちらを選択。どちらの型もルーマニア空軍で使われたようです。

荒れ地の飛行場でも離着陸可能な2重車輪が特徴的なPZL37 量産B型のH型尾翼     モデルは1枚尾翼のA型を作製

模型はポーランドのZTSという小さいメーカーのもので、2,000年前後の製品と思いますが、頑張っているもののバリが多く整合も悪いという予想通りの製品でした。それでもABどちらの型も選べるなど、自国が誇った爆撃機を製品化しようという意気込みは感じられます。1/72のPZL37はチェコのフライモデルやIBGなどから新金型のモデルが出されている様です。模型の機銃はちゃちかったので他の模型で余ったものを流用。ルーマニア空軍の迷彩色は資料によって再現が難しいといつも思いますが、カーキ地にブラウン(クレオスのオリーブドラブ+茶褐色1:1)を吹いて迷彩にして見ました。下面はライトグレーです。凸モールドなので2B鉛筆で軽くなぞって強調してます。モデルには、連合軍側になってからのルーマニア空軍のデカールしかなかったので、枢軸側のミハイ十字の国籍識別記号は他のプラモ(AirfixのBristol Brenheim Mk1)から流用しました。昔作ったHeller製のPZL23Bでこれもルーマニア空軍所属のものと並べてみました。

迷彩はカーキ地にブラウン、下面はライトグレーです。      尾輪もソリが補助的に付いている。

H型の尾翼よりもこちらの方が安定して見えるが、後方射界確保などでH型が好まれたという説があります。 下面の爆弾槽などはモールドのみ

PZL23カラシュとの比較、速度、爆弾搭載量ともにPZL37の方が優れる。

 

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