rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

オバマの広島訪問における「論理と倫理」の使い分け

2016-05-11 15:09:38 | 政治

広島訪問、謝罪ではない 報道官「核廃絶の熱意伝える」

オバマ大統領が2016年伊勢志摩サミットに出席する際に被爆地である広島を訪問することが大きな話題になっています。日本では原爆投下という無差別大量殺戮に対する「加害者としての米国の謝罪」を期待する論調が当然ながらあります。第二次大戦の話題では日頃日本が常に加害者として扱われ、中国・韓国から「謝罪」を執拗に要求されていること、帝国主義における領土と覇権拡張のための戦争が延々と行われてきたにも関わらず、第二次大戦においてのみ敗者に対して「倫理的悪」という規定がされて子孫にまで贖罪が要求されるという「戦後秩序」という特別な規範が当てはめられて来た事が問題を複雑にしているとも言えます。

 

米国はオバマ大統領の広島訪問を「謝罪」や「贖罪」の意味ではない、と規定します。勿論敗戦が見えていたあの段階で「原爆」を日本に使う必然性については米国人の誰もが疑問を抱くでしょう。日本人に使用するについては戦後のソ連との関係や日本人が白人でもキリスト教徒でもないことなどの因子が当然あって、その論理的必然性などを追求されることは米国にとって片腹痛い部分があるでしょう。日頃奇麗事を並べる欧米のヒューマニスト達に対して「ダブルスタンダード」だと感ずることは日本人のみならず共感する所でしょう。しかし彼らはその矛盾についてはあまり気にしていないようにも見えます。

 

我々がダブルスタンダードと感じるほどには彼らはその矛盾を気にしていないと思われる原因は西洋人ならではの論理と倫理の使い分けにあると私は思います。以前のブログで「倫理的善悪の決め方が歴史観に反映する」として日本人と欧米の人達では倫理的な善悪の決め方が異なることを紹介しました。また日本語では「良い」と「正しい」は同じ感覚であり、論理的にも倫理的にも良い、正しいという意味で「これは正しい」と言われると論理的にも倫理的にも良いことであると解釈するのが一般的で原語的に使い分ける習慣がありません。

 

日本人にとっては自分の属する集団(家族、地域、会社、民族、人類など状況で異なりますが)にとって利益になることが倫理的な善ですが、一神教のキリスト教徒(ユダヤやイスラムも)にとっては神との契約に従うことが倫理的な善(good)であるという根本的な違いがあるのです。社会における取り決めなどで正しい事は論理的に正しい(rationalとかrelevant)かどうかが問題であり、自分達に利益があるかどうかは利がある(beneficial)かどうかの問題で倫理とは異なります。

 

原爆投下の正当性について米国の言い分をそのような観点から見ると、「戦争を終結させるために論理的に正しい選択(rational)であった。」「日米両国民にとって(本土決戦を行うよりも犠牲を減らすことができて)良かった(beneficial)。」と言っていて、「倫理的に善」という言い回しは巧妙に避けている事が解ります。もし日本が米国に倫理的な意味での「謝罪」を要求するならば、米国の原爆投下は「神の御心に反する行為」である事を正面から突きつけてしかも納得させる必要があるでしょう。それは今後の日米関係に民間の交流も含めてかなりのダメージになることを覚悟しないといけないでしょう。勿論心の中では原爆投下が倫理的に悪だと彼らも感じているからこそ「米国は反キリストだ」と我々日本人が責め立てることは破滅的な結果になるように思います。

 

欧米や周辺国が日本に対して倫理的に執拗に贖罪を求めるのは「南京の虐殺」や「従軍慰安婦」の問題であり、ドイツに対しては「ユダヤ人の虐殺」や「人体実験」などいずれも「神の御心に反する」所業についてであることが解ります。ドイツの首相の謝罪もナチス(とそれに加担したドイツ国民の)「神の御心に反した」所業についてでありました。日本は真実の歴史において「神の御心に反する行為」はしていないのですが(731部隊の件は真実と思います)、「戦争をした」事自体が「倫理的な悪」と戦後の日本人が規定してしまったから問題が複雑になって誤らなくて良い事まで周辺の国々に謝罪する羽目になって内心忸怩たる思いをすることになっていると言えます。

 

原爆投下の倫理的な善悪は一時置くとして、核の犠牲者を日米両国の首脳が追悼することが今後核の無い世界を希求する上で論理的にも倫理的にも良い(rationalでbeneficialでgoodだ)と規定することが今回のオバマ広島訪問にあたって日米が丸く収まる落としどころなのだろうと思います。これから海外を含めていろいろなメディアで報道されると思いますが、このような見方でチェックするとそれぞれの論理が理解しやすくなるのではないかと思います。

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