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rakitarouのきままな日常

人間の虐待で隻眼になったrakitarouの名を借りて人間界のモヤモヤを語ります。

ロシアの要求を呑む以外ウクライナに平和は来ない

2025-04-29 11:50:29 | 社会

ローマ教皇フランシスコ氏の2025年4月26日の葬儀では、トランプ大統領とゼレンスキー大統領が簡素な椅子にひざを突き合わせて会談する様子が公開され、新たな停戦への展開が期待されました。

ローマ教皇葬儀でのトランプ・ゼレンスキー会談

一方で同日、ロシア軍のバレリー・ゲラシモフ参謀総長がウラジミル・プーチン大統領に対し、ウクライナ軍からクルスクを解放する作戦が完了したと報告したと発表しました。この作戦でウクライナ軍は7万6000人以上の兵士が死傷したと報告され、またこの作戦に朝鮮の戦闘員が参加していたことも明らかにされて、この北朝鮮軍の参加は金正恩自身も認めました。rakitarouは、北朝鮮軍参戦はフェイクだろうと言う立場でしたが、誤りでした。ヨンハップニュースによると北朝鮮軍はロシアに派遣されて数か月後から前線に参加したという事で、元々精鋭部隊であった上に、ウクライナ戦の戦闘訓練も加えて参戦した様です。要はドローン戦、西側のミサイルや砲火などの実戦的知識を習得する目的で2024年6月に締結した相互援助条約に基づいてプーチンに頼み込んで参戦したのでしょう。北朝鮮は砲弾も供給しており、ウクライナ戦争には深くコミットし続けたと言えます。

公開されたロシアで訓練中の北朝鮮軍兵士とプーチン、金正恩による条約締結

 

I.  負けている側は勝っている側の条件を呑む以外停戦できない

 

開戦当初の2022年4月の段階の様に、ロシア、ウクライナ側の犠牲が五分五分の状態であれば、双方が条件を出し合って停戦に持ち込む事は可能ですが、まとまりかけた停戦をウクライナ側から一方的に破棄し、その結果敗北に至っている現在、停戦を承諾してもらうには勝っているロシア側の条件を全て呑む以外仕方がないのは実戦を伴う戦争では常識です。セルゲイ・ラブロフ外相は、4月28日のメディアインタビューでウクライナ和平に対するロシアの要求を改めて語りました。以下、必要条件として

 

  • ウクライナによるロシアとの直接交渉。
  • ウクライナが、1990年代のウクライナ国家主権宣言に従って、中立かつ非同盟国の地位に戻る。
  • ウクライナ国内において、言語、メディア、文化、伝統、ロシア正教など、ロシア文化を破壊する政策の終焉。
  • クリミア、DPR、LPR、ヘルソン地域、ザポリージャ地域のロシアの所有権の国際的な承認。
  • これらの立場を法的に修正し、恒久的なものにし、執行メカニズムを持つための措置。

これらに次いで西側に対しては、プーチン大統領が昨年6月に再度明らかにした

(1)ウクライナにおける脱ナチ化のスケジュール

(2)ロシアへの制裁、行動、訴訟、逮捕状の解除

(3)そして西側で「凍結」されているロシアへの資産の移転

(4)ロシア連邦の安全、およびNATO、EU、および個々の加盟国の西側の国境での敵対的な活動によって生み出された脅威に対する信頼できる保証。

 

これらの要求は、ウクライナ及び西側に何度も騙されてきたロシアの側から見ると妥当な要求に見えます。このまま戦争を続けて、ウクライナが国家として崩壊し、ロシアによる完全な傀儡政権が樹立されて戦争が終結するよりは、いくらかでもウクライナの主体性(西側への交流の余地)が残された状態で停戦に向かえる方が、ウクライナ国民にとっては良いようにも思います。

米側ケロッグ氏が提案する和平後のウクライナ(ロシアの要求とはかなり遠い)

 

II.  ウクライナ市民の本音

 

西側メディアがウクライナ市民を自由に取材して本音を報道する機会は極めて少ないですが、スイスのジャーナリストがウクライナ国内で2か月取材した結果をロシアのMeduzaに出した長い記事の一部翻訳を転載します。

(引用開始)

シュラ・バーティン氏による、ウクライナ人の間で増大する戦争の疲労感についてのレポート

2025年3月28日午前4時12分  出典:Meduza

ロシアとウクライナは3年以上にわたって全面戦争を続けています。この間、ウクライナ人はロシアの侵略に対して激しい抵抗を続けてきたが、その力は衰えているように見えます。スイスの出版社「Reportagen」のジャーナリスト、シュラ・バーティン氏は、ウクライナに2カ月間滞在し、キエフやドンバス地方を旅し、その間ずっと人々と話をした。彼は、過去1年半で著しく変化した国民の気分を観察しました。徴兵される可能性に怯えた多くのウクライナ人は、軍のパトロールから逃れるために隠れている。前線では兵士が不足しており、現在、そこの兵士は数ヶ月間ローテーションできていません。脱走は日常茶飯事になっています。負傷者の避難も難しくなり、主にドローンが古い兵器よりもはるかに効果的に歩兵を殺すため、生存率が急落しています。

激戦が続いたChasov Yarの現在

メドゥーザは、ウクライナ軍の前線と背後の雰囲気を描写した数十の証言を含むバーティンの報告書を掲載しました。これらは、痛み、無力感、絶望に満ちた悲惨な話です。

パート1

採用センター(TRC)

1年半前、キエフはウクライナ東部での戦争から苛立たしいほど孤立していると感じていました。今日、侵略の影は明らかに近づいています。朝の5時に駅を出て歩いていると、すぐにサイレンが聞こえました。肌寒く灰色で、粉雪の中、数人の通行人がヤロスラビブ渓谷を急いでいました。この1年間で街の雰囲気が変わったことはすぐに明らかになりました - それはどういうわけかより荒涼としていて、絶望的になっていました。すぐに、強力な爆発音が鳴り響き、ミサイルがホリデイ・インに命中した。その後、ニュースは誰かがそこで亡くなったと報じました。

しかし、ミサイル攻撃以上に、首都を戦争中の都市のように感じさせるのは「TRC」です。厳密に言えば、採用センターは軍の入隊事務所を指しますが、日常会話では、略語は、街頭で男性を捕まえて前線に送る軍のパトロールを意味するようになりました。今日、「TRC」はおそらくウクライナで最も話題にされる言葉です。

徴兵官に召喚状を渡される市民

戦争が始まったとき、ウクライナは兵士に事欠かず、膨大な数の男性が自発的に前線に赴きました。しかし、多くの人が亡くなり、今では戦う意欲のある人ははるかに少なくなっています。当初、TRCのパトロール隊は単に街頭で徴兵通知を配るだけで、その後州は徴兵忌避に対する罰則を強化しました。これが不十分であることが判明すると、当局は武力を行使し始めた。パトロール隊に止められ、バンに押し込まれ、軍の入隊事務所に連れて行かれて健康診断を受けます。このプロセスは「バス化」と呼ばれ、おそらく今日のウクライナで2番目に広く使用されている言葉です。バス化されると、その日の夜遅くから翌朝に厳重な警備の下、基本的な軍事訓練などを受ける、森の中にあるブートキャンプに送られます。

1年半前、人々はすでにバス化についてささやいていましたが、脅威はまだここまでではありませんでした。TRCのパトロールは村や小さな町を席巻しましたが、キエフはまだ首都のリラックスした生活を楽しんでいました。その後すべてが変わりました。インターネットには、TRCの警官が逃げようとした男性を殴ったり、健康診断を拒否したり、ブートキャンプに送られるのに抵抗したりする様子を映したこのようなビデオがあふれています。

一人の男がウサギのようにジグザグに通りを疾走し、兵士たちが熱心に追いかけてくる。血まみれの顔をした男たち。移動中のバンから飛び降りる男たち。ウクライナのソーシャルメディアでは、このような光景は今や当たり前になっています。政府は介入を約束したが、何もしない。一方、男性は軍の入隊事務所で亡くなり始めています。TRCによって数人が殺害された。前線やロシアの爆撃で亡くなった人々の数に比べれば、取るに足らないことのように思えるかもしれませんが、これらの事件はウクライナ国民の士気を深く低下させています。

Poltava TRCのレポートは、採用オフィス内の雰囲気を捉えています。

2025年3月14日午後3時頃、入隊所で、25歳の市民が兵役に適していると判断されたことを知った後、故意に鍵で腕をこすり始めました。同日午後6時頃、32歳の徴集兵が割れた瓶のガラスを使って同様の行動を繰り返した。どちらの場合も、軍事委員会の医師が応急処置を提供した。TRCの当直担当官が呼んだ救急車は、男性の生命に対する脅威がないことを確認した。しかし、これらの「男たち」が国を守るよりも自殺する方がましだと述べたため、彼らは精神病棟に移されました。メディアは、これらの恥ずべき臆病な行為と自傷行為を「自殺未遂」と表現しているが、ポルタバ地域TRCと入隊局の司令部は、これらを兵役逃れの試みと見なしている。

ウクライナでは、動員に反対することは実際には不可能です。法律により、人は兵役の代わりに懲役刑を選択する権利があり、多くの人がこの選択肢を選ぶでしょう。実際には、これらの男性でさえブートキャンプに送られ、その後前線に送られます。

ウクライナの多くの人々は、TRCの将校を敵と見なしている。キエフや他の都市には人気のテレグラムチャンネルがあり、地元の人々はパトロールの目撃情報について常に最新情報を共有しています。海外の反体制派ブロガーはTRCを激しく批判しているが、ウクライナの主流メディアは、徴兵忌避者に対する刑事事件、軍の入隊事務所での殺害、脱走をほとんど報道しない。多くの男性が兵役に就くことを望んでいないことを認めることは、国益に反すると考えられてきた。スローガンは、「勝利が近い、軍隊に栄光、国は握りしめた拳のように団結している」などというウクライナの一般的なレトリックを煽る。

前線の野戦病院の様子

ウクライナのメディアは、軍の問題をどのように報道してきたのでしょうか?

今年キエフに到着したとき、パトロールが常駐しているため、友人たちはもう地下鉄を利用していないことを知りました。彼らは他の都市に旅行することはなく、必要でない限り外に出ることを避けます。これらの予防措置にもかかわらず、TRCは数週間以内にこれらの人々のうち2人を「バス化」しました。将校が彼らを外に捕まえた後、彼らは入隊事務所で一夜を過ごし、翌日にはブートキャンプにいた。

日曜日に30分間の電話アクセスが許されたとき、彼らの散らばったメッセージは、そこが刑務所のようであることを明らかにした:酔っぱらいでいっぱいで(より慎重な男性は正しいテレグラムチャンネルをフォローし、いつ屋内にいるべきかを知っているからだ)、外に出るチャンスがない。1ヶ月の基本を学んだ後、あなたはすぐに前線に送られます。志願する男性には、サービスの部門、トレーニング、専門分野など、いくつかの選択肢が与えられます。しかし、路上で捕らえられた場合、健康状態、職業、好みに関係なく、歩兵として最前線に配置されるだけです。

私の友人の一人が並外れた才能を持つプログラマーだったので、彼は何かの無線情報部隊に配属されるのだろうと思っていました。

私たちの共通の友人であるヴァーリャは、これに別の解釈を加えました。彼は私に言った:「まるで彼らが今彼を行かせるかのようだ - それは奴隷市場だ」と、旅団がいわゆる「バイヤー」を基本的な訓練キャンプに送り込み、一定数の新兵を要求する方法に言及した。

パート2

殺人鬼

2月の1週間で、衝撃的な話がいくつもありました。ザポリージャでは、24歳の男性が軍の入隊事務所で殺害されたが、彼の母親が弁護士であることが判明し、事件の調査を開始した。リヴィウ出身の核物理学者が、彼をブートキャンプに運んでいた移動中のトラックから飛び降り、頭蓋骨の付け根を骨折した(彼は脱出を試みる前にられていた可能性もある)。フメリニツキーでは、TRCの男性が自分の喉を切り裂いて死亡した。ポルタバ地域では、狩猟用ライフルで武装した男が、徴兵者を基礎訓練に護衛していたTRCの将校を撃ち殺した。これがオンラインで悪意のある喜びの噴出を引き起こしたとき、愛国的なサークルは、ウクライナの保安庁がそのようなコメントを投稿した全員を特定し、彼らを前線に送るよう要求しました。また、警官の殺人者をリンチする声もあった。

以下略(引用終了)

以降パート10まで憂鬱な内容の実話が続くのですが、西側の鉄砲玉として戦争をさせられているウクライナ市民の実相を知れば、一日も早く戦争を終わらせるべきだという考えが正しい事は理解できると思います。

 

記事ははてなブログでも読めます(rakitarouのきままな日常

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トランプディールの正体「解放経済open economyから国民経済national economyへ」

2025-04-26 11:26:30 | 政治

トランプ関税の問題については、株価が乱高下するなど日本を含む世界経済が翻弄され続けていますが、Wall street journalが報ずる様に、顧問のピーター・ナヴァロ氏、財務長官のベッセント氏、商務長官のラトニック氏らの間の意見の相違で方針が変わるなど種々の情報が乱れ飛んでいます。しかし前回のブログでも紹介した様に、トランプ政権が打ち出している「関税による経済操縦」は思いつきではなく、彼のチームが長年準備してきたものであることは明らかです。

種々の報道があるが、基本概念は動いていない

英国の元外交官でMI6諜報員でもあったアラステア・クルック氏が分析する様に「トランプショック」――ドルを通じた戦後「秩序」の軸としてのアメリカを「脱中心化」させたこと――は、現状維持から莫大な利益を得てきた人々と、現状維持を米国の利益にとって敵対的、さらには存亡の危機とみなすようになったMAGA派との間に、深い亀裂を生じさせ、両陣営は、激しく非難し合う二極化へと陥っている事は明らかです。ヴァンス副大統領が準備通貨としてドルが過大評価されつづける事は健全な米国経済成長を蝕む「寄生虫」だと表現した様に、トランプ氏は「金融システムに依存する多くの人々に多大な苦痛をもたらすことで既存のパラダイムを覆す」か「事態が避けられない米国経済の崩壊へと向かうのを放置する」か、の選択から前者を選んだと言えます。勿論バイデン民主党は莫大な予算を組み、ドルを増刷する後者を選んでいた訳です。

 

I.  解放経済と国民経済

 

解放経済(open economy)とは、国の障壁をなくし、自由経済に基づくグローバリズムを進める経済政策であり、冷戦終結後に米国が一極支配の中心として進めて来た政策です。一方で国民経済(national economy)は、国家資本主義と通じる概念で、国単位で経済を指向してゆくものであり、中国、ロシア、EUを離脱した英国もこちらにシフトしつつあったと言えます。2者の相違点の大きな特徴は

 

解放経済   経済が政治に優先する (経済が政治を支配する)

 

国民経済   政治が経済に優先する (政治が経済を支配する)

 

という点です。現在トランプが進める関税による経済変革は正に解放経済から国民経済へのシフトを図る事と言えるでしょう。冷戦終結は「民主主義と資本主義」がセットで「共産主義思想と社会主義経済」に勝利したのですが、実体は社会主義経済が崩壊して資本主義経済に負けたのであって、米国を中心とした民主主義陣営も自由資本主義(グローバリズム)に飲み込まれてゆく結果につながったのがその後の歴史でした。つまり資本主義は非民主主義の中国に入り込んで成長しても民主主義自体は存在する必要がなかったばかりか、資本主義経済が政治(民主主義)の方向性を左右する(米国やEU)までになってしまったと言えます。その未来を明確に予言したものがハーバード大学の経済学者Dani Rodnikが2000年に著した「政治経済のトリレンマ」という概念です。

 

II.  政治経済のトリレンマ

Rodnikは「国際金融のトリレンマ」「為替の安定性」、「資本の自由な移動」、「金融政策の自立性」の3つの政策目標のうち、一度に2つは達成できるが、3つをすべて満たすことはできない、という理論を政治経済にも当てはめて、「国家主権」、「民主主義」、「グローバリゼ-ション」の3つの政策目標・統治形態のうち、一度に2つは達成できるが、3つをすべて実現することはできない(図)としたものです。グローバリゼーションを進めた欧州連合(EU)は、民主的でありながら各国の経済事情に依らずユーロが欧州銀行の判断で発行され、域内のヒト・モノの移動も国の事情は無視されます。

図はそれぞれの辺の対極にあるのが三角形の頂点を表わしていて、ブレトンウッズ体制は固定通貨制、黄金の囚人服とは、選挙で選ばれないエリートが勝手に決めた種々の取り決めに従わされる体制であり、民主主義の対極にあります。中国などは国家主権を保持しつつグローバル化を進めた黄金の囚人服国家かも知れません。

 

III.  ウクライナ戦争と解放経済、国民経済

 

ウクライナ戦争がグローバリズムを奉ずる西側諸国と多極主義に進むロシアBRICS陣営の代理戦争であることは誰も否定しないと思います。ロシアによる侵攻当初、ロシアウクライナ双方の犠牲は共に大きく、数週間で決着が付くと予想された戦争はウクライナ側の戦果拡大でロシア・プーチン体制が維持できないと踏んだ西側は、トルコ、イスラエルなどの仲介でまとまりかけた停戦合意を2022年4月に破棄。2022年秋以降戦時体制に移行したロシアが本気で長期戦・消耗戦に対応したことからウクライナ側が劣勢になりロシアが優勢のまま現在に至ります。

多くの専門家と称する人達がロシアの敗北を予想したにも関わらずウクライナが敗北した理由を説明できないのは、冷戦が経済戦争であったのに対してウクライナ戦争は実戦であったことを理解できていないからだと思われます。それは前記の「解放経済」と「国民経済」の特徴が理解できれば容易です。

つまり経済戦争であった冷戦は経済が強い方が勝ったのに対して、実戦は政治が経済を支配(戦時経済体制)していないと成り立たないのです。武器調達、配備、用兵、全て「政治が主で経済が従」でなければ成り立ちません。第二次大戦においては連合軍、米英含めて戦時経済体制で、全て軍政優先で戦争を遂行し、日独枢軸軍に勝利しました。勿論最後は経済力の優劣が勝敗を決めたのですが、「儲けてナンボ」という資本主義理論が政治に優先している状態では、政治優先の国民経済体制でしかも実体経済の底力を備えたBRICS体制には「信用経済ばかり肥大した西側諸国」は勝てない事が明確になったのです。

 

IV.  NATOはEUの軍隊ではない

欧州連合の3つの柱

EUは経済共同体が基本であり、共通外交・安全保障政策、刑事司法協力という2本の柱が加えられましたが、軍事組織は持っておらず加盟国の多くがNATOに属している事を頼りにしています。そのNATOは米英を中心とした対東側(ロシア)及びドイツ封じ込めを目的とした組織であり、特に米国の主導(総司令官は米軍人)がなければ機能しません。欧州委員会委員長のフォン・デア・ライエン氏や安全保障政策代表のカヤ・カラス氏がいろいろ言っても実戦に反映されないのは政治経済と軍が一体化されていないからです。

米軍がいないとNATOは機能しない

ウクライナ戦争はウクライナ側(西側)には総司令官が不在であり、責任を持って終わらせる人がいない(トランプはバイデンの戦争だと明言)ばかりか、無責任なステークホルダー達の思惑がバラバラであるため、このままウクライナが崩壊するまで続く可能性が高いかも知れません。

 

本記事はブログ引っ越し先の「はてなブログーrakitarouのきままな日常」でも見れます。

「独立言論フォーラム」さんで来る5月27日(火曜)に「コロナとウクライナの戦略的失敗に学ぶ」と題した小さな茶話会を開催します。お時間とご興味のある方は是非左記サイトからご参加ください。

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Northrop F-89 Scorpion C Hobby Craft 1/72

2025-04-14 18:23:31 | プラモデル

隠れた名機とも言われるノースロップF-89スコーピオンを作りました。実戦には出なかったものの、1950年代の米国本土を核攻撃から守る迎撃戦闘機の主役として、ソ連から飛来するB-29改ともいえるTu-95ベアを確実に迎撃する様々な武装が試みられ、その後の戦闘機武装の発達に影響を与えたと言えます。戦後間もない1945年12月にノースロップ社はP-61ブラックウイドウの流れをくむ全天候型長距離ジェット戦闘機の開発に取り掛かり、1948年に初飛行をしたアリソンJ35推力1820kgを2機装備した二人乗りの戦闘機を開発しました。その後エンジンはアフターバーナー付きの推力2360kgに換装されて、最高速度1010km、航続距離2560km、全天候型と主にアラスカ地方防空のために必要な性能を備えた機体になりました。

モンタナ州防空軍のF-89D 実機

武装は当初20mm機関砲6門、1200発と重武装でしたが、翼端の燃料ポッドを武器用に改造して一度に52発のロケット弾を発射するマイティマウス2発(フットボール場2つ分の範囲で航空機が撃墜できる)、AIM-4赤外線誘導ミサイル4発(D型)、AIR-2核弾頭(1.5kトン)2発を搭載する事も可能でした。実戦に使われなかった事は核戦争が起きなかったということであり、良いことでした。合計1050機が生産され、本土防衛用のため、アメリカ空軍、各州の防空軍で採用されました。

モデルはカナダのプラモ会社ですが、実際の金型などの製作は韓国製であり、アカデミーからも発売されています。プラモデル自体がレア物であまり見たことがない機種のプラモデルが1200円で売っていたので思わず買ったのでしたが、設計図などは今一つ分かりにくい上、デカールはアバウトな内容で翼用の国籍マークが小さかったりするので適宜改変が必要でした。Rebellから出ているD型の方が出来は良いようです。アルミシルバーの塗装感を出したいと思い、いろいろ工夫しましたが、黒地にシルバーリーフを缶スプレーしてからMr.Hobbyのスーパークロームシルバー2(206番)というの筆塗りした所、写真の様に割と良い感じになりました。

翼の中央がクロームシルバーを塗っていない所 車輪の向きや増槽に付ける翼などの説明が不十分なので間違って付けてしまいがち。

余計な事をせずに単に206番を筆塗りするだけでもきれいなアルミ感が出るのかもしれません。雪のアラスカ地方で墜落しても目立つように翼を派手なオレンジ色で塗装した機体も見かけますが、今回は割と地味なシルバーと黒の機体です。朝鮮戦争で活躍したF-80と並べました。F-89の機体の大きさが分かります。ヒトは付いてなかったのでハセガワのアメリカ空軍乗員セットから流用しました。

1人乗りのF-80と比べると大型の機体であると分る。

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世界貿易システムの再構築(ボラティリティ・リスクに弄ばれる世界)

2025-04-11 15:12:41 | 社会

I.  日本は既に貿易赤字国(モノツクリ大国ではない)

 

トランプ関税を負けてもらう事で全てがうまく行くと言わんばかりの報道が続いています。自動車や関連産業、輸出食料品に至るまで、対米輸出は黒字かも知れませんが、経産省の資料(下図)からも明らかな様に日本は対外資産の運用などを含む経常収支は黒字ですが、モノの輸出入による貿易収支は赤字であり、サービス収支に至っては大きく赤字の状態です。日本の円安は、一時所得収支(資産運用)がドルのまま運用され、貿易・サービス赤字で円の需要が少ないせいであることは明らかです。対米関税の事だけ騒いで報道すれば日本の問題は解決するでしょうか?

日本の経常収支黒字を支えているのは対外資産運用であって貿易収支は2010年以降兆円単位の赤字が常態化している。

確かに世界はトランプ政権が打ち出した貿易関税に翻弄されて、株価が乱高下しています。日本の経済専門家と称する人達の解説も、「経済を混乱させる」とトランプを批判するばかりで高額同時関税の本当の狙いや効果的な対応策についての解説はありません。元々理解する能力がないのか、解っていてもできないのか経済が不得意の私には解りませんが、この経済政策が外交軍事政策とリンクしたトランプの米国政策の一環である事位は理解できます。

 

II.  世界貿易システムの再構築(論文)

 

トランプの経済政策が政権の経済顧問スティーブン・ミラー(Steve Miran)の2024年11月に発表された「世界貿易システムの再構築」に沿っている事は知っている人は知っているのでしょうが、日本のメディアでは読売新聞で少し触れる程度で「トランプの気まぐれで行っている」などという解説が主体です。これでは奇抜な関税政策に翻弄されるだけです。今日になって、対抗関税をかけない方針の国には実施が90日延期という方針が急遽発表されました。
この経済政策の要点は、米国を多極主義の一つの極にするというMAGA政策の一環として、グローバリズムの中心として拡大しすぎた信用経済の基軸通過としての米ドルの強制的切り下げを目論むものです。グローバル経済の下で、準備通貨として米国が慢性的貿易赤字にも関わらずドルを刷りまくって、それをグローバリズムの中心を担う一部の投資家だけが回収し、世界の富が偏在して行くしくみを変え、鉱工業などの実体経済でも米国が儲かる様に変える方向性と思います。4月7日にホワイトハウスはミラー(Steve Miran)のハドソン研究所における発言を公表しましたが、トランプの言動に実際の経済状態とは関係なく株価が乱高下するのはボラティリティ・リスク(金融経済リスク)によるものであり、大きくなりすぎた信用経済を支配するグローバリストが大損をして、多極主義になっても米国が生き残れる経済システムを作るというのが目的なのだと思われます。

メディアの経済解説はその方向性で日本が生き残れる方策を考えてゆくべきなのですが、まったくそのような解説が見られません。少なくとも大手メディアで「関税と通貨の為替レートの関連付け、非関税障壁などを包括して論じている経済解説がない」事が解説のレベルの低さを表していると言えるでしょう。今回備忘録と今後の展開の指標として2024年11月に発表された「世界貿易システムの再構築」ユーザーズガイドと記された冊子の要点(rakitarou意訳含む)簡約を以下に記します。後からコメントする様に素人目にも強引(矛盾)と感ずる所もありますが、参考になると思うので以下に記します。

〇 世界貿易システムの再構築(Steve Miran

要 約

「世界貿易システムを改革し、アメリカの産業を世界の他の地域に対してより公正な立場に置くという願望」は、何十年にもわたってトランプ大統領にとって一貫したテーマでした。経済の不均衡の根源は、国際貿易のバランスを妨げる持続的なドルの過大評価にあ、この過大評価は、ドルが国際準備資産としての需要によって引き起こされています。世界のGDPが成長するにつれて、米国内の製造業と貿易可能な産業が「ドルの過大評価」によって適正なコストによる貿易ができなくなり、また準備資産としての需要と同盟国への安全保障や拡大抑止の提供に資金を提供することでますます負担が大きくなります。

この論文では、これらのシステムを再形成するために利用可能なツールのいくつか、それらのツールの使用に伴うトレードオフ、および副作用を最小限に抑えるための政策オプションを示します。

関税は歳入を提供し、通貨調整によって相殺された場合、トランプによる2018年から2019年の経験と一致して、インフレまたはその他の悪影響を最小限に抑えます通貨相殺は貿易の流れの調整を阻害する可能性がある一方で、関税は最終的に関税を課せられた国によって賄われ、その実質購買力と富は減少し、その歳入は準備資産供給の負担分担を改善します。関税は、国家安全保障上の懸念と深く絡み合った形で実施される可能性が高く、ここでは様々な実施計画とその影響について議論しています。他国の通貨の過小評価を是正することを目的とした通貨政策は、まったく異なる一連のトレードオフと潜在的な影響をもたらします。歴史的に、米国は通貨調整に対して多国間アプローチ(プラザ合意とか)を追求してきました。多くのアナリストは、通貨の誤評価に一方的に対処するための手段はないと考えていますが、それは真実ではありません。(関税は通貨切り上げ、切り下げの作用を持つのです)この論文では、多国間および一方的な通貨調整戦略のためのいくつかの潜在的な手段、および望ましくない副作用を軽減する手段について説明します。

 

第一章 トランプの通貨政策と関税

 

グローバリズムの原則では、政府は国際貿易システムを変えることはできず、その手段もないとされてきましたが、ウォール街や学術的な言説とは対照的に、交易条件、通貨価値、国際経済関係の構造に影響を与えるために政権が使用できる強力なツールがあります。トランプ大統領は選挙戦で、中国に対する関税を60%、その他の国々に対する関税を10%以上に引き上げることを提案し、国家安全保障と国際貿易を絡め合わせました。輸入関税は国内にインフレを招き、経済や市場の大きな金融リスクを引き起こす可能性があると多くの人が主張していますが、必ずしもそうではありません。実際、2018年から2019年にかけての中国などへの関税は、実効税率の大幅な引き上げであったにもかかわらず、マクロ経済にはほとんど目立った影響を伴いませんでした。ドルは実効関税率とほぼ同じ量だけ上昇し、マクロ経済への影響の大部分を無効にし、その結果、かなりの歳入が得られました。中国の消費者の購買力が通貨安とともに低下したため、中国は事実上、関税収入を支払った結果になりました。

貿易の観点から見ると、ドルは絶えず過大評価されていますが、これは主にドル資産が世界の準備通貨として機能しているためです。この過大評価は、アメリカの製造業に重くのしかかり、経済の金融化されたセクターに利益をもたらし、裕福なアメリカ人にのみ利益をもたらしています。

 

第二章 ドルの過大評価の弊害

 

資本主義が世界唯一の経済システムになり、歴史が終わったと言われてドルがグローバル経済の中心、国際貿易の準備通貨になって強力な通貨になった副作用として、米国の製造業は競争力を失い多くの勤労者家族は自活できなくなり、政府の配布物やオピオイド中毒になったり、より繁栄した場所に引っ越したりします。政府がインフラを整備しなくなるとインフラは衰退し、住宅や工場は放棄された。コミュニティは「荒廃」しています。中国が経済力、国際競争力を高め、ロシアとともに安全保障上の脅威ともなるにつれて、経済アナリストは経済と国家安全保障を連携して考える事をせず、国家資本主義の台頭によるサプライチェーンの不安定化などに対しては、単にグローバリズムを強化することだけに注力してきました。

通貨市場が貿易の不均衡にも関わらず是正されないのは、モノの交易と金融の交易の二つが相互に影響し、特に後者は大量の貯蓄プールや国債の需要に使われるためにモノの交易の多寡による是正が効かないシステムになってしまっていると言えます。これはベルギーの経済学者ロバート・トリフィンにちなんで「トリフィン効果」と名付けられています。IMFによると、世界の外貨準備高は約12兆ドルで、そのうち約60%がドルで割り当てられており、実際には、準公的機関や非公式機関も準備目的でドル資産を保有しているため、ドルの準備金保有ははるかに多いものです。準備資産の安定性から、不況時にはドルが買われて上昇し、他の通貨は景気後退により下落するのが一般的です。これがドルの過大評価にもつながります。

アメリカは、軍事力の代わりに金融力を用いて、外交政策や安全保障政策においてその意志を発揮することができました。アメリカは、資産の凍結から、SWIFTからの国家の切り離し、グローバルビジネスを行うあらゆる外国銀行にとって重要な米国の銀行・金融システムへのアクセス制限まで、敵を弱体化させる外交政策の目的を達成するために、一人の兵士も動員することなく、その財政力を行使してきました。このドルの強みが、友好各国への安全保障を提供するトレードオフとして、公正なドルの評価を妨げて来た事も確かで、友好国は米国産業の犠牲にタダノリして自国の産業を育成して貿易黒字を重ねて来た歴史もあります。しかし米国のGDPと軍事力が相対的に縮小するにつれて、このトレードオフを続けることが困難になってきていることも強調するべきです。

 

グローバルシステムの再構築

トランプ政権による関税政策も通貨政策も、アメリカの製造業の競争力を向上させることを目的としており、その結果、アメリカの工業工場を増やし、世界の他の国々からの総需要と雇用をアメリカ本土に割り当てることを目的としている。これらの政策は、高付加価値製造業におけるアメリカの優位性を維持し、さらなるオフショアリングを遅らせ、防止し、他国から市場をアメリカの輸出に開放したり、アメリカの知的財産権を保護したりする協定を他国から調達するための交渉レバレッジを高める可能性がある。さらに、トランプ陣営の多くが貿易政策と国家安全保障は密接に絡み合っていると見なしているため、多くの介入は、安全保障にとって重要な産業プラントに向けられるだろう。国家安全保障は、例えば半導体や医薬品などの製品を含むように、ますます広く考えられていくでしょう。

ドルが米国の製造業に重くのしかかっているにもかかわらず、トランプ大統領は、世界の準備通貨としての地位に価値を置くことを強調し、ドルから離れる国を罰すると脅している。私は、この緊張関係は、ドルの地位を維持しながら、貿易相手国との負担分担を改善することを目指す政策によって解決されることを期待しています国際貿易政策は、我が国の予備費が貿易相手国にもたらす利益の一部を取り戻し、この経済的負担分担を防衛負担分担と結びつけようとするものです。トリフィン効果は製造業に重くのしかかっているが、システムを破壊することなく、システム内でのアメリカの立場を改善しようとする試みはあるだろう。

 

第三章 関税と為替

 

今迄の経験では、関税は為替レートの変動と相殺しています。為替レートへの影響は時間がかかりますが、国際貿易がどの通貨で行われるかによって影響が変わってくるものです。だから必ずしも関税と為替が相殺するという法則は成り立ちませんが、トランプがドルの基軸通貨性の持続を強調するのはこの理屈によるものです。

マクロ経済データは通貨オフセット理論と一致しているように見えますが、商品レベルのミクロデータを研究している学者は、この経験に対してより厳しい見方をしています。例えば、Cavallo, Gopinath, Neiman and Jang (2021)は、小売業者が輸入した商品の詳細なミクロデータを調査し、ドルの輸入価格が関税の額だけ上昇し、ドルの上昇が関税を相殺するのにほとんど役立たないことを発見しました。Cavalloによると関税は小売価格に転嫁できなかっただけで、輸入業者のマージンを圧迫したから消費者物価指数に反映されなかったと主張している。為替市場が調整すれば、関税は消費者物価に0%から0.6%のインフレ効果をもたらす可能性があります。近年のインフレ率の不安定性を考えると、1%程度のインフレはほとんど大きな問題ではありません。明らかに、2018年から2019年の経験は、一般的な価格レベルでは知覚できないほどわずかだったと言えます。さらに、米国内の税制改革、規制緩和、エネルギーの豊富さの全体像は、初期のインフレ衝動を抑えるディスインフレの推進力として機能する可能性があります。

減税による景気押上げ

第一次トランプ政権では、法人税、所得税をOECDで2番目の高水準から20%まで引き下げた結果、国内投資が20%増加しました。低税率の維持は、アメリカで投資と雇用を生み出す手段であり、外国からの輸入品に対する関税によって部分的に資金を調達すれば、さらに良いことである。 この議論は、所得税率にも当てはまります。労働供給が完全に弾力的でない限り、所得税は労働者が受け取る税引き後賃金を減らし、企業は税金の一部をより高い賃金で相殺することを要求します。

 

第四章 外交的通貨政策

多国間通貨アプローチ

歴史的に、多国間通貨協定は、ドルの価値を意図的に変更するための主要な手段でした。1985年のプラザ合意では、米国、フランス、ドイツ、日本、英国が協調してドル安を抑制し、1987年のルーブル合意ではドル安を食い止めたが、一般的には通貨水準の調整に成功したアプローチと見なされている(ただし、その経済的影響については議論の余地がある)。 外国為替でのドルの価値は、貿易相手国の通貨に影響を与える力にも依存するため、ドルの価値を変更するという目標に関するパートナーとの調整は非常に役立ちます。今日、他の2つの主要通貨はユーロと人民元ですが、円も輸入されています。しかし中国は米国と協調して通過調整を行うとは考えられず、多国間アプローチが有効な手段となることは困難でしょう。

単一通貨アプローチ

ウォール街のコンセンサスは、トランプ政権が過小評価されている通貨を強化するために取ることができる一方的なアプローチはないということです。これらのエコノミストは、連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利をドルの主な推進力として指摘し、大統領が通貨の結果を達成したいからといってFRBが金利を引き下げるわけではないと強調する傾向があります。

 

第5章 市場と金融資産変動(ボラティリティ)に関する考慮事項

 

今回のトランプ政権は3期目がないため、レガシーとして米国の再工業化、製造業の活性化、国際競争力の向上という彼の主要な目標に全力を注ぐでしょう。金融資産の変動リスクは重大ですが、その安定化には注意を払うでしょう。一つは多国間通過アプローチで、貿易相手国に、過小評価されている通貨を強化するための多国間アプローチに同意させることで、望ましくないボラティリティを抑えることができます。取引パートナーが保有する準備金を超長期のUST証券に限定する契約により、a)財務省への資金調達圧力を軽減し、財務省が市場に売却するために必要な期間を短縮します。b)予算が時間の経過とともに悪化するにつれて、より高いレートで繰り越す必要のある債務の額を減らすことにより、債務の持続可能性を改善する。c)防衛傘と予備資産の提供が絡み合っていることを確固たるものにする。この不測の事態では、センチュリー債ではなく永久債を売るという議論さえあるかもしれません。

ただし、米国のパートナー国や同盟国のほとんどは、単なる米国の経済植民地に過ぎません。アメリカの植民地帝国は、G7(ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、日本、カナダ、アメリカ)、EU、韓国、オセアニアを構成する国々を指します。私たちはこの世界を「Collective West(集合的西側)」と呼んでいます。しかし、私の考えでは、フランスはやや例外です。1960年代にドゴールが独自の核戦略を持った事が大きいでしょう。

問題は、アメリカだけでなくその植民地も巨額の債務を抱えて国家財政は破産しており、危険な状態であることです。かつては、債務残高がGDPの60%を超えてはならないという確固たる見解があり、これは EUの債務収束基準にも当てはまります。しかし 今日、事実が悲惨な状況を示しているため、これらのルールは意図的に無視されているようです。

西側を含む世界の政府が抱える負債は回復不能なほど巨額になりつつある。この負債は一般市民には還元されず、最終的にグローバリストの一部富豪に全て吸収されるしくみになっている。日本の負債はGDPの200%以上(黄色)で世界でもダントツあるが、本当に財務省解体して積極財政などして良いのか?グローバリストが喜ぶだけではないか? 

米国の負債増加率も近年(バイデン政権)急上昇していて第二次大戦終了時を超えている。

一方的な通貨アプローチ(一国通過アプローチ)は、より大きな信用通貨変動リスクをもたらしますが、行動の柔軟性は高まります。もしFRBが外国資産を買うためのドルを創り出せば、その貨幣創造を不胎化しようとするかもしれず、 おそらく、前期利回りは上昇し、後退利回りは低下し、イールドカーブはより平坦化するだろう。FRBの金利変動の調整は有効だが種々の結果をもたらしえるものです。

 

第6章 結 論

 

政権はウォール街のコンセンサスとは異なり、ドルと為替へ影響を与えることが出来る。トランプ大統領は、関税が貿易相手国から交渉上のレバレッジと歳入を成功裏に引き出す手段であることを示したため、通貨ツールよりも先に関税が使用される可能性が非常に高い。関税は米ドルにとってプラスであるため、投資家は国際貿易システムの改革の順序を理解することが重要になります。ドルは、反転する前に上昇する可能性が高いです。

 

(論文引用終了)

 

〇 感 想

多極化を推し進めている一方で、今までのグローバル一極状態の恩恵(基軸通貨の維持)は持ち続けようとしているのは虫が良い。確かに直ぐに通過バスケットやドルに代わる通貨(BRICS通貨)が出現することはないが、ビットコインなどの仮想通貨や中央銀行が支えるデジタル通貨の実用化もまだ時間がかかる。今回限りの4年間の過渡期をトランプ特有のディールと強気の交渉で乗り切ることが出来るかは未知数なところがあり、中国やBRICSの協力がどうしても必要になるだろう。その意味で新たに台湾有事とかイラン中東戦争をしている場合ではないと考えられる。

エコノミスト誌が示す様にトランプ、プーチン、習近平によるニューワールドオーダーが必要かも知れません。

 

追記:2025年4月12日

 

昨日トランプ関税の重要なファクターは、ブログの題に示した様に、論文の第五章にまとめられたボラティリティ・リスクにあることを強調しましたが、副島隆彦氏の解説 (重たい掲示板3181)で、相互関税を先延ばしした理由は米国債が売られて値が下がった事と、その売却は日本の農林中金が引き金になった事が示されました。論文の第五章の要約は論文そのものの他にホワイトハウスが発表したSteve Miran氏のコメントで触れられていた西側諸国(米国植民地)の負債についてrakitarouが追加したのですが、正に米国の負債超過で国債の暴落に耐えられない事が背景にあることが解説されました。政府以外にも米国債を多く持っている金融機関やファンドは多数あるでしょうが、今後米国債が大きく値を下げる事になるといよいよ論文にあった「一国通過アプローチ」では立ち行かなくなる可能性が出て来たと言えます。

日々変化する情勢を的確に解説する専門家と大手メディアが渇望されます。

 

追記:2025年4月16日

4月15日の東京新聞「こちら特報部」でやっとSteve Miranの論文が紹介されて、トランプの狙いがドル安誘導、新たなプラザ合意(マールアラゴ合意)狙いであることが示されました。もう一歩踏み込んで米国政府の負債が国債の暴落に耐えられない、ボラティリティ・リスクが大きくなりすぎている状態、これから多極化へ向かう事、ウクライナ戦争を継続させている場合ではないことなど踏み込んで解説すれば東京新聞の面目躍如でしたが惜しい所です。

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メディアは歌舞伎か規範か

2025-04-04 10:32:14 | 社会

2025年4月始めのメディアはフジテレビ問題で一色でしたが、女子アナを喜び組として扱ったフジテレビは1980年代に「楽しくなければテレビじゃない。」と公言し、社会はフジテレビを時代のエリート、寵児として持ち上げていました。言わば「かぶく=はみ出し者、ならず者」としてエンターテインメントを重視することを社是として掲げていた訳で、「女子アナ≒知的アイドル」という立ち位置を社会も100%受け入れていた事は誰も否定できません。

 

I. メディアは歌舞伎か規範か

 

この二者択一の問いに答えはなく、どちらの要素も含むが答えでしょう。規範的な部分が強いNHKでも「演芸」「ライフ(コント番組)」「バラエティ」と銘打った上でおふざけ番組は放映しています。民放も「ニュース」と銘打った番組は内容の正確さはともかく「規範」に従う報道番組として流しています。しかし一番悪質なのは民法における「規範を装った歌舞伎番組」つまり朝、昼、晩に長時間ただ流される「(ニュース的)ワイドショー」番組です。これらの内容は硬軟取り混ぜた時事問題(ニュース)であり、規範を装ったコメンテーターが「正しい?解説」を繰り出しながら世論を作り出す様な仕組みになっています。製作側はニュース素材を扱うので費用が掛からず、尺もつぶせ、もっともらしい内容を確保でき、視聴者側も「にぎやかし」「時間確認」的にテレビを付けて興味がある内容なら見るというものです。

「これはバラエディであって規範的な内容ではありません」と断って放送するならまだ良心的ですが、そのような番組は一つとしてなく、コロナ関連、ウクライナ関連、国内政治もMCやコメンテーターが視聴者を教え導くが如くに放送されているのが実態でしょう。特に正体が不明であった新型コロナ感染症は、一般の人はマスメディアでまず情報を得る以外、医療や公衆衛生対応について知る方法はなかったのですからほぼマスメディアが報じた事が全て(真実)と受け取られざるを得ない状況でした。これはネットに押されて衰退気味のマスメディアにとって、民衆の需要性を取り返す「干天の慈雨」だったことでしょう。結果は日本を含む世界中の経済体系のグレートリセットに有効に働いて、数々の弊害や齟齬が生まれた事は明らかです。そしてその総括はタレントの乱交問題には行われても、コロナに対しては一切行われる気配もありません。

 

II. 現実を操るマスメディア

 

稲増一憲 著「マスメディアとは何か」(影響力の正体)中公新書2706(2022年刊)は、マスメディア論の専門家として実際の影響力は限られているという種々の実験結果などを紹介しながら、マスメディアの持つ根本問題を鋭く分析、指摘しています。全体的にはメディア肯定論的なのですが、専門家として各種実験的研究の成果を紹介しながら客観性を持って説明していると言えます。

その第4章「マスメディアは現実を操れるか」という章において、メディアの影響力が何故生ずるかについて解説した一文があるので引用します。

(引用開始)

 人間が直接経験することのできる範囲は限られている。そのため、マスメディアを通じて間接的に経験した内容が現実認識の大きな部分を形作ることとなる。ここで、マスメディアが世の中のすべての出来事を伝える事は不可能であるため、伝える情報と伝えない情報を選別するゲートキーピングの役割を担う。従って、マスメディアが構成する環境は現実そのものとは異ならざるを得ない。人々の現実認識は、このマスメディアによって構成された現実の影響を受けているため、現実そのものとは異なる疑似環境と呼びうるものである。

(引用終了)

 

稲増氏は、このメディアの選択によって、本来的に議論されるべき「第一レベルの議題設定」(争点型議題設定)が、メディアの選別(フレーミング)後に残った「第二レベルの議題設定」に落とし込まれてしまう、と注意喚起します。新型コロナ感染症で言えば、本来議論するべき「新型コロナはロックダウンして完全予防が必要か、必要に応じた医療で集団免疫を得る対応でよいか」と言った議題設定は敢えて争点にせず、「3密を防ぐ方法を徹底させるには」が議題に選ばれて議論されるといった事に当てはまります。

 

III. 培養理論とマスメディアの共振性

 

メディアの描出する世界が現実そのものでなくとも、各メディアが異なる視点から様々な報道をすればバランスの取れた内容になる。しかし現実には、特に日本のマスメディアはどれもほぼ同じ視点、同じ内容である。稲増氏は世論研究者のノエル・ノイマンが提唱する「マスメディアの共振性」という理論で説明する。一つの原因は「有力メディア」の存在、そして重要なニュースを一社のみ報じない「特落ち」を避ける横並び意識がどのメディアも同じ内容に偏向する状況を産み、それらが重なる事によって「共振性」「主流形成(培養理論)」となって世論を作り出す作用があると説明します。

日本はNHKを含むどのメディアも、海外ニュースはNYタイムスや英国BBCをまず第一に引用しますが、USAIDがBBCに本部を置くTrusted News Initiativeを資金援助し、このメディアスクラムにはロイター、フィナンシャルタイムズ、日本のNHKも参加していたことがTNIのホームページに記されています。メディアの共振性と培養理論を利用して世論形成を作り、「メディアの作る仮想現実」が培養理論によって「現実そのものに影響を与える」しくみが浮き彫りにされたと言えるでしょう。

IV. ネットとエコーチェンバー、アルゴリズム

 

インターネットの普及によって、テレビや新聞などのメディアが視聴される機会が減り、ネットでは自分の好みや主張に合う内容が多く選択され、またプロバイダーもBig dataを駆使してユーザーの嗜好に合わせた検索結果やCMが流れる様なアルゴリズムを駆使していると言われます。結果的にユーザーは自分の嗜好に合ったコンテンツばかりを視聴するようになり、一層世論の分化が進む、所謂エコーチェンバー現象が起こり、政治的主張なども分断化が促進されると言う批判が絶えません。

稲増氏は同著の第五章「マスメディアとしてのインターネット」という章で、グーグルやヤフーなどのポータルサイトが行うアルゴリズムに基づくパーソナリゼーションも必ずしも偏った情報のみを目にする結果にはならない、という米国の研究結果を示している。ポータルサイトが掲示する政治ニュースは、アルゴリズムに係わらずユーザーに同一の内容が上段のいくつかは示される規定になっていて、目にする情報自体は完全にパーソナライズされていないと言う。むしろ目にするユーザーの方が政治に興味があるか、娯楽に興味があるかによって目にする情報の消化に違いが生じている結果が示されているという。但し、引用されている2015年のBakshyらの研究では、米国で5万人のユーザーが23億件の情報閲覧を集計した結果で、保守系(共和党系)とリベラル(民主党系)の支持別の統計において、イデオロギーが異なる記事に接する割合は保守系の方が多い傾向が出ていました。それはメディア自体が提示する報道の量に保守系、リベラル系で均一でない事が基本としてあるためと思われます。

カナダ人ニュースのヤマタツ氏、2025年4月2日の動画において、リベラル系を主に報道する大手メディアは、保守系がネットを重視することに危機感を強めていて、SNSを標的にした言論統制は圧倒的にリベラル派が保守に対して行う傾向にあると報告しています。

 

V. SNSに対する組織的検閲は主に保守系をターゲットにしている

 

以下は上記ヤマタツ氏の動画からの引用になります。Media Mattersの調べによると、SNSにおいて100万以上のフォロワーがあるサイトの共和党寄り(赤)と民主党寄り(青)の数を比較すると、圧倒的に保守・共和党寄りのサイトに人気があることが解ります。それはYou tubeなどの動画も同じで再生回数は保守系の内容が圧倒的です。

100万以上のフォロワーを持つサイトや動画のビューは圧倒的に保守派コンテンツが多いというMedia mattersの調査結果

一方Gallopの調査でマスメディアへの信用度は保守系の人ほど低く、2024年には12%まで落ちているのに対して、リベラル系は24年においても50%が信用しているとされ、マスメディア自体がリベラル系に偏向している事が示されています。この結果を見るとSNSの検閲をリベラル側が強く求める理由が明らかであると解ります。

共和党(赤)と民主党(青)支持者のメディア信頼度(黒は独立系)

日本における2023年の総務省の統計では、米国よりもすべての年代でマスメディアへの信頼が未だに高い事が示されています。これを幸いと見るか、残念と見るかはオルタナティブメディアの情報に信頼性を置くか否かで分かれると思いますが、日本で検閲が進むと米国以上に情報の偏りが徹底してしまう事が危惧される結果と言えるでしょう。

雑誌の信頼度が低いのは言論誌の数や部数が少ない事、全年齢層で政治への関心が低い事にも原因がありそう。

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フェンタニルクライシス

2025-03-29 10:34:57 | 医療

トランプ政権が繰り出す関税処置に各国は戦々恐々としています。政権発足直後から隣国のメキシコ、カナダに対して関税をかけるとした大きな理由は両国から流入する違法薬剤の蔓延を問題視したことでした。以前はモルヒネ、大麻(マリファナ)、コカイン、覚せい剤などが米国における緊急事態であり、2015年時点で全米で4万人が麻薬の過量摂取で死亡しており、第一次トランプ政権においても「公衆衛生上の非常事態」を宣言しました。rakitarouもマリファナ、ヘロイン、コカイン、覚せい剤については、2012年に日本の人気タレントが逮捕された事をきっかけに纏めをブログにし、瞬間的にアクセス数1位になったこともあります。

トランプ政権にとって国家安全上の最大の脅威は違法薬物と報じるNPR

2025年現在、米国の違法薬剤問題のトップはフェンタニルであり、それらの原材料が中国産で、メキシコなど隣国で製剤化されて持ち込まれる事が問題になっています。フェンタニルは日本でも日常的に医療現場で使用される鎮痛剤で、手術や癌の疼痛緩和に用いています。フェンタニルも製剤化された純粋な形(フェンタニルクエン酸塩)で正しく用いている分には安全な薬剤ですが、問題は様々な合成フェンタニルが従来のフェンタニルの数倍から100倍の効果を持つようになり、それらが不正に製剤化されて市場に出回るようになった事です。

我々医師は癌の疼痛緩和のために、MSコンチン(モルヒネ)や半合成誘導体であるオキシコドン製剤をせいぜい10mg、多くても30mg程度を使用します。強い痛みのために痛みを緩和するモルヒネ様物質が脳内に不足している場合は、これらモルヒネ製剤を外から与えても中毒(欠乏症状)になることはありません。必要としていない時に多幸感を得るためにこれらを使うと切れた時に欠乏症状が出るのです。

フェンタニルはモルヒネの80~100倍の鎮痛作用があり、使用量は0.1mg単位になります。薬剤の調合をした経験があるヒトならば、精密秤を用いても10mg程度は結晶状の薬剤を分取できても0.1mgレベルの分取は不可能であることは理解できるでしょう。0.1mgを使用する場合は、可溶性であれば100倍の10mgを100mlの純水に溶解して1ml使用する形にします。

合成麻薬であるフェンタニルの融合体 左下のカルフェンタニルはモルヒネの1~10万倍強い

フェンタニルは1960年にポール・ヤンセンによって初めて合成され、クエン酸塩として使用されるようになりました。フェンタニルは、作用発現が速く、作用持続時間が短い強力なμオピオイド受容体作動薬であり、中等度から重度の慢性疼痛の治療に強力な合成オピオイド鎮痛剤として使用されています。1990年代に鎮痛用のパッチ剤が普及してフェンタニルは医療現場から市中に出回るようになります。1988年にはチャイナ・ホワイトと言われるフェンタニルの4倍の効果があるメチルフェンタニルが出回ります。2010年代にはヘロインの効果を強くするためにフェンタニルを混入した薬剤が出回り、過剰摂取による死亡例が増加します。そして2016年に何とモルヒネの1万倍から10万倍の効果がある(従来のフェンタニルの100倍)カルフェンタニルが合成される様になり、一粒飲んだだけで麻薬過量投与で頓死する若者の死亡が一機に増加します。

米国の人気TVドラマFBIのシーズン5、エピソード22では、良家の子女が遊び半分で仲間に渡された合成麻薬(カルフェンタニル)を1錠、笑いながら「冒険ね」と言って飲んでそのまま10名近く全員が森で死亡して見つかるという事件が描かれています。米国におけるフェンタニル・クライシスが日常的問題であることが解ります。

TVドラマFBIの1シーン 薬剤一粒でそのまま頓死する若者

今月発表された報告書によると、フェンタニルは米国で密輸される薬物の中で最も致死率の高い薬物の一つであり、この薬物を密輸する麻薬カルテルが合成オピオイドによる国内の5万2000人以上の死の原因の一つ(93%)と結論づけています。さらに、メキシコを拠点とするシナロア・カルテルなどの国際犯罪組織が違法薬物の主な生産者および供給者である一方、フェンタニルや錠剤圧縮装置を製造するための化学物質の主な供給国は依然として中国であり、インドがそれに続いていると指摘しています。トランプ政権は、2023年だけで違法オピオイド(主にフェンタニル)のコストが推定2.7兆ドルに達し、そのうち約1.1兆ドルが死亡に、2,770億ドルが医療費などのコストに起因していると概説しています。

2025年3月に公表された国家情報局による脅威の最初に違法薬剤が示された。

日本はやたらと自動車にかかる関税を問題視していますが、米国社会にとっての大きな問題はこちらであって、日本の自動車など大した問題ではない事をメディアはもっと強調するべきです。

日本は幸い薬物犯罪が大きな社会問題になる状態ではありませんが、海外からこれらの違法製剤が流入したり、若い人は海外旅行などで冒険心から一粒麻薬を試してみるといった事はおこり得ます。以前であれば大きな問題にならず、「良い経験」で終わった事も、「一粒で頓死」するカルフェンタニルが米国では日常的に出回っている事を肝に銘じて薬物には一切手を出さない覚悟が絶対に必要であることをメディアは強調するべきです。視点の圧倒的に狭いメディア諸兄はトランプの政策を闇雲に批判するのではなく、トランプ氏の持つ正常な危機感にもっと注目するべきだと私は思います。

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高齢ドライバー事故と薬剤

2025-03-27 14:17:25 | 社会

高齢者の起こす自動車事故で子供たちや若い人が犠牲になることは非常に悲惨な事です。高齢者の自動車事故の特徴は高度な技術や注意が必要と思われない場所であり得ない様な事故が起きることです。これには高齢者特有の事情が原因にあることは間違いないのですが、日本では「高齢による注意散漫(ボケ含む)や運動能力の低下」ばかりに原因を求めがちです。

精神科医の和田秀樹氏は高齢者の事故原因は「高齢」ではなく「薬剤誘発性」の場合が多いと紙の爆弾誌(2025年2月号)で問題提起をしています。2019年の元通産省技官飯塚幸三氏(当時87歳)による池袋暴走致死事件では、本人が事故時点の事を「覚えていない」と言って「ふざけるな!」という反応が起きました。2025年3月の浜松の小学生の列に軽自動車が突っ込んだ事故でも78歳の農業を営むドライバーは「何故ぶつかったか分からない」と事故時点の記憶が曖昧である事を供述しています。

欧米では、高齢者が多くの意識や運動能力に影響する薬剤を使用していることは当然の事としてこれら薬剤の事故への影響を注意喚起する論文が数多く出され、薬剤使用時に運転を控える注意喚起が政府主導で多くなされています。

 

米国医学会雑誌(JAMA)2023年12月号に掲載された「高齢ドライバーの運転障害」という短報が良く整理されているので引用します。

(引用開始)

高齢ドライバーの運転障害 Rebecca Voelker

危険因子(赤)安全運転へのヒント(黄)安全運転支援の方策(青)信号で表現

高齢ドライバーは、加齢や健康状態により運転能力に影響を及ぼす場合があります。自動車事故の 90% 以上は人為的ミスが原因です。高齢者の場合、加齢による視力低下、認知機能低下、反応時間の遅れ、握力の低下などの変化により、車線を外れたり、速度制限を守らなかったり、交通標識を見落としたりするなど、一般的な運転ミスのリスクが高まります。

自動車事故で死亡するリスクは、若いドライバーに比べて、75~79歳のドライバーでは2.5倍、80歳以上のドライバーでは5倍高くなります。

 

〇 高齢者の運転能力に影響を及ぼす可能性のある病状

 

運転能力を低下させる可能性のある急性疾患には、発作、失神、低血圧、低血糖、不整脈などがあり、めまいや呼吸困難を引き起こす可能性があります。

運転能力を低下させる可能性のある慢性疾患には、認知症、パーキンソン病や過去の脳卒中など筋力や協調性に影響を与える神経疾患、運転中に居眠りするリスクを高める未治療の睡眠時無呼吸症などがあります。

 

〇 高齢者の運転能力を低下させる可能性のある薬

ベンゾジアゼピン(ハルシオン、レンドルミン、ベンザリンなど)、オピオイド(麻薬系鎮痛剤)、抗コリン薬(頻尿薬、アキネトンなどの抗パーキンソン薬)、特定の抗けいれん薬(リボトリール、マイスタンなど)や抗精神病薬(トランキライザー)など、眠気を引き起こしたり、思考力に影響を及ぼす薬は、自動車事故のリスクを高めます。高齢のドライバーが複数の鎮静薬を服用すると、運転リスクが高まります。

 

〇 高齢者の安全運転を支援する

安全運転に危険を及ぼす人物を特定する必要があります。高齢ドライバーと同乗する家族はその運転者が安全かどうか判断しえるでしょう。運転中の携帯電話での通話やテキストメッセージなどは厳禁です。鎮静剤の服用は避けてください。危険な薬についての情報は医師や薬剤師に教えてもらえます。白内障手術や睡眠時無呼吸に対する持続陽圧呼吸療法 (CPAP) など、潜在的に回復可能なリスク要因の治療も推奨されます。

 

〇 高齢ドライバーを評価するテスト

GPS連動の運転記録は運転者の運転技術を記録できます。作業療法の専門家が実施するパフォーマンスベースの路上テストは、高齢ドライバーが交通状況をどれだけうまく乗り越えられるかを評価し、運転免許を取り消す必要があるかどうかを判断するのに役立ちます。

 

〇 高齢ドライバーを支援する技術

一部の車には、自動運転、ブレーキ補助システムが付いており、事故の予防に役立ちます。一部の車には自動縦列駐車や緊急ブレーキが装備されており、悪天候や遮られた交通標識に関する警告も提供され、運転ミスを減らすこともできます。自動運転車は現在、米国のほとんどの地域では利用できませんが、将来的には高齢ドライバーにとって役立つ選択肢となるかもしれません。

詳細情報

(引用終了)

またBMC Geriatrics2022年にフランスから発表された「高齢者の運転障害を起こす薬剤使用状況」という論文では、65歳以上の1,783名の何等かの疾患治療を受けているドライバーを対象にした研究で、21%373名が運転障害を起こす可能性がある薬を使用しており、その中で多く使用されていたものは以下の通りでした。()内は日本における商品名

最も頻繁に服用されていた運転に影響しえる薬( PDI 薬)は、ゾルピデム(マイスリー) (11%; n  = 60)、ゾピクロン(アモバン) (8%; n  = 45)、ブロマゼパム(レキソタン) (8%; n  = 44)、トラマドール (トラマール)(7%; n  = 39)、プレガバリン(リリカ) (6%; n  = 31) であった。

 PDI薬を服用しているドライバーは、慢性疼痛(OR [95% CI] = 2.30 [1.54–3.46])、うつ病の病歴(4.28 [3.00–6.14])、多剤併用(少なくとも5種類の薬を服用、4.32 [2.97–6.41])の割合が高く、2型糖尿病(0.54 [0.37–0.79])およびAF(0.48 [0.32–0.71])の割合は低かった。逆に、日常生活動作スコアは低かった(0.34 [0.17–0.68])。

 

こういった薬剤は日常的に私(rakitarou)も処方したり、自分の患者さんが薬剤手帳などから使用していることが確認できる薬剤であり、使用者全員が事故を起こす訳ではありませんが、0.1%が何らかの事故につながる事象(ヒヤリハット)を起こすとしてもそれが100件集まれば必ず大きな事故につながる物と思います。

日本人は薬好きであり、国民皆保険であることからも薬剤への敷居は低い国民性です。先日私は運転免許の更新をしましたが、その際の講習でも薬剤の事は一切触れませんでした。メディア及び警察は高齢者の事故と薬剤の関係をもっと積極的に報じて注意喚起する必要があります。マイナンバーと免許の連携をするなら、折角健康保険証と連携させたのですから薬剤履歴との照らし合わせで処方時に薬局で注意喚起するパンフレットを配布できるようにするとか、免許確認時に危険薬剤との符合が確認できるシステムにする必要があると考えます。

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Hawker Typhoon Mk. IB Airfix 1/72

2025-03-24 17:39:27 | プラモデル

比較的新しい金型のAirfixホーカータイフンMkIBを作りました。ホーカータイフンは、1938年にホーカーハリケーンが量産体制が整ったのを受けて後継機を設計製作するよう英国空軍から依頼されて試作した2つのうち一つで、タイフンがネピア・サイバーエンジン、もう一方のホーカー・トーネードがロールスロイス・バルチャーエンジンを装備していました。これらは名機マーリンエンジンがV型12気筒液冷1,000-1,500馬力エンジンであったのに対して、2,200馬力H型24気筒液冷エンジンではあったものの安定性能が発揮できず、トーネードはエンジンと共に開発中止になりました。タイフンのエンジンも評判が悪く、タイフン自体も設計上の問題から離陸直後に空中分解するなど散々な出だしでした。とても高高度迎撃機として使用できない事が分かり、ハリケーンの後期型の様に対地攻撃機として活路を見出します。エンジンと尾翼の改善などで飛行性能は改善し、ドイツ空軍の戦闘機が品薄になった大戦中盤以降は対地攻撃機としてかなり活躍することになり、3,300機も生産されました。

Invasion stripeを付けたタイフンとグロスター製水滴風防のタイフンIB

ちなみにタイフンの改良型として開発されたテンペストは、タイフンが降下時に機首が下がる特性を改善するため薄型層流翼を採用したため、20mm機関砲の装備に翼上方に飛び出しが必要となり、翼内タンクを胴体内に移した事で安定性が減るなど散々な機体となり2,500馬力のセイバーエンジンを装備して800機が生産されたものの期待された活躍はなく終わりました。

モデルは安定のAirfix製で、昔のレベル製1/32タイフンは大きな1/72模型と揶揄されましたが、これは小さな1/48と言ってよい精緻な出来でした。グロスター製のタイフンは同じMkIBでも角形の自動車型ドアが付いたキャノピーではなく、水滴風防のスマートな型であり、左翼に着陸灯がついている写真が多いのですが、このモデルではついていませんでした。1944年121飛行連隊所属のノルマンディー上陸作戦用invasion stripeが付いた機体です。塗装は上面ダークシーグレーとダークグリーン、下面ライトグレーです。

ストライプもデカール化されているもののカルトグラフ製デカールは乾くとモールドと完全に一体化してモールドが浮き出るため、まるで塗装したような仕上がりになり素晴らしいです。機銃装填扉は開いた状態でも作成可能なので、左のみ開けた状態にしました。翼が厚い事が良くわかる作りです。昔作って余り保存が良くないレベル製?のテンペストVと並べてみました。テンペストの機銃部は翼が膨らんでいて薄型翼であることが分かりますが、全体の形は似ています。

カルトグラフ製デカールはモールドが浮き出る様にフィットする。

テンペストは翼が薄いが他はタイフンと似ている。機銃の基部が翼上面に丸く突出する。

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ディストピアを礼賛する地下鉄サリン30年目の東京新聞社説

2025-03-21 15:50:47 | 社会

地下鉄サリン事件30年目を迎えて、各新聞メディアらは事件を振り返る種々の特集を組み、多くの犠牲者を出した無差別テロ事件を風化させまいとする論説を張りました。その目的とするところは良いと思われるのですが、2025年3月20日東京新聞の社説『「陰謀論」に勝る理性こそ』には驚かされました。メディアやジャーナリズムが「権威を疑う事」「謙虚であること」という原則を失い、権力に阿り大衆を下に見て自らの権力を「報道の受け手」を従わせる道具にするという劣化が起こって久しいと痛感していたのですが、この社説は余りに痛い内容であり、メディア劣化の記録としても残しておく意義があると考えブログ題材としました。

 

〇 疑惑を陰謀論で片づけず、科学的思考と理性で判断する重要性

地下鉄サリン事件30年を記して、事件を知らない若い人にも理解しやすい様に「オウム真理教」や事件の概要を説明する事は良いと思います。そして信者を一般社会から隔絶した世界に閉じ込め、生活上必要な全ての金銭を供出させ、教祖の宗教的権威は詐欺的幻想と極限的環境を与える事で正常な判断ができない状態にするといった説明もその通りと思います。しかしここで大事なのは、当時一流大学の理系学生達の多くが教義に賛同して活動に参加したのは何故か、多くの疑惑がありながらメディアがある種スター性を持って教祖や幹部を紹介、報道したのは何故か、そして何故最終的にサリン散布による大量無差別テロという結論に結び付いたのかという論説であるはずです。

しかし社説が導く結論は驚くことに以下の様な内容でした。そのまま引用します。

 

(引用開始)

 

「予防」で有害性を知る

 

 横浜国立大学の村山太一助教らが約2万人を対象に行った調査では「ワクチンの有害性は隠されている」「在日外国人が政治家やメディアを操っている」「地球温暖化はデマである」という陰謀論を「正しい」と答えた人はそれら言説を知る人々のそれぞれ約15%、約9%、約8%を占めました。

 状況を複雑にしているのは、いったん信ずると正常な判断に戻ることが困難なことです。陰謀論を否定する証拠を示しても、改善がほとんど見られないそうです。

 村山さんは「効果的なのは『予防』」と説きます。陰謀論に触れる前にその有害性を知り、科学的な真実を学んでおくことです。

 SNSや読書の履歴などデジタルデータを解析して、陰謀論に陥りやすい条件を備えた人々を割り出し、いち早く注意喚起する手法も研究されています。

 陰謀論を信奉する人の特徴として、直感に頼る傾向や孤独感が指摘されています。思考停止に陥らずに熟慮する姿勢や、家族や友人ら信頼できる人々とのコミュニケーションも大切なのです。

 戦争や気候変動、少子化、財政難など将来の不安や閉塞感を打ち破ろうと、極端な主張によりどころを求める人がいるかもしれませんが、それが悲惨な結果を招くことは教団が証明しています。衆知を集め、理性的に解決する姿勢こそが陰謀論を打破できるのです。

 

(引用終了)

 

いちいちツッコミは入れませんが、余りの内容に脱力とため息しか出ません。ジョージ・オーウェルの「1984に描かれたディストピアこそが混乱のない統制された社会を築く基である」と2025年の新聞は堂々と社説で述べるようになったのです。一方的な言論のみを真実と洗脳され、異なる意見、異論反論に接することを社会から隔絶されることで予防的に禁じられた結果「オウム真理教の悲劇」が起こったと言いながら、権力側の一方的結論のみが正しく異論反論を陰謀論と一括りにしてそれに接しないためには予防的に抹消(バン)することが大事だという論説を展開するとは少しは恥ずかしいとは思わないのだろうかと思います。

これがどこぞの宗教関係のプロパガンダ新聞ならば「あり」でしょうが、読者から金を取って記事を書いている、しかも「東京新聞」なのですから畏れ入ります。

 

〇 疑う事を禁じたら既に科学(サイエンス)ではない

 

当ブログでは今まで何度もカール・ポパーの反証可能性について触れました。私の東京医科大学における最終講義でも科学は疑いを持つことから始まる事を学生達への置き土産として話すことから始めました。以下に学報雑誌に掲載された私の最終講義の冒頭部分を載せます。

 

(引用開始)

 

  1. 医学と医学教育の位置づけ

 最終講義を行う上で、医学と医学教育における大前提について話します。一つは、大学教育は高校までが「必ず答えの出る問題について学ぶ場」であるのに対して、大学は「必ずしも答えの出ない問題をいかに考えるか、という方法論を学ぶ場」である事です。だから普通は大学卒業にあたって独自性のある「卒業論文」を仕上げ、「方法論を学んだ証」とします。しかし現在の医学教育は「医療の均霑化」という国民の要求に答える必要もあって全国一律の教育目標の下、ある意味「専門学校化」して「未知への探求」を教育目標には上げていません。答えの出ない問題探求は大学院での医学研究で学ぶ事になりますが、国家試験では必ず答えが出る医学も実臨床の現場では必ずしも答えが一つとは限りません。

 もう一つの大前提は、「西洋医学は演繹法で答えを出す自然科学の一分野である」という事実です。オーストリア生まれの英国の哲学者、カール・ポパーは1934年「探求の論理」を著し「演繹法に基づいたパラダイムの構築には反証可能性(疑問を持って検証すること)が必須である」と提唱しました。つまり自然科学の成立には常に「仮定、論理展開(研究)、結論」という演繹法の各ステップに疑問を持ち続け、疑問には確実な検証で答える必要性を強調したのです(図)。そしてこの理論が自然科学の成立には必須の条件であると受け入れられて来ました。疑問の提示を「禁止する」事は科学においてはあってはならないのであり、あらゆる「当たり前」とされる事にも疑問を持ち続ける事が「科学の進歩」と「信頼性」には必須なのです。

(引用終了)

 

〇 専門家 ≠ 正しい政治決断

新型コロナワクチンの効果、安全性についての国会質疑で、「専門家による審議会」という権威で押し切る厚労省

政府各省庁が政策を進めるにあたり、その決定には必ず「専門家による審議会」で検討が行われます。科学技術の進歩により、物事を決定するにはその分野の知識が豊富な専門家による検討が必須であることは当然と思います。しかし専門家の役割は、当該問題事項について非専門家でも理解できるように物事の利点欠点などを解りやすく整理解説する事であり、最終的な決断は責任権者(政治家)が名前と顔を出し責任を明確にした上で行う必要があります。そして専門家は正しく解説はできるでしょうが、政治的決断が正しいという保証はありません。これは当然の事実ですが、「専門家の判断=正しい」がデフォルトとして刷り込まれているために、「専門家の判断に異議を言えない」「専門家の判断に責任は問えない」という形で「専門家による審議会」は政府役人にとって都合よく利用されているのが現実です。コロナワクチンに関する政府の答弁でも「専門家による審議会」という免罪符を多用してまるで専門家が常に正しい政治判断を下している前提で追求がかわされます。

 

〇 軍におけるジェネラル(将軍)の重要性

 

常に合理性が追求される軍事組織は、専門家と最終決断を下す権力者を明確に分けている事が手本となります。自衛隊や米軍では兵科といってそれぞれの士官、兵は軍内での自分の専門性を持って仕事をします。自衛隊では歩兵は普通科、砲兵は特科、戦車は機甲科であり、軍医は衛生科に属し、それぞれ軍服には専門科の徽章を付けます。徽章を見ればその軍人は何が専門かが解ります。例えば高射特科、偵察、需品、輸送、施設(土木工事)、法務など数多くあり、それぞれに軍の専門学校があります。これは旧軍でも同じで、私の父は一ツ橋在学中に学徒動員に取られたため陸軍主計少尉(今の会計科)でした。

この専門科は一佐(大佐)が最上級の位であり、将軍(ジェネラル)になると徽章を外して全ての科に精通(名前の通りジェネラル)する存在として最終決断を下す立場になります。勿論もともとの得意とする専門科はあるのですが、ジェネラルは幕僚会議などで一佐までの科ごとの専門家が示す状況解説を総合的に判断して軍の活動目標が達成できる決断を下すことになります。当然専門家と意見が異なる事は多々あります。ジェネラル(将軍)は「専門家がこう言ったから」という言い訳は一切しません。なぜなら軍の行動に対する決断は自分の責任で行っているからです。

私も師団司令部の医務官(幕僚)であった時、冬場の演習でインフルエンザの流行で部隊の無効率(病欠者による部隊の活動率)がどの程度であるかを日々師団長、幕僚長に報告し、人事(一部長)や後方支援(衛生を含む四部長)らと協議しながら防疫処置の必要性などを師団長に意見具申しました。

余談ですが、日本には制服自衛官の最高位である統合幕僚長(四つ星)は一人です。第二次大戦時、1,500万人の米軍を従える四つ星将軍は3名でした。しかし現在米軍(130万人)の四つ星将軍は44名もいます。多くの船頭が権力分散して自己主張すれば総合的な戦力は弱くなります。現在の米軍はウクライナ戦争で戦力が3倍に増加したロシア軍には勝てないと言われる所以です。

 

誰がどう言おうが決断は責任者(石破総理)が下さねばならない

決断を下すのは政治家(総理・大臣)なのですから、国会答弁において、「専門家による審議会」云々という言質は禁止すべきではないでしょうか。

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ウクライナ戦争の行方

2025-03-15 10:48:41 | 政治

この1か月ほどの間で3年間続いたウクライナ戦争の帰趨が変わりつつあります。時系列的にこれらの動きをまとめます。

〇 2025年2月14日ゼレンスキーは欧州安全保障会議がミュンヘンで開催される事に先立ち、謎のドローンをチェルノブイリ原発に突入させ、ロシアが核汚染の拡大と紛争継続を意図しているとアピール。

〇 2025年2月14日ヴァンス副大統領はウクライナに鉱物資源の50%を差し出す様投げかけたが、ゼレンスキーは拒否。米国のスコット・べセント財務長官もウクライナの鉱物資源採掘権が米国の防空支援の対価だと表明。

〇 一方ヴァンス副大統領はEUの真の敵はEU内部に存在する(グローバリスト・ネオコンの欧州ブランチといえる首脳達である)と意味深長な演説を行い、戦争継続に固執する首脳達を震え上がらせた。

 

〇 2025年2月18日米ロ代表がサウジアラビアのリヤドで戦争終結に向けての協議を開催した。アメリカ側はルビオ、ウィトコフ、マイク・ウォルツの3名で構成され、ロシア側はラブロフ、プーチンの外交政策担当補佐官ユーリ・ウシャコフ、キリル・ドミトリエフの4名で構成される。ロシアの国連代表、ワシリー・ネベンジャ氏は、ヘルソンとザボリージャなどロシアが占領した地域はウクライナから永久に失われると国連で発表。ロシアはクルスクと領土譲歩や土地交換について協議することはなく、ウクライナの非武装化は依然として絶対条件となるとした。結局この会談は交渉の準備段階に終わった。

〇 2025年2月26日プーチン大統領はウクライナのドンバスを含むロシアの希土類、鉱物資源の開発を米国と協力することを公の場で述べる。同時にウクライナへは降伏を勧告。

〇 2025年3月1日、ホワイトハウスを訪れたゼレンスキーはトランプ大統領、ヴァンス副大統領らと口論になり、事実上米国からたたき出され、鉱物資源提出と支援継続についての交渉は決裂した。

〇 2025年3月3日NATOとEU首脳は追い出されたゼレンスキーを励まし、「僕たちは仲間だ!」という掛け声のみの支援集会を開く。「英仏合同の平和維持軍派遣」がウクライナの安全を保証すると発表したが、実効性に乏しく説得力に欠ける。また何百億ドルもの援助を大々的に約束するが、イタリア、ポルトガル、スペイン、ハンガリーなど複数のEU加盟国が反対。

 

〇 2025年3月5日 米国はウクライナへの軍事援助、情報援助を停止と発表。ただしその他のファイブアイズへの情報提供は続けるため迂回された情報はウクライナへも届くと言われる。ウクライナ軍をLBSの「盲目状態」から救うため、フランス、ノルウェー、英国、ルーマニアのNATO専門家が戦闘に派遣。リトアニア、ルーマニア、ドイツ、トルコのNATO空軍基地のSIGINTステーションはフル稼働。ウクライナ国境沿いのフランスとイギリスのAWACS偵察機の活動も活発化。

一部の東欧反ロシア政治家はロシアと欧州を再度戦争に引き込みたいと願っている。英国王室はゼレンスキーを猿か何かと思っているようだ(相手が裸でも気にならないのは人間と思っていないから。貴族の考え方とはそういうものです。)

一方ドイツ国防省はウクライナへの物資供給は既に限界であると表明。

〇2025年3月6日欧州はウクライナへの効果的支援を米国に代わって行うEU内の協定の成立に失敗した。マクロンが提唱したフランスの核の傘という表現も架空のものになった。

 

〇2025年3月9日ロシア特殊部隊はクルスクのウクライナ軍占領地区にある停止されたガスパイプラインを通って占領地区のスジャを奇襲攻撃、パニックに陥ったウクライナ軍から都市をほぼ奪還した。クルスク侵攻で同部に残された外国傭兵を含むウクライナ軍数千名は孤立状態となった。

クルスク撤退を取引材料とするウクライナの最期のカードは消滅した。

 

〇2025年3月11日ウクライナはモスクワの住宅地を91機の無人ドローンで攻撃、他にも126機はクルスク地方の攻撃に使われた。停戦交渉と並行した軍事的に意味のないモスクワ市民への攻撃はウクライナにとってマイナスでしかないと思われます。

モスクワ市民への軍事的に意味のない攻撃に対して、ロシア軍はウクライナエネルギー施設を大量のミサイルで攻撃倍返し

 

〇2025年3月12日サウジアラビアのジッダで米国・ウクライナの高官協議が行われ、ロシアとの30日間の停戦で合意し、ロシアへ内容を伝える事が共同声明で明らかにされた。問題は8時間もかけて何が話し合われたか、ウクライナがロシアの主張をどこまで飲めるかだったと考えられます。

 

〇2025年3月14日プーチン大統領は米国提案に条件を付け、ウクライナの中立化、非ナチ化、併合した4州の安全を認める事で戦争終結に向けることができると表明。同氏はモスクワでベラルーシのルカシェンコ大統領と会談後に開いた記者会見で、「敵対行為の停止という提案に同意する」と表明。同時に「長期的な平和につながり、危機の根源的な要因を排除するものでなければならない」と述べた。

その上で、トランプ氏の戦争終結に向けた取り組みについて「この考え自体は正しく、われわれは明確に支持する」とし、「平和的手段によって紛争を終わらせるという考えを支持する」と述べた。ただ「協議する必要のある事項がある」とし、トランプ氏と電話会談を実施する可能性があると語った。

ボールは再び米国・ウクライナ側に戻ったと言えます。

今後2回目のやり直しトランプ・ゼレンスキー会談でプーチンの案を受け入れればそのまま和平が成立するでしょう。但し米国はウクライナ国内の鉱物資源などの採掘権50%を要求して、米国(企業)がウクライナに存在することがウクライナの安全保障であると言い張るでしょう。米国は前記の様にロシアとも鉱物資源の共同開発を進めており、梯子を外されたEU(グローバリスト欧州ブランチ)だけがロシアとの戦争モードで残されることになります。

追記 2025年3月22日

ロシアのプーチン大統領はトランプ政権が提案したウクライナとの停戦案は拒否し、トランプ氏の顔を立ててエネルギー施設などへの攻撃を一時停止する事は了解しました。しかし領土割譲やウクライナの非軍事化を含む今までのロシアの主張をウクライナが承諾して、西側がNATO領域(ポーランド以西)まで確実に引き上げない限り停戦に合意することはないでしょう。その理由をラリー・ジョンソン氏が纏めていたので備忘録として以下に転載します。

(引用開始)

ロシアが「恒久的な」停戦を受け入れない理由を理解する

2025年3月21日ラリー・C・ジョンソン

ドナルド・トランプは、ロシアを説得して停戦を受け入れさせ、ウクライナ戦争を一時的に停止させることに成功することはないだろう。なぜなら、ロシアはこれまで西側諸国が支援する停戦で何度も痛めつけられ、騙されてきたからだ。停戦を求める動きはパターン化している。つまり、ウクライナ軍はロシアが支援する部隊にやられ、降伏する代わりに停戦を嘆願するのだ。ロシアは2014年と2015年の2回停戦に同意したが、その後ウクライナに破られた。

それでは、2014 年 9 月からの歴史を振り返ってみましょう。

ウクライナは、主に軍事的、政治的、人道的要因の組み合わせにより、2014 年 9 月に停戦を求めた。その年の初めに始まったウクライナ東部の紛争は大幅​​に激化し、多数の死傷者、広範囲にわたる破壊、人道的危機を招いた。以下は、当時ウクライナが停戦を求めた主な理由である。

1.軍事的挫折と損失

  • 2014年9月までに、ウクライナ軍はドネツクとルハンスクでロシアの支援を受けた分離主義者に対抗する努力で大きな損失を被った。ロシア軍と装備の支援を受けた分離主義者は、 2014年8月下旬のイロヴァイスクの戦いを含むいくつかの重要な戦闘で優位に立っていた。この戦闘中、ウクライナ軍は包囲され、数百人が死亡、負傷、または捕虜になるなど、大きな損害を被った。
  • ウクライナ軍は長期にわたる紛争への備えが不十分で、ロシアの支援を受けた武装が整い組織化された分離主義勢力と効果的に戦うための十分な訓練、装備、資源を欠いていた。

2.人道危機

  • この紛争は深刻な人道危機を引き起こし、何千人もの民間人が死亡または負傷し、100万人以上が家を追われた。ドンバスの都市や町は大きな被害を受け、水道、電気、医療施設などの重要なインフラが破壊された。
  • 停戦は暴力行為を止め、被災地に人道支援を届け、民間人に救済を提供する手段とみなされていた。

3.国際的な圧力

  • 欧州連合、米国、欧州安全保障協力機構(OSCE)を含む国際社会は、紛争の沈静化のため、ウクライナと分離主義者らに停戦に合意するよう求めた。平​​和的解決を見出すための外交努力が進められており、停戦は必要な第一歩とみなされていた。
  • 2014年9月5日に署名されたミンスク議定書は、三者接触グループ(ウクライナ、ロシア、欧州安全保障協力機構)の仲介により締結され、停戦の確立、重火器の撤退、政治交渉の開始を目的としていた。

4.政治的配慮

  • ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は、戦闘を終わらせ、さらなる人命の損失を避けるよう国内から圧力を受けていた。ウクライナ国民は紛争にますます疲弊しており、国の安定と経済への長期的な影響を懸念していた。
  • 停戦は、ウクライナが軍を再建し、防衛力を強化し、西側同盟国からの追加支援を求めるための時間を稼ぐ手段とも考えられていた。

5.ロシアの関与とエスカレーション

  • 2014年9月までに、ロシアが分離主義者に軍隊、武器、兵站支援を提供し、紛争に直接関与していることが明らかになった。このエスカレーションにより、ウクライナが軍事的勝利を達成することはますます困難になった。
  • 停戦はロシアのさらなる介入を防ぎ、現地の状況を安定させる手段とみられていた。

6.経済的負担

  • この紛争は、すでに汚職、経営不行き届き、そして2014年のユーロマイダン革命の余波に苦しんでいたウクライナ経済に、大きな負担をかけた。戦争は、特に重要な経済拠点であったドンバス地方の工業生産をさらに混乱させた。
  • 停戦は紛争の経済的損失を軽減し、ウクライナが改革と復興に集中できるようにする手段とみなされていた。

2014年9月の停戦の結果

2014年9月にミンスク議定書によって確立された停戦は脆弱で、主にウクライナによって頻繁に破られた。一時的に戦闘の激しさは緩和されたものの、紛争に永続的な解決をもたらすことはできなかった。

結局、2014 年 9 月にウクライナが停戦を求める決定を下したのは、紛争の厳しい現実と、人道的懸念を優先し、状況を安定させ、外交的解決を模索する必要性を反映したものでした。しかし、紛争を引き起こした根本的な問題は未解決のままであり、その後も暴力が続くことになりました。

ウクライナは、ドンバス地域で進行中の戦争で暴力が激化し、軍事的に大きな後退を余儀なくされたため、2015年1月に停戦を求めた。2014年9月に署名された最初のミンスク議定書は、地方分権化や国境監視などの措置を通じて停戦を確立し、紛争を解決することを目指していた。しかし、2015年初頭までに、特にロシアがドネツク国際空港で勝利し、デバルツェボで新たな攻勢を仕掛けた後、戦闘が激化したため、この合意は完全に崩壊した。

ウクライナは、大きな損失と高まる国際的圧力に直面し、さらなる軍事的敗北を防ぎ、状況を安定させようとした。和平交渉への新たな取り組みは、2015 年 2 月 12 日に調印されたミンスク II 合意で最高潮に達した。この合意には、即時停戦、重火器の撤退、捕虜交換、ドンバスの一部に自治権を与える憲法改正などの条項が含まれていた。ウクライナの取り組みは、さらなる不安定化を避け、ロシアを侵略者として描写することで国際的支援を集める必要性によっても推進された。ウクライナを支援する西側諸国は、ウクライナ軍がドンバスで民間人を繰り返し砲撃していることを無視した。

ミンスク合意 II は、ウクライナ東部におけるウクライナ政府軍とロシアの支援を受けたドネツク州およびルハンスク州の分離主義者との間の紛争を解決することを目的とした一連の措置である。ロシアは交渉で重要な役割を果たしたが、主たる署名国ではなかった。代わりに、この合意はウクライナ政府とドネツク州およびルハンスク州の指導者の間で締結された。この合意は、ウクライナ、ロシア、フランス、ドイツの指導者と分離主義者地域の代表者による交渉を経て、2015 年 2 月 12 日にベラルーシのミンスクで調印された。

ミンスクII合意の主な規定は以下のとおりです。

  1. 即時かつ包括的な停戦: 停戦は2015年2月15日深夜に発効する予定でした。
  2. 重火器の撤退:両陣営は安全地帯を作るために前線から重火器を撤退させる。
  3. 監視と検証:欧州安全保障協力機構(OSCE)は停戦と重火器の撤退の監視と検証を任務としていた。
  4. 権力の分散化:ウクライナは、ロシア語の使用権や地方警察の設立権など、ドネツク州とルハンスク州にさらなる自治権を与える憲法改正を実施することに合意した。
  5. 地方選挙:分離主義者支配地域ではウクライナの法律に基づき地方選挙が実施され、OSCE によって監視されることになっていた。
  6. 恩赦:重大な犯罪で告発された者を除き、紛争に関与した者には恩赦が与えられることになっていた。
  7. 捕虜と人質の交換: 双方は捕虜と人質全員を解放することになっていた。
  8. 人道支援:紛争地域への人道支援が許可されることになった。
  9. 経済関係の回復:銀行サービスの再開や年金の支払いなど、紛争の影響を受けた地域とウクライナの他の地域との間の社会的、経済的関係を回復するための措置が講じられることとなった。
  10. 外国軍と傭兵の撤退:すべての外国の武装部隊、軍事装備、傭兵はウクライナ領土から撤退することとなった。

合意にもかかわらず、ウクライナ東部での紛争は継続しており、停戦違反が頻発し、敵対行為が続いている。合意の政治的側面、特に権力の分散化と地方選挙の実施は論争の的となっており、双方が互いの約束を果たせていないと非難している。

ドイツとフランスの指導者たちがミンスクIIを「ウクライナの軍事力増強のための時間稼ぎの策略」と見ていたことを世界が知ったのは後になってからだった。

2022年12月のDie Zeit紙のインタビューで、メルケル首相は次のように述べた。

「2014年のミンスク合意はウクライナに時間を与えるための試みだった。ウクライナはまた、今日見られるように、この時間を利用してより強くなった。2014年から2015年のウクライナは、今日のウクライナではない。」

フランスのオランド大統領もメルケル首相の発言に同意した。

ロシアのラブロフ外相との会談中(ナポリターノ判事とマリオ・ナウファル氏も同行)、ラブロフ外相は、ロシアとウクライナが2022年3月29日〜30日にトルコで交渉を行った際、ロシアはウクライナが提示した特別軍事作戦の終結に向けた提案案を受け入れたと指摘した。善意のしるしとして、ウラジミール・プーチン大統領はロシア軍に対し、キエフ北部の陣地から撤退するよう命じた。しかし、ジョー・バイデン大統領とボリス・ジョンソン大統領からの圧力に直面したウラジミール・ゼレンスキー大統領は、自国の政府の提案を拒否し、戦争継続を選択した。

これがロシア当局に嫌な思いを残したと言うのは控えめな表現だ。停戦交渉に関するウクライナの3度の方針転換は、停戦がもはや戦争を終わらせる現実的な選択肢ではないとロシアに確信させた。だからこそ、ウラジミール・プーチンは2024年6月14日の演説でロシア外務省高官らに新たな条件を提示したのだ。これが今やロシアの譲れない立場だ。もしウクライナがこれらの条件の受け入れを拒否すれば、ロシアは戦場を通じてより厳しい条件を突きつけるだろう。

(引用終了)

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最高値を更新する日本の死亡者数

2025-03-08 15:25:01 | 医療

2025年2月27日に厚労省は2024年12月までの人口動態集計の速報を発表しました。一部はニュースでも取り上げられましたが、前回ブログで2024年10月までの途中経過で予想した通り2024年は今までを上回る160万人超えの死亡者数に達しました。それはコロナ前の死亡者数に対する超過死亡を比較した結果としては、欧米各国よりも圧倒的に多い状態が維持されている結果になります。

年齢別の死亡者数や、死因別の統計は6月以降にならないと出てこないのですが、前回2023年までの統計をまとめて紙の爆弾2025年3月号に発表した内容を含めて、新型コロナワクチンとの関連や社会で明確化されていない問題点などをまとめたいと思います。

I.  明確化した日本のみの超過死亡増加

図は2015年から19年の各国死亡者数の平均を100とした場合のコロナ以降各年の超過死亡推移を%で示したものです。バックに各年に流行したコロナ株の推移、△は新型コロナワクチン接種を示します。米英独仏は3回目ワクチンまでは積極的に施行しましたが、以降は日本のみが定期接種として主に高齢者に施行しています。南アフリカはワクチン接種率が35%と他国よりも低いため、比較として載せました。南アフリカは武漢起源株が流行した21年は超過死亡が飛びぬけて多かったのですが、以降沈静化しており、4回目以降ワクチン接種を積極的に行わなかった欧米各国は23年以降超過死亡が沈静化している事が解ります。

II.  死亡が増加しているのは75歳以上の高齢者だけ

統計が出ている23年までの日本の年齢別死亡者数の推移を比較すると、22年以降大きく死亡者数が増加したのは、75歳以上の高齢者の死亡が増加したためであると解ります。2019年は138万1,093名で20年よりも多かったのですが、新しい統計結果の24年は23年よりも多く161万1,864名でした。23年の時点で74歳以下の死亡者数は既に減少傾向にあり、24年も75歳以上の高齢者が増加したことが推察されます。

III.  増加した死因は体力・免疫力低下に関連するものが多い?

75歳以上の死因別実死亡者数の21年と23年の比較を示すと、赤丸で囲んだ体力、免疫力低下が関連すると思われる死因の増加が目立ちます。その他の死因による6.6万人の増加には、肺炎とは別に統計が取られている「コロナ陽性死亡」が含まれていて、これはコロナ検査陽性でコロナ病棟に入院した状態で他の合併症で亡くなった高齢者3.2万人の増加が含まれると考えられます。高齢者の事故による死亡増加は入浴中の死亡増加が多いと考えられます。これも大きくは体力低下に関連するでしょう。

IV.  科学的証明には相関関係と因果関係の証明が必要

ある事象が科学的真実であると証明するには、相関関係と因果関係が共に証明されねばなりません。ある薬剤が特定の疾患に効果がある事を証明するには、その薬剤が疾患の原因である病態を改善することが科学的に基礎実験や動物実験で証明されて、実際に患者に使って患者の病気が治る率が高いと証明されれば因果関係、相関関係が証明されて「その薬が病気に効く」という事象が科学的真実と証明されるのです。ワクチン投与と超過死亡には相関関係がある事は証明されました。ワクチンとコロナ感染が免疫力を弱めるという因果関係も証明されつつあります。後は超過死亡で亡くなった人達がワクチンなどと関連した免疫力低下を示していたという繋がりが証明されれば、ワクチン接種が超過死亡の原因と証明されます。

一方で厚労省が主張する「ワクチン接種で重症化が防げる」という事象は、コロナ重症で入院している人のワクチン接種、未接種の比率が、未接種の方が多かったという相関関係のみ示されていますが、ワクチン接種が重症化の原因となるサイトカインストームを抑制するという因果関係を示した科学的論文が皆無であるという事実を厚労省もメディアも公表しません。つまり科学的証明ナシで厚労省はワクチン接種を勧めているのです。

V.  ワクチンによる因果関係の証明は進みつつある

表は紙の爆弾3月号で発表した物ですが、発熱を呈する感染性疾患で救急外来を受診した1万8千名のうち、コロナ検査陽性であった2,854名と陰性であったインフルエンザや市中肺炎の患者1万5千名のコロナ陽性率、入院率をそれぞれワクチン接種の有無で示したものです。最新のワクチンであるXBBを接種した群は、コロナ陽性率、コロナによる入院率は確かに古い型のワクチン接種をした群、或いは未接種群よりも低い事が解ります。しかし、コロナ以外で入院に至る率は、ワクチン未接種群が最も低く、ワクチンを接種した群は古い型も含めて未接種群よりも多い。つまり相関関係としては総合的な免疫力は低下している事が推察されます。

また感染症やがんに対する免疫力を低下させるIgG4がワクチン接種を続けることで増加することが証明され、免疫学会会長も務める岩崎氏の最新の論文では、ワクチン投与後症候群の患者は免疫を弱めるCD8T細胞が増加していて、ヘルペスウイルスが活性化されるといった結果が出ています。

VI.  遺伝子ワクチンは「ワクチン系遺伝子治療薬」としての安全規制を

厚労省のデータでは、2024年12月までの4年足らずの間に新型コロナワクチンによる被害認定は、これまでのすべてのワクチン48年分の倍以上であり、死亡者数の認定は6倍に達しています。それでもワクチンによる死亡という明確な因果関係を厚労省は認めず、薬害として認定していません。それは、遺伝子ワクチンが実際のメカニズムは遺伝子治療剤でありながら、旧来のワクチンの定義に沿った副反応しか因果関係を認めていないからです。コロナワクチンによる副反応は投与された遺伝子によって正常細胞が作り出したスパイク蛋白(正しいスパイク蛋白とそうでない蛋白も含む)によって引き起こされる血栓症、神経障害や免疫異常によるものであるため、従来のワクチンであれば証明できるワクチンそのものとの直接的因果関係の証明が困難なのです。

今後も遺伝子ワクチンを使い続けるのであれば、緊急承認である遺伝子ワクチンは「ワクチン系遺伝子治療薬」として「遺伝子治療用製品等の品質及び安全性の確保について」という令和元年の厚労省規制に基づいて厳格に製品や副作用について調査されねばいけないという事です。

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「王様は裸だ」とテレビ放送されたゼレンスキー

2025-03-02 11:04:26 | 政治

2025年2月28日の米トランプ政権とウクライナゼレンスキー大統領との会談は、世界中のメディアが報ずる様に異例の決裂で終わりました。通常首脳会談に至る前に官僚レベルで両国の立場や合意点を調整した後に首脳会談では微調整をして合意文書に署名するのが外交の基本です。

マクロン氏に頼まれて嫌々会談を持ったトランプ氏、停戦に興味のないゼレンスキーとの「見込みのないレアアースの合意」などどうでも良かったと言える。

今回もある程度の合意点は調整してから階段に臨んだ事は間違いないと思われますが、何しろゼレンスキー自体がCIAネオコンのパペット大統領として、全て言われるままに大統領就任以来行動してきたので、価値観や合意の妥協を自分でその場で調整する(政治家として当然の訓練)などしたことがなかったので、今までのやり方(素人のパペット)を続けて挑発に乗ってしまったというのが真実です。

「一国の首脳」に「記者」から「スーツ持ってるの?」という質問が出る時点で「お前は裸の王様だろ」と言っているに等しい。

その象徴的な場面は一国の大統領に対して、記者から「あんたスーツ持ってないの?」(裸と同じだよ)と揶揄された所でしょう。大恥をかいて終わる会見の結末は、トランプはホワイトハウス玄関前でゼレンスキーを迎える第一声が「今日の服装はいいね」という最大限の皮肉だったことからも運命づけられます。グローバリスト・ネオコンがバックに付いたゼレンスキーは北朝鮮の将軍と同様「独自の制服」さえ着ていれば世界の社会常識は無視しても受け入れられ、ビデオ画面で演説すれば「閣下」と持ち上げられて国会議員の全てがスタンディングオベーションで聞いてもらえることがデフォルトと思い込んできました。実は全員が「アホクサ!」と思いながら表面的には従っていた「裸の王様」状態であったと言えます。

政治誌Axiosに紹介されたホワイトハウス出迎えから決裂に至る経緯。本来ウクライナ側は細心の注意と忍耐が必要な場であった事が明らか。

ロシアとの戦争は、武器も戦略も戦術も全てグローバリスト・ネオコンが設定した通り従っていただけであり、しかも23年以降は一方的な負け戦であった事は日本以外のオルタナメディアやBRICSメディアを視聴している人達は皆知っている事です。

ウクライナの取材(ツアー)は全て保安部のプロパガンダ通りだと暴露するバンス副大統領。

「王様は裸だ」と全国放送されたゼレンスキーに対して、一部の欧州裸王仲間から早速「あなたは独りぼっちではない」という励ましの言葉が投げかけられています。3月2日にはグローバルヤングリーダー筆頭の英国キア・スターマー主催で「これからどーする?」会が欧州首脳を集めて開催されます。EU閣僚でもあった英国のAlastair Crooke氏は、「戦争状態がなくてもEU首脳の意見が一致することなどなかったから各国の利害がからむロシアとの問題でEUの意見が一致することはあり得ない。」と言い切っています。まして経済が落ち込んでいて武器在庫も使い果たした欧州において、引退する独ショルツ、国内で支持を失っているマクロン、選挙で信託を得ない評判の悪い欧州委員長のフォン・ディア・ライエンが何を話しても実効性のある解決策など出てこないでしょう。

外交音痴だったゼレンスキーは顔を洗って出直して全てトランプの要求を呑むしか道はない。

 

追記 2025年3月3日 

〇  英国の二枚舌は第二次大戦以来のお家芸

米国は明確に英国がウクライナで何をしようが、支援などしないと明言。その代わり関税はかけないでおくよ。とディールは成立している。

英国は第二次大戦時にヒトラーがポーランド、チェコなどに侵略した際に「軍を送って貴国を護る」と約束したにも関わらず静観、両国はドイツに飲み込まれます。1956年のスエズ危機において、英国はフランス、イスラエルを唆してエジプトを侵略しますが、結局大規模な戦争はせずに米ソの仲介で撤退しました。

今回もキア・スターマーは英国が中心となってウクライナの安全保障を受け持つなどと嘯いていますが、米国との関税協議では完全に尻尾を振り続けている状態であり、適当にはしごを外す事は明確。あまり報道を鵜吞みにしない方が良いと断言します。英国とはそういう国なのです。

どこのバカが英国に騙されて軍を送るのか知らないが、日本は金を出せと言われないよう気を付けることだ。

 

追記 2025年3月6日

〇 ウクライナ議会はトランプ・プーチンの和平交渉を歓迎

ウクライナ国民の本音はトランプ・プーチンの和平交渉による一刻も早い終戦であるのは頭のおかしな人でなければ当たり前の事です。ウクライナ議会は麻薬中毒のゼレンスキーの100倍まともです。日本のメディアでウクライナ国民の声を正しく伝えるものが皆無であるのは本当に嘆かわしい。「トランプの政策にウクライナ市民は不満の声」などというデタラメばかり報道し戦争継続を煽る「人命軽視の阿呆ども」は恥を知るべきだ!

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追い詰められたグローバリスト・メディアのヒステリー反応

2025-02-22 15:07:19 | 政治

トランプ政権が発足して1か月足らずのうちに、世界は余りにも目まぐるしく動いていて付いてゆくのが手一杯の状況です。1回目の政権時には、国務省を始め、政府全体が8年間の民主党オバマ政権陣営で固められていて巨大グローバル資本、軍産複合体からなるディープステイトの排除をするどころか、その陣営から次々に人材を政権内に送られてトランプが目指す方針を変えられてしまううちに4年間が終わってしまいました。今回は前政権の陣営から邪魔をされる前に矢継ぎ早に政策を繰り出して邪魔をする機会を与えない作戦に出ていると言えます。非常に見事な手際と思います。結果的に追い詰められたグローバリスト・その傘下の主流メディアがヒステリー反応を起こして訳の分からない行動を起こし始めているのが実情でしょう。以下にこれらについて纏めます。

 

I.  民主党が畏れた人事がほぼそのまま決まる

新トランプ政権の主要人事は、グローバル・民主党側が非常に嫌がる人材が多数でした。司法の政治利用を批判したマット・ゲイツ下院議員(42)をまず司法長官に指名しましたが、民主党主導の下院倫理委員会は執拗に同氏の30代頃の売春疑惑や薬物疑惑を追及して12月24日に司法長官候補を辞退させました。しかしその代役として指名されたパム・ボンディ氏はゲイツ氏以上に司法省の改革をする気満々の女性であり、2月5日に正式に承認されました。ゲイツ氏を全力で葬った事がグローバル陣営に幸いだったか疑問です。

他にもロバート・F・ケネディJrの保健福祉省長官、ジョン・ラトクリフCIA長官、トュルシー・ギャバード国家情報長官、カシュ・パテルFBI長官の人事が正式に承認されており、特にギャバード情報長官の就任からトランプ大統領のウクライナ情勢についての分析が現実に合ったものに変貌しており、早速プーチン大統領との交渉進捗など効果が出て、グローバル陣営にとって発狂状態になってきています。

RFKJr氏はXで6か月以内にmRNAワクチンは禁止すると発表。NIH所長のバッタチャリア氏もコロナワクチン停止を明言しているが、定期接種を未だに行っている日本はどうする?

 

II. CIA USAID解体

CIA末端要員のロバート・キャンベルを出演させて陰謀論の紙芝居で日本国民を必死に洗脳するサンモニ

前回も記したCIA、USAIDの解体は大きな波紋を呼んでいる様です。特にUSAID解体はグローバル陣営は予想していなかった事らしく、メディア総動員で狂った様に「慈善事業が滞って世界の弱い人たちが~」と騒いでいます。面白かったのは日本においても2月16日放送のサンデーモーニングで紙芝居まで作って「USAIDの閉鎖は陰謀論という偽情報に基づいて慈善事業を真面目に行っている団体を一方的に閉鎖しているトランプ独裁政権の横暴なんです」という物語(ナラティブ)を必死に日本人に広めている様です。コメンテーターにCIA末端工作員のロバート・キャンベル氏(戦時下のウクライナに出張してウクライナ支援の本まで出版=普通の大学教員は不可能)を出演させて、番組内容と出演者の発言をチェックさせていた事です。

DOGEの調査で米国では160歳以上の国民が13万人もいることになっていると判明。これも陰謀論なのでしょう。

 

III. 財政出動の凍結 NED TNI 活動停止

全米民主主義基金(NED)は1983年に設立された準NGOですが、これもUSAIDと同様連邦予算に占める割合は小さいものの、民主主義を広める名目さえ付けば、反政府組織の支援などあらゆる目的で資金を使えるため、腐敗、汚職の温床になってきました。Trusted News Initiative(TNI)は、BBCを中心に世界のグローバル体制側メディアを規制(結束)する目的で2019年に設立された組織で、NHKも加盟していてUSAIDの出資先に含まれます。「偽情報を阻止する」事が目的の組織ですが、コロナやワクチンなど議論の余地が多い政策について両論併記することなく、一方的な意見のみを報じて「異論は偽情報と決めつける事」が特徴です。そのようなジャーナリズムに連邦予算の援助は不要でしょう。

 

IV. ウクライナ紛争終結へ

 

トランプ氏はプーチン大統領との直接会談を準備中であり、本当にウクライナ紛争が終わる気配になってきました。大慌てなのは紛争を継続させたいゼレンスキーと欧州グローバリスト達です。トランプ氏の「欧州首脳らは戦争を終わらせる努力を3年間一切行ってこなかった。」という批判にマクロン大統領は「国民はロシアとの戦争に備えよ。」と言い、ドイツのショルツ首相は「国家非常事態宣言だ」と狂ったとしか思えない反応を示しています。ドイツはノルドストリームパイプラインをウクライナが破壊してドイツ産業と国民がエネルギー高騰に苦しんでも国家非常事態とは言いませんでした。首相として完全に頭おかしい。

ミュンヘンの欧州安全保障会議でヴァンス副大統領は「欧州の本当の敵はロシアや中国でなく欧州内部にいる(言論の自由を弾圧するあんたたちグローバリストだ)」と明言して会場を震撼させました。続く国政選挙で国民が真の民主主義に基づいて正しい国家代表を選びやすくなったと言えるでしょう。欧州国土を戦場に導く売国奴、民衆の敵のグローバリスト達を追い出す鬨が来たと言えます。

ヴァンス副大統領は「欧州の真の敵は内部にいる」と明言

トランプ氏は今までの支援の見返りに「ウクライナの鉱物資源の半分をよこせ」とゼレンスキーに要求。ゼレンスキーが拒否すると「ならばもう良い。」とあっさり切り捨て。慌てたゼレンスキーが「差し上げます」と言い出していますが、トランプを批判することで彼の意見が変わる事はない程度の知恵さえないゼレンスキーは既に終了コンテンツでしょう。

ウクライナ国防委員長コステンコ氏は、米国はウクライナへの武器販売を停止したと伝えており、ウクライナへの武器支援は終わった様です。世の中は援助をもらう方が与える方に文句を言って通るはずがありません。

米国はウクライナへの武器売却を凍結 というウクライナ高官の投稿  米国に鉱物資源をくれてやるために命を張りたくない、というウクライナ兵79旅団の投稿

 

V. パナマ運河からの中国締め出し

トランプ氏はパナマが中国に飲み込まれる(パナマの2港を中国が所有)事を憂慮して、パナマ運河の再度領有を宣言しそうになりました。パナマのムリノ大統領は、同国の一帯一路からの離脱を宣言し、米国軍艦の通行料について検討する(無料にするという米国務省の発表は虚偽)と発表。トランプ氏の脅しは一定の効果を見せた様です。

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陸上自衛隊OH-6D Italeri 1/72

2025-02-18 13:13:06 | プラモデル

陸上自衛隊仕様のHughes OH-6D を作りました。OH-6の1/72モデルはタミヤ・イタレリ、AZモデルなどから発売されているのみでなかなか入手が困難なレア物になっています。OH-6Aは1960年代に開発された米軍用観測ヘリで、軽量小型で生産性にも優れ、安価に大量生産可能であったため、世界中の軍、官庁、民間用としても多用されました。陸上自衛隊では1969年から使用が開始され、川崎重工業でライセンス生産もされてローターが4枚から5枚になったD型(1978年~)含めて193機が導入されました。2020年には老朽化により使用が終了して国産の後継機OH-1に転換されましたが、OH-1が高価なため配備が進んでいない状況です。OH-6は1.3tという普通自動車並みの重量のため、車輪を付けて人力で移動も可能ですが、新型のOH-1は4tあり、牽引車が必要です。OH-6は軽量安価で整備を簡潔にするため、必要最小限の機能で外板も非常に薄く、車に例えると現代の車がオートマパワステが当たり前な所、全てがマニュアル車といった操縦系統でした。

塗装説明図は北海道仕様という事?で黒の部分が実機の写真より多めに見える。

私は自衛官時代にタンデムローターのV-107バートル(米軍CH46)、ベトナム戦争でお馴染みのUH-1イロコイ、そしてこのOH-6にも搭乗したことがあります。バートルは船に乗っている様なゆっくりと上下動する乗り心地であった一方、UH-1は細かい振動が常にある様な乗り心地でした。OH-6は師団司令部勤務の際に、師団航空隊から週3回は師団長や幕僚長の出張に合わせて司令部に飛来していたのを見ていましたが、阪神淡路震災に出動した際、広島から神戸の宿営地への連絡移動の際に師団長から「お前も乗って行け」と言われて乗せてもらいました。乗り心地は遊園地の観覧車の様な狭い空間で上下前後左右に揺れるという稀有な体験で、晴天の下、姫路や岡山の上空500m位の所を展望しながらの移動でした。

モデルは老舗のイタレリ製ながらとにかく小さいので細かい作りこみをするには1/48(ハセガワ)がお勧めかも知れません。しかしハセガワが右後ろのドアしか開かないのに対して、1/72ながらこちらは左の前後の扉を開けることができるのは優れモノと言えます。透明部品は合いにくいので調整が必要で、イタレリ製のNATOパイロットを狭いコックピットに無理やり乗せたので愈々窮屈になりました。しかし駐屯地で良く見ていたOH-6の雰囲気が再現できたように思います。昔作ったハセガワの救難仕様のUH-1と並べてみました。やはりOH-6の小ささが分かります。

頑張って操縦手を入れてみました。

UHは車体、ローターとも二回り位大きい。

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Junkers Ju87 G-2 Tank Buster 1/72 Revell

2025-02-12 14:37:43 | プラモデル

ユンカースJu87の派生型であるG-2タンクバスターを作りました。ユンカース87は88と並んで第二次大戦初期のドイツ軍電撃戦の「破竹の進撃」で有名になった急降下爆撃機で、陸軍の直協機として数メートルの正確さで爆撃が可能であったことから多用されました。しかしポーランド、ノルウェー、フランス戦までは無敵であったJu87も、1940年の制空権がないバトルオブブリテンでは英国空軍のスピットファイアに面白いように撃墜され、対空戦闘力の弱さが露呈します。1960年台の映画Battle of Britainでもレーダーサイト攻撃に来たスツーカが新米のスピットファイアパイロットに次々と撃墜されて(rats in  a bottle)と揶揄されるシーンがあります。

特徴的な逆ガル型の翼を持つJu87

Junkers Ju87は1935年にアラド、ハインケル、B&W(ブルーム・ウント・フォス当時はハンブルグ航空機製作所)の4社の試作機からやや強引に実力者のウーデット大佐と空軍総監になるミルヒによって選ばれた機体でした。初期のAシリーズは600馬力のエンジンで爆弾搭載量にも限界がありましたが、ドイツが支援したスペイン内乱ではフランコ派のコンドル軍団で十分威力を発揮する事が出来ました。改良型のBシリーズ(1938年)は1200馬力のJumo210を装備して電撃戦の中心的役割を果たします。1941年の改良型Dシリーズは1400馬力の強力なエンジンを装備し、主翼の機銃も7.7mmから20mmになりましたが、重量も4,250Kgから5,720kgに増加したため、運動性や対空戦闘では期待したほどの性能向上には至りませんでした。空軍省はJu87の後継となる機体の開発を望みましたが(引き込み脚を持つJu87F)開発に至らず、Ju87は大戦後期まで様々な派生型を生みながら生産され、総生産数は5,700機に至りました。

迷彩は当時の爆撃機の標準パターン迷彩RLM70&71(ブラックグリーンとダークグリーン)、下面RLM65(ライトブルー)東部戦線1944年SG2航空団所属にしました。

G-2タンクバスターは最も量産されたD―5型(翼端を左右60cm延長)をベースに37mm高射砲2門を翼下に取り付けたタイプで、各6発の対戦車弾を発射可能でした。有名なハンス・ルデル大尉はG1型で592台のソ連軍戦車を破壊した記録を持ちます。この空から戦車の弱点であるエンジン上面を狙う攻撃は、隠れる場所の少ない大平原や砂漠の対戦車戦における革新的ゲームチェンジャーになりますが、以降の様なヘリコプターからのロケット攻撃や現代のジャベリンなどのコンピューター制御の対戦車攻撃と異なりJu87や75mm砲を装備したヘンシェルHs129からの戦車攻撃は高度な操縦技術を要するものでした。特にJu87の対戦車攻撃型は重い砲のために離着陸にも操縦が難しかったと記録されます。軟降下を行いながら疾走する敵戦車の後上方5-600mから正確に砲を発射する技術は大変なものだったと思います。また敵戦闘機に対する脆弱性は他のスツーカ以上に弱く、制空権のない戦場では飛行不可能でした。

87G1の実機 対戦車砲の細部やエアインテイクの構造が見える。D型からはオイルクーラーが機首上面から下面に移動になった。翼機銃は重いので取り外されている。

模型は古い金型ながらドイツレベル製で整合などは良好で、D-5とのコンバーチブル可能なキットでした。ハセガワ1/48のG-2も対戦車砲の砲口がないという不評がありますが、1/72の当キットもなかったのでドリルでそれらしく整形しました。また機首右側面の気化器空気取り入れ口も穴がなかったので作りました。昔作ったD-5冬季型(ハセガワだったか?)と並べてみました。対戦車砲の細部も1983年文林堂世界の傑作機(Ju87B-G)の写真を見ながら追加しました。同書によるとG型の塗装は一部資料に見られるRLM70(ブラックグリーン)一色のものはなく、通常みられる基本塗装であったとわざわざ記されているので同書の塗装指示どうりにしました。胴体の国籍標識は、大戦後期は白抜きの物が一般的であったとされるので古いD-5モデルのデカールが正しいと解ります。エンジンカウルが少し浮いているのは、取り外してエンジン部を一部見せる事が可能なためです(余り精密ではない)。

白の水性塗料で冬季塗装されたD-5 ダイブブレーキを装備した通常の爆撃機型

D型は翼端が延長されているのでスマートに見える。

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