rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

(北朝鮮情勢について)戦争は外交の一手段である

2017-04-18 00:02:37 | 政治

北朝鮮情勢が喧しいです。戦争になる、第二次朝鮮戦争を恐れる声や、日本にミサイルが飛んでくるといった事も危惧されています。war economyという言葉があるように、戦争を起こす事によって停滞した経済を活性化させるという事も実際行われてきましたし、戦争の原因自体が自国に有利な経済(楽して金を儲けたい)の展開が動機になっている事も確かです。しかし戦争をした当事者達がその後幸福になったという事はありません(勝った方に関しては、覇権を確立して間接的に豊かになった例は多数ありますが)。

歴史的には国際政治において、戦争は外交の一手段として、特定の外交的目的を達成するために目標を持って(出口戦略を確立した上で)行われるのが古来戦争のあり方です。停滞した経済を活性化させるための戦争(war economy-現在のテロとの戦争が好例)や、特定の民族を絶滅させるための「殺戮を目的とした戦争」が行われた事もありますが、それは本来の姿ではありませんし、少なくとも現在の国際法や日本国憲法が想定している所の戦争の定義には当てはまりません。

 

日本国憲法において、「国際紛争を解決する手段としての」戦争はしないし、そのための手段も持たない事を明言しているのは、まさに戦争を「外交の手段」ととらえている文言であることが明らかです。軍隊の編成は「外交の手段として特定の目的を達する限定的な使用」に適するように構成されています。軍人もそのように訓練されています。決してテロリストを取り締まる(counterinsurgency=COIN)武装警察のような訓練は受けていませんし、そのような部隊構成にもなっていません。明治以降の日本においては、日露戦争や太平洋戦争のような国家の命運をかけた一か八かの戦争が行われて来たので、戦争のイメージは「生き残るか滅亡」の二者択一になりがちです。日本でも第一次大戦やシベリア出兵、満州事変のような外交手段としての戦争も行われて来たのですが、日本人の記憶には薄いと言えます。

 

さて、現在の北朝鮮ですが、北朝鮮の国是(戦争を行う最終目的)は金王朝による朝鮮半島の統一です。これは国家目標として掲げられています。北朝鮮の国家目標は日本の征服ではないし、まして中国や米国を支配することでもありません。金王朝が朝鮮半島を統一するにあたって、周辺の大国が認めてくれて、統一後は国家が繁栄するように手助けしてくれれば何の不満もないのです。しかし韓国には米軍がいて、朝鮮戦争以来未だに交戦状態にあるから米国を敵としてミサイルや核を開発しているのです。韓国に配備されているであろう核に対抗するには小型であっても核を持つ他ないであろうと。初めは「なんちゃって核実験」と思われていた物が、大陸間弾道弾にも使えるミサイルが開発されて、核実験も複数回行われるようになって、米国も本気で北朝鮮が核を持つ能力があると認めざるを得なくなったようです。

 

三代目首領様の金正恩は就任以来最大の失敗を犯します。それは最大の支援国である中国とのパイプ役であった叔父である張成沢氏を殺害粛正してしまったことです。自分が在日朝鮮人(高英姫)を母に持ち、金日成からの正当な後継者でなく、中国は金正男氏を後継にさせたいと考えていたことなどから自己の地位確立のため、また米国が対話に応じてくるであろうという読みもあっての行動だと思いますが、これは完全に失敗でした。中国は米国が鴨緑江まで入ってくることは許せませんが、別に金正恩の北朝鮮でなくても全く構わないという立場になりました。韓国の朴大統領の側近は北のスパイであったと言われていて、景気の悪い南に反日反米気運を高揚させて米軍が韓国から撤退すれば、そして中国が許せば北を主体として朝鮮統一も夢ではなかったかもしれません。残念なことでした。

 

トランプ大統領は第二次朝鮮戦争が勃発しない形で、何らかの軍事行動を起こすだろうと思います。恐らくは特殊部隊による金正恩の殺害と核施設の精密爆撃による破壊です。同時に中国軍が北朝鮮国内に進駐して北朝鮮軍が戦争活動を起こす前に平壌を制圧するでしょう(現在中朝国境にいる15万の中国軍。平壌よりも南に進軍すると朝鮮戦争になってしまうので止まると思う)。北朝鮮は中国、米国、ロシア、韓国の共同統治により中国肝いりの政権が打ち立てられ、日本が復興のために多大な金銭的補助をすることになると思います。しかし日本の建設会社や商社がその金で儲かれば(かなり米中ロの企業にも取られるでしょうが)損ばかりではないと思います。米軍がどこまで入ってくるかが中国にとっては問題でしょうが、今まで通り38度以北に基地は置かない事で何とか折り合いが付くのではないでしょうか。代わりに中国が北朝鮮内に基地を置く事になるでしょう。2期目を迎える習近平政権にとっても、早く成果を上げたいトランプ政権にとっても北朝鮮事案をこのような形でまとめることは一挙両得ですし、何よりあまりにも可哀想であった北朝鮮の国民が少しは人間らしい生活ができるようになると思います。拉致家族や日本人花嫁も当然帰国できるようになるでしょうから日本にとっても良い結果です。

 

上記は非常にうまくいった場合の想定ですが、そううまく行かず、金正恩の暗殺に失敗して中途半端に米朝の戦闘状態が生起された場合、38度線から一斉に京城に向けて砲火が発射されて北の部隊が南になだれ込む事態になると本当に第二次朝鮮戦争になってしまいます。米軍も中国に誤解されないようにしないと中国軍が北に加勢して(実際軍事同盟関係にある)戦火が拡大して米中戦争になってしまいます。日本も無傷ではいられないでしょう。こうなると戦争の被害自体が大きくなりすぎて「外交の一手段」だったのか戦争自体が目的だったのか分からなくなってしまいます。だから特殊部隊による暗殺というのもよほど確実な情報がないとそう簡単にはできないだろうと思います。

 

トランプ政権の顧問であるカリフォルニア大学教授Peter Navaro氏の著作「米中もし戦わば」文藝春秋 飯田将史解説 2016年刊は非常に論理的に中国の覇権主義的台頭を解析している好著で近々書評を書きますが、これを読むと現在の米軍の最大の仮想敵が中国であることが良く解ります。現在北朝鮮に引きずられて中国と戦争をすることは米軍にとって全く得策ではありません。外交の一手段でなく無意味な「戦争のための戦争」になってしまい、例え核戦争に発展しなくても米中どちらにも大損害にしかならないでしょう。

 

北朝鮮に関しては、当事者の金正恩体制以外は、米中ロ韓日、そして何より北朝鮮人民の利害関係が一致しているのですから、その一致した結論にもってゆけるよう「外交」を行う事が第一であり、その外交上の目的を達する一手段として「戦争もあり得る」という認識でいることが大切だと思います。

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トランプ派閥が微妙な立ち位置に

2017-04-07 18:49:14 | 政治

米軍がシリア アサド政権へミサイル攻撃 一段と不安定化も

一気にロシアとの関係が悪化する可能性を秘めた行動。賛成しているのは既成グローバリズムのロシアとの戦争を始めたかった連中ばかり。前回同様化学兵器を使用したのは反政府軍という報道もあるなかで、このような引き返しができない軍事行動にトランプ氏が出てしまったのは非常に残念なことです。2日前に片腕のバノン氏が国家戦略会議のメンバーを外されたのはこの攻撃に反対したからでしょう。

Rand Paul上院議員のTwitter ”While we all condemn the atrocities in Syria, the United States was not attacked.  The President needs Congressional authorization for military action as required by the Constitution, and I call on him to Congress for a proper debate.  Our prior interventions in this region have nothing to make us safer and Syria will be no different." 「シリアは酷い事になっているがアメリカは攻撃に加わらなかった。大統領は軍事行動を取る上で憲法の規定に乗っ取りきちんと議会の承認を得るべきだ。私は彼と議論したい。米国がこの地域に直接関わって米国が安全になることもないし、シリアが良くなることもない。」という意見は極めてまともです。

反トランプ陣営からの執拗なロシアとの癒着疑惑の攻撃で、ある程度実際的な行動を取らざるを得ない状況に追い込まれたとも言えますが、これはトランプの今後の政権運営にとって極めて危険な兆候と言えます。

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日米「反知性主義」の違いについて

2017-04-06 18:11:22 | 社会

「反知性主義」という言葉について良く理解している人は「いまさら感」があるかも知れないのですが、最近宗教学者の島田裕巳氏の近刊「反知性主義と新宗教」イースト新書(081)2017年刊を読んでいて、巷で良く耳にする「反知性主義」という言葉が日本で使われている意味と欧米で本来使われて来た意味がかなり異なるという事を知り、しかもBrexitやTranpismという最近の流れにおいて、日本においては欧米でも日本で考えられている意味で「反知性主義」という言葉が使われているかの如く誤解されていると思われるので、私は改めて整理しておく必要を感じました。

 

日本における反知性主義

 

内田樹氏の「日本の反知性主義」(原典であるRホフスタッターの著作「アメリカの反知性主義」を意識した題名)では、アメリカの本来の意味に触れながらも、日本における反知性主義は「感性や感情が理性に勝って力や説得力を持って来ている現在の日本の風潮」を表現する言葉として定義付けられているようです。またその他のメディアや評論家が使う「反知性主義」の内容も概ねその意味で使われていて「ほぼネガティブな意味合い」つまり「反知性主義≒思慮が足りない≒非インテリ的≒衆愚(ポピュリズム)」といった一連の概念を現す内容として語られていると思われます。

 

米国における反知性主義

 

反知性(Anti-intellectualism)とは、知性(intellect)よりも知能(intelligence)を重視する考え方と説明されます。Intellectを知性と訳してしまうのでこの違いが日本語においては良く解らないのですが、「既成の権威主義的な学問体系」みたいなものをIntellectと称しているのであって、自ら状況に応じて考える能力が高い事をintelligenceと称して、総じてポジティブな意味合いで使われることも多いのが本来の反知性主義と解説されています。

 

アメリカの人気テレビ番組「メンタリスト」は面白いので私も良く見るのですが、シーズン2第二話「The Scarlet Letter」の冒頭で、橋の下で発見された若い女性の遺体が自殺か他殺かを法医学者が「最新の法医学をもって分析すれば数日の内に結論を導き出せるだろう。」と主人公に対して自慢げに話したのに対して、学問はないけど海千山千で人の心理を読んで生きて来た主人公(メンタリスト)のジェーンが「僕には法医学は分からないけど、女性の靴が片方しかなくて、橋の上にも靴がなかったからこれは他で殺されて橋から落とされた他殺だよ。あなたは真面目な学者だけどバカだ。」と学者を瞬殺するシーンがありました。

これこそが米国における「反知性主義」なんですね。「知性よりも知能が勝ることを示して権威主義に頼る人達に喝を加えることを良しとする思想」です。

 

トランプ大統領に対して民衆が賞賛するのも、彼が言いたい事を言っているからというよりは、既成の体系となった政治的正義や経済・外交の常道といったものを一度否定して、その場において適切(と思われる)要求や主張を展開して、それが既成のメディアに否定的に取り上げられることで却って宣伝効果を高めているというかなり知能犯としての行いが「反知性主義的」と認められていると思われます。

 

日本で言えば、福島の原発事故後にいくら原子力の専門家が再稼働について「危険はない」と学問体系に照らして説明しても一般民衆の方がサイエンスにも限界がある(これは真実)ということを生理的に見抜いて反対している現状に近いのではないかと思います。

 

反知性主義は日本においては「インテリ」と自負する人達が自分達の論理的な言質に効力がなくなってきたことを嘆く意味で使われているのですが、本来は既成の権威的な学問への懐疑、現状に柔軟に対応する知能の高さを賞賛して使う場合もあるのだということを理解していないと外国人と会話をする際にとんでもない誤解を招く事になりそうです。

コメント (4)
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