rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

新型コロナウイルスのために日本で危惧される医療崩壊とは

2020-04-10 19:34:50 | 医療

1.非常事態宣言は何故この時期に出された?

 

2020年4月7日に新型コロナウイルス感染拡大を受けて政府は7都府県を対象に「非常事態宣言」を出しました。4月8日の厚労省発表の集計では対象の7都府県の感染者数は2575名で全国の感染者数3817名の67%を占めます。特に東京都は1123名と全感染者数の3割を占め、東京都の感染をいかに抑えるかが日本国全体の感染抑制の鍵にもなります(人口1万人あたりの感染者数も0.8名で2位の大阪府の倍)。何故この時期に出されたかについては様々な憶測があり、多くは行き当たりばったりとか遅すぎという批判をこめた評論が多いのですが、私はかなり計算された結果ではないかと思っています。

前回投稿後も日本は同じ増加率で患者が増えている

前回のブログで「日本は爆発的な感染者のアウトブレイクはないだろう」という予測を、データを用いて説明しました。その中で中国、韓国の感染者数が飽和して横ばいになってきている事から、同じウイルス亜型を持つであろう日本も1週間から10日の患者倍増曲線をたどって総感染者数1-2万程度で横ばいになるだろうという希望的観測(収束モデルは論文化されていて増加はS字カーブを描くだろうとも言われるが)を述べました。先週ブログに記してからも、予測どおりにほぼ1週間で倍増のペースで感染者数は伸びていますが非常事態宣言後約2週間で1-2万に達したところで日本の感染者数が飽和して横ばいに達すればまさに「非常事態宣言が功を奏して感染が沈静に向かっている」と世界に表明する事ができます。追加であと2週間自粛をして解除をすれば経済への影響もそれを機に改善の方向に向かわせることができる。かなり計算された非常事態宣言と言えるのではないでしょうか。そのように解説しているメディアが全くないのは何故か解りませんが、政府内専門家会議には冷静で頭の切れるブレーンがいることは間違いありません。海外からも批判される「日本のPCR検査の少なさ」ですが、批判している自分達が感染爆発で失敗しているのに「感染を抑えている日本をよくも批判できるものだ」とその傲慢さにあきれます。またそんな海外を無条件に礼賛する「メディアやコメンテーターの無定見ぶり」にもあきれるばかりです(昔から日本には一定数、「やみくもな欧米礼賛者」というのがいましたが21世紀の今もまだいるとは)。基本、どの対応が正しいかは結果を見ないと解らないのです。今までの所日本の対応は間違っていないし、外出制限などしない無対応のスウエーデンは賛否両論ありますが、今の所他の欧州の国よりもアウトブレイク度は低い状態です。

最近、海外に在住する日本人医師が日本の現状を危惧しているコメント映像を目にしますが、私が1年米国で過ごした経験では、海外で仕事していると日本の実情など殆ど判らなくなります。米国のメディアで日本の事情が紹介される事は滅多にありません、殆ど米国内の事、欧州と中東の事情、たまに中国程度です。四六時中NHKの海外放送でも見ていれば別でしょうが、それでは現地人としてその社会の中で活躍できません。そんな日本についての情報過疎の海外在住者に日本の現状の感想を述べさせても全く参考になどなりません。

 

2. 医療崩壊ということばの意味

 

何の説明もなくメディアで使われるようになった「医療崩壊」という言葉ですが、これには大きく2つの状態が考えられます。

1)文字通り医療自体が崩壊して「コロナ感染症に対する医療」もできなくなる状態

2)通常行なわれている医療が維持できなくなる状態

 

の2つです。また2)については、2-(1)未知のウイルスであるSARS-CoV-2に対する医療現場における配慮から日常的な他疾患への医療が継続できなくなる。2-(2)コロナ感染症の拡大による経済や流通の影響で通常の医療行為の継続が困難になる。の2通りが考えられます。以下のそれぞれの解説と日本における可能性について述べます。

 

1)の医療自体の崩壊は現在の感染者数の推移であればまず起きません。日本の医者は忙しいのには慣れていますし、普段から専門外の医療もやらされていますから融通が利きます。イタリアは勤務医の3割は日常的に無断欠勤が常態(不正出勤の形にしてプライベートの診療所で儲けている)で都市の中核病院が普段から機能していないと言われます。また米国の様に医療の対象を医療保険の額で規定して病院には経済的に見合う定数の医療設備しかない、医師も自分の持分以外の仕事は一切しない、という事が徹底されている医療体制では倍以上の負荷がかかれば医療自体崩壊して機能しなくなります。米国の様にコロナの診療を受けると100-300万円かかると言われれば医療を受けずに死亡する患者も続出し、感染が広がる事も必然です。国民皆保険の独仏、英国では何とか持ちこたえているようですが、オランダ、ベルギーの様な周辺の小国は医師数や医療設備自体に余裕がないので厳しい状態と思います。

 

2-(1) これが現状日本で最も危惧される「医療崩壊」の型です。新型コロナが「季節性のインフルエンザと同じ扱いで良い」ことになればリスクは解消されます。しかし「エアロゾル感染」の危険が高く、医療者・医療行為を介しての院内感染(他の患者に感染が広がる)が絶対不可という条件下ではコロナ感染者と非感染者を明確に分けないといけません。つまり病棟やケアする看護師なども専属にしないといけない。PCR検査が時間がかかり、しかも感度が低い(偽陰性率が40%近い)となると非感染者とされる人、通常の救急患者や待機手術のために予定入院で入ってくる人にも一定数感染者がいるという前提で対応しないといけなくなります。私の病院では体温37.5度以上の有熱者は胸部CTを撮るという規定を作っています。症状がなくてもCTで所見がある場合が多く、PCRよりも感度がかなり高くなります。外科学会では緊急を要しない待機的手術(胆石とか)は延期の方針が出ており、エアロゾル飛沫感染が起きやすい耳鼻科系はほぼ手術を中止する方向になっています。また全身麻酔の挿管も感染不明な場合は避ける方向に指針が出されています。このように日常的な医療行為の制限は既に行なわれつつあるのが現状でこれはまだメディアでも取り上げられていないと思われますが、今後も継続すれば問題になってくるでしょう。

 

2−(2) コロナ感染症による他国の閉鎖や物流の障害で通常の医療が困難になる事態は、グローバリズムの弊害とも言えますがマスクのみならず医療現場においては手袋や手術用のガウン、手術材料、医薬品、核医学検査用のアイソトープなど諸外国からの輸入で賄っている物品の不足が少しずつ明らかになっています。製薬会社や医療機器製作会社が国際企業の強い所に集約されつつある事は、一朝今回の様な国を閉ざす事態が出現すると対応不能になる脆弱さが露呈されます。これは医療のみでなく全ての業種に言える事であり、今年後半に危惧される食料問題(飢饉)においても、自国の農業を守る国策、国防としての重要性が再認識されることになると思います。

 

SARS-CoV2抗体試薬について

 

CoVid-19は考えられている以上に感染力が強く、不顕性感染は予想される数十倍多いのではないかという説もあります。前回も言及した中国産の抗体検査キットは、医師会からの情報では感染初期には感度が低く60%程度、10日以上では90%近いという情報もあります(だから感染初期のスクリーニングには不向きで集団感染の免疫チェックには使える)。また感染者の一部は回復後も抗体が作られず、ウイルスが休眠するだけである可能性も報告されています(ヘルペスウイルスは神経の中で休眠して宿主の免疫を逃れる)。新型コロナはHIVウイルスが持つ遺伝子を持っているという報告が複数あり、詳細は不明ながら1−2年では収束せずに長期間変異を繰り返しながら流行を続けるという予測もあります。抗体保持者には抗体保持証明(免疫パスポートCovid Pass)を発行するというあながち冗談とも言えない動きも報道されています。私も今後の動きについて引き続き注目してゆきたいと思います。


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2 コメント

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4月9日夜の吉村大阪府知事 (宗純)
2020-04-11 09:33:28
何気なくテレビニュースを見ていたら、
維新の吉村大阪府知事が顔面けいれんを起こしていたのですから驚いた。本人は冷静を装っているのですが、まばたきが1秒間に5~6回というすさまじいペース。極度の緊張状態なのか、それとも嘘をついているのか。

新型コロナですが、以前のSARSとほぼ同じで、 SARS-CoV-2と正式名称がついているので、それなら略称はSARS2
ところが、誰もSARS2とは呼びたくないらしいのですよ。ひょっとすると、ここに真実のヒントが隠されているかも知れません。

永遠のバカ百田尚樹がやしきたかじんの後妻を天まで持ち上げた純愛小説のY弁護士とは今の吉村大阪府知事。
SARS2ですが大多数は症状が出ないか軽症。
しかし、当たれば死ぬので大阪ではフグはテッポウと言われていて、これと同じ原理がSARS2。
SARS2たるの死ぬが今のところ正月雑煮の餅よりも人数は少ないが、末期がんで緩和療法中のやしきたかじんが後妻に全財産を残すと遺言した直後に餅をのどに詰まらせて死んでいる
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当たれば死ぬ (rakitarou)
2020-04-11 17:29:08
というのは正にその通りと思います。元祖SARSとの最大の違いは不顕性感染の多さですが、発症しても7-8割は軽症で、中等症になってから酸素が必要になると人工呼吸器まで早く進行するようだと治療した医師が言ってます。
この当たり外れはウイルス側の因子よりも宿主側の因子が大きいようにも思われ、その因子解明の方がワクチン開発よりも早く新型コロナを克服する鍵になりそうです。
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