rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

新型コロナ感染症対策の今後

2020-10-06 20:05:21 | 医療

大統領選挙を前にした米国トランプ大統領が民主党バイデン候補との討論会の後新型コロナ感染症を発症し(感染したのは新最高裁判事任命式典の頃と言われている)、陸軍病院に入院しましたが、本日退院してホワイトハウスに戻ったようです。試験中の抗体試薬を投与したとかレムデシベルを使用したと言われていますが、実際どの程度の病態であったのかは不明です。英国のジョンソン首相よりは軽く済んだと思われ、世界的に言われているウイルスの弱毒化を反映しているかも知れません。

 

I.  ウイルスの病原性について世界の動向は変化なし

 

私は、ブログで世界中の感染者、回復者、死者の集計をしているWorld meterを以前から一次参考資料として提示してきましたが、感染者数は増加しても回復者数も増加し、死者は減少し続けているという傾向は変わりありません(下図)。ウイルスの感染力は強いままですが毒性は低下しているようです。

世界では日々の感染者数は横ばいで回復者は増加している。        死亡率は4月以降低下し続けている。

 

II.  経済再開後第二波は起こったか

 

南米は第一波が継続していると考えると、強力な行動封鎖索で第一波の感染拡大を抑え、経済活動を再開させた後、感染者数はやや増加しましたが、横ばい傾向が続いており、回復者数も増加して結局緩やかな集団免疫策を行っている結果になっているように見えます。

大量に患者が出ている国が世界の患者数を押し上げている。          世界の趨勢からは日本や韓国、ドイツ、スウエーデンといった国は第二波などと言えないと思う。

 

III.  新型コロナ感染症患者が他人を感染させる期間は10日間

 

新型コロナ感染症の感染で季節性インフルエンザと大きく異なる特徴は下図に示す様に、「発症前の2日間が最もウイルス排泄量が多く感染拡大させる」という点にあります。季節性インフルエンザは発症して熱が出て他人への感染力も増加するので本人も周囲も気を付ければ感染拡大を防ぐことができますが、新型コロナの厄介な所は無症状で発症前が最も伝染力が強いという事です。だから予防的に健康に見える人たちまで皆でマスクをしたり間隔をあけたりする事が有用になるのです。

ウイルスを排出する約10日の期間が過ぎると、以降はPCRが陽性であっても生きたウイルスはいない(断片のみ)と考えられています。この事実に従って厚労省は6月の時点で新型コロナ感染症患者の退院の基準を「発症から10日経過し、かつ症状軽快から72時間経過」していることと定めています。

 

IV.  無症状PCR陽性者はその後どうなるか

 

集計によると、無症状(潜伏期)でPCRを受け、陽性と判定された人の7割が程度は種々あるもののコロナ感染症が発症するようです。しかし3割は発症せず終わります。他人への感染力を発揮するのは前述の様に発症前2日と言われているのでほぼ無症状で終わる人は他人に感染させる事もないと思われます。PCRで陽性と言われれば毎日わずかな健康の変化も注意して過ごすので7割というのは多い数字に見えますが、新型コロナ感染症は8割が発症しても軽い感冒症状程度なので、PCRをたまたま受けない限りは知らないうちに感染して終わっている可能性もあります。

 

V.  マスク・手洗いがやはり予防に有効

 

米国で2名の美容師が発症しましたが、発症前の2日間に濃厚接触の形で整髪した140名の客は美容師、客共に全員がマスクを着用していたので一人も感染しなかったという学術報告があります。米国CDCの責任者が「ワクチンよりマスクの方が、予防効果がある」とコメントしたのはその通りです。

 

VI.  PCR検査を沢山行うと感染拡大を防げるのか

 

科学的にはすでに否定されていると思いますが、未だにPCR検査を沢山やれば良いと言う根強い意見があります。以下に例を上げて説明します。感度とはある検査が病気のある人を陽性と判定する確率を言います。特異度とは本当に陰性である人のうち、検査で陰性と判定された人の割合を示し、どちらも高い方が良い検査になります。一般的にPCR検査の感度は70%、特異度99%と言われています。

人口10万人の市で一斉に市民全員にPCR検査を行うと仮定します。費用は一件手数料入れずに1.6万円程かかりますので10万人で16億円かかります。10万都市の1年間に集める市民税の合計は40億円程度なので、16億円はその40%に相当する高額です。

2020年10月5日現在、日本の新型コロナ感染症陽性者の集計は概ね85,700名、回復者は78,600名で、死者は1,600名です。現在有病者は全国で5,530名という事になり、1.2億人の人口で有病率は約0.05%になります。真の有病率はもっと高いでしょうが、かなり大きく見積もって20倍の0.1%と仮定します。

10万人に検査をして有病者は0.1%の100名とすると、感度70%のPCR検査で70名が陽性と判定され、30名は陰性とされます。一方、特異度99%で1%は偽陽性の判定が出てしまう可能性があり、999人(真陰性の人数/感染なしの人数=98901/99900が特異度)は感染がないのにコロナ陽性と判定されます。結果1000人近い人が無駄な隔離や入院をする可能性が出てしまいます。実際の世界で行われているPCR検査はより感染の可能性が高い人を対象にしているので有病率を5%程度に推定していますが、それでも特異度99%で10万人あたり950名が無駄な隔離をされることになります。また5%の有病率では1,500人は感染があるのに陰性と判定されるので結局感染拡大を防ぐ事はできません。PCRをやみくもに増やせば良いという意見が科学的でない事が理解いただけたでしょうか。

一方有病率50%が予想される、例えば性病のクラミジア尿道炎でクラミジア感染を確認するために尿中PCR検査を行ったとします。100人の尿道炎患者に行うと同じ感度、特異度とすれば、35人が陽性、15人が偽陰性、0.5人が偽陽性(ほぼ0人)になります。陰性であった65人に2回目の検査を行うと偽陰性は3-4人まで減らし、偽陽性は一人程度になり、このPCR検査は大変有用で優れた診断法であることが分かります。初めから疾患が強く疑われる集団に対して検査を行う(日本の医療界がコロナ感染症に対して行ってきた方法)正しさが分かると思います。

コメント (12)
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