丸ビルで開かれた SSME (Service Science, Management & Engineering) University の分科会を聴講した。講演者は妹尾堅一郎氏で,演題は「サービス学事始め」。講義は,サービス・サイエンス,サービス・エンジニアリング,サービス・マネジメントよりも上位に「サービス学」を考えようという主張から始まる。その根底には,従来の科学あるいは工学のアプローチでは,サービス・イノベーションを構想できないという主張がある。
科学では論理的整合性と経験的妥当性が柱になるが,実学では価値共感性と現実感喚起性が柱になる。実学とは福沢諭吉が提唱した概念だが,それは最終的にアリストテレスの phronesis(思慮)まで遡ることができる(高橋潤二郎・慶大名誉教授はそれを理学,工学,哲学と並ぶもう一つの学の類型とし,「慮学」と名付けたという)。いうまでもなく妹尾氏は,サービス学をそこに位置づける。スケールの大きな話である。
よくいわれるように,サービスの価値は,顧客と供給者の相互作用から生み出される。そして「おもてなし」「一期一会」といった個別性が重視される。したがって,従来の要素還元的な科学はもちろん,一般システム理論やサイバネティクスでさえ,意味解釈の問題を捨象する限り有効ではない。それらは,サービスのプロセス改善はともかく,新しいコンセプトの創造には使えない・・・と一刀両断にされる。
妹尾氏は,既存の喫茶店をいくら効率化してもスターバックスは生まれないという。また,数理モデルの研究をすれば,グーグルの事業コンセプトが出てくるわけではなく,順序が逆だとも(うーん・・・説得力あるなあ・・・)。また,従来の戦略論が「愚か者でもできる」マニュアル化された方法論を目指していたのに対して,一人ひとり異なる個性をもつ優れ者が,より力を発揮できるような方法論を目指していると。
さて,このような議論を踏まえて,ぼく自身が今年同僚と取り組まなくてはならない,データに基づくサービス・イノベーションの教材開発は,そもそも可能なのだろうか? データの分析から自動的に偉大なアイデアが出てくるとか,高度な手法を適用するとそれができるとか,そんなことはあり得ない。しかし,データを情報の一つとして,学生たちが問題や仮説を発見するところから始めることで何かできないか。まず,自分でそれをやってみるしかない。
今年は,新たに担当する講義で,マーケティング・サイエンスとクリエイティビティの架橋という,ふつうに考えると無謀な試みをすることになっている。教員生活5年目にして,自分自身のイノベーションを迫られている感じだ(それと同時に,粛々と論文を書いていきたいのだが・・・)。
科学では論理的整合性と経験的妥当性が柱になるが,実学では価値共感性と現実感喚起性が柱になる。実学とは福沢諭吉が提唱した概念だが,それは最終的にアリストテレスの phronesis(思慮)まで遡ることができる(高橋潤二郎・慶大名誉教授はそれを理学,工学,哲学と並ぶもう一つの学の類型とし,「慮学」と名付けたという)。いうまでもなく妹尾氏は,サービス学をそこに位置づける。スケールの大きな話である。
よくいわれるように,サービスの価値は,顧客と供給者の相互作用から生み出される。そして「おもてなし」「一期一会」といった個別性が重視される。したがって,従来の要素還元的な科学はもちろん,一般システム理論やサイバネティクスでさえ,意味解釈の問題を捨象する限り有効ではない。それらは,サービスのプロセス改善はともかく,新しいコンセプトの創造には使えない・・・と一刀両断にされる。
妹尾氏は,既存の喫茶店をいくら効率化してもスターバックスは生まれないという。また,数理モデルの研究をすれば,グーグルの事業コンセプトが出てくるわけではなく,順序が逆だとも(うーん・・・説得力あるなあ・・・)。また,従来の戦略論が「愚か者でもできる」マニュアル化された方法論を目指していたのに対して,一人ひとり異なる個性をもつ優れ者が,より力を発揮できるような方法論を目指していると。
さて,このような議論を踏まえて,ぼく自身が今年同僚と取り組まなくてはならない,データに基づくサービス・イノベーションの教材開発は,そもそも可能なのだろうか? データの分析から自動的に偉大なアイデアが出てくるとか,高度な手法を適用するとそれができるとか,そんなことはあり得ない。しかし,データを情報の一つとして,学生たちが問題や仮説を発見するところから始めることで何かできないか。まず,自分でそれをやってみるしかない。
今年は,新たに担当する講義で,マーケティング・サイエンスとクリエイティビティの架橋という,ふつうに考えると無謀な試みをすることになっている。教員生活5年目にして,自分自身のイノベーションを迫られている感じだ(それと同時に,粛々と論文を書いていきたいのだが・・・)。