衣食住その他のうち「食」が特殊なのは,必需性でもなければ文化との関係の深さでもない。食はあらゆる動物が欲し,住は限られた動物だけが欲し,衣は人間だけが欲するから,より人間的・文化的なのは衣であって,次に住である。栄養やエネルギーを与えるという機能についても,医薬品などで代替可能である。
では,何が「食」固有の特徴かというと,消費経験において味覚,嗅覚を始めとする全ての知覚を用い,かつ言語のような高次の情報もまた介入することだろう。少なくとも,味覚が消費の対象となる財は,食品や飲料に限られる(医薬品において,味覚は二次的な意味しか持たない)。
マーケティング研究では,主に言語情報に基づいて選択される財が対象となることが多い。感覚的な消費を扱うにしても,視覚的な要素が扱われがちである。なぜなら,そのほうが簡単だからである。感覚のなかでも味覚はきわめてパーソナルな経験であり,複雑であり,一筋縄ではいかない。
視覚,聴覚,あるいは嗅覚などは他者と同じ空間で同時に経験される。しかし,自分の口のなかで起きている経験は,ことばを介してしか他者に伝わらない。知覚(味覚)はことばを必要としているが,両者には大きな溝があるため,幸せな関係を築くことは容易ではない。だから,ことばがことばだけで成立する世界に閉じこもっていたほうが無難である。
しかし,ぼくは運がいいのか悪いのか,ルビコン川を渡ってしまった。
では,何が「食」固有の特徴かというと,消費経験において味覚,嗅覚を始めとする全ての知覚を用い,かつ言語のような高次の情報もまた介入することだろう。少なくとも,味覚が消費の対象となる財は,食品や飲料に限られる(医薬品において,味覚は二次的な意味しか持たない)。
マーケティング研究では,主に言語情報に基づいて選択される財が対象となることが多い。感覚的な消費を扱うにしても,視覚的な要素が扱われがちである。なぜなら,そのほうが簡単だからである。感覚のなかでも味覚はきわめてパーソナルな経験であり,複雑であり,一筋縄ではいかない。
視覚,聴覚,あるいは嗅覚などは他者と同じ空間で同時に経験される。しかし,自分の口のなかで起きている経験は,ことばを介してしか他者に伝わらない。知覚(味覚)はことばを必要としているが,両者には大きな溝があるため,幸せな関係を築くことは容易ではない。だから,ことばがことばだけで成立する世界に閉じこもっていたほうが無難である。
しかし,ぼくは運がいいのか悪いのか,ルビコン川を渡ってしまった。