Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

2016年の回顧と2017年の抱負

2017-01-06 00:23:10 | Weblog
2016年の年末は私事でバタバタしたので、昨年の回顧と今年の抱負をまとめて書くことにする。

昨年、自分自身が行った学会での発表は1回にとどまる。3月に東大・本郷で開かれた JAFEE の大会での発表がそれである。「クリエイティブな仕事とクールな消費~社会関係資本・文化資本・消費行動」というタイトルで、クリエイティブ社会資本概念の提案などを行った。

この研究、自分としては 2015 年の元旦に掲げた研究課題の ABCDE の1つ、Aesthetics に対応させているのだが、その部分の切り込みが弱い。そこで研究費を獲得して、もう一度データを取りたいと思っている。したがって、これはいまは塩漬け中ということになる。

学会発表は、共著者としてならば、6月上海で開かれた ISMS での、NYU 石原昌和さんとの "When and How do Firms Benefit from Limited-time Products?" がある。その後より一般化して論文化の準備を進めている。いうまでもなく石原さんの貢献が圧倒的に大きい。

感慨深いのは、8月の『プロ野球「熱狂」の経営科学』(東京大学出版会)の出版だろう。私はそこで、プロ野球ファン調査の分析を扱う1・2章を執筆した。故あって多くの執筆者がカープファンなので、カープへの言及が多い。そこにカープ25年ぶりの優勝が重なった。

その結果「カープ女子」現象への関心が高まり、関連する部分を執筆していた私に、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4媒体から取材があった。一過性とはいえ貴重な経験だった。取材を受けながら、一般に関心を持たれそうだが、書籍では扱っていない論点に気づかされた。

書名の一部となった熱狂、つまり Enthusiasm は、上述の ABCDE の1つである。カープの優勝が示したのはファンの熱狂が生み出すポジティブな効果といえる。資金難で苦しんだ球団が収入を増大させ、優勝を呼び込んだのだから(日本シリーズでは敗れたとはいえ・・・)。

昨年はしかし、11月の米国大統領選挙で、熱狂の別の側面が見えたように思う。その根底にはイデオロギーが、そして無意識の働き、つまり、Blindness がある。イデオロギーは冒頭で記した JAFEE で発表した研究とも関連する。これらは深部ではつがった現象かもしれない。

2年の在外研究も、残り3ヶ月を切ってきた。そこで始めようとした新たな Diffusion 研究は、ようやく光が射してきたような状態だ。それとは別に、数年来の課題であったTwitter マーケティングに関する研究を、この期間内に脱稿させることが、最低限の目標となるだろう。

4月以降は、しばらくは授業などの日常業務に忙殺されるだろう。しかし、慣れてきたら、せっかく火のついたいくつかの研究について火が消えぬよう、いやいっそう燃え盛るようにしなくてはならない。なかでも Complexity 関連の本の執筆は、今年もまた最重要課題になる。