組織学会が『組織論レビュー』という2巻の出版物を編纂している。組織論の重要テーマの文献レビューを若手研究者が行い、シニアの研究者がそれにコメントを書くという趣向。この学会の層の厚さを示す企画といえる。
ぼくが最も興味を持ったのは、第2巻に収められた、稲水伸行「経営組織のコンピューター・シミュレーション」という章だ。いうまでもなく、エージェントベース・モデルの社会科学への応用に関心があるからだ。
レビューされるのは、Cyert & March、Cohen、Axelrod、Carley、Levinthal、Harrison など(そしてシステムダイナミクス)。こう見ると、マーケティングにおけるシミュレーション研究の系譜よりは、層が厚そうである。
人工知能系の社会シミュレーションの研究でも組織はよく研究対象になる。しかし、Axelrod、Carley あたりを参照するだけでは、組織研究の巨人の肩の上に立てない。そうした意味で、本書は格好の読書ガイドになるだろう。
著者の稲水さんは、日本においてこの分野で研究実績を積み重ねてきた若手研究者である。本書が刺激になって、多くの若手(自認)研究者が、社会科学的含意に富んだシミュレーション研究に参入するようになれば嬉しい。
ご恵贈いただいた著者に御礼申し上げます。
ぼくが最も興味を持ったのは、第2巻に収められた、稲水伸行「経営組織のコンピューター・シミュレーション」という章だ。いうまでもなく、エージェントベース・モデルの社会科学への応用に関心があるからだ。
![]() | 組織論レビューII |
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白桃書房 |
レビューされるのは、Cyert & March、Cohen、Axelrod、Carley、Levinthal、Harrison など(そしてシステムダイナミクス)。こう見ると、マーケティングにおけるシミュレーション研究の系譜よりは、層が厚そうである。
人工知能系の社会シミュレーションの研究でも組織はよく研究対象になる。しかし、Axelrod、Carley あたりを参照するだけでは、組織研究の巨人の肩の上に立てない。そうした意味で、本書は格好の読書ガイドになるだろう。
著者の稲水さんは、日本においてこの分野で研究実績を積み重ねてきた若手研究者である。本書が刺激になって、多くの若手(自認)研究者が、社会科学的含意に富んだシミュレーション研究に参入するようになれば嬉しい。
ご恵贈いただいた著者に御礼申し上げます。